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第29話:皆変わっていません
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私が挨拶をすると、皆が一斉にこちらを振り向いた。
「おはようございます、アンジュ様。おかえりなさい」
「おかえり、アンジュ嬢」
皆が私の元にやって来て、挨拶をしてくれた。すると
「アンジュ、今日から学院に来始めたのだね。おはよう」
嬉しそうにこちらにやって来たのは、デイビッド様だ。その瞬間、友人たちが私を庇う様にデイビッド様の前に立った。
「おはようございます、デイビッド様。今日からまたこの学院に通う事になりましたので、よろしくお願いします」
そう伝え、頭を下げたのだ。
「ちょっと、アンジュ。あなた一体何を言っているの?こんな男、無視しておけばいいのよ」
「そうよ、一方的にアンジュを傷つけておいて、今更やり直したいだなんて、虫がいいにも程があるわ」
友人たちが次々と文句を言う。
「皆、私の為にありがとう。でもね、私、クラスメイトを無視するなんて出来ないわ。私ね、ミラージュ王国に留学してすぐの頃、皆に無視されていたことは手紙でも話したわよね。私がどんなに挨拶をしても、話しかけても無視されたの。それがどれほど辛いか…だから私、無視だけは絶対にしないと決めたのよ」
1ヶ月もの間、ずっと皆に無視されてきたのだ。それがどれほど辛いか、私は身をもって経験した。だからこそ、どんな相手にも無視だけはしたくないのだ。
「もう…アンジュったら…本当にお人好しなんだから。でも、私はそんなアンジュが大好きよ」
「私もよ。ミラージュ王国では、本当に辛い思いをしたのね。可哀そうに…」
「俺もそんなアンジュが大好きだよ!これからはアンジュに振り向いてもらえる様、全力を尽くしていくつもりだ。そうだ、これ、アンジュがいなかった分のノート。まとめておいたんだ」
ん?なぜかデイビッド様の声が。満面の笑みで、私にノートを差し出している。
「あ…ありがとうございます。でも、大丈夫ですわ。授業ならミラージュ王国でも受けておりましたし、ノートは友人たちがとってくれておりましたので…それから、これからはクラスメイトとして、お互い接していきましょう。それ以上でもそれ以下でもありませんから」
そうはっきりと告げた。やはりいう事は、はっきりと言っておかないといけないものね。
「そうだね、俺がした事を考えれば、クラスメイトとして接してもらえるだけで、今は十分幸せだと思わないと…」
何やらデイビッド様が、ブツブツと言っている。
そうだわ!忘れていた。
「これ、ミラージュ王国のお土産です」
クラスメイト達にもお土産を買って来たのだった。男性には運河をイメージした万年筆、女性には同じく運河をイメージしたブローチだ。
中に美しいお水が入っていて、ちょっと変わった作りになっている。
「こんな万年筆、初めて見た。でも、綺麗だな」
「このブローチも素敵よ。ありがとうございます、アンジュ様。大切にしますね」
どうやら皆、喜んでくれた様だ。ふとまわりを見ると、ポツンと立っているラミネス様の姿が。
「ラミネス様、よかったらこれ、どうぞ」
ラミネス様の傍に行き、ブローチを手渡した。でも…
「何よ、私への当てつけ?こんなもの、いらないわ」
そう言うと、自分の席に戻ってしまったラミネス様。私、もしかして嫌われている?
“ラミネス様は、デイビッド様と結婚すると皆に話していたでしょう。でも実際は、騎士団長もデイビッド様も、その事実を知らなかったのよ。さらにデイビッド様から、君とは結婚できないとはっきりフラれてもなお、縋りついた様で…その姿を騎士団員たちが目撃していたの。それで…”
なぜか言いにくそうにする友人のアリア。
“それで、どうなったの?”
