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本編
第25話:ゾマー帝国に戻るつもりはありません
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「シャーロット様、結論から言います。どうか、ゾマー帝国にお戻りください!」
ビーディズッヒ侯爵は、急に突拍子もないことを言って来た。
「何を言っているんだ、お前!シャーロットが自国でどんな酷い目に遭って来たのか知っていて、よくもそんな恐ろしいことを言えるな!シャーロットは渡さないぞ!そんなふざけた話なら、今すぐ出て行ってくれ!」
アイラン様はものすごい剣幕で、ビーディズッヒ侯爵に詰め寄る。アルテミル様も、鬼の形相で睨んでいる。
「ビーディズッヒ侯爵、私は死刑囚です。殺されると分かっていて、おいそれとゾマー帝国に戻るつもりはありません!」
私もはっきりと侯爵に伝えた。
「皆様、落ち着いてください!!結論から申したのがいけなかったんですね。とにかく私の話をどうか聞いてください」
ビーディズッヒ侯爵が慌てて叫ぶが
「うるさい!シャーロットは渡さない!とにかくこの男をつまみ出せ!」
アイラン様の指示で、護衛騎士に両脇を固められたビーディズッヒ侯爵は、部屋の外へと連れ出されそうになる。
「離してください!手荒な真似はしたくありません!」
ビーディズッヒ侯爵が再び叫んだ。手荒な真似?まさか、ここで魔力を使う気じゃないでしょうね!彼は魔術師、魔力を使われたら騎士たちは一溜りもないわ。
「護衛騎士の方、彼を離して!」
私は慌てて騎士に向かって叫ぶ。
「シャーロット!何を考えているんだ!」
アイラン様が声を荒げるが、今は侯爵を開放するのが先決だ。
「アイラン様、彼はゾマー帝国でも優秀な魔術師です。ここで、魔力を使われては一溜りもありません。とにかく、彼の話を聞きましょう」
私の言葉にハッとしたアイラン様。
「わかった。ビーディズッヒ侯爵と言ったな!話を聞こう」
そう言うと、侯爵を席に着かせた。
アイラン様は私の腰にしっかり手を回している。私は腰に回していない方のアイラン様の手を握った。正直、今からどんな話をされるのか不安で、アイラン様に触れていないと落ち着けない自信があったからだ。
「ありがとうございます!シャーロット様、あなたを陥れていた聖女、エミリー・コックスは一族共々処刑されました!」
「え、どういうことなの?」
「エミリー・コックスは、法律で禁止されている禁断の魔法、“魅力魔法”を使い、あなたのお父上や兄上、さらに国王陛下や王太子殿下まで虜にしたのです。そして、唯一あなたに味方していた王妃様には、“呪い魔法”をかけたのです。本当に恐ろしい女だ」
そんな…
「でも、なぜエミリー様が禁断魔法を使っていたと分かったの?」
そもそも禁断魔法を使ったことがバレれば、一族皆極刑に処される。そのため、行うなら絶対にバレないように行うはずだ。その証拠に、お父様やお兄様、殿下も完全にエミリー様の虜になっていたわ!
「それはシャーロット様。あなたによって禁断魔法が打ち破られたからです。シャーロット様が投獄されたあの日、あなたは魔力を放出して死のうとしましたね?その放出された魔力が、国中に広がり、エミリー・コックスの掛けた禁断魔法をも打ち破ったのです」
「私、かなりの魔力を放出したと思うんだけれど、王宮は無事だったの?」
私はずっと気になっていたことを聞いた。
「王宮自体は何ともありませんでした。シャーロット様の放った魔力は、温かな光の様なもので、まさに聖女の光そのものでした」
でた、聖女発言!そもそも、ゾマー帝国には聖女なんていないでしょう!もう、どいつもこいつも聖女聖女って!
「確かにシャーロットは聖女の様に素晴らしい女性だからな!それで、その禁断魔法だったか?が、打ち破られてからどうなったんだ?」
アイラン様、褒めていただけるのは嬉しいけれど、私は聖女じゃないわ。て、そんなことはどうでもいい。確かに、その後が気になる。私は、つい前のめりになってしまった。
「魅了魔法が解けたウィルソン公爵や令息、王太子殿下はひどく心を痛められ、すぐにシャーロット様を探すよう命令を下されました。さらに、コックス男爵家を片っ端から調べさせたことで、今回魅了魔法と呪い魔法が使われたことが分かったのです」
なるほど。そうだわ。王妃様はどうなったのかしら!
