オンラインゲームしてたらいつの間にやら勇者になってました(笑)

こばやん2号

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2部【アース大陸横断編】 第1章 「目指せドグロブニク 漫遊編」

56話「カズール VS ヤマト」

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お互いに名前を名乗ると戦闘態勢に入る。
大和ほどの強さになると対峙しただけで相手の強さが手に取るようにわかる。
カズールという男は強いか弱いかそのどちらかに分類するならば
確実に強い部類に入るだろう。

改めてカズールを上から下まで値踏みするように観察する。
筋骨隆々というよりは無駄な脂肪が付いていない身体付き
飄々ひょうひょうとした雰囲気をかもし出しながらもその眼光は鋭く隙が無い。
胡桃色くるみいろの茶色がかった長髪を後ろでまとめ上げ
ボロボロの服をまるで着崩したかのようにお洒落に着こなしている。

年齢は大和よりも少し若く27、8といったところだろうか
その瞳には恐れを知らない自信と若さゆえの拙さが垣間見える。

一騎打ちが始まって、数十秒が経過してもお互いに動く気配がない。
正確にはカズールが動けずにいたのだ。
彼自身もまだ若輩の身でありながらもそれなりの修羅場を経験してきていた。
だからこそ一騎打ちという提案を申し出たのだが
この時彼は大和に戦いを挑んだことを後悔していた。

(なっなんだこいつは!? まるで隙がないじゃないか!!)

大和の構えは一見、半身の状態で隙だらけのように見えるが
実は半身の体勢であるため相手がどんな角度やどんなタイミングで来たとしても
対応できる構えを取っていたのだ。
この構えは大和のオリジナルの構えでありこの世界に来てから
自然と覚えた構えなのだ。

その隙の無さに心中で舌打ちをし目を細める。
このまま見つめ合っていても仕方がないため
覚悟を決めカズールは下半身に力を込め大和の間合いに入り込む。

そのスピードは常人の域を逸脱しており大和以外の三人で
この動きを捉えることができたのはレンジャーの職を持ったエルノアだけだった。
まるで加速装置が体に付いているかのように数メートル離れた大和まで一瞬で踏み込み
手に持ったシミターを突き出してくる。

その高速の攻撃を上体を逸らすことで躱し、突き出された剣先を
自らの剣で弾いた。
金属と金属がぶつかる音が響き渡る。
払われたシミターを引き戻し、再び距離を取るカズール
だがこの時点ですでに勝負は決していた。

カズールは大和が只者ではないことを直感していた
だからこそ最初の初撃で決着を付けなければならなかった。
そして、自分が出せる最高スピードを以って最高の一撃を放ったつもりだったのだが
その攻撃はいとも容易く回避されてしまったのだ。

(・・・・勝てない)

圧倒的な力量差の前ではどうしようもないのだ。
だがカズールもまた引くに引けない状況なのだ
仮に逃げたとしてももうこの町には居られないだろう
だからと言って玉砕覚悟で突っ込んだとしても簡単に殺されてしまうだろう。

カズールの額から大粒の汗が流れ落ちる。
それほど動いていないのにもかかわらず汗をかくのは
精神面的な緊張によるものだろう。

己を鼓舞するために目をギュッと瞑りパッっと開く。
そして、相手の位置を確認しようとしたときにはもはや勝負はついていた。
さきほど大和がいた場所には彼の姿はもうなかった。
その刹那首の付け根に軽い衝撃が走り、気付いた時にはカズールは意識を失っていた。

大和はカズールが目を瞑ってから開くまでのほんの数コンマ一秒の間に
距離を詰め後ろに回り込み、カズールが目を開けたと同時に手刀を首に放ったのだ。

たまらず前のめりに倒れ込むカズール
実に一騎打ちが始まってから僅か4分の出来事であった。

「やったですのん!」
「ヤマト様が勝ちました!」
「当然です。 ヤマトさまが負けるわけがありません」

戦いを見守っていた三人に安堵の色が浮かんでいた。
本当はかなり心配していたのだろう。

大和は倒れたカズールの懐から白茶色の金袋を取り返すと
三人の元に歩み寄る。

「ヤマトさんすごかったですのん!」
「惚れ直しちゃいました!!」
「最後の動きはあたしでも見えませんでしたよ」

それぞれ一騎打ちの感想を述べ大和の労を労う。
その時三人の後ろから小さな顔がひょこんと出てくる、リコルだ。

大和はリコルに近づき頭をくしゃくしゃと撫でたあと
先ほど取り返したばかりの金袋から金貨三枚を取り出すと
その金貨をリコルに渡した。

「えっこれ・・・・」

大和のしたことに驚きを隠せないといった表情を浮かべる。
そんなリコルにやさしい微笑みを浮かべたあと三人に向き直り

「金も取り返したし、じゃあ行くか!」

そう言うとその場を後にしようとするが
その歩みは一人の人物の手によって止められてしまう。

「待ってくださいっ!!」

子供独特の幼げな声が建物内に響き渡る
その声に足を止め、声の主に振り返る。

「まだ何か?」

大和がそう言うとリコルは問いかける。

「どうしてですか? どうしてリコルに何もしないのですか?
 あたしはあなた様からお金を盗みました。
 本当なら殺されても文句は言えません、それなのに!
 あなた様はあたしを責めるどころかお金までくれて・・・・」

自分が犯してきた罪を悔いるかのような表情を浮かべ俯くリコル
大和はそんな彼女に歩み寄り頭に手を置きながら諭すように語り掛ける。

「リコルちゃんが今までしてきたことは許されないことだ。
 でも生きるためには仕方のないことだってある。
 リコルちゃんも好きでこんなことしてきたわけじゃないんだろ?
 もし君が今までしてきたことを悔やんでいるのならまだ遅くない
 リコルちゃんはまだ子供なんだからいくらでもやり直せる。
 そのお金は君の新しい門出を祝う選別と思って受け取って欲しい」

その言葉を聞いた途端、タガが外れたように本来の子供らしく
大粒の涙を流しながら泣きじゃくる。
大和の胸に抱かれながら、今まで我慢していたものを全て吐き出すように
辛かった日々が報われたかのようにリコルは泣き続けた。

大和はそれ以上は何も言わずただただ彼女が泣き止むまで
ずっとそばにいたのだった。
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