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第18話:孤児院に行きました

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しばらく2人で街を見て歩く。

「アナスタシア…お腹が空いただろう。食事にしよう。せっかくだから、平民の食事を食べてみようと思うのだが…」

「まあ、それはいいですわね。この国の平民たちが、どんな食べ物を食べているのか気になります。早速参りましょう」

2人で手を繋ぎ、一軒のお店に入った。ここが平民たちが食事をしているお店なのね。お店にはいくつもの机とイスが並んでおり、それぞれが食事を楽しんでいた。どうやら平民は、こうやって知らない人と同じ空間で食事をする様だ。

早速向かい合わせに座る。

「アナスタシアは食べたいものはあるかい?」

メニューを渡されたが、イマイチよくわからない。

「正直何がいいのか分かりませんので、カイ様にお任せいたしますわ」

「それじゃあ、この店のお勧め料理を出してもらう事にしよう」

近くにいた店員さんに声を掛け、注文している。そうか、こうやって注文するのね。しばらく待っていると、お料理が運ばれてきた。どうやら一気にお料理を出すスタイルの様だ。デザートも一緒に付いている。

なるほど、こうやってまとめて出すと、手間も省けるものね。このお店のお勧めは、牛タンのシチューとの事。

「このお肉、柔らかくて美味しいですわ。味付けもちょうどいいです」

王宮で食べるお食事も美味しいけれど、ここのお店のお料理も絶品だ。こうやって、平民たちの生活が知れるのも嬉しい。公爵令嬢だった頃は、この様なお店なんて、絶対に入れなかったものね。

美味しいお料理を頂いた後、お店を後にした。

「アナスタシア、どこか行きたい場所はあるかい?ドレスや宝石店もあるから、見に行こうか?」

カイ様が私に気を使って、そう言ってくれた。でも私は…

「それでしたら、孤児院に行きたいですわ。あの建物は孤児院ですよね」

私はある建物を指さした。

「孤児院にかい?でも今日は、街を見て回る為に来たのだが…まあ、アナスタシアが望むなら行こうか」

カイ様が承諾してくれたので、2人で孤児院に向かった。孤児院に着くと、院長先生が出てきてくれた。

「まあ、陛下、よく来てくださいました。あら?お連れ様ですか?」

「お初にお目にかかります。アナスタシアと申します。どうぞよろしくお願いいたします」

院長先生に挨拶をする。

「まあ、ご丁寧にありがとうございます。陛下の恋人ですね。よかったですわ、陛下は本当に心のお優しい方ですのに、中々良い縁談に恵まれなかった様で…この孤児院も、陛下が建ててくださったのです。戦争で親を失った子供たちの為に。さらに、心に深い傷を負った子供たちが、少しでも気持ちが落ち着くようにと、専属の医者まで雇って下さって。そのお陰で、子供たちも随分と笑顔が戻りました」

「院長、あまりベラベラと話さないでくれ」

「あら、本当の事でしょう?この国には、戦争で親を亡くした子供が大勢いるのです。そんな子供たちの為に、あちこちに孤児院を建て、定期的に見に来てくださっているのですよ。本当にお優しい方です」

なるほど、カイ様は傷ついた子供たちのケアにも力を入れていたのね。弱者でもある子供は、冷遇を受ける事も少なくない。そんな子供たちにもしっかり目を向け、手を差し伸べるだなんて…やっぱりカイ様は、素敵な方ね。

「院長、無駄話はもういいだろう。さあ、アナスタシア、子供たちの元に向かおう」

私の手を引き、子供たちの元へと向かう…かと思いきや

「悪いがここからは、君1人で行ってくれるだろうか?」

急に立ち止まったかと思ったら、そんな事を言いただしたのだ。

「あら?どうしてですの?一緒に行きましょう」

カイ様の手を引き、連れて行こうとする。すると

「おねえちゃん、だれ?」

子供たちが私たちに気が付いてやって来たのだ。すると

「うわぁぁぁん、おかおのこわいおにいちゃんが、またきた~」

子供たちが泣きながら逃げ出してしまった。どうやら子供たちは、カイ様が怖い様だ。

「すまん…私は子供たちに怖がられていて…それで…」

なるほど、それでカイ様は、子供たちの前に現れる事を躊躇したのね。

「カイ様、少しお待ちください」

カイ様に断りを入れ、子供たちの元へと向かう。

「こんにちは、私はアナスタシアよ。よろしくね」

子供たちに声を掛ける。すると

「アナスタシアおねえちゃん、ごほんよんで」

「おにんぎょうあそびをしよう」

子供たちが一斉に私の方にやって来た。早速子供たちと遊ぶ。しばらく遊んで仲良くなった後。

「実はね、皆が怖がっているおにいちゃんなんだけれど、私の大事なお友達なの。見た目は怖いけれど、とっても優しいのよ。連れて来てもいいかしら?」

子供たちの為に誰よりも動いているカイ様が、子供たちに怖がられたままなんて悲しすぎる。何とか子供たちと仲良くして欲しい。そんな思いで、子供たちに語り掛けた。

「あのおにいちゃん、こわい…でも、アナスタシアおねえちゃんが、そういうなら…」

顔が強張っているが、何とか了承してくれた。早速カイ様を連れてきた。子供たちもカイ様も、なぜか固まっている。

「みんな、カイ様はとても優しいのよ。そうだわ、カイ様、皆にご本を読んであげて下さい」

「私が本をかい、でも…」

「大丈夫ですわ。ほら、皆、丸くなって座りましょう」

子供たちと一緒に、丸くなって座る。ただ、やはりカイ様が怖い様で、私にしがみつく子供も多数。それでもカイ様が、一生懸命本を読んでくれた。すると、1人の女の子がカイ様の膝の上にちょこんと座ったのだ。

「おにいちゃん、ごほんよむのじょうずね」

そう言ってほほ笑んだ女の子。

「カイ様は全然怖くないでしょう。それに、カイ様はこの国を守ってくれたヒーローなのよ。あなた達が今幸せに暮らせるのも、カイ様たちが必死に戦ったおかげなの。それにみて、この筋肉。凄いでしょう」

すかさずカイ様の筋肉に触れた。国王陛下に失礼だったかしら?そう思いつつも、子供たちに語り掛ける。すると

「すごいきんにくね。おにいちゃんは、このくにのヒーローだったのね。かおがこわいヒーローだ」

そう言って子供たちが、カイ様の腕に捕まり出したのだ。その後は少しずつカイ様に懐いていった子供たち。最後は楽しそうに遊んでくれていた。
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