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第1話:彼はどうしても私を受け入れてくれない様です
「アンジュ、スィークルン侯爵、本当に申し訳ないが、今はまだアンジュと婚約する事は出来ません」
そう言って頭を下げるのは、侯爵令息で幼馴染のデイビッド・サフィーレイズ様だ。銀色の髪に緑色の瞳をした美男子。親同士が仲良しだったこともあり、子供の頃からずっと一緒だったデイビッド様。そんな彼が、私は大好きなのだ。
「デイビッド殿、アンジュはもう16歳です。来年には貴族学院も卒業します。今はまだとは、一体どういう意味ですか?アンジュはと今後も婚約をするつもりはないという事ですか?」
「侯爵の言う通りだ。今はまだとは一体どういう意味だ?アンジュ嬢だってずっと待っていてくれる訳ではない。いい加減、腹をくくりなさい」
傍で見守ってくれていた私の父親とデイビッド様のお父様も、困惑顔で問いかけている。でも…
「ですから、俺はアンジュとは婚約できないと言っているでしょう。とにかく、これ以上話をするつもりはありません。どうかお引き取り下さい」
そう言うと、デイビッド様は部屋から出て行ってしまった。
「侯爵、アンジュ嬢、本当にすまない。デイビッドは少し頑固なところがあって。でもきっとデイビッドもアンジュ嬢の事を大切に思っているはずなんだ。ただ、今は騎士団の仕事が楽しいみたいで…」
そう言って申し訳なさそうに、私たちに頭を下げるデイビッド様のお父様。
「こっちこそ、何度もしつこく押しかけてすまなかったね。今日は帰るよ。さあ、アンジュ、帰ろう」
お父様に言われて、侯爵家を後にする。
「アンジュ、いい加減デイビッド殿の事は諦めなさい。これで5度目のお断りだ。さすがにこれ以上、デイビッド殿に負担をかける訳にはいかない。きっと何度申し込んでも、断り続けられるだろう。侯爵も私の事を考えて、はっきりと断れないのだろう」
お父様にそう言われた。
屋敷に着くと、玄関では心配そうな顔のお母様と、弟のレイズがこちらを見ていたが、今は2人に顔を合わせる余裕はない。
急いで自室へと戻ってきた。部屋に入った瞬間、涙が込みあげてきた。デイビッド様とは物心ついた時からずっと一緒だった。
“アンジュは俺が絶対に守るからね”
その言葉通り、私の傍でずっと私を守ってきてくれた。デイビッド様が7歳で騎士団に入ってからも、毎日の様に我が家に来てくれていた。
そんな中、私たちが10歳の時、事件が起きた。デイビッド様含め、何人かの貴族たちと一緒に、ピクニックに行った時の事。話を聞きつた盗賊に襲われたのだ。
その時、私が盗賊に連れ去られそうになった時、私を必死に庇ってくれた。そのせいで、デイビッド様も一緒にさらわれてしまったのだ。
“アンジュ、泣かないで。俺が傍にいるから…”
恐怖で泣きじゃくる私を、ずっと抱きしめ慰めてくれたデイビッド様。この時私は、彼と何が何でも結婚したい、彼に釣り合う女性になろう。そう決意したのだ。
でも…
結局デイビッド様は、私を受け入れてはくれなかった。思い返してみれば、あの事件からデイビッド様は私に冷たくなった気がする…
彼はあの後、今まで以上に騎士団の稽古に取り組んでいる様で、私が話しかけても軽くあしらわれる様になった。どうやら騎士団長を目指している様で、現騎士団長の娘でもある、ラミネス様とよく話をしている姿を見かける。
自分でももう分かっている、私がどれほどデイビッド様を愛しても、彼は振り向いてくれないという事を。それでもなんとかデイビッドに振り向いて欲しくて、自分なりに必死に頑張って来た。
でも…
「もう潮時かもしれないわね…」
何度も何度もデイビッド様に気持ちを伝え続けた。お父様と一緒に、5度もデイビッド様のお家に婚約をしたい旨を伝えに行った。
でも、そのたびに拒否され続けて来た。
お父様からも、次に断られたらすっぱりと諦めなさい、と言われていた。それに何よりも、もうこれ以上傷つきたくはない…断られ続けるために、私の心はナイフで刺されたような苦しみに襲われてきたのだ。
それに何よりも、これ以上デイビッド様に迷惑を掛けられないものね…
きっと苦しくてどうしようもないほど辛いだろうけれど、それでも私は、彼を諦めよう。
そう決意したのだった。
~あとがき~
