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第7話:うまく丸め込まれました
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公爵様と夫人に頭を下げられるだなんて。とにかく、早く頭を上げてもらわないと。
「あの、どうか頭をお上げください。まさか父とカルロス様がそんなお約束をしていただなんて、全く知らなくて。その上、その約束を守ろうとしてくれていただなんて…」
「ありがとう、ルミナス嬢。カルロスとの婚約を受けてくれるのだね。それじゃあ、早速今この場で婚約を結んでしまおう。やはり早い方がいいからね」
「そうですわね。ルミナス、よかったわね。あなたは次期公爵夫人でかつ騎士団長の妻になれるのよ。こんな名誉なことはないわ」
「そうよね、カルロス様は本当に素敵な方ですもの。ルミナスちゃん、本当に素敵な殿方に見初められてよかったわね」
「ルミナス、君には家の事で随分苦労を掛けたな。カルロス殿、どうかルミナスを幸せにしてやってください。お願いします」
「義兄上、頭を上げて下さい。ルミナス嬢は必ず幸せにしますから。それじゃあ、早速婚約届にサインをしていきましょう」
「まさかカルロス殿と家族になる日が来るなんてな…そうですな、早くサインをしないと」
ちょっと待ってよ!私、婚約を受けるなんて一言も言っていないわよ。それなのに、どんどん話を進めていくだなんて。お母様なんて、涙を流して喜んでいるし。お兄様もお義姉様も、物凄く嬉しそうだし…
公爵や夫人も、満面の笑みだ。この状況で、今更婚約は少し待って欲しいだなんて、言える訳ないじゃない。でも…
チラリとカルロス様の方を見ると、目があった。そして、ニヤリと笑ったのだ。その瞬間、背筋がゾクリと凍るのを感じた。やっぱり、彼と結婚なんて無理だわ。
「あの…私は…」
「さあ、後はルミナスがサインをすれば完了だ。よかったな、ルミナス。幸せになるのだよ」
私の言葉をかき消すように、満面の笑みでお兄様が婚約届を手渡してきた。皆が笑顔で私の方を見つめている…
…
やっぱり今更婚約を待ってくれなんて言えない空気だ。
「どうしたの?ルミナスちゃん、緊張しているの?名前を書くだけでいいのよ」
お義姉様が声を掛けてくれる。さらに私にペンを握らせたのだ。これはサインしろという事だろう。でも、どうしてもサインが出来ない。
“ルミタンは自分の名前も書けないのかい?可愛いね。俺が手伝ってあげるよ”
そんな恐ろしい言葉と共に、私の手を握ったのはカルロス様だ。そして、サラサラと名前を書かせた。ちょっと、なんて事をしてくれたのよ。
「ルミナス嬢はかなり緊張していたみたいだよ。ほら、サインが出来たよ。すぐに提出してきてもらっていいかな?それから、他の貴族にも伝えないとね」
満面の笑みでカルロス様が近くに控えていた執事に、婚約届を手渡した。紙を受け取ると、そのまま部屋から出ていく執事。
お願い、待って…
「これで2人は晴れて婚約者だ。せっかくだから、盛大に婚約披露パーティーをしましょう。2ヶ月もあれば準備が出来るでしょうから、2ヶ月後なんていかがですか?」
「いいですね。そうしましょう。やはりめでたい事は、大々的に報告しないといけませんから」
お兄様と公爵様が盛り上がっている。さらに
「ドレスはどんなのがいいかしら?」
「カルロス様の瞳の色に合わせて、グリーンなんていいのではなくって?赤い宝石も準備しないとね」
「宝石商なら、贔屓にしているところがありますの。よかったら今度、我が家で一緒に、デザインを決めませんか?」
「公爵家がご贔屓にしている宝石商なら、間違いないですわね。それでは今度、公爵家にお邪魔させていただいてもよろしいかしら?」
「もちろんですわ。なんだか楽しくなってきましたわね」
こっちでは女性陣達が盛り上がっている。完全に私は蚊帳の外だ。
でも、お母様やお兄様のあんなにも嬉しそうな顔を見ていると、これでよかったのかな、なんて考えてしまう。やっぱり私は、家族が喜ぶ顔を見るのが一番幸せなのだ。
“あぁ、やっとルミタンが手に入った。ずっと君の事だけを思い続けていたのだよ。そう、ずっとね…これからはずっとずっと一緒だよ。この命が尽きるまで…いいや、尽きてからもずっと一緒だ。そう…永遠にね…”
私を後ろから抱きしめながら、そんな恐ろしい事を呟くカルロス様。
ギャーーーー!
やっぱり私、この人の結婚なんて無理だわ!
