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第1話:アデル様との出会い

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真新しい制服に袖を通し、髪を整える。
私、ローズ・スターレス、13歳。今日からセントラル学院に入学するのだ。

我が国は20年前、王政が廃止された。当時の王がどうしようもない人だったため、平民はもちろん貴族の間でも不満が爆発。その結果、王族たちは国外追放になったのだ。それに伴い、貴族という制度も廃止になった。

ただ…
それでもまだ貴族の名残が残っており、かつて貴族だった人間は、このセントラル学院に入学し、色々と学ぶのだ。それでも昔ほど貴族のしばりもきつくなく、爵位等もなくなったため、比較的皆自由に恋愛をし、自由に結婚している。

ちなみにこのセントラル学院内で、恋人や結婚相手を見つける人も多い。私にも…

そんな思いをいだきながら、馬車へと乗り込んだ。使用人たちが、私を見送ってくれる。

やっぱり両親の姿はない。

私の両親は、2人とも仕事に夢中で日々忙しく過ごしている為、ほとんど家に帰ってこないのだ。その為、子供の頃から寂しい思いをしていた。唯一私を可愛がってくれていたのが、おばあ様。でも6年前、隣国に留学するお兄様について行ってしまった。

“ローズも一緒に隣国に行こう。3人で暮らそう”

お兄様とおばあ様にそう言われたが、この国には大切な友人もいる。それに何より、おばあ様とお兄様がいなくなったことで、両親が私を見てくれるかもしれない。そんな期待があったのだ。

でも実際は…
結局両親が私を見てくれることはなかった。

て、傷心に浸っている場合ではない。今日は待ちに待った入学式なのだから。今日から始まる新たな学院生活が楽しみなのはもちろんなのだが、私にはもう1つ楽しみな事がある。

それは、大好きなアデル様に会えるという事だ。

アデル様と初めて出会ったのは、私が8歳の時。あの日の事は、今でも脳裏に焼き付いている。

~5年前~
ある令嬢のお誕生日パーティーに呼ばれて参加した時の事。本当は両親も参加するのが一般的なのだが、生憎家の両親はほとんど家に帰ってこない。

その為、1人で参加していたのだ。

そこには今日の主役でもある令嬢が、両親や友人たちに囲まれ、幸せそうに過ごしていた。もちろん私も、プレゼントを持って行った。

そんな中、事件が起きたのだ。

「お父様とお母様から貰った、ルビーのネックレスとイヤリングが無くなったわ」

主役の令嬢が急に騒ぎ出したのだ。そして何を思ったのか

「ローズ様、あなたが取ったのでしょう?だってあなただけでしょう?ご両親と一緒に来ていないのは。きっと私に嫉妬して取ったに違いないわ」

と、ものすごい言いがかりをつけて来たのだ。もちろん私は、取っていないと必死に訴えた。でも、ここには私を庇ってくれる両親はいない。

周りからも、私が取ったのではないかという空気が流れ始める。

「ローズ嬢、正直に話してくれ。あれは私たちが贈った大切なものなんだ。頼む、娘に返してやってくれないか?」

と、主役の令嬢の両親にも言われる始末。周りからも

「ご両親が家にいないと、人の物を盗む様な子に育つのね。早く返しなさいよ」

「泥棒がこの場所にいるなんて、本当に嫌だわ」

と、暴言が飛ぶ。悔しくて悲しくて、私の言う事など誰も信じてくれなくて、それが悲しくてその場から消えてしまいたい感情に襲われた。

その時だった。

「ねえ、ネックレスとイヤリングって、あれの事?」

銀色の髪に、青い瞳をした美しい少年が指さす方向には、ネックレスを首からぶら下げ、イヤリングの箱の口にくわえている犬の姿が。

「まあ、リリアンヌ。もしかして、リリアンヌが…もう、ダメじゃない。この子、綺麗なものに目がないの」

そう言いつつ、急いで犬の方に走って行った令嬢。周りからも、「なんだ、犬が犯人だったのか」と、笑い声が聞こえる。

「いやぁ、見つかってよかったな。これからは大事にしまっておくんだよ」

そう言って令嬢に優しく語り掛けている両親。そう、私を犯人扱いした事など忘れて、一件落着と言わんばかりの空気が流れている。

でも、犯人扱いされた私はたまったものじゃない。これほどまで酷い扱いを受けるなんて…
悲しくて再び涙がこみ上げてきた時だった。

「ねえ、あれほどまでこの子を犯人だと捲し上げておいて、謝罪もしないのかい?随分と酷い扱いをするんだね。普通なら謝るものじゃないのかい?」

先ほどの少年が、大きな声で皆に訴えかけてくれたのだ。さらに少年のご両親と思われる男女も

「アデルの言う通りだ。少女を捕まえ、寄ってたかって犯人に仕立て上げたくせに。一体この家はどういう神経をしているのだろう。こんな失礼な家だなんて。私たちはもう帰ろう。さあ、君も一緒に帰ろう。こんなところに居ても、気分が悪くなるだけだ」

そう伝えてくれたのだ。

「お待ちください。グリースティン殿。あなたの言う通りです。ローズ嬢、勘違いとはいえ、無実の罪で君を犯人に仕立て上げてしまい、本当にすまなかった」

「ローズ様、ごめんなさい。まさかリリアンヌが犯人だったなんて…」

そう言って今日の主催者でもある令嬢とその両親が、私に謝罪してくれた。さらに、他の人たちも私に謝ってくれた。

ただ…
それでも犯人にされた事が悔しくて、その日は早めに切り上げる事にした。

帰り際、銀色の少年が目に入った。確かアデル様と言っていたな。

「アデル様、先ほどは助けて頂き、ありがとうございました」

彼に向かって深々と頭を下げた。すると

「僕は当たり前の事をしただけだ。気にしなくていいよ。それに君、そんな事をするような子には見えなかったしね。それじゃあ」

少し恥ずかしそうに笑ったアデル様は、すぐにどこかに行ってしまった。その顔を見た瞬間、一気に鼓動が早くなるのを感じた。


そう、私はこの日、アデル様に恋をしたのだ。そして後でわかった事なのだが、彼はグリースティン家の次男であるという事。グリースティン家は、由緒正しい家柄で、今でも貿易などでかなり裕福だという事。

私の家とは違い、家族仲がとてもいいという事だ。ただこの5年、一度もアデル様に会えていない。

だから今日、アデル様に会えるのが楽しみでたまらないのだ。


~あとがき~
新連載始めました。
よろしくお願いしますm(__)m
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