新連載始めました。
少し長めのお話しです。
よろしくお願いします。
そう言って頭を下げるのは、侯爵令息で幼馴染のデイビッド・サフィーレイズ様だ。銀色の髪に緑色の瞳をした美男子。親同士が仲良しだったこともあり、子供の頃からずっと一緒だったデイビッド様。そんな彼が、私は大好きなのだ。
「デイビッド殿、アンジュはもう16歳です。来年には貴族学院も卒業します。今はまだとは、一体どういう意味ですか?アンジュはと今後も婚約をするつもりはないという事ですか?」
「侯爵の言う通りだ。今はまだとは一体どういう意味だ?アンジュ嬢だってずっと待っていてくれる訳ではない。いい加減、腹をくくりなさい」
傍で見守ってくれていた私の父親とデイビッド様のお父様も、困惑顔で問いかけている。でも…
「ですから、俺はアンジュとは婚約できないと言っているでしょう。とにかく、これ以上話をするつもりはありません。どうかお引き取り下さい」
そう言うと、デイビッド様は部屋から出て行ってしまった。
「侯爵、アンジュ嬢、本当にすまない。デイビッドは少し頑固なところがあって。でもきっとデイビッドもアンジュ嬢の事を大切に思っているはずなんだ。ただ、今は騎士団の仕事が楽しいみたいで…」
そう言って申し訳なさそうに、私たちに頭を下げるデイビッド様のお父様。
「こっちこそ、何度もしつこく押しかけてすまなかったね。今日は帰るよ。さあ、アンジュ、帰ろう」
お父様に言われて、侯爵家を後にする。
「アンジュ、いい加減デイビッド殿の事は諦めなさい。これで5度目のお断りだ。さすがにこれ以上、デイビッド殿に負担をかける訳にはいかない。きっと何度申し込んでも、断り続けられるだろう。侯爵も私の事を考えて、はっきりと断れないのだろう」
お父様にそう言われた。
屋敷に着くと、玄関では心配そうな顔のお母様と、弟のレイズがこちらを見ていたが、今は2人に顔を合わせる余裕はない。
急いで自室へと戻ってきた。部屋に入った瞬間、涙が込みあげてきた。デイビッド様とは物心ついた時からずっと一緒だった。
“アンジュは俺が絶対に守るからね”
その言葉通り、私の傍でずっと私を守ってきてくれた。デイビッド様が7歳で騎士団に入ってからも、毎日の様に我が家に来てくれていた。
そんな中、私たちが10歳の時、事件が起きた。デイビッド様含め、何人かの貴族たちと一緒に、ピクニックに行った時の事。話を聞きつた盗賊に襲われたのだ。
その時、私が盗賊に連れ去られそうになった時、私を必死に庇ってくれた。そのせいで、デイビッド様も一緒にさらわれてしまったのだ。
“アンジュ、泣かないで。俺が傍にいるから…”
恐怖で泣きじゃくる私を、ずっと抱きしめ慰めてくれたデイビッド様。この時私は、彼と何が何でも結婚したい、彼に釣り合う女性になろう。そう決意したのだ。
でも…
結局デイビッド様は、私を受け入れてはくれなかった。思い返してみれば、あの事件からデイビッド様は私に冷たくなった気がする…
彼はあの後、今まで以上に騎士団の稽古に取り組んでいる様で、私が話しかけても軽くあしらわれる様になった。どうやら騎士団長を目指している様で、現騎士団長の娘でもある、ラミネス様とよく話をしている姿を見かける。
自分でももう分かっている、私がどれほどデイビッド様を愛しても、彼は振り向いてくれないという事を。それでもなんとかデイビッドに振り向いて欲しくて、自分なりに必死に頑張って来た。
でも…
「もう潮時かもしれないわね…」
何度も何度もデイビッド様に気持ちを伝え続けた。お父様と一緒に、5度もデイビッド様のお家に婚約をしたい旨を伝えに行った。
でも、そのたびに拒否され続けて来た。
お父様からも、次に断られたらすっぱりと諦めなさい、と言われていた。それに何よりも、もうこれ以上傷つきたくはない…断られ続けるために、私の心はナイフで刺されたような苦しみに襲われてきたのだ。
それに何よりも、これ以上デイビッド様に迷惑を掛けられないものね…
きっと苦しくてどうしようもないほど辛いだろうけれど、それでも私は、彼を諦めよう。
そう決意したのだった。
~あとがき~
新連載始めました。
少し長めのお話しです。
よろしくお願いします。
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