一瞬でもカルロス様と婚約してよかっただなんて思った私がバカだった。やっぱりあの時、空気をぶった切ってでも断るべきだった。
カルロス様の恐ろしいほどの笑みをチラリと見ながら、とてつもない後悔の念に駆られるのだった。
※次回、カルロス視点です。
「あの、どうか頭をお上げください。まさか父とカルロス様がそんなお約束をしていただなんて、全く知らなくて。その上、その約束を守ろうとしてくれていただなんて…」
「ありがとう、ルミナス嬢。カルロスとの婚約を受けてくれるのだね。それじゃあ、早速今この場で婚約を結んでしまおう。やはり早い方がいいからね」
「そうですわね。ルミナス、よかったわね。あなたは次期公爵夫人でかつ騎士団長の妻になれるのよ。こんな名誉なことはないわ」
「そうよね、カルロス様は本当に素敵な方ですもの。ルミナスちゃん、本当に素敵な殿方に見初められてよかったわね」
「ルミナス、君には家の事で随分苦労を掛けたな。カルロス殿、どうかルミナスを幸せにしてやってください。お願いします」
「義兄上、頭を上げて下さい。ルミナス嬢は必ず幸せにしますから。それじゃあ、早速婚約届にサインをしていきましょう」
「まさかカルロス殿と家族になる日が来るなんてな…そうですな、早くサインをしないと」
ちょっと待ってよ!私、婚約を受けるなんて一言も言っていないわよ。それなのに、どんどん話を進めていくだなんて。お母様なんて、涙を流して喜んでいるし。お兄様もお義姉様も、物凄く嬉しそうだし…
公爵や夫人も、満面の笑みだ。この状況で、今更婚約は少し待って欲しいだなんて、言える訳ないじゃない。でも…
チラリとカルロス様の方を見ると、目があった。そして、ニヤリと笑ったのだ。その瞬間、背筋がゾクリと凍るのを感じた。やっぱり、彼と結婚なんて無理だわ。
「あの…私は…」
「さあ、後はルミナスがサインをすれば完了だ。よかったな、ルミナス。幸せになるのだよ」
私の言葉をかき消すように、満面の笑みでお兄様が婚約届を手渡してきた。皆が笑顔で私の方を見つめている…
…
やっぱり今更婚約を待ってくれなんて言えない空気だ。
「どうしたの?ルミナスちゃん、緊張しているの?名前を書くだけでいいのよ」
お義姉様が声を掛けてくれる。さらに私にペンを握らせたのだ。これはサインしろという事だろう。でも、どうしてもサインが出来ない。
“ルミタンは自分の名前も書けないのかい?可愛いね。俺が手伝ってあげるよ”
そんな恐ろしい言葉と共に、私の手を握ったのはカルロス様だ。そして、サラサラと名前を書かせた。ちょっと、なんて事をしてくれたのよ。
「ルミナス嬢はかなり緊張していたみたいだよ。ほら、サインが出来たよ。すぐに提出してきてもらっていいかな?それから、他の貴族にも伝えないとね」
満面の笑みでカルロス様が近くに控えていた執事に、婚約届を手渡した。紙を受け取ると、そのまま部屋から出ていく執事。
お願い、待って…
「これで2人は晴れて婚約者だ。せっかくだから、盛大に婚約披露パーティーをしましょう。2ヶ月もあれば準備が出来るでしょうから、2ヶ月後なんていかがですか?」
「いいですね。そうしましょう。やはりめでたい事は、大々的に報告しないといけませんから」
お兄様と公爵様が盛り上がっている。さらに
「ドレスはどんなのがいいかしら?」
「カルロス様の瞳の色に合わせて、グリーンなんていいのではなくって?赤い宝石も準備しないとね」
「宝石商なら、贔屓にしているところがありますの。よかったら今度、我が家で一緒に、デザインを決めませんか?」
「公爵家がご贔屓にしている宝石商なら、間違いないですわね。それでは今度、公爵家にお邪魔させていただいてもよろしいかしら?」
「もちろんですわ。なんだか楽しくなってきましたわね」
こっちでは女性陣達が盛り上がっている。完全に私は蚊帳の外だ。
でも、お母様やお兄様のあんなにも嬉しそうな顔を見ていると、これでよかったのかな、なんて考えてしまう。やっぱり私は、家族が喜ぶ顔を見るのが一番幸せなのだ。
“あぁ、やっとルミタンが手に入った。ずっと君の事だけを思い続けていたのだよ。そう、ずっとね…これからはずっとずっと一緒だよ。この命が尽きるまで…いいや、尽きてからもずっと一緒だ。そう…永遠にね…”
私を後ろから抱きしめながら、そんな恐ろしい事を呟くカルロス様。
ギャーーーー!
やっぱり私、この人の結婚なんて無理だわ!
一瞬でもカルロス様と婚約してよかっただなんて思った私がバカだった。やっぱりあの時、空気をぶった切ってでも断るべきだった。
カルロス様の恐ろしいほどの笑みをチラリと見ながら、とてつもない後悔の念に駆られるのだった。
※次回、カルロス視点です。
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