オンラインゲームしてたらいつの間にやら勇者になってました(笑)

こばやん2号

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第2章:パーティーができあがるまで

27話:「エルフ族の奴隷」

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旧王都フランプールの上空があかね色に染まる頃
人力を使って動かす車を力の限り押している一人の女性がいた。

その力は弱く車を押すのには少々不向きなほどだ。


その車に乗っていた中年の女性が苛立ちを含んだ声を上げる


「何をちんたら引いているんザマス、早くしないと日が暮れてしまうザマス!」


声を荒げる女性の名はファゴット・スーン・アンジェリカ
この旧王都にいる元貴族の女性だ。


見た目は40代くらいだろうか、赤を基調とした派手な色の貴族服を身に纏い
指にはこれもかと言わんばかりの大きな指輪をはめていた
長い髪をロール状にセットした薄い紫色の髪型をしており
まさに貴族らしい風格をはらんでいた。

顔立は整ってはいたが年齢によるものなのか
目じりに皺があり同世代の女性と比べると美しいという程度だ

いい食べ物を口にしているのか肌の色艶はよく
一般的な女性よりかなりふくよかな体形をしている。


魔王がこの世界を支配するようになって3年の時が経った今
諸国の王たちは王位を奪われ、それに伴い貴族たちも力を失った


しかし、失ったと言ってもすぐに貴族の生活を辞められるわけもなく
貴族の大半は財力にものを言わせて、今もなお貴族としての体裁を繕っていた。


「申し訳ありません、アンジェリカ様」


その叱責しっせきに謝罪するのはアンジェリカが奴隷商人から
3000ゼリルという大金を使って手に入れたエルフ族の奴隷
名はエルノアといいアンジェリカに買われて10日ほど経過していた。


元々エルフ族は数が少なく、住んでいる場所も
森の奥地のためほとんど姿は見られない。


かく言うアンジェリカもその物珍しさにつられてエルノアを買った口だ。
だが奴隷としての能力は並の奴隷よりも低く
アンジェリカは彼女を買ったことを後悔し始めていた。

エルノアの力ない謝罪に盛大なため息を付くと
手を振りながらもういいから車を引けと合図する。


そうしてゆっくりとした速度で進んでいた車が
とある屋敷の前で止まった。


その場所こそアンジェリカが住む屋敷であった
旧王都の西側には元貴族や力持つ商人などが住居を構える区域があり
アンジェリカもまたその地に屋敷を持つ貴族の一人だった。


「ここでいいザマス、あとは私が歩いていくザマス。
お前はその車を片付けて自分の部屋に戻るザマス」


本来であれば、そのまま門をくぐり、屋敷の玄関まで車の押すのだが
エルノアの車を押す速度があまりにも遅いため
門の前で降りて歩いていく方が早いと判断したアンジェリカが
車から降り、トコトコと貴族らしい優雅な足取りで玄関に向かって歩いて行った


主が玄関に向かって歩いていくのを手を前に組みながらお辞儀をするエルノア
奴隷としては玄関までお送りするのが良いとわかってはいるのだが
自分の非力さを理解しているためアンジェリカの判断に口を挟まなかった。


そのままアンジェリカを見送ったエルノアは空になった車を押しながら
車を納める車庫に向かって行った。


車を車庫にしまうと、トボトボとした歩調で歩きたし
車庫の隣の隣にある小さい襤褸ぼろくなった小屋に入った。


その場所はわらが敷き詰められておりまともな家具もない
あるのは小さい小物を置く程度の背の高いテーブルの上に明り取り用ランプと
用を足すためにある木製のバケツが一つだけだった。