「王妃様は?王妃様の体調は戻ったのですか?」
「はい、王妃様も呪い魔法で体調を崩された為、今ではとても元気にしておられます。ただ、シャーロット様の事をすごく心配しておられます」
そう…でも、元気になられたのならば、よかったわ!
「シャーロット様、たとえ魅了魔法によって操られていたとしても、あなた様にしてしまったひどい仕打ちに、皆ひどく心を痛めております。特に、ウィルソン公爵は、爵位を息子に譲り、今は領地に引きこもっているそうです。ほとんど食事も摂らず、随分やせ細ってしまわれたと聞いております」
そんな…お父様…
「シャーロット様、どうかゾマー帝国にお戻りください!あなた様の事を皆心配しております!一目元気なお顔を見れば、お父上様もきっとお元気になられるかと」
あんなに元気だったお父様が!でも、私にはアイラン様がいるわ。この国を離れる気はない。
「シャーロット、俺の事は気にせず、一度国に帰って元気な姿を見せてあげたらどうだい?」
相変わらずアイラン様は優しいわ。でも、私の心はもう決まっている。
「ビーディズッヒ侯爵、申し訳ございませんが私は国に戻るつもりはありません。そもそも、私はあの日、あの場所で命を捨てました。そんな私を助けてくれたのが、このフェミニア王国の国王、アイラン様と王女のオルビア様です。
私は、これからずっとこの国で生きていくと決めました。3ヶ月後には、アイラン様と結婚する予定です」
「シャーロット様!」
「シャーロット!」
アイラン様とビーディズッヒ侯爵が同時に声をあげた。でも私は何と言われようと、この国を出る気はない。
「ビーディズッヒ侯爵、今日はここに泊まっていっていただけますか?父達に手紙や映像型通信機を渡したいので。私達魔力持ちは、離れていてもお互い映像型通信機で連絡を取り合うことも可能ですから」
わざわざ私がゾマー帝国に行かなくても、話したい人とは通信機があればいつでも話せる。もちろん、画面を通じてお互いの顔を見ることも可能だ。
「わかりました。シャーロット様がそうおっしゃるなら、私からはこれ以上何も申し上げることはございません」
「シャーロット、本当にゾマー帝国に帰らなくてもいいのか?」
アイラン様が心配そうな顔で聞いて来る。
「はい、私は帰るつもりはございません。せっかくアイラン様と幸せな生活を送っているのです。私はもう、アイラン様と離れたくはないのです。先ほども話した通り、父とは映像型通信機で連絡を取ることも出来ます。どうしても会いたかったら、向こうから会いに来るでしょう」
戦争の後処理もひと段落し、やっとアイラン様と平穏な日々を取り戻したのだ。わざわざ自分から離れるなんてこと、したくない。それに、ゾマー帝国に帰ると、きっと辛かった時の記憶が戻りそうで怖い。それならば、国には帰らない方がいいと私は思ったのだ。
「シャーロット、君って人は!わかった!そうだ、君の父上や兄上も俺たちの結婚式に呼ぼう。後、挨拶もしたいから、通信する時は俺も同席しても良いかな?」
「もちろんです。きっと父も兄も喜びますわ」
きっとお父様やお兄様もアイラン様を気に入るだろう。だって、こんなに素敵な人なんですもの。
「お2人は本当に愛し合っているのですね」
少し困ったような顔で言ったビーディズッヒ侯爵。何であんな顔をするのだろう?
「シャーロット様、エミリー・コックスによって、あなたはゾマー帝国で幸せになる権利を奪われました。どうか、フェミニア王国で幸せになれることを、私も願っております」
「ありがとうございます、ビーディズッヒ侯爵。私、必ず幸せになります」
私の言葉に、やはり少し困った顔で頷いたビーディズッヒ侯爵。
そして翌日、私はビーディズッヒ侯爵にお父様と王妃様に宛てた手紙、お父様にはさらに映像型通信機と私の魔力入りの水晶を渡してもらう様にお願いした。
「確かにお預かりいたしました。必ずお渡しいたしますね」
そう言うと、ビーディズッヒ侯爵は姿を消した。
「おい、あの男、姿を消したぞ!どこに行ったんだ?」
私と一緒に見送りに来ていたアイラン様がびっくりして声をあげた。後ろに控えている使用人たちも、目を丸くしている。
「アイラン様、あれが転移魔法ですわ。多分、1回ではゾマー帝国には帰れないでしょうから、いくつかの国を経由し、数日かけて帰るのでしょう」
「なるほど、あれが転移魔法というものか!それにしても、いとも簡単に移動が出来るのだな。シャーロットも俺から離れようと思えば、簡単に離れられるのか…」
ん?なぜそんな話になるのかしら?
