六つの剣の物語

山本桐生

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二つの月と巨躯の怪物

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『うん……私も。私も暁くんが好き』

  時間は少し遡る。

 「ぶはぁっ!!がふっ、ぐふっ、ゴホゴホッ!!」
  息苦しさに俺は飛び起きた。
  鼻と肺に流れ込んだ水を咳きと共に吐き出す。
  な、何が、どうなってんだ!!?
  水に浸かっている自分。
  ここは……どこ?
  緑を含んだ夜風が頬を撫でた。
  そう夜風。辺りはすっかり日が落ちている。
  水面には映る月は動く度に揺れ、光をキラキラと反射する。その明るさに見上げた空。
  そこには。
 「でけぇ!!」
  月が……でけぇ!!
  もう一度言おう。
 「でけぇ!!」
  月が、月が……でけぇ!!
  ここから見える月は車のタイヤホイール並み。巨大な金色の月が頭上に輝いていた。
  しかも二つ。
  どこだよ……ここ?
  ついさっきだ。
  俺は遥に『好きだ』って告白した。そしたら遥も『私も好き』と答えてくれた。これで恋人同士。その瞬間。
  目の前が光に包まれた。
  カメラのフラッシュのような強い光に、周りの景色も、そして目の前の遥の姿さえ眩しくて見えなくなる。
  音さえ光の中に消え去り、やがて俺は意識も失った。
  そして気付くとここに。
  明るい二つの月に照らされ、夜でもその周囲を確認出来た。木々に囲まれた湖の淵に自分はいる。
  どこかの山の中……っぽいけど?
 「……ん?」
  それは少し離れた位置だった。大木の根元に誰かが横たわっている。見た事のある制服……もしかして……
 俺は水辺から急いで、その元へと駆け寄る。近付くにつれその姿がハッキリしてくる。
  間違い。あれは遥だ!!
 「遥……おい、遥……」
  遥の体を軽く揺すり、次に胸へと耳を当てる。
  ……や、柔らかい……そして心臓はちゃんと動いている。静かな呼吸に合わせ胸も動いている。死んではいない。
 「良かった……生きてる……」
  俺が安堵に大きくを息を吐くと……
「ん……」
  遥の微かな小さな声。
 「遥……大丈夫か?遥」
  彼女はゆっくりと目を開けた。
  どこか虚ろな瞳が俺を見つめている。
 「……気付いたか?どこか痛かったり苦しかったりしないか?」
 「えっと……それは大丈夫」
  俺はホッと胸を撫で下ろす。
  遥はゆっくりと上半身を起こし、そして言った。
 「けど……キミ……誰?」
 「……ん?」
  ん?
  誰?
  俺の事?
 「あの……遥?」
 「キミ……私の事を知ってるの?」
 「ちょ、ちょっと待て。ちょっと待て遥。お前の言っている事がよく分からないんだけど。俺だよ、俺」
 「……」
 「……」
 「……オレオレ詐欺?」
 「……遥?」
 「あ、ああ~あの、う~ん、武田君だっけ?」
 「いや、それ隣のクラスの奴だろ。こんな時に冗談はやめろ」
 「もしかして正樹君?」
 「だからそれが隣のクラスの武田だ。武田正樹」
 「……タケマサ?」
 「そりゃ武田正樹のあだ名だろ!!ま、まさか、お前、俺じゃなくて武田の事が好きなのか!!?だからさっきから……」
  思わず遥の肩をガタガタと揺すってしまう。
  武田正樹も遥の事がストーキングする程に好きという噂を聞いた事があるような無いような!!
 「ああっ、ううっ、ちょちょっと止め止め止めてぇ~」
  その時、耳元でビュンッという風を切る音がした。何かが耳元を掠め、ドゴッと大木に当たる。そして跳ね返り、それは俺の足元に転がった。