寝床代わりにしている盛り上がった藁の上にちょこんと座ると
エルノアは力なくうなだれた。


「こんな生活、いつまで続くのかしら・・・」


そう呟きながら目に涙を浮かべて泣いている


故郷から外の世界を見てみたいという好奇心で
村の掟を破り、村を出てしまった彼女は野盗に捕まり
そのまま奴隷商人に売られてしまったのだ。

だた村の外はどうなっているのだろうという単純な好奇心から
村を出ていってしまった彼女は
今になって自分のしてしまった行為の愚かさと後悔の念を抱く

何度自らの手で命を絶とうと思ったことかわからない
だがその度に生に対する執着と死という恐怖の感情で
死ぬに死ねない負の螺旋らせんに陥っていたのだ。


ひとしきり泣いた彼女は泣き疲れてしまったのか
盛り上がった藁を寝床に深い眠りへと落ちていった・・・




一方屋敷に戻ったアンジェリカはというと
自室に戻って書類の整理をしていた。

いくら財力があると言っても仕事をしなければ
すぐに金はそこを付いてしまう。


彼女の仕事は主に自分が所有する鉱山で採掘された宝石を加工し
それを元貴族や同じ商売を生業とする商人に売るジュエリー関係の仕事だ



今日も自分の経営する店で数名の貴族や商人に宝石を売り込んできたところだ。


書類を整理しているとコンコンとドアがノックされる。
その後一呼吸おいてドアが開き一人の男が部屋に入ってきた。


漆黒の執事服に身を包み、胸に手を当て目の前にいるアンジェリカに
敬意を表すその人物はアンジェリカに仕える執事、バルトだった。


見た目は50代だろうか、銀色に輝く白髪と口に蓄えたこれまた銀の白髭が特徴的な
優しさと気品に満ちたたたずまいの老執事という印象だ


「アンジェリカ様、お食事のご用意ができておりますが・・・」


そうバルトは言うとアンジェリカに食事の準備ができたことを伝える


「わかりましたザマス、もう少しで終わるザマスので
準備しておくザマス」


そう言って残っている書類に目を通していくアンジェリカ


「畏まりました、アンジェリカ様」


その言葉に了解の意を示すと、バルトは食事の準備のため
アンジェリカの部屋を後にした。



その数分後、怪異な現象がその部屋で起きた
1メートル半ほどの大きさの黒い影が部屋の中心に展開し
その影から数匹の異形の者たちが姿を現した。魔族だ。


その事態に驚くこともなくアンジェリカは
姿を見せた魔族にスカートの裾をたくし上げお辞儀する


「これはこれはご機嫌麗しゅうザマス、ウルレギウス様の配下の方々」


現れた魔族に対し、貴族らしい挨拶をするアンジェリカ
それに対して真ん中にいた魔族が口を開く


「挨拶はどうでもいい、それよりも例の件はどうなっている?」


「はい、私が調べましたところ私の持つ鉱山には
例の品物は発見されなかったとのことザマス」


アンジェリカの返答に対し、魔族がさらに質問する


「ではあの鉱山にはあれはないということでよいのだな」


そういうと首を縦に振り魔族の質問を肯定する


「はい、残念ながら・・・」


そして、その答えを聞くと魔族はアンジェリカに対し


「そうかご苦労だったもはやお前に用はない死んでもらおう」


そう言うと控えていた両側の魔族がアンジェリカににじり寄ってくる


「っ!?待って、待つザマス!!」
「例のものを探すのに協力すれば危害は加えないとっ」


そういう終わるのが早いか遅いかのタイミングで
にじり寄ってきた魔族の攻撃がアンジェリカにヒットし
大量の血しぶきが部屋に飛び散った。


そして、真ん中にいた魔族が実に魔族らしい言葉を死にゆくアンジェリカに送った


「我ら魔族が人間ごときとの約束を守ると思ったのか?愚かな・・・」


傷口からおびただしい量の血が溢れ
徐々にアンジェリカの意識が遠のいていった
そして最後には体が冷たくなりピクリとも動かなくなった


「ふん、死んだか・・・お前たちこの屋敷の連中を全て皆殺しにしておけ」


そう言うと、二体の魔物は了解の意を示して部屋を出ていった。



「一体あれはどこにあるんだ・・・」


魔族がそうつぶやきながら黒い影の中に消えていった


その翌日屋敷の様子がおかしいと感じた者が
様子を見に行ったところ
屋敷の人間全てが無残な姿となって発見された。


ただ一人を除いては・・・
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