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第3章 「皇帝の陰謀と動き出す闇」
147話:「皇帝との謁見」
しおりを挟む「へぇーここが皇帝の住む城ってやつかー」
そうぽつりと呟きながら歩を進める俺にリナが口を挟む。
「ヤマト様、あまりきょろきょろしていると田舎者みたいに見えますよ?」
「だってしょうがないじゃないか、こんな立派な城に来る機会なんてそうそうないんだからさ。
それにきょろきょろしてんのは俺だけじゃないみたいだし」
そう反論しながらリナから視線を外した先を見ると、他の仲間たちも物珍しいという目で辺りを見回しており
マチルダとフレイヤは視線をあちこちに向けるだけに留めていたが、マーリンとエルノアは等間隔に飾られた
骨董品の壺や年代物の甲冑の側に行きあっちこっちと動き回っていた。
俺たちがアリスと名乗る少女を助けた翌日の朝、情報収集と観光を兼ねた野外見物に出かけようとしていた時に
皇帝陛下の使いと名乗る人物が現れ、「皇帝陛下を助けていただいたお礼をしたいので城にお越しください」と言われた。
心当たりはあるものの一応詳しく聞いたところやはり女性冒険者から助けたあの少女がこの国を治める皇帝だったらしい。
身分の高い高貴な出ではないかと邪推していたがまさかこの国を治める皇帝だとは夢にも思わなかった。
人は見かけによらずとはまさにこのことだ。
そんなこんなで俺たちはアリスちゃん、もといドライゴン帝国皇帝アリシア・ティル・ドライゴンの招待を受けることにしたのだった。
ここまで俺たちを案内してくれているのは侍女長と名乗った妙齢の女性なのだが
エルノアやマーリンの歩き回る姿に奇異な目を向けるものの皇帝の客人という事もあり無理に咎めたりはしてこないようだ。
城の内装は巨人族が入れるほど巨大な造りとなっており、城を支えるこれまた巨大な支柱が等間隔で建ち並んでいる。
床には深紅の高級そうな絨毯が敷かれており、まるで凱旋パレードの主役になったかのような錯覚を覚えた。
しばらく歩いていると巨大な扉が目の前に現れ、その扉を守るように衛兵が立っている。
「勇者様一行をお連れしました」
「了解した」
衛兵の一人に侍女長の女性が短く伝え、それを受けた衛兵が俺たちの到着を大音量の声で叫ぶ。
その叫びを受け、巨大な扉がゆっくりと開いていく。
開いた扉の先の光景は荘厳の一言に尽きた。
今まで通ってきた床に敷かれていた絨毯が玉座と思しき場所の手前で途切れており、その玉座には
こう言っては何だがあまり似つかわしくない美少女が鎮座している。
純白のドレスに金の装飾品を散りばめた豪華絢爛な衣装は清廉さを漂わせ、それを纏う彼女の美貌によって
さらに神々しさを醸し出している。
「おお、ヤマト殿よくぞ我が城に参られた歓迎するぞ」
皇帝の威厳など露ほども感じさせない無邪気な笑顔を浮かべながら俺たちの来訪を心から喜んでくれているようだ。
俺たちは彼女の手前まで行くと、片膝を付いて敬意を表す態度を取る。
流石に街で会った時の態度で振舞うわけにはいかないのでここは無難に立ち回ることにしたのだ。
俺はそういうところの空気は読む方なので今回もその感性に従った。
「知らなかったこととはいえ、街では大変無礼な態度を取ってしまいました。 お許しください」
「なんじゃ、そんなこと気にせずともよい。 寧ろ最初に会ったときの態度でよいぞ」
「貴方様が皇帝陛下だと知れた以上そういうわけにも参りません。 何卒平にご容赦いただきたく。」
俺の畏まった態度がお気に召さないのか、頬を膨らませ恨みがましい目でこちらを見てくるアリシア。
この場に同席している主要な貴族からはどよめきとこちらを値踏みするような視線が向けられる。
そう、俺たち、というか今俺は試されているのだ。
アリシアの言う通り最初に出会った態度を取ることは吝かではないし、こちらとしても
そちらの方が親しみがあっていいだろう。
だが今俺がいるのは公的な目的で皇帝に謁見するための場であり、この国で最も格式を慮るべき場所でもある。
例え俺が勇者であろうともそのような場所で礼節を欠く真似はできないのだ。
もし礼を欠けば、勇者は相手に敬意も払えない武骨者として批判する隙を与え兼ねない。
だからこそ例え皇帝本人が無礼を許し、砕けた態度でも良いという言葉を貰っても
「はいそうですかじゃあお言葉に甘えて」などという軽はずみな態度は取れないのだ。
「わかった……もうよい」
アリシア自身そのことを悟ったのだろう、納得はしていないものの一先ず俺の態度についてこれ以上言及はしないでくれた。
その時まるでタイミングを見計らったかのようにアリシアの側に控えている女性が口を開く。
「勇者コバシヤマト様、此度はこちらの招待に応じてくださりありがとうございます。
改めまして悪漢の魔の手から陛下をお救いただいたお礼を述べさせていただきたい。
つきましてはささやかながら宴の席を設けさせていただきましたので今宵は存分にお楽しみくださいませ」
「そのようなつもりで助けたわけではありませんが、せっかく私のために宴の席を用意してくださるのなら
喜んでお受けいたします。」
そう答えながら側近の女性と目を合わせる。
目が合った瞬間にこの女性が只者ではないことを悟る。
一言で表すなら“この女、できる”だ―――。
それと同時に今まで散々アリシアに辛酸を舐めさせられているのか
何処となく雰囲気に影のようなものを纏っている。
まあ普段のアリシアの態度から察するに長い間彼女の我が儘を聞いてきたのだろうことは理解できた。
「では宴の準備が整い次第お呼びいたしますのでその間城の中をご案内―――」
「ヤマト殿、妾が城を案内してやるのじゃ!」
「へっ陛下いけません。 勇者様の案内ならばこの私が―――」
「きいーーーーーー」
城の案内をしようとした女性の言葉を遮り、俺の手を取って連れていこうとするアリシアを
なんとか諫めようとするものの獣が威嚇するような奇声を発してそれを黙殺する。
アリシアが俺の手を握った瞬間、俺の後ろに控えている5人の女性から相手を射殺さんばかりの視線が突き刺さる。
がしかし、当の本人はというとまるでその視線を歯牙にもかけずにいた。
一方俺はというと俺の方からアクションを起こすことはできないのでアリシアのされるがままになっていた。
その後、女性とアリシアで数度の言葉の攻防戦があったものの結局は女性が折れる形で決着し
アリシアと側近の女性二人で城の案内をすることで落着した。
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