“それで…騎士団員たちが、目撃したことを貴族たちに話した様で、すっかり噂の的になってしまって…さらにアンジュがデイビッド様の事を好きだったと知っていた令嬢たちからは、ラミネス様の嘘の情報のせいで、ショックを受けたアンジュが留学したのではないかと言われたりもして…それで今、ラミネス様は学院に居づらいみたいなの”
そうだったのね。デイビッド様と結婚するというのは、嘘だったなんて…
ふとラミネス様の方を見ると、なんだか寂しそうだ。その姿が、かつてのミラージュ王国での自分の姿と被る。
彼女に話し掛けようとそっと近づいた時だった。
「君たち、席に着いて下さい。おや?アンジュ・スィークルン嬢は、昨日帰国したと聞きましたが、もう学院に通っているのですね。もし疲れが溜まっているのでしたら、無理をする必要はありませんから、遠慮せずに休憩してください」
先生がやって来たので、急いで席に着いた。どうやら2年の時の担任の先生と同じようだ。せっかくなので、先生にもお土産を渡した。
ミラージュ王国の学院もとても楽しかったが、やはり母国の学院は落ち着く。7ヶ月ぶりの学院だったが、皆全く変わっていなくて安心した。
これからは自国で、沢山思い出を作っていこう。改めてそう思ったのだった。
「おはようございます、アンジュ様。おかえりなさい」
「おかえり、アンジュ嬢」
皆が私の元にやって来て、挨拶をしてくれた。すると
「アンジュ、今日から学院に来始めたのだね。おはよう」
嬉しそうにこちらにやって来たのは、デイビッド様だ。その瞬間、友人たちが私を庇う様にデイビッド様の前に立った。
「おはようございます、デイビッド様。今日からまたこの学院に通う事になりましたので、よろしくお願いします」
そう伝え、頭を下げたのだ。
「ちょっと、アンジュ。あなた一体何を言っているの?こんな男、無視しておけばいいのよ」
「そうよ、一方的にアンジュを傷つけておいて、今更やり直したいだなんて、虫がいいにも程があるわ」
友人たちが次々と文句を言う。
「皆、私の為にありがとう。でもね、私、クラスメイトを無視するなんて出来ないわ。私ね、ミラージュ王国に留学してすぐの頃、皆に無視されていたことは手紙でも話したわよね。私がどんなに挨拶をしても、話しかけても無視されたの。それがどれほど辛いか…だから私、無視だけは絶対にしないと決めたのよ」
1ヶ月もの間、ずっと皆に無視されてきたのだ。それがどれほど辛いか、私は身をもって経験した。だからこそ、どんな相手にも無視だけはしたくないのだ。
「もう…アンジュったら…本当にお人好しなんだから。でも、私はそんなアンジュが大好きよ」
「私もよ。ミラージュ王国では、本当に辛い思いをしたのね。可哀そうに…」
「俺もそんなアンジュが大好きだよ!これからはアンジュに振り向いてもらえる様、全力を尽くしていくつもりだ。そうだ、これ、アンジュがいなかった分のノート。まとめておいたんだ」
ん?なぜかデイビッド様の声が。満面の笑みで、私にノートを差し出している。
「あ…ありがとうございます。でも、大丈夫ですわ。授業ならミラージュ王国でも受けておりましたし、ノートは友人たちがとってくれておりましたので…それから、これからはクラスメイトとして、お互い接していきましょう。それ以上でもそれ以下でもありませんから」
そうはっきりと告げた。やはりいう事は、はっきりと言っておかないといけないものね。
「そうだね、俺がした事を考えれば、クラスメイトとして接してもらえるだけで、今は十分幸せだと思わないと…」
何やらデイビッド様が、ブツブツと言っている。
そうだわ!忘れていた。
「これ、ミラージュ王国のお土産です」
クラスメイト達にもお土産を買って来たのだった。男性には運河をイメージした万年筆、女性には同じく運河をイメージしたブローチだ。
中に美しいお水が入っていて、ちょっと変わった作りになっている。
「こんな万年筆、初めて見た。でも、綺麗だな」
「このブローチも素敵よ。ありがとうございます、アンジュ様。大切にしますね」
どうやら皆、喜んでくれた様だ。ふとまわりを見ると、ポツンと立っているラミネス様の姿が。
「ラミネス様、よかったらこれ、どうぞ」
ラミネス様の傍に行き、ブローチを手渡した。でも…
「何よ、私への当てつけ?こんなもの、いらないわ」
そう言うと、自分の席に戻ってしまったラミネス様。私、もしかして嫌われている?
“ラミネス様は、デイビッド様と結婚すると皆に話していたでしょう。でも実際は、騎士団長もデイビッド様も、その事実を知らなかったのよ。さらにデイビッド様から、君とは結婚できないとはっきりフラれてもなお、縋りついた様で…その姿を騎士団員たちが目撃していたの。それで…”
なぜか言いにくそうにする友人のアリア。
“それで、どうなったの?”
“それで…騎士団員たちが、目撃したことを貴族たちに話した様で、すっかり噂の的になってしまって…さらにアンジュがデイビッド様の事を好きだったと知っていた令嬢たちからは、ラミネス様の嘘の情報のせいで、ショックを受けたアンジュが留学したのではないかと言われたりもして…それで今、ラミネス様は学院に居づらいみたいなの”
そうだったのね。デイビッド様と結婚するというのは、嘘だったなんて…
ふとラミネス様の方を見ると、なんだか寂しそうだ。その姿が、かつてのミラージュ王国での自分の姿と被る。
彼女に話し掛けようとそっと近づいた時だった。
「君たち、席に着いて下さい。おや?アンジュ・スィークルン嬢は、昨日帰国したと聞きましたが、もう学院に通っているのですね。もし疲れが溜まっているのでしたら、無理をする必要はありませんから、遠慮せずに休憩してください」
先生がやって来たので、急いで席に着いた。どうやら2年の時の担任の先生と同じようだ。せっかくなので、先生にもお土産を渡した。
ミラージュ王国の学院もとても楽しかったが、やはり母国の学院は落ち着く。7ヶ月ぶりの学院だったが、皆全く変わっていなくて安心した。
これからは自国で、沢山思い出を作っていこう。改めてそう思ったのだった。
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