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第5話:私、生きています
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「う…ん」
ゆっくり瞼をあげる。
頭が重いし、体も痛い…
ここは…
「お目覚めになられたのですね。よかったですわ。ただ、まだ酷い熱です。どうか横になっていてください」
声の方を向くと、優しそうな女性の姿が。とても穏やかな表情をした女性は、50歳くらいかしら?もしかしてここは、天国?
意識が朦朧とする中、周りを見渡す。違うわ…ここは天国なんかじゃない。どこかのお部屋だわ。それもかなり豪華なお部屋…もしかして私、カルビア王国に連れ戻されたのかしら?そんな不安が私を襲った。
「さあ、このお薬を飲んで、もう少しお休みください」
まだ頭がボーっとする私に、薬を飲ませてくれた女性。よく見ると、メイドの格好をしている。
「あの…ここは…カルビ…」
「カルビ?」
「いいえ…何でもありません。ご親切にしていただき、ありがとうございます…」
よく考えたら、私は誘拐され、船で11日もの間移動していたのだ。だからここが、カルビア王国の可能性は低い。だとすると、ここは…
ダメだ、頭がボーっとする。とにかく今は、休もう。
ゆっくりと瞼を閉じ、再び意識を飛ばしたのだった。
再び目を覚ました時は、随分と体が楽になっていた。そのまま体を起こす。すると
「お目覚めになられましたか?よかったですわ、さあ、お腹が空いていらっしゃいますでしょう。お食事の準備をさせていただきました。ただ、1週間も眠っていらしたので、消化に良いものをと、スープを準備いたしました」
そう言って野菜がたっぷり入ったスープを持ってきてくれたのは、一度目に目覚めた時にいた女性だ。1週間も眠っていたなんて…
「ありがとうございます。あの、ここは一体どこですか?」
「ここはバーイン王国でございます。あなた様は海岸で倒れているところを、陛下が見つけられて…」
「私、海岸で倒れていたのですね。お助けいただき、ありがとうございます」
バーイン王国…
周りを大国に囲まれた小さな国。ただ…若き国王を中心に、非常に軍事力に優れており、攻めてくる国々を蹴散らかす屈強の軍事大国だと聞いたと事がある。
もしかしてここは王宮なのかしら?だとすれば、こんなにも豪華な造りなのも納得だわ。
「あなた様には色々とお話を伺いたい事がございます。見たところ、スパイではなさそうですが…」
女性の目がきらりと光った。もしかして私、スパイを間違えられているのかしら?
「いいえ、私はスパイではありません。自国で誘拐され、そのまま船に乗せられ運ばれていたのですが、嵐で船が難破してしまって。それで気が付いたら、このお部屋にいたのです!ですから私は、断固としてスパイではありませんわ」
そうはっきりと伝えた。
「そうでしょうね…あなた様は発見されたとき、寝間着姿でしたし、何より絶望的な状況でした。よく意識が戻ったものです。本当に意識が戻られてよかったですわ。さあ、どうぞスープを」
私にスープを渡してくれた女性。
そうか…
私はまた死に損ねたのね…
2度も死に損ねるなんて、私ったらどれだけ生命力が強いのかしら。
気が付くと瞳から涙が溢れていた。私、あのままリーナの元にいきたかったわ。でも、それは叶わなかったのだ。
「まあ、どうされましたか?どこか痛いところでもありましたか?お可哀そうに、自国から誘拐されて怖い思いをなされたのですね。でも大丈夫ですわ。元気になったらまた、国に戻れます。ですから、どうかまずはお食事を」
この人はきっと意識のない私を、一生懸命看病してくれたのだろう。それなのに私は、いつも自分の事ばかりね。
「ありがとうございます…いただきますわ」
ゆっくりとスープを口に含む。温かくて美味しい…なんだか優しい味がするわ。そういえば私が風邪をひいた時、いつもこうやってリーナが温かいスープを部屋まで運んできてくれたのよね。そして、私の熱が下がるまで、夜通し看病してくれた。
でもそのリーナは、私が意識を失っている間に無残にも殺され、遺体を晒された。きっと悔しかっただろう、さぞ無念だっただろう。
泣きながらスープを食べる私の背中を、女性が優しく撫でてくれた。その優しさに、さらに涙が込みあげる。
それでもなんとか全て完食した。ただ、涙が止まる事はなく、私はそのまま泣き続けたのだった。そんな私の背中を優しく撫で続けてくれる女性。しばらくすると、涙も落ち着いた。
「助けて頂き、ありがとうございます。私は、アナスタシア…と申します」
「アナスタシア様、私は王宮でメイド長をしております、クロハと申します。さあ、まずは湯あみから行いましょう。それから、お召し物はこちらをお使いください」
そういえば私、ずっと湯あみをしていなかったものね。クロハが湯あみ場まで連れて行ってくれた。
「それでは私は外におりますので」
そう言うと、湯あみ場から出て行ってしまったのだ。えっと、自分で洗えって事よね。でも、どうやって洗うのかしら?しばらく考えてみるものの、全く分からない。う~ん。
「あの…アナスタシア様、どうかなされましたか?」
私が長い時間考えていたので、心配してクロハが様子を見に来てくれた。
「ごめんなさい、使い方が分からなくて…」
「そうだったのですね。それならそうと、言って下さればよろしかったのに。それでは私が洗わせていただきますわ」
そう言うと、手際よく洗ってくれた。そして手際よく服を着せてくれたクロハ。髪も綺麗に乾かしてくれる。あぁ、さっぱりした。何はともあれ、体が奇麗になってよかったわ。
ゆっくり瞼をあげる。
頭が重いし、体も痛い…
ここは…
「お目覚めになられたのですね。よかったですわ。ただ、まだ酷い熱です。どうか横になっていてください」
声の方を向くと、優しそうな女性の姿が。とても穏やかな表情をした女性は、50歳くらいかしら?もしかしてここは、天国?
