邪魔者王女はこの国の英雄と幸せになります

Karamimi

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第32話:旦那様が怖いです

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「レアンヌ!!」

後ろから旦那様に抱きしめられた。

「あの、旦那様。ただいま戻りました。ここは?」

「私の部屋だ。それよりもさっきの男は、精霊か?レアンヌに何か言っていた様だが。それに頬に口づけを!すぐにタオルを持って来るから待っていてくれ。いや、今レアンヌから離れたら、またあの男が来るかもしれない!誰かいかないか?」

旦那様が大きな声で叫ぶと、すぐに使用人がやって来た。

「旦那様、どうされ…レアンヌ様!よかった、お戻りになったのですね。でも、一体どこから入られたのですか?」

「精霊が送ってきた様だ。それよりも、濡れたタオルをすぐに準備してくれ。今すぐだ!」

「かしこまりました」

使用人が急いで部屋から出て行った。

「あの…旦那様、ごめんなさい。あなた様の言いつけを破って、1人で滝に近づいてしまって…その…」

ポツリと呟く。すると、スッと私から離れると、そのままクルリと回転させられ、旦那様と目があった。真っすぐ私を見つめる旦那様。やはりまだ旦那様の顔になれていないせいか、スッと目線をそらしてしまった。

「レアンヌ、私の目を見てくれ」

耳元でそう呟かれ、もう一度旦那様の顔を見る。

「レアンヌ、滝に近づいた事はもちろん良くなかったね。それよりも、1週間以上も一体精霊と何をしていたのだい?」

「えっ、1週間?」

「そうだよ、書面上ではあるが君は私の妻で、公爵夫人だ。そんな君が、1週間以上も連絡もせず留守にするだなんて。褒められた事じゃないね」

どういう事?ミハイル様は大丈夫だと言っていたのに。

「あの…私は…」

「旦那様、タオルをお持ちいたしました」

「ありがとう」

使用人はタオルを渡すと、急いで部屋から出て行ってしまった。あんなに急いで出て行かなくても…そう思うほど、素早かった。

タオルを受け取った旦那様が、私の頬を何度も何度も拭いている。そんなに拭かなくても…そう思ったが、なんだか言える空気ではない。何なんだろう、この空気…

私も早くこの部屋から出たいわ。さっきの使用人の様に…

「あの…旦那様。本当に申し訳ございませんでした。リサにも謝りたいので、私はこの辺で失礼いたします」

これ以上この何とも言えない重い空気に耐えられそうにない。そう思い、急いで部屋を出ようとしたのだが…

「誰が勝手に部屋から出ていいと言った?まだ話は終わっていないよ。さあ、こっちにおいで」

笑顔なのだが…何だろう、目が笑っていないというか、殺気立っているというか…これなら不機嫌そうな顔をされた方がまだましだわ。

顔が引きつる私の腕を引っ張り、そのままソファーに座った旦那様。私を隣に座らせると、再び真っすぐ私を見つめる。

「それで君はこの1週間、何をしていたのだい?」

「えっとこの1週間、ミハイル様が作った世界で生活しておりました。あの世界は昼も夜もなく、お腹も空かず眠くもならないので、まさかそこまで時間が経っているとは思っていなくて。それに、ミハイル様が時間の事は気にしなくてもいいとおっしゃってくださったので、その…時間の調整が出来るのだと思っておりました」

「それであの精霊と、目いっぱい楽しんでいた訳だね。それにあの男の事を、名前で呼んでいるんだ…君は人妻だよ。他の男を馴れ馴れしく名前で呼んだり、ましてや口づけをされるだなんて!あの男の作り出した世界でも、その様な事をしていたのかい?」

目つきが一気に鋭くなった。怖いわ…こんな怖い顔の旦那様、初めて見た。気が付くと、涙が溢れる。

「泣かなくてもいいんだよ。私はただ、話を聞いているだけだから。それよりも、私の質問に答えてくれるかい?」

「あちらの世界には動物たちもおりましたので、2人きりになる様なことはしておりません。それに帰り際の口づけも、多分あの人にとっては挨拶の様なもので…」

「へぇ~、レアンヌにとって口づけは挨拶なんだ。それは知らなかったな…」

さらに旦那様の目つきが鋭くなった。そして何を思ったのか、私の頬に口づけをしたのだ。さらに溢れ出る涙をペロリと舐めた。

「レアンヌ、もう二度と他の男に口づけなんてさせてはいけないよ。君は私の妻だ。それからしばらくは、動物と会う事も禁止する。森にも二度と行かせないから…私がこの1週間、どれほど心配したか分かっているのかい?」

ギュッと私を抱きしめ、耳元で旦那様が呟く。

「ごめんなさい、分かりましたわ。本当にごめんなさい」

何度も何度も旦那様に謝った。するとゆっくりと私から離れた旦那様。

「レアンヌ、私もすまなかった。君が嫁いできた時、“私とは関わらないで欲しい、夫婦として過ごすつもりもない”と言ってしまった事、後悔している。私はこれから、レアンヌと共にこの地で生きたいと考えている。これからもずっと私の傍にいてくれるかい?」

さっきとは打って変わって、優しい眼差しの旦那様にそう伝えられた。

「もちろんですわ。私、この地に来てリサや旦那様と出会って、本当に幸せなのです。これからもずっと、ここにおいてください」

そう笑顔で答えたのだが…

「イヤ…そう言う意味ではなくて…その、私は本当の夫婦として…」

何やら旦那様がブツブツ呟いている。急にどうしたのかしら?訳が分からず、首をかしげる。

「レアンヌ、私は…」
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