「アイラン様、私は誰が何と言おうと、アイラン様から離れる気はございませんので!」
私はアイラン様にギューッと抱き着きながら、そう伝えた。
「わかっている。ちょっと言ってみただけだ。シャーロット、愛しているよ!2人で必ず幸せになろう」
そう言うと、アイラン様もギューッと抱きしめ返してくれた。
「はい、もちろんです」
3ヶ月後にはいよいよ私たちの結婚式だ!アイランの腕の中で幸せを噛みしめているシャーロットには、この後待ち受ける新たな試練を知る由もなかった。
~あとがき~
~ビーディズッヒ侯爵が来た日のオルビアとアルテミルの会話~
「今日シャーロットちゃんの故郷、ゾマー帝国から魔術師が来たよ」
「えっ!それで、シャーロットは無事なの?」
「ああ、その魔術師の話では、なんかの魔法によって、シャーロットちゃんの家族や国王、王太子は操られていた様なんだ。でも、その魔法も解け、皆が正気に戻ったんだってよ。それで、皆心を痛めているから、シャーロットちゃんに帰ってきて欲しいって言いに来た」
「なんですって!何よそれ!散々シャーロットを傷つけておいて、バカにするのも大概にして欲しいわ!」
怒り狂うオルビア。
「確かにそうなんだが…特にシャーロットちゃんのお父さんがひどくショックを受けているみたいで。食事もろくに取らずやせ細ってしまったそうなんだよ」
「まあ、それは気の毒ね。それで、シャーロットはどうするって言ったの?」
「シャーロットちゃんは国には帰らないとはっきりと言ったよ。アイランと離れたくないんだとさ」
「そう、それは良かったわ。今のお兄様にはシャーロットが全てですもの。あの子がいなくなったら、お兄様、どうなるかわからないものね」
ほっと、胸をなでおろすオルビア。いつもは文句ばかり言っているオルビア、実はめちゃくちゃ兄想いなのです。
ビーディズッヒ侯爵は、急に突拍子もないことを言って来た。
「何を言っているんだ、お前!シャーロットが自国でどんな酷い目に遭って来たのか知っていて、よくもそんな恐ろしいことを言えるな!シャーロットは渡さないぞ!そんなふざけた話なら、今すぐ出て行ってくれ!」
アイラン様はものすごい剣幕で、ビーディズッヒ侯爵に詰め寄る。アルテミル様も、鬼の形相で睨んでいる。
「ビーディズッヒ侯爵、私は死刑囚です。殺されると分かっていて、おいそれとゾマー帝国に戻るつもりはありません!」
私もはっきりと侯爵に伝えた。
「皆様、落ち着いてください!!結論から申したのがいけなかったんですね。とにかく私の話をどうか聞いてください」
ビーディズッヒ侯爵が慌てて叫ぶが
「うるさい!シャーロットは渡さない!とにかくこの男をつまみ出せ!」
アイラン様の指示で、護衛騎士に両脇を固められたビーディズッヒ侯爵は、部屋の外へと連れ出されそうになる。
「離してください!手荒な真似はしたくありません!」
ビーディズッヒ侯爵が再び叫んだ。手荒な真似?まさか、ここで魔力を使う気じゃないでしょうね!彼は魔術師、魔力を使われたら騎士たちは一溜りもないわ。
「護衛騎士の方、彼を離して!」
私は慌てて騎士に向かって叫ぶ。
「シャーロット!何を考えているんだ!」
アイラン様が声を荒げるが、今は侯爵を開放するのが先決だ。
「アイラン様、彼はゾマー帝国でも優秀な魔術師です。ここで、魔力を使われては一溜りもありません。とにかく、彼の話を聞きましょう」
私の言葉にハッとしたアイラン様。
「わかった。ビーディズッヒ侯爵と言ったな!話を聞こう」
そう言うと、侯爵を席に着かせた。
アイラン様は私の腰にしっかり手を回している。私は腰に回していない方のアイラン様の手を握った。正直、今からどんな話をされるのか不安で、アイラン様に触れていないと落ち着けない自信があったからだ。
「ありがとうございます!シャーロット様、あなたを陥れていた聖女、エミリー・コックスは一族共々処刑されました!」
「え、どういうことなの?」
「エミリー・コックスは、法律で禁止されている禁断の魔法、“魅力魔法”を使い、あなたのお父上や兄上、さらに国王陛下や王太子殿下まで虜にしたのです。そして、唯一あなたに味方していた王妃様には、“呪い魔法”をかけたのです。本当に恐ろしい女だ」
そんな…
「でも、なぜエミリー様が禁断魔法を使っていたと分かったの?」
そもそも禁断魔法を使ったことがバレれば、一族皆極刑に処される。そのため、行うなら絶対にバレないように行うはずだ。その証拠に、お父様やお兄様、殿下も完全にエミリー様の虜になっていたわ!
