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第1話:出来損ないの英雄
1人校舎裏で、ひっそりと食事を摂る。この場所が、私が唯一ゆっくりできる憩いの場だ。
料理長が作ってくれた、手軽に食べられるサンドウィッチを手に取り、ゆっくり口に運ぼうとした時だった。
上からお水が降って来たのだ。
「あら、ごめんなさい。まさかこんなところに人がいらっしゃるだなんて、思わなくて」
「出来損ないの英雄様が、こんなところで何をなさっているのですか?世間から伝説の英雄、ジャンティーヌ様の末裔とあって、もてはやされていたのも束の間。まさか基礎中の基礎の攻撃魔法すら使えないだなんて…」
「魔力診断も、最低ランクだったのですよね。平民以下の魔力量しかないだなんて、貴族として信じられませんわ。早く婚約者の座を、レア様に譲ったらよろしいのに」
「皆様、その様な事をおっしゃっては、出来損ないの英雄様に失礼ですわ。だってこの方、精神だけはお強いのですから。だって普通、あれほど世間を裏切ったら、恥ずかしくて外には出られないでしょう。
それなのに、毎日ちゃんと貴族学院に通ってらっしゃるのですもの。本当に、どんな神経をしているのかしら?」
令嬢に見つかり、嫌味を言われる。私、アイリーン・マクレスは、これでも公爵令嬢。そして彼女たちの言う英雄とは、ジャンティーヌ・マクレス。
今から500年前、魔王軍率いる魔族たちが我が国を乗っ取るため、襲い掛かって来たのだ。激しい戦いは何週間も続き、沢山の人が命を落とした。そんな中、勇敢に戦ったのが、当時女騎士団長で公爵令嬢だったジャンティーヌだ。
魔王軍の激しい攻撃に心が折れそうになる兵士たちを励まし、自ら先陣を切り戦った女性。魔王を封印し、力尽きたジャンティーヌは、18歳という若さでこの世を去った。そんな彼女の末裔が、我がマクレス公爵家。
彼女がこの世を去ってから、500年もの間マクレス公爵家には女の子が生まれなかった。そんな中、500年ぶりに生まれたのが私だ。ジャンティーヌの生まれ変わりとして、国中が歓喜に沸いた。
すぐにこの国の王太子でもある、レドルフ殿下と婚約を結んだのだが…
どうやら私は、戦いが苦手なのだ。攻撃魔法を使おうとすると、恐怖で体が動かなくなってしまう。平民でも使える簡単な魔法ですら、私は使う事が出来ない。その上、魔力量が非常に少なく、平民以下なのだ。
通常高貴な身分になるほど魔力量は多く、平民はわずかな魔力しか持っていない。
そう、私は戦う事すらできない、出来損ないだったのだ。最初はチヤホヤしていた貴族たちも、いつしか不満の声が漏れるようになっていった。
既に魔王が封印されてから、500年が過ぎている。魔王は500年の眠りを経て、再び復活すると言われている。そろそろ魔王が復活しても、おかしくはない時期なのだ。
そんな中500年ぶりに生まれたジャンティーヌの末裔が、とんだ無能だったなんて。
期待していた分、裏切られた彼らの絶望は相当なものだっただろう。
「出来損ないの英雄様、濡れたままだと風邪をひいてしまいますよ。私が炎魔法で温めて差し上げますね」
ニヤリと笑った令嬢の1人が、炎魔法を使ったのだ。
恐怖から身を縮こませた。
その瞬間、熱い炎ではなく、温かい風が私を包んだのだ。この温もりは…
「君たち、こんなところで何をしているのだい?またアイリーン嬢を虐めているのかい?ここは貴族学院だ。これ以上続けるなら、学院長先生に話しをしてもいいのだよ」
「ジルバード殿下!どうしてあなた様は、毎回この出来損ないを庇うのですか?こんな女、この世に存在する価値もないのに」
「そうですわ、あなた様だってこの女がもう少し使えれば、お命が助かる確率も上がるというのに…この女が無能なせいで、あなた様への負担が膨大になっているのですよ」
「俺は令嬢を犠牲にしてまで、生きたいとは思わない!それに俺は第二王子だ!どのみちこの国の第二王子として生まれた以上、宿命を背負って生きていかないといけないのだから!」
「もうよろしいですわ。それでは失礼します」
ジルバード殿下のあまりの迫力に、令嬢たちは去って行ったのだった。