 「……石?」
  野球ボール大の石である。
  当たったら、下手したら死ぬよ、これ。
  今、これを投げ付けた奴は……
 振り向くとそこには。
 「か、彼方?」
  少し離れた位置、高崎彼方がそこに立っていた。
  同じ制服を着る、一歳下、遥の妹。
 「……」
  彼方は無言で振りかぶる。その動きは野球のピッチャーのよう。
  ビュンッ
「危なっ!!」
  彼方の投石、第二投目を俺は間一髪で避けた。
 「ちょっ、お前、何してんだ!!?」
 「姉さんに……」
  それは彼方の静かな声。
  続く第三投目。
  ビュンッ
「危なっ!!」
 「……近付くな」
  第四投目。
  ビュンッ
「殺す気か!!?」
 「死ね。その場で死ね」
  石には殺意が篭っていた。
  だが遥の一言。
 「彼方」
  遥の声に、彼方は持っていた石を放り投げ、すぐに駆け寄って来る。その彼方を両手を広げて迎え入れる遥。
 「姉さん!!」
  そうして姉妹がギュッと抱き合う。出来れば俺も混ざりたい。
 「姉さん……湖から引き上げたんだけど、なかなか目を覚まさなくて……助けを呼ぼうと思っても周りには誰もいないし……本当に心配した」
 「うん。ありがとうね、彼方」
  遥は優しく彼方の頭を撫でる。
 「俺は?湖に放置されてたんだけど?」
 「ちっ」
 「えっ、舌打ち!!?」
 「溺れ死なない所までは運んだ。それより姉さんとの抱擁を邪魔しないで」
  一応、助けてはくれたのか。
 「……まぁ、姉妹の再会は良かったんだけど、二人ともここがどこか分かるか?」
  遥はキョトンとした視線、彼方は鋭い視線を俺へと向ける。
 「彼方は……この人……知ってる?」
 「……ううん、知らない人」
  彼方即答。
  もちろん遥と同じく、彼方とも十年以上の付き合いがある。
 「ちょっと待て二人とも」
 「もしかして知らない人だから石を投げて私を守ってくれたの?」
 「……うん。そう」
 「じょ、冗談だろ?遥も彼方も俺の事を覚えてないのか?幼稚園から今までずっと一緒だったろうが……えっ、ドッキリ?」
  俺は思わず周囲を見渡す。
  遥は困ったように彼方に視線を向けた。
 「姉さん……姉さんはこの馬鹿の事を本当に覚えてないの?」
  遥は遠慮がちに頷いた。
 「遥……う、嘘だろ?か、彼方は俺の事……」
 「私は残念だけどあんたの事を覚えてる。小学生にもなってオネショして、その布団を私の物と代えて冤罪を着せた事は一生忘れない」
 「ま、まぁ、そんな事もあったな」
 「姉さん、私の事は覚えてる?」
 「彼方でしょ。私の可愛い妹」
 「うん。それだけ覚えててくれれば良いの」
 「いやダメだろ」
 「ダメじゃない。姉さんがあんたの事を忘れるなんて記憶喪失万歳」
 「なぁ、遥……本当の本当に俺の事を覚えてないのか?冗談とかじゃなくて?」
  学校の帰り道、俺は勇気を振り絞り遥に想いを告白した。遥も返事してくれてお互い恋人同士になれる……それも全て忘れてしまったのか?
 「彼方の感じから分かるけど、私たちは知り合い同士だったんだよね。でもごめんね。本当にキミの事だけ何も覚えてないの」
 「……」
  いつも一緒に居たから。ずっと見ていたから。
  だから俺には分かる。
  遥は嘘をついていない。
  少しの沈黙、それを破ったのは彼方だった。
 「姉さん。とにかくここを離れよう。服もそのままじゃ風邪ひくから」
  言われて気付く。
  湖に浸かっていた自分はもちろん、遥も彼方も制服が濡れている。
  とにかく人でも建物でもあれば……
 そうして俺達三人は歩き出すのだった。

