小野寺乱楽の異世界転生物語 ~過保護な親を持った子供はこんなに苦労するんだぜ?~

こばやん2号

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第一章 転生、そして新たな人生の幕開け

2話 「女神からの説明」

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『まずは自己紹介をしますねぇ~、わたしはこの世界を管理してるぅ~メッツァルーナっていいますぅ~。あなたの世界でいうところの神様みたいなものですぅ~』


 なるほど、俗に言う“管理者”という奴か……。
“管理者”。それは、例えるならマンションやアパートなどの管理人のようなものだ。
 神などという呼び方は、それほど壮大的なものではく、言わばただ世界を管理している存在にすぎない。


 それにしても、こんな訳の分からん奴がいきなり現れてうちの両親もさぞかし驚いて――。


「……」

「……」


 ……はいないようだ。というか、笑顔のまま微動だにせずまるで石になったかのように固まっている。
 何が起こったのだろうかと首を傾げていると、俺の疑問に答えるように声が響き渡る。


『ちなみに今時間を一時的に止めているので、わたしを認識しているのはあなただけですよ~』


 そうですか。そりゃ準備のいいことで。
 兎にも角にも、どうやら今目の前にいるこいつがこの世界の神、所謂“管理者”だというのは嘘ではないようだ。


 管理者とは管理している世界において絶大な力を持ち、場合によっては世界そのものを破壊することができるほどの能力を秘めている場合もある。
 だが、初対面で見た彼女の印象からそんな力を持っているとは到底思えなかった。


 年の頃は二十代前半で金髪の長い髪と緑色の瞳を持つ女性だ。
 恐ろしいまでの美しく整った容姿に均整の取れた体つき、そして女性としての存在をこれでもかと主張する山とも言えるような二つの膨らみは大きいの一言に尽きる。


 古代のローマ人やギリシャ人が着ているような真っ白な一枚布をドレスのように着こなしており、頭には何かの葉で作った冠のような装飾を身に着けている。
 格好自体は神と言えなくはないのだが、彼女の持つぽけぽけとした柔和な雰囲気がそれらをすべてぶち壊している。


 とまあ彼女の第一印象はこれくらいなんだが、一体何しにここに現れたのだろうか?


『それはですねぇ~、あなたが死んでしまって、わたしの管理する世界に生まれ変わったことを教えに来ましたぁ~』


 ……なるほど、やはり眠りに就いたあの後何か突発的なことが起こって俺は死んでしまったらしい。というか、ナチュラルに人の心を読んできたな、変態め。


『変態は酷いですよぅ~、それに心くらい読めないと、邪な考えを見抜けないじゃないですか~」


 確かに彼女の言っていることにも一理あるか? だが、だからといってあまりいい趣味でないことは確かだ。
 それよりも気になることが一つある。それは、“どうして俺は死んでしまったのか?”という疑問だ。てことで神よ、説明よろしく!


『なんか全然敬いが足りない気がしますけど、まあこの際どうでもいいです。肝心のあなたが死んだ原因は……ふふふ』


 俺が死んだ原因について様々な可能性を思い描いていると、含みのある笑いを浮かべながら彼女が微笑む。なんだ? 俺が死んだ原因が可笑しいとでもいうのだろうか。
 ひとしきり笑うと、彼女は相変わらずのぽけぽけとした雰囲気のまま説明しだした。


『小野寺乱楽さんって、寝るときいつも扇風機をつけて寝てるじゃないですかぁ~? それで、最近秋から冬に変わる季節の変わり目だったでしょ~、それが原因で凍死しちゃったみたいなんですよ~』


 マジかよ……扇風機をつけっぱなしにしておくと死ぬとか都市伝説で聞いたことはあるが、まさかそんな理由で死んでいるとは思わなかった。
 彼女が言った通り、俺は寝るとき夏だろうが冬だろうが扇風機をつけて寝ている。理由としては、俺が根っからの汗っかきだからだ。


 別段俺は太っているわけではないのだが、どうやら人よりも少しだけ体温が高いらしく、そのためよく汗をかく。だからこそ、俺にとって扇風機というものは季節問わず常に必要な電化製品だった。まさかそれが原因で死ぬとは、世の中上手くいかないものだ。


『あまりに珍しい死に方だったんで、ニュースで取り上げられてましたよ~、ふふふふ』


 ……くそう、他人事だと思って遠慮なく笑いやがって、メッツァルーナめ。
 だいたいメッツァルーナってなんだよ。ピザみたいな名前しやがって。よし決めた、今日からこいつは【ピザ神】と命名しよう。決定事項だ。


