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第2章:パーティーができあがるまで
30話:「大和VSウルレギウス」
しおりを挟む漆黒という名の暗闇がその部屋を支配する。
部屋と言っても、ボロい四畳半のアパートの部屋とはわけが違う
広さは25メートルプールが2つすっぽりと収まるほどの広さだ
その部屋は旧王都フランプールの中心部にある旧王城の玉座の間
かつて国王が玉座に鎮座し、栄光と贅の限りを尽くした時代、
その時代の名残をとどめている数少ない場所の一つだ。
今玉座の間には2つの対峙する影とその影を見守るさらに2つの影の姿があった
対峙している影は今まさに戦いの火蓋が切って落とされたばかりの大和と
旧王城の主ウルレギウスの両者である。
見守る影は今しがた玉座の間に到着し、対峙している二人の姿を捉えたばかりの女性二人
二人とも絶世の美女と言われれば十中八九肯定の言葉が返ってくるほどの
美しさと艶美さを兼ね備えたうら若き女性、名をリナとエルノア
対峙している二人、特に大和の身を案じている二人の美女の片割れが
彼に自分の無事を伝えるため、彼女は彼の名前を叫んだ。
「ヤマト様!!」
しかし、その呼びかけに彼は答えることはなかった
今その呼びかけに答えてしまえばたちまちに相手に隙を突かれ
形勢が不利になると考えたためだ。
そんなことを知ってか知らずか、呼びかけに答えてくれなかったことが不服だったのか
砕けた物言いに取って代わって、リナが大和の名を連呼する。
「ヤマト様!やまとさま、や~ま~と~さ~まぁ~」
聞いた者の力が抜けるような物言いに一時、場の緊張感が解かれる
その物言いに対し憤怒の感情を露わにする男がいた。
【苦虫を噛み潰したような顔】とよく表現されるがその表現が適切な顔を浮かべ
対峙しているであろうウルレギウスに向かって右手を前に突き出し「待ってくれ」のポーズを取る
「すまんウルレギウス、ちょちょっと待っててくれないか?」
今から戦うぞという気を完全に削がれてしまった大和
どうやらそれはウルレギウスも同じだったようで肩を竦めて了解の意を示す。
その瞬間大和はリナに向かって踵を返して突進し、その勢いのまま彼女にラリアットをかました。
それは戦いの気を削がれてしまった者の遺憾の意を示すものであり
その行為に対しウルレギウスは大きく頷き、かたやもう一人の美女の片割れはつぶらで大きな瞳を
目が飛び出るのではないかというくらいにさらに大きく見開く。
「ええーーー、なんで?」
今の状況が理解できなかったのだろう、エルノアが驚愕と疑問の声を上げる
そして、ラリアットで吹き飛ばされたリナはもはや恒例となりつつあるルーティーン
(空中に体が投げ出され弧を描くような飛び方)で床に着弾する。
二呼吸ほどの間隔ののち、これもまたいつもの如くムクっと体を起こすと
その原因を作った人物に対し、抗議の声を上げ始める。
「何するんですか!気持ちいいじゃないですか、ありがとうございます!!」
どうでもいいことだが、どうやら彼女にとって痛いこと=気持ちいいことなのだ
そんな彼女の感想が大和の逆鱗に触れたのは想像に難くないだろう。
眉間に怒りのマークを携えながら大和が激昂する。
「何がありがとうございますだコノヤロー!
