あなた達のお望みどおりにして差し上げますわ~追放聖女は絶体絶命王子と幸せになります~

Karamimi

文字の大きさ
32 / 53

第32話:ジルド殿下の思い

しおりを挟む
ジルド殿下をじっと見つめた。

「私は…今までずっと、この国の人たちが幸せになれる様必死に戦って来た。時には私たち王族が魔女に殺されてしまえば、昔の様な平和な国に戻るのではないかと考えたこともあった。自分の事なんて考えている余裕がなくて、日々生きるのに精一杯だったんだ。そんな中、君が現れた。君はいつも前向きで、魔女を倒した後の話をするのが大好きだったね」

「あ…あれはその…なんと申しますか…」

あの時の私は本当に現実が見えていなかったのだ。きっと皆、呆れていただろう。思い出したくない過去だわ…

「そんな顔をしないでくれ。君がいつも魔女を倒した話をしてくれるから、私はもちろん、ここにいる皆も未来を夢見る様になったんだよ。未来なんて、考える事すらなかった私たちがだ。私たちに希望の光を与えてくれるジャンティーヌ殿を見ていたら、私も次第に未来を夢見る様になった。昔の様な自然豊かな美しいこの国で、ジャンティーヌ殿と共に歩む未来を」

「えっ…」

今ジルド殿下、私と共に歩む未来とおっしゃったわよね。私の聞き間違いかしら?

「私は君に出会って、どんどん君に惹かれていった。でも…私と一緒にいても、幸せにはなれない、それに私たち王族のせいで、沢山の人が傷つき、命を落としたんだ。だから、私は何も望んではいけない、ずっとそう思っていた」

「何をおっしゃっているのですか。ジルド殿下は、誰よりも今まで辛い思いをして来たのです。それに魔女の件は、あなた達王族のせいではありませんわ!今まで苦労した分、どうかご自分が幸せになる事を考えて下さい!て、以前も言いましたよね?」

「ああ、言われた。実は君の兄上にも同じ事を言われたよ。君たち兄妹は、本当によく似ている」

私とお兄様がよく似ているですって…それはある意味ショックだわ…

「そんなに露骨に落ち込まないでくれ。随分話はそれてしまったが、その…もしジャンティーヌ殿さえよければ、ずっと私の傍にいて欲しい。私は君がいないと生きていけない程、君を愛してしまった様だ。この3ヶ月、本当に辛かった。もちろん、無理強いはしない。返事は今すぐでなくてもいいよ。今は魔女を倒すことに、専念したいだろうしね。でも、どうしても戦いの前に伝えておきたかったんだ。私の気持ちを」

「ジルド殿下…私は…」

「明日、私も君の傍にいる。1人で戦わせることはさせないから。それに、私がいた方が、魔女も現れやすいかもしれないし」

「それはいけません。私は1人で…」

「いいや、君だけに魔女と戦わせる訳にはいかない。どうか私たちも傍にいさせてくれ!これは絶対に譲れないから。それじゃあ、お休み、ジャンティーヌ殿」

「あっ、待って…」

ジルド殿下を引き留めようとしたが、さっさと出て行ってしまった。もう、せっかちなのだから。

それにしても、まさかジルド殿下が私をそんな風に思っていて下さっていただなんて…

正直嬉しい。私もジルド殿下の傍にいられたら…でも、私は自国で婚約者でもあったアーロン様をマリアン様に奪われたうえ、国を追い出された人間。

そんな私が、ジルド殿下と幸せになれるのかしら?アーロン様の様に、捨てられたりしないかしら?

そんな事を考えていると

「ジャンティーヌ、入るぞ」

やって来たのはお兄様だ。

「お兄様、やっと帰る気になったのですね。魔法陣はこちらですわ。どうぞ」

すかさず魔法陣の方へと案内しようとしたのだが、なぜかベッドに座り込んだお兄様。

「誰が帰ると言った!お前の様子を見に来ただけだ。それよりも、ジャンティーヌ。ジルド殿下に気持ちを伝えられたのだよな。ジルド殿下、足早に出て行ったが、まさかお前、断ったのではないだろうな!」

どうしてお兄様が、ジルド殿下が私に気持ちを伝えた事を知っているのよ!

「お兄様、盗み聞きをしたのですか?なんて悪趣味なの?いくらお兄様でも、盗み聞きだなんて…」

「俺はそんな事はしていない。ずっとジルド殿下から相談されていただけだ。今回、魔女との戦い前に、どうしても自分の気持ちを伝えたいとジルド殿下が言っていたから、ずっと気になっていたんだよ」

なんだ、お兄様に相談していたのか。よりにもよって、お兄様なんかに相談するだなんて…

「それで、断ったのか?どうなんだ?お前は自分の事になると、途端に鈍くなるからな」

「誰が鈍くなるですって!ジルド殿下が今はまだ返事はいいとおっしゃったから、返事をしていないだけですわ。私だって、ジルド殿下の事が好きですし、ずっと傍にいたいです。でも…私はアーロン様に捨てられた女です。もしまた、同じように捨てられたらと思うと…」

「ジャンティーヌ、お前の目は節穴か?アーロンは頭が悪く自己中で、自分に極端に甘い、いわばゴミの様な人間だ。そんな人間とジルド殿下を同じとみているのか?見損なったぞ!」

お兄様、確かにアーロン様は自分に甘く、辛い事からは避ける様なタイプですが、そこまで言わなくても。でも…

「ごめんなさい、アーロン様とジルド殿下では、月と鼈、キャビアとカビの生えたパンぐらい違いますね。私は一体、何を考えていたのでしょう、恥ずかしいわ…」

「分かればいいんだ!それじゃあ、ジャンティーヌはこの地でジルド殿下とずっと暮らすんだよな?」

「はい、そのためには必ず魔女を倒して見せますわ」

私とジルド殿下の幸せな未来の為にも、シルビア殿下の為にも、この国に暮らす人々の為にも、ついでにお兄様の為にも、明日の戦いは、絶対に負けられない!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています

ゆっこ
恋愛
 「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」  王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。  「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」  本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。  王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。  「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

処理中です...