邪魔者王女はこの国の英雄と幸せになります

Karamimi

文字の大きさ
27 / 48

第27話:新たな決意~アントニオ視点~

しおりを挟む
戦争の後処理も無事終わり、1週間ぶりに屋敷に戻ってきた。久しぶりに会ったレアンヌは、変わらない笑顔を私に向けてくれた。その笑顔を見た瞬間、一気に疲れが吹き飛んだ。

この1週間、考える事と言えば、レアンヌの事ばかり。彼女が動物たちに協力を要請したことで、相手の行動が手に取る様に分かり、終始我が軍有利に事が運んだ。

そもそもレアンヌがいなければ、敵国が攻めてくるまで気が付かず、この街は9年前と同じような惨劇を繰り広げていただろう。さらにレアンヌは、自ら民たちを誘導し、逃げ遅れた民たちを屋敷で匿い、励まし続けたらしい。

リサの身も案じ、従妹とその子供と一緒に馬車に乗せたとの事。リサが

「レアンヌ様は本当にお優しい方です。ただ…私はもっとご自分を大切にして欲しいのですが…」

そう言っていた。

さらに騎士団の間でも噂になっており、私の妻に一目会いたいと懇願してくる団員までいた。レアンヌをあんなむさ苦しい男どもに、誰が会わせるか!レアンヌは私の妻だ。

レアンヌは美しいし優しい。きっと騎士団員たちを虜にする事だろう。動物たちですら、正直煩わしいのに、団員まで虜にされたらたまらない。

やっとレアンヌに会えたのに、しばらくは2人きりで過ごそうと思っていたのに…明日はレアンヌを森に連れて行かないといけないのか。

今日の宴も、結局動物たちに邪魔されてしまったし。確かに今回の戦いで、動物たちには感謝している。彼らの協力無くして、我が軍の勝利はなかっただろう。でも…

私がいない間に屋敷にまで入り込んでいたなんて…このままだと本当に、レアンヌをあいつらに奪われるのでは…

母上が動物たちと話をしている時ですら、こんな感情を抱かなかったのに。私は一体どうしてしまったのだろう…

ふと鏡に映る自分を見る。レアンヌは、仮面を被った私しか知らない。レアンヌにとっては、仮面を被った男=旦那様(私)なのだろう。

私はいつまで、妻に偽りの姿を見せ続けるのだろうか…

スッと仮面を外し、そのまま部屋の外に出た。すると護衛たちが、目を大きくて何度も私の顔を見ている。そう、この家で私の素顔を知っているのは、叔母でもあるリサだけだ。仮面なしで歩いている私を見て、びっくりしているのだろう。

レアンヌの部屋は、私の部屋のすぐ隣だ。ゆっくりノックをするが、返事がない。

「レアンヌ、入るよ」

ゆっくり扉を開けると、部屋は既に真っ暗だった。ただ、部屋から差し込む月明かりで、部屋の様子はうかがえる。どうやらレアンヌは、もう眠っている様だ。

ゆっくりレアンヌに近づき、彼女のベッドに腰を下ろした。今日も安眠している様で、規則正しい寝息が聞こえる。

そっと彼女の髪をひと房手に取った。柔らかくてサラサラの髪。やはりまだあどけなさが残っているな…

眠るレアンヌの頬に触れた。そしてゆっくりと顔を近づける…

「アントニオ、あなたは何をしているのですか?」

「うわぁ、叔母上…じゃなくてリサ。急に声を掛けるな。びっくりするだろう」

「それよりも、レアンヌ様のお部屋で何をしているのですか?とにかく、ここでは話は出来ません。外に出て下さい」

低めの声でそう言うと、そのままリサに腕を掴まれ、部屋から出された。

「旦那様、いくらレアンヌ様がお好きでも、夜這いはダメです!」

「人聞きの悪い事を言うな。私はただ、レアンヌに私の素顔を見せたくて部屋に行っただけだ。そしたら、既に眠っていて…」

「それで口づけをしようとしたのですか?それを夜這いというのです。本当に…」

「リサこそ、どうして急にレアンヌの部屋に入って来たのだ?レアンヌが就寝後は、基本的に部屋に入らないものだろう」

「護衛たちが“旦那様と思われる男性が、レアンヌ様の部屋に入って行った。ただ、仮面をしていらっしゃらなかったので、確証がなく…”と、私に報告に来たのです」

お前たち、リサに報告したのか!と言わんばかりの目で、護衛たちを見つめた。スッと目をそらす護衛たち。

「旦那様がレアンヌ様に素顔を見せたいという事は分かりましたわ。でも、夜這いはダメです。それから、使用人たちもあなたの姿は知らないのですよ。急に仮面を取って、ウロウロとするのはお控えください!」

「だから夜這いではない!ただ、リサの言い分もわかった。リサ、私は見た目だけで判断されたくなくて、9年もの間、仮面をつけて来た。でも…もう自分の姿を偽るのは止めようと思う…」

