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第27話:波乱の夜会になりました【前編】
馬車の中で旦那様がソワソワしている。いつも落ち着いている旦那様が、一体どうしたのだろう。
「旦那様、どうかされましたか?」
「イヤ…その、今日の夜会は、出来るだけ俺の側に、いて欲しいのだが…」
「はい、そのつもりです。極力旦那様の側にいますわ」
「そうか、それなら良かった」
それでもまだ落ち着かない様子の旦那様が、気になって仕方がない。
そうこうしている間に、グリース公爵家に着いた。さすが公爵家、とても立派だ。そのまま2人で腕を組んで、ホールへと入って行く。ご丁寧に、アナウンスまでしてくれた。
その瞬間、ホールにいた貴族が一斉にこちらを振り向いた。そんなに露骨にこっちを見なくても…そう思うくらい、皆見ている。
「すまない…結局皆に注目されてしまったな…」
旦那様が申し訳なさそうに呟いた。
「あら、私は大丈夫ですわ。せっかく来たのですから、楽しんでいきましょう」
旦那様と一緒に、堂々と入場する。見たい人たちはいくら見てもらっても構わない。
ホールの真ん中に来ると、グリース公爵が話しかけてきた。
「ディファーソン侯爵、来てくれたんだね。彼女が奥さんのマリアンヌ夫人だね」
「マリアンヌ・ディファーソンと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
「まあ、ご丁寧にありがとう。ディファーソン元侯爵夫人からあなたの事は聞いているわ。私とも仲良くして頂戴ね」
そう言ってほほ笑んでくれたのは、グリース公爵夫人だ。どうやら公爵も夫人もいい人の様でよかった。
その後4人で雑談を楽しんだ。次に話しかけてきてくれたのは、ハンスディ侯爵だ。
「マリアンヌ夫人、お初にお目にかかります。デービッド・ハンスディです。こっちが妻のリーフです。どうぞお見知りおきを」
ご丁寧に挨拶をしてくれた。もちろん私も
「マリアンヌ・ディファーソンと申します。こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」
と、挨拶をした。その後4人で話をした。2人ともとても気さくで話しやすいのだが、どうやらリーフ夫人は家の旦那様が怖い様で、デービッド様にくっ付きながら話をしていた。
家の旦那様、とても優しいのよ!そう言いたいが、もちろんそんな事は言えない。
お2人と別れた後は、次々と別の貴族に挨拶をしていく。もちろん、私の両親や友人たちも来ていたので、楽しくお話をした。
久しぶりに会った両親は、私の事をかなり心配していたが、旦那様と2人でいる姿を見て安心してくれた様だ。
このまま何事もなく終わりそうね。ふとホールの真ん中に目をやると、楽しそうにダンスを踊っている人たちが目に入った。そうだわ、せっかく来たのだから、旦那様と一緒にダンスを踊りたい。
「あの、旦那様、せっかくですから…」
「ディファーソン侯爵、ちょっとよろしいですか?」
私たちの話しの間に入って来たのは、別の貴族の男性だ。
「何かありましたか?」
「すみません、侯爵。ちょっと中庭で騒ぎが起きておりまして、騎士団長でもあるあなた様に、止めるのを手伝ってはもらえると助かるのですが?」
「中庭で騒ぎですか?わかりました。すぐに行きます。悪いが少し席を外す。1人でいると心配だから、友人のところまで送っていこう」
そう言って私を友人たちのところに連れて行こうとしてくれたのだが、切羽詰まっている様子。
「私は大丈夫ですわ。すぐに行って差し上げて下さい」
とにかく早く行った方がいいと思ったのだ。
「すまない、すぐに戻るから」
そう言い残し、旦那様は急いで中庭に向かって走って行った。さあ、アナスタシアたちの元にでも行こう。そう思った時だった。
「マリアンヌ」
この声は…
ゆっくり後ろを振り返ると、そこにはダニエルがいた。
「お久しぶりです。クラッセロ侯爵令息様。私に何か御用ですか?」
今更私に何の用があるというのだろう。そもそも私はもう、人妻だ。馴れ馴れしく呼び捨てにしないで欲しい。