「それはシャーロット様。あなたによって禁断魔法が打ち破られたからです。シャーロット様が投獄されたあの日、あなたは魔力を放出して死のうとしましたね?その放出された魔力が、国中に広がり、エミリー・コックスの掛けた禁断魔法をも打ち破ったのです」
「私、かなりの魔力を放出したと思うんだけれど、王宮は無事だったの?」
私はずっと気になっていたことを聞いた。
「王宮自体は何ともありませんでした。シャーロット様の放った魔力は、温かな光の様なもので、まさに聖女の光そのものでした」
でた、聖女発言!そもそも、ゾマー帝国には聖女なんていないでしょう!もう、どいつもこいつも聖女聖女って!
「確かにシャーロットは聖女の様に素晴らしい女性だからな!それで、その禁断魔法だったか?が、打ち破られてからどうなったんだ?」
アイラン様、褒めていただけるのは嬉しいけれど、私は聖女じゃないわ。て、そんなことはどうでもいい。確かに、その後が気になる。私は、つい前のめりになってしまった。
「魅了魔法が解けたウィルソン公爵や令息、王太子殿下はひどく心を痛められ、すぐにシャーロット様を探すよう命令を下されました。さらに、コックス男爵家を片っ端から調べさせたことで、今回魅了魔法と呪い魔法が使われたことが分かったのです」
なるほど。そうだわ。王妃様はどうなったのかしら!
「王妃様は?王妃様の体調は戻ったのですか?」
「はい、王妃様も呪い魔法で体調を崩された為、今ではとても元気にしておられます。ただ、シャーロット様の事をすごく心配しておられます」
そう…でも、元気になられたのならば、よかったわ!
「シャーロット様、たとえ魅了魔法によって操られていたとしても、あなた様にしてしまったひどい仕打ちに、皆ひどく心を痛めております。特に、ウィルソン公爵は、爵位を息子に譲り、今は領地に引きこもっているそうです。ほとんど食事も摂らず、随分やせ細ってしまわれたと聞いております」
そんな…お父様…
「シャーロット様、どうかゾマー帝国にお戻りください!あなた様の事を皆心配しております!一目元気なお顔を見れば、お父上様もきっとお元気になられるかと」
あんなに元気だったお父様が!でも、私にはアイラン様がいるわ。この国を離れる気はない。
「シャーロット、俺の事は気にせず、一度国に帰って元気な姿を見せてあげたらどうだい?」
相変わらずアイラン様は優しいわ。でも、私の心はもう決まっている。
「ビーディズッヒ侯爵、申し訳ございませんが私は国に戻るつもりはありません。そもそも、私はあの日、あの場所で命を捨てました。そんな私を助けてくれたのが、このフェミニア王国の国王、アイラン様と王女のオルビア様です。
私は、これからずっとこの国で生きていくと決めました。3ヶ月後には、アイラン様と結婚する予定です」
「シャーロット様!」
「シャーロット!」
アイラン様とビーディズッヒ侯爵が同時に声をあげた。でも私は何と言われようと、この国を出る気はない。
「ビーディズッヒ侯爵、今日はここに泊まっていっていただけますか?父達に手紙や映像型通信機を渡したいので。私達魔力持ちは、離れていてもお互い映像型通信機で連絡を取り合うことも可能ですから」
わざわざ私がゾマー帝国に行かなくても、話したい人とは通信機があればいつでも話せる。もちろん、画面を通じてお互いの顔を見ることも可能だ。
「わかりました。シャーロット様がそうおっしゃるなら、私からはこれ以上何も申し上げることはございません」
「シャーロット、本当にゾマー帝国に帰らなくてもいいのか?」
アイラン様が心配そうな顔で聞いて来る。
「はい、私は帰るつもりはございません。せっかくアイラン様と幸せな生活を送っているのです。私はもう、アイラン様と離れたくはないのです。先ほども話した通り、父とは映像型通信機で連絡を取ることも出来ます。どうしても会いたかったら、向こうから会いに来るでしょう」
戦争の後処理もひと段落し、やっとアイラン様と平穏な日々を取り戻したのだ。わざわざ自分から離れるなんてこと、したくない。それに、ゾマー帝国に帰ると、きっと辛かった時の記憶が戻りそうで怖い。それならば、国には帰らない方がいいと私は思ったのだ。
「シャーロット、君って人は!わかった!そうだ、君の父上や兄上も俺たちの結婚式に呼ぼう。後、挨拶もしたいから、通信する時は俺も同席しても良いかな?」
「もちろんです。きっと父も兄も喜びますわ」
きっとお父様やお兄様もアイラン様を気に入るだろう。だって、こんなに素敵な人なんですもの。
「お2人は本当に愛し合っているのですね」
少し困ったような顔で言ったビーディズッヒ侯爵。何であんな顔をするのだろう?
