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第30話:久しぶりに騎士団の稽古を見ました
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「あの、ダグラス様。私はカルロス様からしばらく距離を置くようにと言われております。そんな私が、騎士団の稽古場に押しかけてはいけない気がするのです。ですから、私は失礼いたしますわ」
カルロス様からはしばらく距離を置くと言われているのに、私が急に押しかけたら嫌がられるかもしれない。ここ数日、カルロス様とほとんど触れあっていないせいか、すっかり自信を失ってしまったのだ。
「待ってくれ、ルミナス嬢。君の姿を見たら、間違いなく副騎士団長の機嫌は直るから、どうか帰らないでくれ」
「そうよ、ルミナス。そもそも、誰の為にここに来たと思っているのよ。いい加減素直になりなさい。ほら、行くわよ」
ミーリスに腕を引かれ、中へと入って行く。懐かしいわ、子供の頃、よくお母様に連れられて騎士団の稽古場に来ていたわね。あの頃と何も変わっていない…
8年ぶりに来た騎士団の稽古場に、なんだか懐かしさを覚える。しばらく進むと、カルロス様たちの稽古場が見えて来た。
普段はクールなカルロス様(私の前ではデレデレだが)が、怖い顔をして怒鳴りまくっている。懐かしいわ、よくお兄様もああやって怒鳴っていたわよね。怒鳴られていたのは…
そうだわ、子供の頃のカルロス様だ!
そんなカルロス様に、私が声を掛けたのだったわ。懐かしい…あの時泣いていた少年が、今は立派な騎士様なのだもの…
カルロス様と出会った時の記憶が一気に蘇った。お兄様ったらカルロス様に異常に厳しかったのよね。なんだかあの時のお兄様を見ている様で、つい笑みがこぼれる。
「ルミナスが嬉しそうにしていてよかったわ」
ポツリと呟いたのは、マリーヌだ。他の皆も頷いている。皆私を心配してくれていたのね。
「皆、ありがとう。私を騎士団の稽古場に連れてきてくれて」
「どういたしまして」
「私たちも、一度騎士団の稽古を見て見たいと思っていたものね。さて、カルロス様はいつルミナスに気が付くかしら?」
そう言ってクスクスと笑っている友人達。その時だった。
「ルミタ~ン!!!」
この声は…
そのままカルロス様にギュッと抱きしめられた。
「あぁ…やっぱりルミタンだ。俺のルミタンだ。あぁ、ルミタンの匂い。それに柔らかいこの感触…たまらないな…」
私を抱きしめながら頬ずりをするカルロス様。彼は相変わらずな様だ。でも、なんだかそれが嬉しくて、つい頬が緩んでしまった。そして無意識に自分から手を回した。
「ルミタンが俺を抱きしめてくれた…あぁ、俺のルミタン。もしかしてルミタンも寂しかったのかい?嬉しいなぁ」
締まりのない顔で私を抱きしめるカルロス様。貴族学院に通っている人たちにとっては見慣れた光景かもしれないが、他の人たちにとっては珍しい光景なのだろう。目を見開き、口をポカンと開けて固まっている。
中には既に正気に戻ったのか、笑いを必死に堪えている騎士団員の姿も…分かるわ、私も最初カルロス様の締まりのない顔を見た時は、笑いが止まらなかったもの。
「カルロス様、そろそろ稽古に戻ってください。それに、あまり締まりのない顔を騎士団員たちにお見せになるのも良くないかと…」
「そうだね…今は稽古中だから、そろそろ戻るよ。ルミタン、今日は一緒に帰ろうね。約束だよ、いいかい、絶対にそこから動かないでよ。分かったね」
「ええ、分かりましたわ。稽古、頑張ってくださいね」
「ありがとう、ルミタンが見てくれているというだけで、俄然やる気が出て来た」
そう言うと、カルロス様は稽古に戻って行った。ただ、カルロス様の締まりのない顔を見た団員たちは、笑いを堪えるのに必死の様で、カルロス様に真面目にやれと、怒られていた。
その後カルロス様による鬼の様な稽古を見届けた後、一緒に帰る事になった。
「それじゃあ皆、また明日。今日は騎士団の稽古場に連れてきてくれてありがとう」
「どういたしまして。それじゃあまた明日ね」
友人たちと別れて、カルロス様と一緒に馬車に乗り込む。いつもの様に私の隣に座ると、早速頬ずりを始めたカルロス様。なんだかグレードアップしている気がするが…
「まさか君が騎士団の稽古を見に来てくれるだなんて思わなかったよ」
「元気のない私を心配したミーリスが、ダグラス様に話しをして下さって…それにしても、騎士団の稽古場は全然変わっておりませんでしたね。なんだか懐かしい気持ちになりましたわ」
「そうか…君は俺がいなくて元気がなかったのか。そうかそうか、それは嬉しいな。騎士団は君の父上や兄上がいた頃と、全く変わっていないからね。君もあの頃から全然変わっていないよ。本当に可愛くて俺の宝物だ!」
今度は私の頬やおでこに口づけを始めたカルロス様。本当にやりたい放題だ。
「あなた様は随分と強くなられましたね。昔は兄にしごかれて、涙を流しておられましたのに…」
カルロス様からはしばらく距離を置くと言われているのに、私が急に押しかけたら嫌がられるかもしれない。ここ数日、カルロス様とほとんど触れあっていないせいか、すっかり自信を失ってしまったのだ。
「待ってくれ、ルミナス嬢。君の姿を見たら、間違いなく副騎士団長の機嫌は直るから、どうか帰らないでくれ」
「そうよ、ルミナス。そもそも、誰の為にここに来たと思っているのよ。いい加減素直になりなさい。ほら、行くわよ」
ミーリスに腕を引かれ、中へと入って行く。懐かしいわ、子供の頃、よくお母様に連れられて騎士団の稽古場に来ていたわね。あの頃と何も変わっていない…
8年ぶりに来た騎士団の稽古場に、なんだか懐かしさを覚える。しばらく進むと、カルロス様たちの稽古場が見えて来た。
普段はクールなカルロス様(私の前ではデレデレだが)が、怖い顔をして怒鳴りまくっている。懐かしいわ、よくお兄様もああやって怒鳴っていたわよね。怒鳴られていたのは…
そうだわ、子供の頃のカルロス様だ!