★★★

 高崎遥と高崎彼方の高崎姉妹。
  腰まである少しクセのある長い髪を後ろで束ねているのが遥。
  肩口辺りまでの少しクセのある短い髪が彼方。
  身内贔屓を抜きにしても二人は可愛いと思う。身内贔屓をすれば特に遥は超絶かわいい。日本で一番かわいい。
  教室、クラスの笑いの中に遥はよく居る。物怖じする事も無く社交的で明るい。人懐こい笑顔は人をよく集めた。
  その遥の目を少し鋭くしたのが彼方だ。少し怖い印象を与える事もあるが、実際は面倒見が良く責任感も強い。そんな所が魅力的であるが……俺には冷たい。
  シスコンの彼方は、姉に近付く俺が大嫌いなのである。まぁでも基本的には彼方も良い奴ではあると思うけど。

 「でも、ここどこなんだろうな?」
  ひたすら続く森、森、森。人工的な光はどこにも見えない。
  ただ助かるのは明るい月明かりが森を照らし出している事だった。夜でも明るく歩きやすい。
 「さぁ?さっき私も助けを呼ぼうと少し歩いてみたけど、ここを抜けられなかった」
 「いくら何でも日本だよな?」
 「私の知っている日本に月は二つ無い。それにほら」
  彼方が足元に視線を向けた。実は光源は月だけではなかった。
 「うん。これさっきから綺麗だよねぇ~」
  遥が言うのは足元に咲く花。その花びらが蛍光灯のように発光していたのだ。
 「姉さんも暁もこんなの見た事ある?」
 「無いかな」
 「ねえなぁ」
 「えっと……暁くんだっけ?」
 「遥、本当に俺の事は覚えてないのか?」
  答えたのは彼方だった。
 「あんただって分かってんでしょう?姉さんが嘘ついてないの。諦めて自己紹介しなさいよ」
 「そのうちに思い出すよ。タケマサくん」
  そう言って笑う遥の顔はいつもと変わらないのに。なのに俺の事は覚えていない。
 「だからそれ隣のクラスの武田正樹だから。暁。藤倉暁だよ」
 「うん。よろしくね。フジアキくん」
 「いや、タケマサっぽくしなくて良いから」
 「あははははっ」
  本当に笑顔はいつもと変わらないな……

 どれくらい歩いただろうか。それは唐突だった。
  ガサッ
 木々の擦れる音がした。
  反射的に俺達は足を止める。
  お互いに黙ったまま顔を見合わせる。
  何か居るのか……野犬とか猪とか……それともまさか……熊とか?
  遥が自らを指差しながら小さく唇を動かした。
  微かに聞こえる小さな声。
 「私が見てくるよ」
  アグレッシブな行動派、それが遥。
 「姉さん、危ない。私が行く」
  姉を護るのが第一、それが彼方。
 「いや、俺が行く」
 「どうぞどうぞ」「どうぞどうぞ」
  姉妹が同時に。
 「『どうぞどうぞ』じゃないよ」
  そしてオチ担当の俺。
  もしかしたら人かも知れない……だったらやっぱり確かめないとな……
「暁くん……気を付けてね」

  木々と草が揺れる音。
  近付くにつれ別の音も聞こえた。それは鍵同士がぶつかるような小さな金属音。何だかは分からないが、なるべくこちらは音を立てずに近付いて……
「!!?」
  それを見た瞬間、心臓が跳ね上がる。
  な、何だよ、あれ……
 木々の隙間からその姿が見えた。
  二足歩行するそれは人ではなかった。豚とも猪とも言える獣面に、人を大きく超える巨大な体躯。その体には薄汚れた鎧を身に纏っていた。小さな金属音はこの鎧の繋ぎ目が擦れる音だったのだろう。
  まさに怪物。化物。似たような伝説上の怪物ならオーク。
  コスプレ?いや、まさか本当にオーク?
  二つの月。もしここは日本では、地球ですらないなら……そう、異世界なら怪物がいても不思議じゃない。
  とにかくここを離れるべきだ。
  俺がそのままゆっくり下がろうとした、その時。
  異形の怪物がこちらに顔を向けた。
  息が止まる。
  木々と草で俺の体は隠れてはいるが……気配か?まさか気付かれた……?
 「……」
  俺も怪物も動きが止まる。
  お互いがいる方向に顔を向けて動かない。
  だが突然、怪物がこちらに向けて突進してきた。完全にこちらに気付いている。
  その怪物の野太い腕に巨大な斧が見えた。
 「くそっ」
  同時に俺もその場から駆け出した。
  ヤバい。これはマジでヤバい。あの武器、掴まったら殺されるかも知れない!!
  でも……遥と彼方を危険な目に合わせるわけにはいかない……二人に聞こえるように、そして二人がいる事を第三者に気付かれないように。
 「逃げないとやべぇぇぇぇぇっ!!」
  走りながら大声を張り上げる。二人の姿は見えない。けどきっと聞こえているはずだ。
  そして俺は来た方向とは別の方向へと向けて駆けるのだった。
  この怪物を絶対に二人から引き離さないと!!

  森の中を、木々の間をすり抜けて走る。とにかくデタラメに、右に左に、後ろを振り返る余裕も無く、とにかく全力疾走。
  吐き気がする。心臓も破裂しそうなほど激しく鼓動する。それでもただひたすらに足を前に出し駆ける。
  ダ、ダメだ、もうダメ……掴まって殺される前に心臓発作で死んじまう……でもここで死んだら遥に会えない。
  嫌だ、絶対に遥にまた会いたい。そしてイチャイチャしたい。こんなトコで死ぬ事は絶対に出来ない!!
  そしてどれくらい走っただろうか。
 「おげぇぇぇっ」
  吐いた。
  吐いて振り返ると、そこに怪物の姿は無かった。
  ……逃げ切った……のか?
  そのまま辺りに意識を向けて気配を窺う。
  ……が、何も感じない。たまに草木が風に揺れる音にビクッとするが、あの怪物の姿はどこにも見えない。
  近くにはいないようだった。
  そう分かると同時に俺は崩れ落ちた。
 「はぁはぁはぁ、やった……助かった。はぁはぁ、助かったぞ」
  その場に大の字に仰向けになる。
  やっぱりここは俺たちの元居た世界じゃないのか?遥に告白した後のあの光……あの光で別の世界にワープしてきたのか?
  分からん……分からんが……
「遥」
  ついでに彼方。
  俺は立ち上がる。
  二人は無事なのか、早く二人を探さないと。
  そうして俺は一人歩き出すのだった。

  歩いている最中、ふと見上げた夜空。
  偶然なのか、夜空を走る三つの流れ星。
  月が二つあるくらいだ。流れ星が三つ流れていても不思議じゃない。つまりこれは……計三つの願い事が出来るのだ!!
 「遥とついでに彼方が無事でありますように!!遥とついでに彼方が無事でありますように!!遥とついでに彼方が無事でありますように!!遥の記憶が戻りますように!!遥の記憶が戻りますように!!遥の記憶が戻りますように!!彼方が邪魔せず遥とイチャイチャちゅっちゅっ出来ますように!!彼方が邪魔せず遥とイチャイチャちゅっちゅっ出来ますように!!彼方が邪魔せず遥とイチャイチャちゅっちゅっ出来ますように!!」
  ふぅ、願掛けしてみたとこでまだ流れ星が残っているわけが……あるわ、これ。
  流れ星はまだ夜空に残っていた。こっちの流れ星はなかなか消えないのか……それどころかグルグル回ってんじゃん。
  そのうちの一つの流れ星が夜空に光の軌跡を残しクルクルと回っていた。まるで何かを探しているように。
  もしかしてアレ、なんか生き物とか飛行機的なヤツなのでは?
  やがて真っ直ぐ走る流れ星二つは別の方向へと消え、残りの一つ、クルクル回り流れ星はこっちに……
「……こっち?」
  流れ星がこっちに落ちてくる!!?
 「うおっ」
  反射的に体を丸め顔を伏せる。今度こそ死ぬかも知れん……と歯を食い縛るが、何の衝撃も無い。
  ゆっくり目を開けるが、やっぱりそこには何も無い。もちろん流れ星が落ちて来た形跡も全く無い。
  何なんだ……何なんだよ!!この世界は!!
  ビックリする事だらけで、何かもう腹が立つ!!
  ガサッ
「ひぃっ」
  ちょっと草木の揺れる音にビビる俺。
  おっかなビックリそこに視線を向けると。
 「あら?」
  そこには綺麗なお姉さんが立っていた。
  白い髪と黒い衣装、そして右目と左頬にある小さな刺青が印象的な綺麗なお姉さん。
  年齢的には二十代前半だろうか。
 「……あなた、こんな所で何をしているの?」
  人だ!!怪物じゃない!!話が出来る人!!
  外国人っぽいけど日本語が通じる!!
 「あのですね、その、迷子です!!」
 「迷子?こんな所で?」
 「実はここが何処かすら分からなくて。気を失って気付いたらここに居まして。ここは何処なんでしょうか?」
  お姉さんは近付き、俺の姿を観察する。
 「『海鳴国』の東、『花咲く森』よ。あまり見ない格好だけど、あなたは何処から来たのかしら?」
  格好……俺の姿は詰襟の学生服。
 「日本、ジャパンです」
 「ニホン……ジャパン……聞いた事のない土地ね」
 「あの、こんな事を言って信じて貰えるか分かりませんが、俺が元居た世界と、この世界、まったく別の世界みたいで……なんて説明すれば……」
  もしこれが逆の立場なら、俺は病院か警察に連絡をしていると思う。
  だがお姉さんは……
「私はフレイ。フレイ・フルランス。あなたは?」
 「暁です。藤倉暁」
 「そう。よろしくね、アキラ」
 「いえ、こちらこそ」
  安堵する。凄っい安堵する。人と話すのってこんなにも落ち着くのか……フレイさんが落ち着いた雰囲気があるのも理由だと思う。
 「……あっ」
  安堵とかしている場合じゃない!!」
 「どうしたの?」
 「フレイさん!!俺の友達も一緒に来ててはぐれちゃったんですよ!!なんかデカイ怪物に追い回されて、それで……」
 「異端者はやっぱり三人なのね……」
  それは呟くような小さな声。フレイさんは自分自身に言い聞かせるように言う。
  いたんしゃ?
 「ん、いや、よく分かりませんけど俺と同い年と一っこ下の姉妹なんです。一緒にこの世界に来てて、早く見付けてやらないと怪物に殺されちゃうかも知れないんです!!」
 「分かったわ。早く二人を見付けま……」
  その動きは突然だった。
  フレイさんが俺の胸倉を掴み、一瞬にして地面へと引き摺り倒す。
  その一瞬後、頭上をプロペラ音に似た轟音が掠めていった。
 「あれね。アキラが見た怪物って」
  俺は見た。音が通り過ぎた先を。
  そこにあった木々。大木とは言えないが、そこそこに大きく太い木々が数本、重い音と共に倒れていく。
  さらにその先、地面に突き刺さる巨大な戦斧。
  背筋が凍るとはまさにこの事だった。さっきの音は投げられた巨大な戦斧が頭を上を通り過ぎていく音。それが勢いのまま木々を薙ぎ倒したのだ。
  もしフレイさんが居なかったら……俺は今、確実に死んでいた。
  そして戦斧が投げられた方向に視線を向けると。
 「じょ、冗談だろ?」
  木々の間からあの巨躯の怪物が現れる。一体だけじゃない。各々が武器を持つあの怪物が何体も、何体も。
  もしかして本当は……
「やっぱり新手のコスプレイヤー?」
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