『ちょ、ちょっとぉ~、人をそんなどこかの芸人さんの二つ名みたいな呼び方で呼ばないでくださいよ~』


 俺の【ピザ神】がお気に召さなかったようで、頬を膨らませながら抗議の声を上げてきた。
 そんなことはどうでもいいから、とっとと次の説明に移って欲しいんだが……。


『それもそうですね~、じゃあ次の説明をしますね――』


 それから、俺は彼女からこの転生した世界の概要を聞いた。
 基本的にはどこかで聞いたことがあるような魔法と剣の世界で、魔物ともモンスターとも呼ばれる存在がおり、多種多様な種族が共存する世界らしい。


 文明自体はラノベや小説に登場する異世界と同じく、中世ヨーロッパ程度の文明力だが、魔法の存在によって科学力は皆無といっていいほど発展していない。その代わりという訳ではないが、魔道具と呼ばれるものが流通していて人々の生活の補助であったり、武器や兵器として使われていたりする。


 政治に関しては、国王を頂点としてその臣下の貴族たちが地位に見合った一定の領地が与えられ、その領地に住まう領民を統治する封建制度が適用されている。


 そして、数年前まで魔王という魔族を率いていた存在がいたらしいが、異世界から召喚された勇者によって討伐されたらしい。詳しく聞くと、その勇者とやらも俺と同じ地球から召喚された人間だったのだが、魔王討伐という役目を果たしたことで元の世界に送還され、今はもういないとのことだ。


『とまあ、この世界に関しての大体の情報はこれくらいですね~』


 ふむふむ、どうやらこの世界はスタンダードな異世界ファンタジーって感じらしいな。
 ところで異世界ファンタジーのお決まりといえば、やはりずば抜けた性能を誇るチート能力だろう。


 異世界から転生または召喚された人間はこの世界の理と逸脱した力を持っていたり、神の加護を受け優れた能力を有することが定石だ。
 さて、今回俺は元の世界で死んでしまい転生したわけだが、一体どんな能力を持っているのだろうか? さぞかし強力な力を持っている――。


『持ってませんよ?』


 ……なに? 持ってないだと?
 じゃああれか、強大な魔力とか優れた身体能力とかの才能が半端ないとかか?


『あなたの才能は、はっきり言うと“普通”ですね~。強い魔力も持ってませんし、頑丈な肉体も持ってませんね~。可もなく不可もなくってやつです』


 マジかよ。それじゃあピザ神から与えられる使命とかが達成できないんじゃないか?
 これも定番中の定番だが、他の世界から転生した人間はかなり高い確率で神から使命を与えられる。その内容は大体決まっていて、よくあるのが“世界が滅亡の危機に瀕している”とか“魔王を討伐しろ”とかという世界レベルの危機を救ってくれという内容のものだ。


 今回もその延長線上のようなもので、転生した世界に危機が迫っており、その危機を救うために他の世界から人を呼んでくるということだろう。
 だから、今回もなにか壮大な使命を与えるために俺が呼ばれ――。


『使命なんてありませんよ~、というかラノベの読み過ぎです~。それとわたしはピザ神じゃないですぅ~』


 ほんわかとした雰囲気を醸し出しながらピザ神が否定する。
 非凡な才能もなく、使命も与えられない、俺は一体何のためにこの世界に呼ばれたんだ?


『死に方が可哀想だったので~、気まぐれで呼んでみましたぁ~。……てへっ』


 てへっじゃねぇよ!! てことはなにか? 俺がこの世界に生まれ変わったのは、世界の危機でもなんでもなくただピザ神の気まぐれだってことか?


『そうなりますね~』


 ざけんじゃねぇよ!! そんな散歩のついでに捨てられた子犬を見つけたから連れて帰って飼うことにしました的な感じで俺を生まれ変わらせてんじゃねえ!!


『うまいこと言いますぇ~』


 どうすんだよこの状況!? 何していけばいいんだ?


『別に何もしなくていいですよ~。ただ第二の人生を謳歌すればいいじゃないですか~』


 ……他人事だと思って適当なこと言いやがって、この神は。
 だが、本来死ぬはずだったところを生まれ変わりとはいえ助けられたことに変わりはない。
 ちなみにあのまま死んでたらどうなってたんだろうな? 地球で生まれ変わってたのかな?


『そうですねぇ~、地球で生まれ変わってましたね~。ゴ〇ブリとして』


 ……ありがとうございます!! 生まれ変わらせていただいて!!


『現金な人ですねぇ~。まあとりあえずそういうことですのでぇ~、あとは好きに生きてください』


 彼女はそう言うと、説明は済んだとばかりに消えていった。
 彼女がいなくなったあと、時が再び動き出し日常を取り戻す。


 仕事から帰ってきて眠りに就いたと思ったら、いきなり生まれ変わっていたという超常的な体験をしてしまった。
 とりあえず、この世界で自分なりに生きてみようか。……最期に一つ言わせてくれ。ゴ〇ブリ転生にならなくてマジでよかった……。
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