そんなカルロス様に、私が声を掛けたのだったわ。懐かしい…あの時泣いていた少年が、今は立派な騎士様なのだもの…
カルロス様と出会った時の記憶が一気に蘇った。お兄様ったらカルロス様に異常に厳しかったのよね。なんだかあの時のお兄様を見ている様で、つい笑みがこぼれる。
「ルミナスが嬉しそうにしていてよかったわ」
ポツリと呟いたのは、マリーヌだ。他の皆も頷いている。皆私を心配してくれていたのね。
「皆、ありがとう。私を騎士団の稽古場に連れてきてくれて」
「どういたしまして」
「私たちも、一度騎士団の稽古を見て見たいと思っていたものね。さて、カルロス様はいつルミナスに気が付くかしら?」
そう言ってクスクスと笑っている友人達。その時だった。
「ルミタ~ン!!!」
この声は…
そのままカルロス様にギュッと抱きしめられた。
「あぁ…やっぱりルミタンだ。俺のルミタンだ。あぁ、ルミタンの匂い。それに柔らかいこの感触…たまらないな…」
私を抱きしめながら頬ずりをするカルロス様。彼は相変わらずな様だ。でも、なんだかそれが嬉しくて、つい頬が緩んでしまった。そして無意識に自分から手を回した。
「ルミタンが俺を抱きしめてくれた…あぁ、俺のルミタン。もしかしてルミタンも寂しかったのかい?嬉しいなぁ」
締まりのない顔で私を抱きしめるカルロス様。貴族学院に通っている人たちにとっては見慣れた光景かもしれないが、他の人たちにとっては珍しい光景なのだろう。目を見開き、口をポカンと開けて固まっている。
中には既に正気に戻ったのか、笑いを必死に堪えている騎士団員の姿も…分かるわ、私も最初カルロス様の締まりのない顔を見た時は、笑いが止まらなかったもの。
「カルロス様、そろそろ稽古に戻ってください。それに、あまり締まりのない顔を騎士団員たちにお見せになるのも良くないかと…」
「そうだね…今は稽古中だから、そろそろ戻るよ。ルミタン、今日は一緒に帰ろうね。約束だよ、いいかい、絶対にそこから動かないでよ。分かったね」
「ええ、分かりましたわ。稽古、頑張ってくださいね」
「ありがとう、ルミタンが見てくれているというだけで、俄然やる気が出て来た」
そう言うと、カルロス様は稽古に戻って行った。ただ、カルロス様の締まりのない顔を見た団員たちは、笑いを堪えるのに必死の様で、カルロス様に真面目にやれと、怒られていた。
その後カルロス様による鬼の様な稽古を見届けた後、一緒に帰る事になった。
「それじゃあ皆、また明日。今日は騎士団の稽古場に連れてきてくれてありがとう」
「どういたしまして。それじゃあまた明日ね」
友人たちと別れて、カルロス様と一緒に馬車に乗り込む。いつもの様に私の隣に座ると、早速頬ずりを始めたカルロス様。なんだかグレードアップしている気がするが…
「まさか君が騎士団の稽古を見に来てくれるだなんて思わなかったよ」
「元気のない私を心配したミーリスが、ダグラス様に話しをして下さって…それにしても、騎士団の稽古場は全然変わっておりませんでしたね。なんだか懐かしい気持ちになりましたわ」
「そうか…君は俺がいなくて元気がなかったのか。そうかそうか、それは嬉しいな。騎士団は君の父上や兄上がいた頃と、全く変わっていないからね。君もあの頃から全然変わっていないよ。本当に可愛くて俺の宝物だ!」
今度は私の頬やおでこに口づけを始めたカルロス様。本当にやりたい放題だ。
「あなた様は随分と強くなられましたね。昔は兄にしごかれて、涙を流しておられましたのに…」
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