変わり者転生令嬢は国一番の美少年王子に溺愛される

Karamimi

文字の大きさ
1 / 51

第1話:変わり者令嬢と言われています

しおりを挟む
「お嬢様!お嬢様!」

お気に入りの場所で作業をしていると、私を呼ぶメイドの声が。

「ファリサ、私はここよ」

「お嬢様、またこんなことろにいらしたのですか?それに、またそんな変な服を着て!こんな生活を送っていらしているから、変り者令嬢と呼ばれるのです」

顔を真っ赤にして、ファリサが怒っている。

「あら、この服のどこが変なの?とても動きやすくて、作業がしやすいわ」

「あなた様は、侯爵令嬢なのですよ。そんな男性でも履かないような、緩んだズボンを履くだなんて。本当に嘆かわしい限りですわ」

そう言って頭を押さえているファリサ。もう、大げさなのだから。

「ファリサ、これはジャージと呼ばれる服よ。そもそもドレスじゃあ、ぬか床をかき回せられないでしょう。見て、とても美味しそうなぬか漬けが出来たわ。それに、味噌もいい感じで発酵しているし。本当に、これを作るのに何年かかったか…」

「何度も申し上げますが、あなた様は侯爵令嬢なのです。それなのに、そんなものを作るだなんて。とにかく、来週には貴族学院への入学が控えているのですよ。制服の最終確認をさせていただきますので、至急お部屋にお戻りください!」

そう言うと、プリプリと怒って、ファリサは屋敷内に戻っていった。そうか、来週には貴族学院に入学するのね…面倒な事この上ないわ…

重い足取りで、屋敷に戻る事にした。

私の名前は、ジュリア・スリーティス。スリーティス侯爵家の次女として産まれた私は、物心ついた時から、前世の記憶を持っている。前世の私は、お酒大好き、和食大好き、部屋着はジャージと言う、自由な生活を送っていた。見た目もあまり気にしないタイプだったため、男性と付き合った事などない。

一体どうして命を落としたのか分からないが、気が付いたら今の生になっていたという訳だ。

そもそも今世は、まるでアニメの世界に入り込んでしまった様な見た目を皆している。初めて自分の姿を見た時、びっくりして腰を抜かしそうになった。なんと、金色の髪にエメラルドグリーンの瞳をしていたのだ。それに、アニメ顔だし…

もちろん、メイドのファリサをはじめ、両親やお兄様、お姉様もアニメ顔。まさか自分がアニメの世界に入り込んでしまうなんて。それもこの国の男女は、皆美男美女ばかり。慣れるまで、本当に大変だった。

特に若い人たちは、まるで全員がヒーロー・ヒロインの様に美しい。はっきり言って、誰が誰なのかよく分からない。ずっと一緒にいれば、何となく見分けがつくのだが、たまにしか会わない人は、髪や瞳の色で見分ける様にしている。


その為、周りが“あの人素敵ね。とてもカッコいいわ!”と言っていても、正直よくわからない。だって、皆同じ美男美女なのですもの。

さらに前世の記憶が鮮明に残っている私は、とにかく日本食が恋しくてたまらない。この国では、主食はパンだ。毎日パンとスープが出る。もちろん美味しいのだが、私は米とお味噌汁、お新香が食べたいのだ。

でも、この国にはそんな物はない。最初はものすごく落ち込んだが、ないならそれに近い物を作ればいいじゃない!そう思いついた私は、侯爵令嬢という身分を利用し、早速米や大豆などを栽培している国を探させた。

そして、なんとかして手に入れた。久しぶりにお米を食べた時、涙が出るほど美味しかった。今では侯爵家の領地で、米や大豆の生産も行っている。でも、問題はみそ汁やお新香だ。特にみそ汁は、味噌を作るところから始めないといけない。その為、ものすごく苦労した。

それでも、研究に研究を重ね、やっとそれらしいものが出来たのだ。完成した時、嬉しくて皆で手を取り合ったものだ。

さらにドレスではなく、動きやすい格好をと、自前でジャージも作った。普段はジャージで生活する事も多い。

たまたま遊びに来ていたお兄様やお姉様の友人に、ジャージ姿を見られる事もしばしば。そのたびに、お母様やファリサが鬼のような顔で怒り狂うが、私は私、そう思って割り切っている。

もちろん、お茶会も興味がないため、ほとんど参加する事はない。でもそのせいで、私は社交界から変り者令嬢と呼ばれるようになってしまったが、それはそれで仕方がない。そもそも私はお茶会より、家でぐーたらしている方が好きなのだから。

ちなみに末娘という事もあり、お父様からは溺愛されている為、私の言う事は何でも聞いてくれる。

「ジュリアは好きな事をして過ごせばいいんだよ。もし結婚できなくても、お父様がずっと面倒を見てあげるからね」

そう言ってくれている。そんなお父様は、私の研究にも協力的で、私専属の料理人を雇ってくれたり、研究用に小さな建屋まで建ててくれたのだ。ただお母様は

「あなたは侯爵令嬢なのよ。お父様はああいっているけれど、いい加減令嬢らしくしなさい!」

と、耳にタコが出来るくらい言われる。その為、侯爵令嬢としてのマナーやダンスレッスンは、みっちりと受けさせられていた。まあ、日本人だった頃も学校や仕事はちゃんと行っていたし、こう見えて意外と根は真面目な方なのだ。

そんな事を考えながら、部屋に向かっていると、お母様に出くわしてしまった。

「ジュリア、あなたまたそんな恰好で歩いてるの?来週には貴族学院に入学するのよ。ただでさえ世間では、あなたの事を変り者令嬢と認識されているのに!いい加減…」

「お母様、私は今から制服の試着がありますので。これで」

私の姿を見て物凄い勢いで文句を言うお母様を軽くかわし、急いで自室に向かう。後ろでまだギャーギャー文句を言っているお母様の声が聞こえたが、そっとしておくことにしたのだった。



~あとがき~
ご無沙汰しております。
新連載を始めました。
どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした

エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ 女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。 過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。 公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。 けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。 これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。 イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん) ※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。 ※他サイトにも投稿しています。

女嫌いな騎士が一目惚れしたのは、給金を貰いすぎだと値下げ交渉に全力な訳ありな使用人のようです

珠宮さくら
恋愛
家族に虐げられ結婚式直前に婚約者を妹に奪われて勘当までされ、目障りだから国からも出て行くように言われたマリーヌ。 その通りにしただけにすぎなかったが、虐げられながらも逞しく生きてきたことが随所に見え隠れしながら、給金をやたらと値下げしようと交渉する謎の頑張りと常識があるようでないズレっぷりを披露しつつ、初対面から気が合う男性の女嫌いなイケメン騎士と婚約して、自分を見つめ直して幸せになっていく。

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

処理中です...