今からいい感じで戦おうって時に人の名前を連呼すんじゃねぇ!!」
「だって、私が無事だってことを早くヤマト様に伝えなきゃっていう使命感で呼んだのに
全然反応してくれないんですもん、そりゃ反応するまで連呼したくもなるじゃないですか!!」
リナの言うことも最もなのだろうが、人と言うのはTPO、時と場所と場合によって
その状況に相応しい対応をしなければならない時がある
一般的な呼び方で言えばとどのつまり【空気を読め】ということだ。
怒りに任せてこのままボコボコにしてやろうかという衝動にかられた大和だったが
なんとかその感情を抑え込み、これ以上この馬鹿には付き合ってられんとばかりに肩でクイっと身を翻す
そして、律義にも待っていてくれた相手に対し感謝と謝罪の意を示す。
「なんか・・・仲間が申し訳ない・・・」
「いや気にするな、お前も大変なのだな・・・」
共通の嫌な奴がいると親近感が沸いてくるのか
ウルレギウスと大和は互いに苦笑いを浮かべる
そうしている間にも何か裏でぶつぶつとリナの文句が聞こえていたが
強制的に意識をウルレギウスだけに集中することにした。
一通りの茶番が終わり、大和とウルレギウスの間に再び闘気に満ちた鋭い感覚が蘇る
これからが本番だと言わんばかりの押しつぶされそうな雰囲気に
エルノアとリナは押し黙ってしまった。
そして、エルノアの額から流れる汗がポタリとこぼれ玉座の間の床にポチャっと落ちた。
まるでそれが開戦の合図だったかのように戦いが始まる。
二人ともお預けを食らっていた犬のように獲物に突進し襲い掛かる。
ウルレギウスの斧が横に薙ぎ払われる、直撃すればたちまちミンチの出来上がりだったが
大和は斧の間合いを完全に見切り紙一重のところで躱す。
そこからウルレギウスの猛攻は止まる所を知らず
振り下ろし、斬り上げ、薙ぎ払いなどなど怪力に物を言わせた攻撃が大和を襲った
だがその攻撃はただ単純なものではなく、歴戦の戦士が使う斧での戦い方として目を見張るものがあった。
そんなどれを取っても一撃必殺の攻撃を大和は完全に見切っているのだろう
全てギリギリのところで躱しながら様子を窺っている。
驚いたことにあれほどの攻防があったのにもかかわらず
大和は息一つ乱れてはいなかった。
「どうした?もう終わりか?」
いくら怪力の持ち主であっても体力には限界というものがある
肩で息をするウルレギウスをみて挑発めいたセリフを吐く大和それに対し、ウルレギウスは
「ふんまだまだこれからよ・・・」
と強気の態度で答えたものの実際は攻め手に欠けていた
ウルレギウスの斧での連続攻撃は一朝一夕で身に着くものではなくかなり洗練されたものだ。
彼自身も自分の斧術には絶対的な自信があったのにもかかわらず容易く躱されてしまったことに
驚愕を隠し切れずにいた。
ウルレギウスにとって斧での攻撃は唯一の戦法であり切り札的存在だったため
斧での戦術が効かないとなると、彼にもはや勝算などありはしなかった。
絶対的な強者を前に自分から戦意が喪失していくのと同時に死の恐怖が背後から迫ってきた。
その心境をまるで見透かしたかのように大和は戦闘態勢を解く
彼の行動に一瞬怪訝な表情になったが元の顔に戻ったウルレギウスが問いかける
「何の真似だ、貴様!?」
ウルレギウスからすれば当然の疑問だ
今まで命のやり取りをしていた相手に対し、戦闘態勢を解除することは
隙を作る以外の何物でもない。
その疑問の言葉を受けて、大和が淡々とした口調でその問いに答えた
「もう・・・止めだ」
一瞬大和が何を言っているのかわからなかったが
意味を理解したウルレギウスは心外と言わんばかりに咆哮する
「止めだと!?どういうことだ貴様!!」
「お前を、殺したくない」
「っ!?」
どうやら大和の中でウルレギウスの評価は悪くなかったようで
素直にその言葉が口を付いて出てしまった。
戦士は戦えば話さなくても相手の人柄や性格などと言った内面的ことは何となく理解できる。
その理論に則った結果、大和はウルレギウスの戦士としての心意気を気に入ってしまった
だからこそ思ってしまった「今殺すには惜しい」と・・・
もちろん相手は魔族なのだから倒さなければならない
しかしながら、”しかしながら”、ウルレギウスの中に戦士の気概を見た大和は
甘いことなのかもしれないが、口から出たその言葉は純粋な大和の気持ちの表れだった。
「そうか・・・だが戦いとは常に勝者と敗者の二者しか存在しない!!」
まさにその通りだった。
戦いの中で相手に情けや同情の感情などは無用の長物
そのようなものはただの偽善でしかなかった。
勝敗は決したが戦いにおいて勝者と敗者を決定づけるもの
それは生と死だ。勝者は生を敗者は死をというのが至極当然の流れなのだ。
「神託の勇者よ・・・名を聞かせてくれぬか?」
戦士として自分に勝った相手の名を聞きたかったのだろう
その意図を汲んで大和は真摯に答えた。
「小橋・・・大和」
その名を聞き、満足げに頷くと
ウルレギウスは大和に向かって突進してきた。
おそらくこれが最後の一撃になることをわかっていて・・・
死の覚悟を決めた戦士の思いを無下にする男ではない大和は
せめてその思いに答えるべく、握られた剣に力を込める。
そして両者の距離が縮まり互いの攻撃が繰り出された刹那
大和の攻撃はウルレギウスの体全体を覆うシールドで阻まれていた
何が起きたのか一瞬理解できなかった大和に向かって声が発せられる
「いやいや、面白いものを見せてらったよ・・・」
この声の主は一体!?
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