144 / 162
第3章 「皇帝の陰謀と動き出す闇」
140話:「転職変換装置ミネルヴァ」
しおりを挟む目の前の光景を一言で表すのなら“圧巻”というのが適切だろう。
学校の体育館ほどの広さと同じくらいの場所、この世界の建物としては比較的数の少ない二十メートル以上も高さのある天井
その空間にそれは存在していた。
―――【転職変換装置ミネルヴァ】
ランクアップを行いたい者や新たな職業に就く者が利用する世界でも十数個ほどしか存在が確認されていない装置であり
伝え聞く話によれば、神の手によって作られたとされる神器のようなものだとエマさんは説明してくれた。
外観は数十とも数百とも取れる大小さまざまな歯車がいくつも組み込んであり、まるで時計仕掛けで動いているかのようだが
それだけの数の歯車が動いているというのに聞こえてくる音は思ったほど大きくはない。
規模自体は六~七メートルほどの物で装置の雰囲気としてはパイプオルガンに近い物だった。
その装置をを守るかのようにして薄い白い靄の様な球体が装置全体を覆っている。
靄と言っても、透明度が高いため球体の中は実にクリアに見えていた。
「ルーチェ、何も問題はありませんね?」
「むぅ、その言い方だといつもは問題あるかのような言い方じゃの?
誠にもって遺憾じゃぞ小娘」
エマさんの案内で装置の前まで行くと装置の近くには一人の小さな女の子がいた。
年齢は十歳にも満たないそれこそ幼女と言っても過言ではないほど幼いが
見た目とは裏腹に重厚な雰囲気を漂わせた感じの女の子だ。
身の丈に合っていない白衣を羽織り、年季の入った作業用のゴーグルを付けながら
装置の点検をしているようでカチャカチャという音が彼女の背中から聞こえてくる。
作業に一区切りついたのか、向けていた背中を翻すと俺たちを見つけた彼女がエマさんに問いかける。
「むむ? そいつらは何者じゃ?」
「ああ、この方たちは勇者様ご一行でランクアップのためにこの都市に立ち寄ったそうです」
「なんと、このめんこい小僧が勇者じゃとっ!?」
そう言いながらトテトテと俺に近づいてくると手を顎にやりこちらを値踏みするように視線を上から下まで舐めまわす。
そして、ひとしきり品定めが終わるといきなり俺の足に抱き着きながら唐突に言葉を発する。
「小僧、ワシの婿にならぬか?」
「はっ?」
この子が一体何を言っているのか言葉の意味を理解するまで数秒を要したが
どうやら俺以外の女の子たちは瞬時に理解した様で殺気交じりの視線を幼女に向けていた。
俺が返答に困っていると彼女の行動を咎めるようにエマさんがフォローをしてくれる。
「ルーチェ、いくらヤマト様が美男子だからといって自分の歳を考えてください」
「何を言う! 恋に年齢制限などありはしないのじゃ!!」
そんなやり取りをただ呆然と眺めているわけにもいかずとりあえず自己紹介をすることにした。
「初めまして、エマさんに紹介された通り勇者をしてるコバシヤマトだよ、君の名前は?」
そう言って彼女と同じ視線になるよう膝を付きながら頭を撫でる。
彼女の藍色の短髪がふわりと揺れた。
「こっこここちらこしょはじめまちて、ワシの、いやアタシはルーチェって言うです。 よろしくです」
頭を撫でられたことが恥ずかしかったのかエマさんに話していた態度とは一変して噛み噛みな喋り方だ。
思わず俺が吹き出しながら「可愛い」と呟くと赤い顔がさらに真っ赤に染まった。
そのタイミングを見計らったようにエマさんが補足情報をくれる。
「ちなみにルーチェの実年齢は五千歳を軽く超えていますのよ」
「ええーーーーごご、五千歳っ!?」
突然の情報に俺は目を見開き目の前の幼女を見た。
衝撃の事実にリナたちも驚きの声を隠せないでいた。
そんな中実年齢をバラされてしまった幼女もとい幼女モドキが反論する。
「こ、こら小娘誰が五千歳じゃワシはそんなに年を食っておらんわ!!」
「なんだ冗談か、そりゃそうだよねだって―――」
「まだ四千九百八十二歳じゃ!!」
「ぶっーーーーーー」
先ほどとは違う意味で吹き出す俺を尻目に短い腕をブンブンと振り回しながらエマさんの言葉を訂正する。
―――いや幼女モドキよ、その年齢ならもう五千歳でよいではないか。
その後エマさんとルーチェが口喧嘩を始めてしまったためそれを収拾するのに30分を要してしまった。
「ともかく小僧そういうわけじゃからよろしくの!」
「こちらこそよろしくね」
そう言ってさっきと同じように頭を撫でてやる。
どんなに年齢が上でも年下にしか見えないのだから俺はルーチェを幼女扱いすることにした。
