オンラインゲームしてたらいつの間にやら勇者になってました(笑)

こばやん2号

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第3章 「皇帝の陰謀と動き出す闇」

152話:「アリシア誘拐と大和との惜別」

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 時は少しさかのぼる。
 勇者大和たちとのパーティーが終わり、自分の自室へとアリシアは戻っていた。

 「はあー、今日は楽しかったな……」

 誰もいない部屋でポツリとつぶやく一人の美少女。
 彼女の頭の中は彼のことでいっぱいになっていた。
 冒険者に襲われていたところをまるで稀代きだいの英雄の如く救い出してくれた。
 女の子であれば誰しも白馬に乗った王子様が自分を迎えに来てくれることを妄想するものであり
アリシアもまたそんな夢物語を妄信している少女の一人だった。
 だからこそ彼女が大和に恋をするのは至極当然なことであって――。

 「ヤマト殿……」

 彼の名を口にすると心臓の音が嫌にうるさく響く、だがそれが不快ではなく何とも心地いい。
 だがそれと同時に大和のことを想えば想うほど胸が苦しくなる。
 よわい十五の少女は生まれて初めての恋に戸惑っている様子だった。

 「決めましたわ、わたしあの人と結婚しますわ」

 初めての恋に胸躍らせる少女だったが、突然頭の中に声が響き渡る。

 『お楽しみの所悪いけど、こちらもそろそろ動くとしましょうか』

 「っ! だっ誰じゃ!?」

 『それを知る必要はあなたにはないわ、大人しく眠りなさい』

 「うっ……や、ヤマトどの……」

 突然急な睡魔に襲われ、あらがうこともできずアリシアは眠りに落ちてしまった。
 そして、横たわる彼女の前に現れたのは踊り子姿の妖艶な女性。
 腰に手を当て挑発的に体をくねらせると眠っているアリシアに話し出す。

 「せめてもの情けとして、あなたの想い彼に伝えに行ってあげるわ。
 あなたが目を覚ますころにはもう彼はこの世にいないけどね、フフフ」

 蠱惑こわく的な笑みを浮かべると彼女の姿が眠っているアリシアと同じ姿に変貌する。
 その姿はまるで鏡に映したように同じで違いを見つける方が難しいものだった。
 アリシアの姿になった彼女は先ほどと同じように笑みを浮かべる。
 
 「彼女を例の場所に連れて行きなさい、傷つけちゃ駄目よ」

 「はっ」

 突如現れた全身を黒装束で身を包んだ者がアリシアを抱きかかえ闇の中へと消えた。
 彼女は自分の部下が役目を果たすのを確認すると一歩一歩ドアに向かって歩き出した。

 「さて、勇者の命もこれでおしまいね。
 最後にいい思いをさせてあげようかしら、フフフ」

 その表情は妖艶さとは裏腹に悪意に満ち溢れた感情が渦巻き恐怖を覚えた。
 そして、このあと大和が彼女に襲われることになる――。





 「きゃあああああああああ!!」

 それはまるで断末魔の叫びのような悲鳴だった。
 その場にいた他の者も現在の状況が信じられないといった顔である一点を見つめる。
 そこにはうつ伏せに倒れる一人の男性がおり腹部にはナイフが突き刺さっている。
 男性はすでに事切れているため最早二度と起き上がることはない。

 「そんな、嫌だっ、嫌だああああああ!!」

 その状況を受け入れることを拒むかのように神官服に身を包んだ少女が男性に駆け寄ると
その身を抱き起しその身を揺さぶる。
 彼の血でできた血だまりによって服が赤く染まるのも気にせずリナはすがるように大和の名を叫ぶ。