私がダニエルに話しかけられている事に気が付いた友人たちが、私の側に集まって来た。
「ダニエル様、今更マリアンヌに何の御用ですか?マリアンヌは今、ディファーソン侯爵家で幸せに暮らしておりますのに」
すかさず私たちの間に入ってくれたのは、シャリーだ。私の両端には、アナスタシアとルアンナもいてくれている。
そういえば私がダニエルに婚約破棄され、社交界でも好奇な目で見られている時、いつも彼女たちはこうやって私を守ってくれていた。あの時と変わらない友人の優しさに、胸にこみ上げるものを感じた。
「イヤ…俺はただ、マリアンヌと話しがしたいだけなんだ。そもそも、ディファーソン侯爵と無理やり結婚させられたんだろう?俺が君と婚約破棄したばかりに、本当にすまなかったと思っているんだ。あの時の俺は、どうかしていた。マリアンヌがずっと側にいすぎて、君の大切さに気が付いていなかったんだ。でも婚約破棄をして、君を失って初めて分かったんだ。俺は君を心から愛していたのだと。マリアンヌ、今からでも遅くない。俺が君を、あの恐ろしい男から救い出してあげる。だから、俺の方においで」
何を思ったのか、とんでもない事を言い出したこの男。言っていることの意味が分からず、友人たちと顔を見合わせた。
「マリアンヌ、俺のせいで君をあんな恐ろしい男に嫁がせることになってしまって、本当に悪いと思っているんだ。俺は今でも君を大切に思っている。君だって、俺の事を大切に思ってくれているはずだ。だって俺たちは、ずっと一緒にいたのだから。大丈夫だよ、あの男には、きちんと俺から話を付けるから。もちろん、慰謝料だって払うつもりだ。だから、安心して俺のところに来て欲しい」
大きな声でそんなふざけた事をいうものだから、他の貴族たちまで集まって来た。この男、どこまで私の事をバカにしているのかしら…
「あなたね。マリアンヌを何だと思っているのよ!そもそもマリアンヌは…」
我慢の限界に来たシャリーが、ダニエルに抗議の声を上げようとしているのを制止する。
「シャリー、ありがとう。でも、ここは私がしっかり話すわ」
私はダニエルの方を改めて向き直した。
「旦那様、どうかされましたか?」
「イヤ…その、今日の夜会は、出来るだけ俺の側に、いて欲しいのだが…」
「はい、そのつもりです。極力旦那様の側にいますわ」
「そうか、それなら良かった」
それでもまだ落ち着かない様子の旦那様が、気になって仕方がない。
そうこうしている間に、グリース公爵家に着いた。さすが公爵家、とても立派だ。そのまま2人で腕を組んで、ホールへと入って行く。ご丁寧に、アナウンスまでしてくれた。
その瞬間、ホールにいた貴族が一斉にこちらを振り向いた。そんなに露骨にこっちを見なくても…そう思うくらい、皆見ている。
「すまない…結局皆に注目されてしまったな…」
旦那様が申し訳なさそうに呟いた。
「あら、私は大丈夫ですわ。せっかく来たのですから、楽しんでいきましょう」
旦那様と一緒に、堂々と入場する。見たい人たちはいくら見てもらっても構わない。
ホールの真ん中に来ると、グリース公爵が話しかけてきた。
「ディファーソン侯爵、来てくれたんだね。彼女が奥さんのマリアンヌ夫人だね」
「マリアンヌ・ディファーソンと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
「まあ、ご丁寧にありがとう。ディファーソン元侯爵夫人からあなたの事は聞いているわ。私とも仲良くして頂戴ね」
そう言ってほほ笑んでくれたのは、グリース公爵夫人だ。どうやら公爵も夫人もいい人の様でよかった。
その後4人で雑談を楽しんだ。次に話しかけてきてくれたのは、ハンスディ侯爵だ。
「マリアンヌ夫人、お初にお目にかかります。デービッド・ハンスディです。こっちが妻のリーフです。どうぞお見知りおきを」
ご丁寧に挨拶をしてくれた。もちろん私も
「マリアンヌ・ディファーソンと申します。こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」