彼女もそれに異論はないようで俺に撫でられるのを拒否はしなかった。
それを見たリナたちが「策士め」だの「幼女枠はマーリンの専売特許ですのん」だの口々に言っていたが
反応すると厄介なことになりそうだったので全力で聞き流した。
一通りの茶番が終わったので、俺は咳ばらいを一つすると本題を投げかけた。
「それで誰からランクアップする?」
ちなみにだが、現在ランクアップを必要としているのはフレイヤ以外の4人でリナ、エルノア、マーリン、マチルダだった。
レベル40で止まっているのがリナとエルノアでレベル60で止まりがマーリン、マチルダだ。
それぞれ下位神官、下位レンジャー、中位魔術師、中位武術家の職に就いている。
ここで彼女たちには二つの選択肢のうち一つを選択することになる。
一つは今就いている職業のランクを上げてさらに強くなる方法か別の職業に転職して新たな力を手に入れるかの二択だ。
ランクを上げれば同じ職のより強力な魔法やスキルを覚えられ、転職すればそれまで覚えた魔法やスキルを継承して新たな職に就くことができる。
一つの職を極めるのもよし、転職してさまざまな魔法やスキルを覚えるもよしというどっちにしても損がない仕様となっている。
だがもちろんデメリットも存在する。
ランクアップや転職直後はどちらもレベル1の状態に戻ってしまうため一時的に能力が下がってしまう。
特に転職は全く別の職業に転職する場合、ほぼゼロからのスタートになってしまうのだ。
ランクアップの場合は多少の能力減少はあるもののレベルが上昇する毎にアップするステータスの量も増えるため
転職と比べると幾分マシと言える。
「じゃあ私から・・・・・・」
そう言うとリナが“シュタッ”という効果音が出そうな感じで手をピーンと上げる。
特に異論がなさそうなので最初はリナがいけにえ、もといランクアップしてもらおう。
「ではこちらの中央に立ってもらえますか?」
エマさんが装置の中央に設置されているお立ち台のような場所にリナを誘う。
中央まで彼女が来たことを確認すると最終確認のためだろう改めて質問をする。
「ではリナさん、一応念のためにお聞きしますがランクアップと転職どちらをお望みになられますか?」
「ランクアップでお願いします」
「わかりました。 では気を楽にして心を落ち着かせてください」
そう言うとエマさんはルーチェに目配せをする。
それを受けたルーチェが半透明の操作盤のようなものを操作すると装置が勢いよく動き始めた。
歯車が今までよりも早く回転し、連動する歯車が徐々に加速していく。
すると装置の周りの球体が淡い光を放ち始めるとその光が次第に強みを増し、ついには装置が見えないほどに強い光を帯びていく。
しばらくするとその光が弱くなっていき装置とリナの姿が見えだした。
そして、光が無くなり気が付けば元の状態に戻っていた。
「はいもう結構ですよ~」
「えっ? もう終わりですか?」
本当にランクアップしたのか半信半疑のリナだったが俺が彼女のステータスを確認すると確かにランクアップが完了し
下位神官から中位神官にランクが上がっていた。
その後他の仲間が次々とランクアップをしていった。
これで俺とフレイヤの全員がレベル1に戻ってしまったが、今後鍛えていけば以前よりも強くなっていくので
しばらくは俺とフレイヤの二人で戦っていくとこになるだろう。
全員のランクアップが終了した後、エマさんが俺の職業に関して問いただしてきたが女神の制約があるとか
適当な言い訳を付けてなんとか俺のステータスがバレずに済んだ。
ちなみにフレイヤの職業を聞いてみるとフレア・ドラゴンという種族だけで職業には就いていないことが分かったので
彼女にはドラゴンの身体能力と生まれながらの強い魔力を活かせるよう格闘系のスキルと治療系の魔法が覚えられる下位修行僧の職業にしようとしたのだが彼女のレベルが100を超えているため
最上位修行僧という職が自動的に選ばれた。
それを見たエマさんとルーチェさんが目玉が飛び出るほどびっくりしていたが要らぬ詮索をされる前に手早くお礼を告げるとその場から逃げ出した。
あとでわかったことなのだが、最上位系の職は上位系の職を極めなければいけないため最上位系の職に就いている者はそれこそ
軍事国家の切り札的存在の騎士くらいのもので平たく言えば英雄級の強さらしい。
なんかまた悩みの種が一つ増えたような気がしたがとにかく仲間が問題なくランクアップできたので今はそれでいいと自分を納得させることにした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる