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第18話:どんどん追い詰められていきます
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「アンリ、そろそろ帰ろうか?」
「はい、帰りましょう」
やっとお茶から解放された。あんなに大好きだったエディソン様なのに、今は彼といると苦痛でしかない。そもそも、相手の気持ちを考えず時間があるたびに私の元にやってくるだなんて…て、私が1年半行って来たことと一緒の事を今されているのね…
自分がされてみて、いかに迷惑な事をしていたかを痛感した。
「それでは私はこれで」
少し離れた場所から心配そうに私を見つめているグレイズをチラリと見た。きっとグレイズの馬車に乗ったら、エディソン様から激しく抗議されるだろう。そう思い、自分の馬車に乗り込もうとしたのだが…
「アンリ、せっかくだから僕が送るよ。近々僕たちは婚約者同士になるのだし。それに、中々2人きりになれる事なんて今までなかっただろう。せっかくだからこの機会に、仲を深めよう」
そう言って私の馬車に乗り込もうとしたエディソン様。
「お待ちください。私達はまだ、正式に婚約を結んだわけではありません。私は1人で帰れますし、何より婚約を結んでから、仲を深めても遅くはないのではありませんか」
そう必死に訴えた。
「わかったよ。そうだね、一応今はまだ、グレイズの婚約者だものね。わかったよ、出来るだけ早く君と婚約を結び直せるように圧を掛けるから、安心して欲しい」
圧を掛けるだなんて…
お願い、これ以上私の家族に酷い事をしないで…
心の中で切実に呟く。もちろん、聞こえる訳がないが…
「それでは失礼いたします」
ペコリとエディソン様に頭を下げ、馬車に乗り込む。さすがに今日は疲れたわ。馬車の中でウトウトとしていると、屋敷に着いた。
屋敷に入るや否や、暗い顔のお母様が。
「お母様、どうしましたの?」
心配してお母様に駆け寄った。すると
「何でもないのよ…さあ、もうすぐお父様も帰ってくるわ。着替えてご飯にしましょう」
そう言って笑ったお母様。
「もしかして、誰かに私の事で何か言われたのですか?」
お母様は結構顔に出るタイプなので、すぐにわかるのだ。
「本当に何でもないのよ。あなたは気にしなくていいわ。ほら、早く着替えていらっしゃい」
そう言って、お母様が私の背中を押す。気になりつつも、急いで着替えを済ませ、食事をする。食後、グレイズが来たので、2人でお茶をする事にした。
「グレイズ、今日は色々とごめんなさい。あなたには随分と負担をかけてしまったわね」
「何を言っているんだ。アンリこそ、今日はかなり疲れただろう。マッキーノ侯爵令息は、どうやら何が何でもアンリとの婚約を結びたい様だな。昔のアンリの様に、時間を見つけてはアンリを追いかけまわして。マッキーノ侯爵令息の場合、俺たちより爵位が高いから、本当にたちが悪い。アンリ、こっちにおいで」
そう言うと、グレイズが私を抱き寄せた。グレイズの匂いがする、それに、温かい…やっぱりグレイズの腕の中は落ち着く。
「今日はずっとマッキーノ侯爵令息がいたから、こうやってアンリに触れられなかっただろう?俺、結構寂しかったんだぞ」
「ごめんね、私も寂しかったわ…」
「アンリ、さっきマッキーノ侯爵が家に来たんだ…“慰謝料は通常の10倍払うから、どうか婚約破棄をして欲しい“と言われたよ…さすがに俺の両親も断れなかったみたいでさ…なあ、アンリ。近々国を出よう。両親に迷惑を掛けたくないというお前の気持ちもわかる。でも、これ以上悠長な事を言っていたら、きっと俺たちは一緒になれない。俺も急ピッチで準備を進める。だから、どうか付いて来て欲しい」
真っすぐ私を見つめるグレイズ。
知っている…
この瞳は、冗談を言っているのではないと。真剣に私を連れて、国を出ようと考えているのだろう。でも…
私の為に、グレイズにしなくてもいい苦労をさせてもいいのかしら?このまま私と婚約破棄をすれば、グレイズはきっと他の令嬢と結婚して、伯爵として安定した生活を送れるだろう。
グレイズが他の令嬢と結婚するなんて、物凄く嫌だけれど…でも…
グレイズの幸せを考えたら、その方がいいのかもしれない…
「アンリ、とにかく俺は国を出る準備を進めるから、お前も身の回りの事だけは出来る様にしておけよ。それじゃあ、俺はもう帰るわ。万が一マッキーノ侯爵令息に俺がお前の家に来て居る事がバレたら、面倒だからな」