「シャーロット様、エミリー・コックスによって、あなたはゾマー帝国で幸せになる権利を奪われました。どうか、フェミニア王国で幸せになれることを、私も願っております」
「ありがとうございます、ビーディズッヒ侯爵。私、必ず幸せになります」
私の言葉に、やはり少し困った顔で頷いたビーディズッヒ侯爵。
そして翌日、私はビーディズッヒ侯爵にお父様と王妃様に宛てた手紙、お父様にはさらに映像型通信機と私の魔力入りの水晶を渡してもらう様にお願いした。
「確かにお預かりいたしました。必ずお渡しいたしますね」
そう言うと、ビーディズッヒ侯爵は姿を消した。
「おい、あの男、姿を消したぞ!どこに行ったんだ?」
私と一緒に見送りに来ていたアイラン様がびっくりして声をあげた。後ろに控えている使用人たちも、目を丸くしている。
「アイラン様、あれが転移魔法ですわ。多分、1回ではゾマー帝国には帰れないでしょうから、いくつかの国を経由し、数日かけて帰るのでしょう」
「なるほど、あれが転移魔法というものか!それにしても、いとも簡単に移動が出来るのだな。シャーロットも俺から離れようと思えば、簡単に離れられるのか…」
ん?なぜそんな話になるのかしら?
「アイラン様、私は誰が何と言おうと、アイラン様から離れる気はございませんので!」
私はアイラン様にギューッと抱き着きながら、そう伝えた。
「わかっている。ちょっと言ってみただけだ。シャーロット、愛しているよ!2人で必ず幸せになろう」
そう言うと、アイラン様もギューッと抱きしめ返してくれた。
「はい、もちろんです」
3ヶ月後にはいよいよ私たちの結婚式だ!アイランの腕の中で幸せを噛みしめているシャーロットには、この後待ち受ける新たな試練を知る由もなかった。
~あとがき~
~ビーディズッヒ侯爵が来た日のオルビアとアルテミルの会話~
「今日シャーロットちゃんの故郷、ゾマー帝国から魔術師が来たよ」
「えっ!それで、シャーロットは無事なの?」
「ああ、その魔術師の話では、なんかの魔法によって、シャーロットちゃんの家族や国王、王太子は操られていた様なんだ。でも、その魔法も解け、皆が正気に戻ったんだってよ。それで、皆心を痛めているから、シャーロットちゃんに帰ってきて欲しいって言いに来た」
「なんですって!何よそれ!散々シャーロットを傷つけておいて、バカにするのも大概にして欲しいわ!」
怒り狂うオルビア。
「確かにそうなんだが…特にシャーロットちゃんのお父さんがひどくショックを受けているみたいで。食事もろくに取らずやせ細ってしまったそうなんだよ」
「まあ、それは気の毒ね。それで、シャーロットはどうするって言ったの?」
「シャーロットちゃんは国には帰らないとはっきりと言ったよ。アイランと離れたくないんだとさ」
「そう、それは良かったわ。今のお兄様にはシャーロットが全てですもの。あの子がいなくなったら、お兄様、どうなるかわからないものね」
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