と、挨拶をした。その後4人で話をした。2人ともとても気さくで話しやすいのだが、どうやらリーフ夫人は家の旦那様が怖い様で、デービッド様にくっ付きながら話をしていた。
家の旦那様、とても優しいのよ!そう言いたいが、もちろんそんな事は言えない。
お2人と別れた後は、次々と別の貴族に挨拶をしていく。もちろん、私の両親や友人たちも来ていたので、楽しくお話をした。
久しぶりに会った両親は、私の事をかなり心配していたが、旦那様と2人でいる姿を見て安心してくれた様だ。
このまま何事もなく終わりそうね。ふとホールの真ん中に目をやると、楽しそうにダンスを踊っている人たちが目に入った。そうだわ、せっかく来たのだから、旦那様と一緒にダンスを踊りたい。
「あの、旦那様、せっかくですから…」
「ディファーソン侯爵、ちょっとよろしいですか?」
私たちの話しの間に入って来たのは、別の貴族の男性だ。
「何かありましたか?」
「すみません、侯爵。ちょっと中庭で騒ぎが起きておりまして、騎士団長でもあるあなた様に、止めるのを手伝ってはもらえると助かるのですが?」
「中庭で騒ぎですか?わかりました。すぐに行きます。悪いが少し席を外す。1人でいると心配だから、友人のところまで送っていこう」
そう言って私を友人たちのところに連れて行こうとしてくれたのだが、切羽詰まっている様子。
「私は大丈夫ですわ。すぐに行って差し上げて下さい」
とにかく早く行った方がいいと思ったのだ。
「すまない、すぐに戻るから」
そう言い残し、旦那様は急いで中庭に向かって走って行った。さあ、アナスタシアたちの元にでも行こう。そう思った時だった。
「マリアンヌ」
この声は…
ゆっくり後ろを振り返ると、そこにはダニエルがいた。
「お久しぶりです。クラッセロ侯爵令息様。私に何か御用ですか?」
今更私に何の用があるというのだろう。そもそも私はもう、人妻だ。馴れ馴れしく呼び捨てにしないで欲しい。
私がダニエルに話しかけられている事に気が付いた友人たちが、私の側に集まって来た。
「ダニエル様、今更マリアンヌに何の御用ですか?マリアンヌは今、ディファーソン侯爵家で幸せに暮らしておりますのに」
すかさず私たちの間に入ってくれたのは、シャリーだ。私の両端には、アナスタシアとルアンナもいてくれている。
そういえば私がダニエルに婚約破棄され、社交界でも好奇な目で見られている時、いつも彼女たちはこうやって私を守ってくれていた。あの時と変わらない友人の優しさに、胸にこみ上げるものを感じた。
「イヤ…俺はただ、マリアンヌと話しがしたいだけなんだ。そもそも、ディファーソン侯爵と無理やり結婚させられたんだろう?俺が君と婚約破棄したばかりに、本当にすまなかったと思っているんだ。あの時の俺は、どうかしていた。マリアンヌがずっと側にいすぎて、君の大切さに気が付いていなかったんだ。でも婚約破棄をして、君を失って初めて分かったんだ。俺は君を心から愛していたのだと。マリアンヌ、今からでも遅くない。俺が君を、あの恐ろしい男から救い出してあげる。だから、俺の方においで」
何を思ったのか、とんでもない事を言い出したこの男。言っていることの意味が分からず、友人たちと顔を見合わせた。
「マリアンヌ、俺のせいで君をあんな恐ろしい男に嫁がせることになってしまって、本当に悪いと思っているんだ。俺は今でも君を大切に思っている。君だって、俺の事を大切に思ってくれているはずだ。だって俺たちは、ずっと一緒にいたのだから。大丈夫だよ、あの男には、きちんと俺から話を付けるから。もちろん、慰謝料だって払うつもりだ。だから、安心して俺のところに来て欲しい」
大きな声でそんなふざけた事をいうものだから、他の貴族たちまで集まって来た。この男、どこまで私の事をバカにしているのかしら…
「あなたね。マリアンヌを何だと思っているのよ!そもそもマリアンヌは…」
我慢の限界に来たシャリーが、ダニエルに抗議の声を上げようとしているのを制止する。
「シャリー、ありがとう。でも、ここは私がしっかり話すわ」
私はダニエルの方を改めて向き直した。
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