 「ヤマト様起きて下さいっ! 嘘ですよねヤマト様!! ヤマト様ああああああ!!」

 「やめるのだ小娘、主はもう……」

 「そんなことありません! ヤマト様がそんな簡単に死ぬわけが――」

 「ではその方は誰だというのだ!!」

 「くっ……」

 リナの腕の中で目を閉じ沈黙する顔は紛れもない大和の顔だ。
 今までずっと旅してきたリナが見間違えるはずもない顔、そんな人物が死んだ。
 だが彼女はその事実を認めることができなかった。
 ご神託によってこの世界に召喚された勇者、それが彼なのだから。
 そんな彼が死ぬわけがないリナはそう信じていた。

 「ヤマト様ぁ~、ヤマト様ぁ~」

 大和の胸に自分の顔を埋めながら大粒の涙を流し嗚咽を漏らす彼女。
 まるでもう一度生き返ってほしいという願望を体現するかのような泣き声が部屋に響き渡る。
 リナの他にもこの状況が信じられないと言った顔を浮かべ、床に膝を落とす彼女たち。

 「ご主人様ぁー、どうしてどうしてこんなことに……」

 「ヤマトさん……」

 「旦那様……」

 「くっ、誰だ。 誰だああああああ!!」

 エルノア、マーリン、マチルダが絶望に打ちひしがれる中、フレイヤが一人激昂げきこうする。
 部屋に置かれたテーブルに拳を落とすと凄まじい衝撃とともに爆砕ばくさいする。
 顔は怒りの表情を浮かべ、自分の主を殺した者に対する憎悪の雰囲気を身に纏う。

 「誰がこんなことをしたああああぁああああ!!」

 絶望とも怒りとも悲しみとも取れる叫びが部屋を駆け巡りその後沈黙が部屋を支配する。
 そんな中一人の少女に動きがあった。

 「ヤマトざまぁ~ぜめてざいごに、あだじとぎずを……」

 そう言って涙と鼻水が入り混じった顔で目を閉じると。
 大和の唇に自分の唇を重ねようとする。

 「わあああ、待つのだ小娘。 そんな顔でキスしたら主の顔が汚れるわ!!」

 「はなじでぐだざい、ざいごのわがれのぎずなんでず!!」

 「何を言っとるか分らんわ! とにかく主から離れろ!!」

 本当はリナのやろうとしていることを痛いほど理解していたフレイヤだったが
今はそのようなことをしている状況ではなかった。
 大和本人は認めていなかったが勇者の称号を持つ者をこうもあっさりと殺してしまうほどの相手。
 そんな人物がこの城にいるという事実。
 そして、自分の主を殺されたこの怒りと怨みと悲しみをぶつけるべき相手を探し出すのが何よりの
優先事項であったのだ。

 「ああ!! リナずるい、わたしもヤマトさまとキスします!!」

 「マーリンだってするですのん、若い子には負けないですのん!!」

 「私も旦那様と最後のお別れを……」

 そう言って大和との別れを惜しむためフレイヤ以外の全員が大和の唇めがけ顔を近づけたが
それを阻止すべくフレイヤがリナから大和を掻っ攫かっさらう。
 そしてお姫様抱っこのように抱きかかえると四人に言い聞かせるように叫ぶ。

 「今はそのようなことをしている場合ではない! 主を殺した奴を探すのが先決であろう!!
 主が殺されて我も辛いが今優先してやるべきことを間違えるな!!」

 フレイヤの言ってることは正しかった。 正論だった。
 今すべきことは大和との別れを惜しむのではなくこの城に侵入してきた賊を追いかけることだ。
 現状この城にまだいる可能性は低いがそれでも追いかけるべきだとこの場にいる全員の意見が一致する。

 「やまどざま……」

 「ヤマトさま……」

 「ヤマトさん……」

 「主……」

 「旦那様……」

 「こうして一人の男が天に召されてしまった。 嗚呼、小橋大和に安らかな眠りを与えんことを、アーメン」

 全員が大和との別れを惜しむ中、急に誰かが話し出す。
 その姿を見た全員が同じ反応を示した。

 「ええぇえええええぇぇぇぇぇぇ!!」
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