※新連載始めました。
よろしくお願いします。
料理長が作ってくれた、手軽に食べられるサンドウィッチを手に取り、ゆっくり口に運ぼうとした時だった。
上からお水が降って来たのだ。
「あら、ごめんなさい。まさかこんなところに人がいらっしゃるだなんて、思わなくて」
「出来損ないの英雄様が、こんなところで何をなさっているのですか?世間から伝説の英雄、ジャンティーヌ様の末裔とあって、もてはやされていたのも束の間。まさか基礎中の基礎の攻撃魔法すら使えないだなんて…」
「魔力診断も、最低ランクだったのですよね。平民以下の魔力量しかないだなんて、貴族として信じられませんわ。早く婚約者の座を、レア様に譲ったらよろしいのに」
「皆様、その様な事をおっしゃっては、出来損ないの英雄様に失礼ですわ。だってこの方、精神だけはお強いのですから。だって普通、あれほど世間を裏切ったら、恥ずかしくて外には出られないでしょう。
それなのに、毎日ちゃんと貴族学院に通ってらっしゃるのですもの。本当に、どんな神経をしているのかしら?」
令嬢に見つかり、嫌味を言われる。私、アイリーン・マクレスは、これでも公爵令嬢。そして彼女たちの言う英雄とは、ジャンティーヌ・マクレス。
今から500年前、魔王軍率いる魔族たちが我が国を乗っ取るため、襲い掛かって来たのだ。激しい戦いは何週間も続き、沢山の人が命を落とした。そんな中、勇敢に戦ったのが、当時女騎士団長で公爵令嬢だったジャンティーヌだ。
魔王軍の激しい攻撃に心が折れそうになる兵士たちを励まし、自ら先陣を切り戦った女性。魔王を封印し、力尽きたジャンティーヌは、18歳という若さでこの世を去った。そんな彼女の末裔が、我がマクレス公爵家。
彼女がこの世を去ってから、500年もの間マクレス公爵家には女の子が生まれなかった。そんな中、500年ぶりに生まれたのが私だ。ジャンティーヌの生まれ変わりとして、国中が歓喜に沸いた。
すぐにこの国の王太子でもある、レドルフ殿下と婚約を結んだのだが…
どうやら私は、戦いが苦手なのだ。攻撃魔法を使おうとすると、恐怖で体が動かなくなってしまう。平民でも使える簡単な魔法ですら、私は使う事が出来ない。その上、魔力量が非常に少なく、平民以下なのだ。
通常高貴な身分になるほど魔力量は多く、平民はわずかな魔力しか持っていない。
そう、私は戦う事すらできない、出来損ないだったのだ。最初はチヤホヤしていた貴族たちも、いつしか不満の声が漏れるようになっていった。
既に魔王が封印されてから、500年が過ぎている。魔王は500年の眠りを経て、再び復活すると言われている。そろそろ魔王が復活しても、おかしくはない時期なのだ。
そんな中500年ぶりに生まれたジャンティーヌの末裔が、とんだ無能だったなんて。
期待していた分、裏切られた彼らの絶望は相当なものだっただろう。
「出来損ないの英雄様、濡れたままだと風邪をひいてしまいますよ。私が炎魔法で温めて差し上げますね」
ニヤリと笑った令嬢の1人が、炎魔法を使ったのだ。
恐怖から身を縮こませた。
その瞬間、熱い炎ではなく、温かい風が私を包んだのだ。この温もりは…
「君たち、こんなところで何をしているのだい?またアイリーン嬢を虐めているのかい?ここは貴族学院だ。これ以上続けるなら、学院長先生に話しをしてもいいのだよ」
「ジルバード殿下!どうしてあなた様は、毎回この出来損ないを庇うのですか?こんな女、この世に存在する価値もないのに」
「そうですわ、あなた様だってこの女がもう少し使えれば、お命が助かる確率も上がるというのに…この女が無能なせいで、あなた様への負担が膨大になっているのですよ」
「俺は令嬢を犠牲にしてまで、生きたいとは思わない!それに俺は第二王子だ!どのみちこの国の第二王子として生まれた以上、宿命を背負って生きていかないといけないのだから!」
「もうよろしいですわ。それでは失礼します」
ジルバード殿下のあまりの迫力に、令嬢たちは去って行ったのだった。
※新連載始めました。
よろしくお願いします。
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