そう言って部屋から出て行ったグレイズ。そんなグレイズの後ろ姿を、私はただ見つめ続ける事しかできなかったのだった。
「はい、帰りましょう」
やっとお茶から解放された。あんなに大好きだったエディソン様なのに、今は彼といると苦痛でしかない。そもそも、相手の気持ちを考えず時間があるたびに私の元にやってくるだなんて…て、私が1年半行って来たことと一緒の事を今されているのね…
自分がされてみて、いかに迷惑な事をしていたかを痛感した。
「それでは私はこれで」
少し離れた場所から心配そうに私を見つめているグレイズをチラリと見た。きっとグレイズの馬車に乗ったら、エディソン様から激しく抗議されるだろう。そう思い、自分の馬車に乗り込もうとしたのだが…
「アンリ、せっかくだから僕が送るよ。近々僕たちは婚約者同士になるのだし。それに、中々2人きりになれる事なんて今までなかっただろう。せっかくだからこの機会に、仲を深めよう」
そう言って私の馬車に乗り込もうとしたエディソン様。
「お待ちください。私達はまだ、正式に婚約を結んだわけではありません。私は1人で帰れますし、何より婚約を結んでから、仲を深めても遅くはないのではありませんか」
そう必死に訴えた。
「わかったよ。そうだね、一応今はまだ、グレイズの婚約者だものね。わかったよ、出来るだけ早く君と婚約を結び直せるように圧を掛けるから、安心して欲しい」
圧を掛けるだなんて…
お願い、これ以上私の家族に酷い事をしないで…
心の中で切実に呟く。もちろん、聞こえる訳がないが…
「それでは失礼いたします」
ペコリとエディソン様に頭を下げ、馬車に乗り込む。さすがに今日は疲れたわ。馬車の中でウトウトとしていると、屋敷に着いた。
屋敷に入るや否や、暗い顔のお母様が。
「お母様、どうしましたの?」
心配してお母様に駆け寄った。すると
「何でもないのよ…さあ、もうすぐお父様も帰ってくるわ。着替えてご飯にしましょう」
そう言って笑ったお母様。
「もしかして、誰かに私の事で何か言われたのですか?」
お母様は結構顔に出るタイプなので、すぐにわかるのだ。
「本当に何でもないのよ。あなたは気にしなくていいわ。ほら、早く着替えていらっしゃい」
そう言って、お母様が私の背中を押す。気になりつつも、急いで着替えを済ませ、食事をする。食後、グレイズが来たので、2人でお茶をする事にした。
「グレイズ、今日は色々とごめんなさい。あなたには随分と負担をかけてしまったわね」
「何を言っているんだ。アンリこそ、今日はかなり疲れただろう。マッキーノ侯爵令息は、どうやら何が何でもアンリとの婚約を結びたい様だな。昔のアンリの様に、時間を見つけてはアンリを追いかけまわして。マッキーノ侯爵令息の場合、俺たちより爵位が高いから、本当にたちが悪い。アンリ、こっちにおいで」
そう言うと、グレイズが私を抱き寄せた。グレイズの匂いがする、それに、温かい…やっぱりグレイズの腕の中は落ち着く。
「今日はずっとマッキーノ侯爵令息がいたから、こうやってアンリに触れられなかっただろう?俺、結構寂しかったんだぞ」
「ごめんね、私も寂しかったわ…」
「アンリ、さっきマッキーノ侯爵が家に来たんだ…“慰謝料は通常の10倍払うから、どうか婚約破棄をして欲しい“と言われたよ…さすがに俺の両親も断れなかったみたいでさ…なあ、アンリ。近々国を出よう。両親に迷惑を掛けたくないというお前の気持ちもわかる。でも、これ以上悠長な事を言っていたら、きっと俺たちは一緒になれない。俺も急ピッチで準備を進める。だから、どうか付いて来て欲しい」
真っすぐ私を見つめるグレイズ。
知っている…
この瞳は、冗談を言っているのではないと。真剣に私を連れて、国を出ようと考えているのだろう。でも…
私の為に、グレイズにしなくてもいい苦労をさせてもいいのかしら?このまま私と婚約破棄をすれば、グレイズはきっと他の令嬢と結婚して、伯爵として安定した生活を送れるだろう。
グレイズが他の令嬢と結婚するなんて、物凄く嫌だけれど…でも…
グレイズの幸せを考えたら、その方がいいのかもしれない…
「アンリ、とにかく俺は国を出る準備を進めるから、お前も身の回りの事だけは出来る様にしておけよ。それじゃあ、俺はもう帰るわ。万が一マッキーノ侯爵令息に俺がお前の家に来て居る事がバレたら、面倒だからな」
そう言って部屋から出て行ったグレイズ。そんなグレイズの後ろ姿を、私はただ見つめ続ける事しかできなかったのだった。
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