意識が朦朧とする中、周りを見渡す。違うわ…ここは天国なんかじゃない。どこかのお部屋だわ。それもかなり豪華なお部屋…もしかして私、カルビア王国に連れ戻されたのかしら?そんな不安が私を襲った。
「さあ、このお薬を飲んで、もう少しお休みください」
まだ頭がボーっとする私に、薬を飲ませてくれた女性。よく見ると、メイドの格好をしている。
「あの…ここは…カルビ…」
「カルビ?」
「いいえ…何でもありません。ご親切にしていただき、ありがとうございます…」
よく考えたら、私は誘拐され、船で11日もの間移動していたのだ。だからここが、カルビア王国の可能性は低い。だとすると、ここは…
ダメだ、頭がボーっとする。とにかく今は、休もう。
ゆっくりと瞼を閉じ、再び意識を飛ばしたのだった。
再び目を覚ました時は、随分と体が楽になっていた。そのまま体を起こす。すると
「お目覚めになられましたか?よかったですわ、さあ、お腹が空いていらっしゃいますでしょう。お食事の準備をさせていただきました。ただ、1週間も眠っていらしたので、消化に良いものをと、スープを準備いたしました」
そう言って野菜がたっぷり入ったスープを持ってきてくれたのは、一度目に目覚めた時にいた女性だ。1週間も眠っていたなんて…
「ありがとうございます。あの、ここは一体どこですか?」
「ここはバーイン王国でございます。あなた様は海岸で倒れているところを、陛下が見つけられて…」
「私、海岸で倒れていたのですね。お助けいただき、ありがとうございます」
バーイン王国…
周りを大国に囲まれた小さな国。ただ…若き国王を中心に、非常に軍事力に優れており、攻めてくる国々を蹴散らかす屈強の軍事大国だと聞いたと事がある。
もしかしてここは王宮なのかしら?だとすれば、こんなにも豪華な造りなのも納得だわ。
「あなた様には色々とお話を伺いたい事がございます。見たところ、スパイではなさそうですが…」
女性の目がきらりと光った。もしかして私、スパイを間違えられているのかしら?
「いいえ、私はスパイではありません。自国で誘拐され、そのまま船に乗せられ運ばれていたのですが、嵐で船が難破してしまって。それで気が付いたら、このお部屋にいたのです!ですから私は、断固としてスパイではありませんわ」
そうはっきりと伝えた。
「そうでしょうね…あなた様は発見されたとき、寝間着姿でしたし、何より絶望的な状況でした。よく意識が戻ったものです。本当に意識が戻られてよかったですわ。さあ、どうぞスープを」
私にスープを渡してくれた女性。
そうか…
私はまた死に損ねたのね…
2度も死に損ねるなんて、私ったらどれだけ生命力が強いのかしら。
気が付くと瞳から涙が溢れていた。私、あのままリーナの元にいきたかったわ。でも、それは叶わなかったのだ。
「まあ、どうされましたか?どこか痛いところでもありましたか?お可哀そうに、自国から誘拐されて怖い思いをなされたのですね。でも大丈夫ですわ。元気になったらまた、国に戻れます。ですから、どうかまずはお食事を」
この人はきっと意識のない私を、一生懸命看病してくれたのだろう。それなのに私は、いつも自分の事ばかりね。
「ありがとうございます…いただきますわ」
ゆっくりとスープを口に含む。温かくて美味しい…なんだか優しい味がするわ。そういえば私が風邪をひいた時、いつもこうやってリーナが温かいスープを部屋まで運んできてくれたのよね。そして、私の熱が下がるまで、夜通し看病してくれた。
でもそのリーナは、私が意識を失っている間に無残にも殺され、遺体を晒された。きっと悔しかっただろう、さぞ無念だっただろう。
泣きながらスープを食べる私の背中を、女性が優しく撫でてくれた。その優しさに、さらに涙が込みあげる。
それでもなんとか全て完食した。ただ、涙が止まる事はなく、私はそのまま泣き続けたのだった。そんな私の背中を優しく撫で続けてくれる女性。しばらくすると、涙も落ち着いた。
「助けて頂き、ありがとうございます。私は、アナスタシア…と申します」
「アナスタシア様、私は王宮でメイド長をしております、クロハと申します。さあ、まずは湯あみから行いましょう。それから、お召し物はこちらをお使いください」
そういえば私、ずっと湯あみをしていなかったものね。クロハが湯あみ場まで連れて行ってくれた。
「それでは私は外におりますので」
そう言うと、湯あみ場から出て行ってしまったのだ。えっと、自分で洗えって事よね。でも、どうやって洗うのかしら?しばらく考えてみるものの、全く分からない。う~ん。
「あの…アナスタシア様、どうかなされましたか?」
私が長い時間考えていたので、心配してクロハが様子を見に来てくれた。
「ごめんなさい、使い方が分からなくて…」
「そうだったのですね。それならそうと、言って下さればよろしかったのに。それでは私が洗わせていただきますわ」
そう言うと、手際よく洗ってくれた。そして手際よく服を着せてくれたクロハ。髪も綺麗に乾かしてくれる。あぁ、さっぱりした。何はともあれ、体が奇麗になってよかったわ。
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