「その方がよろしいかと。もうあなた様の顔を見て、“女みたいだ”とバカにする者はおりません。あなた様は、誰もが認めるこの国の英雄なのですから」

英雄か…
正直そんな物にはなりたくなかったが、それでもこの街も平和になり、何よりレアンヌにも会えた。

これからは、素顔の自分でレアンヌと接していこう。そして書面上だけの夫婦ではなく、本当の夫婦になれる様、彼女を守っていこう。

私は彼女の事が、誰よりも大切だから…

※次回、レアンヌ視点です。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。

藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。 どうして、こんなことになってしまったんだろう……。 私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。 そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した…… はずだった。 目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全11話で完結になります。

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

愛してしまって、ごめんなさい

oro
恋愛
「貴様とは白い結婚を貫く。必要が無い限り、私の前に姿を現すな。」 初夜に言われたその言葉を、私は忠実に守っていました。 けれど私は赦されない人間です。 最期に貴方の視界に写ってしまうなんて。 ※全9話。 毎朝7時に更新致します。

【完結】私は聖女の代用品だったらしい

雨雲レーダー
恋愛
異世界に聖女として召喚された紗月。 元の世界に帰る方法を探してくれるというリュミナス王国の王であるアレクの言葉を信じて、聖女として頑張ろうと決意するが、ある日大学の後輩でもあった天音が真の聖女として召喚されてから全てが変わりはじめ、ついには身に覚えのない罪で荒野に置き去りにされてしまう。 絶望の中で手を差し伸べたのは、隣国グランツ帝国の冷酷な皇帝マティアスだった。 「俺のものになれ」 突然の言葉に唖然とするものの、行く場所も帰る場所もない紗月はしぶしぶ着いて行くことに。 だけど帝国での生活は意外と楽しくて、マティアスもそんなにイヤなやつじゃないのかも? 捨てられた聖女と孤高の皇帝が絆を深めていく一方で、リュミナス王国では次々と異変がおこっていた。 ・完結まで予約投稿済みです。 ・1日3回更新(7時・12時・18時)

年増令嬢と記憶喪失

くきの助
恋愛
「お前みたいな年増に迫られても気持ち悪いだけなんだよ!」 そう言って思い切りローズを突き飛ばしてきたのは今日夫となったばかりのエリックである。 ちなみにベッドに座っていただけで迫ってはいない。 「吐き気がする!」と言いながら自室の扉を音を立てて開けて出ていった。 年増か……仕方がない……。 なぜなら彼は5才も年下。加えて付き合いの長い年下の恋人がいるのだから。 次の日事故で頭を強く打ち記憶が混濁したのを記憶喪失と間違われた。 なんとか誤解と言おうとするも、今までとは違う彼の態度になかなか言い出せず……

【完結】捨てたものに用なんかないでしょう?

風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。 戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。 愛人はリミアリアの姉のフラワ。 フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。 「俺にはフラワがいる。お前などいらん」 フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。 捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。

【完結】本物の聖女は私!? 妹に取って代わられた冷遇王女、通称・氷の貴公子様に拾われて幸せになります

Rohdea
恋愛
───出来損ないでお荷物なだけの王女め! “聖女”に選ばれなかった私はそう罵られて捨てられた。 グォンドラ王国は神に護られた国。 そんな“神の声”を聞ける人間は聖女と呼ばれ、聖女は代々王家の王女が儀式を経て神に選ばれて来た。 そして今代、王家には可愛げの無い姉王女と誰からも愛される妹王女の二人が誕生していた…… グォンドラ王国の第一王女、リディエンヌは18歳の誕生日を向かえた後、 儀式に挑むが神の声を聞く事が出来なかった事で冷遇されるようになる。 そして2年後、妹の第二王女、マリアーナが“神の声”を聞いた事で聖女となる。 聖女となったマリアーナは、まず、リディエンヌの婚約者を奪い、リディエンヌの居場所をどんどん奪っていく…… そして、とうとうリディエンヌは“出来損ないでお荷物な王女”と蔑まれたあげく、不要な王女として捨てられてしまう。 そんな捨てられた先の国で、リディエンヌを拾ってくれたのは、 通称・氷の貴公子様と呼ばれるくらい、人には冷たい男、ダグラス。 二人の出会いはあまり良いものではなかったけれど─── 一方、リディエンヌを捨てたグォンドラ王国は、何故か謎の天変地異が起き、国が崩壊寸前となっていた…… 追記: あと少しで完結予定ですが、 長くなったので、短編⇒長編に変更しました。(2022.11.6)

【完結】聖女は国を救わないと決めていた~「みんなで一緒に死にましょうよ!」と厄災の日、聖女は言った

ノエル
恋愛
「来たりくる厄災から、王国を救う娘が生まれる。娘の左手甲には星印が刻まれている」 ――女神の神託により、王国は「星印の聖女」を待ち望んでいた。 完璧な星印を持つ子爵令嬢アニエスと、不完全な星印しか持たない公爵令嬢レティーナ。 人々はこぞってアニエスを“救いの聖女”と讃え、レティーナを虐げた。 だが、本当に王国を救うのは、誰なのか。 そして、誰にも愛されずに生きてきたレティーナの心を誰が救うのか。

処理中です...