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第21話:僕はどうかしている~アデル視点~
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「アデル様、明日はいよいよティーナ様のお宅にお邪魔する日です。見て下さい、グラス様に邪魔されないように、これ」
ローズと契約を結んで、3ヶ月が過ぎようとしていた。ずっとローズは“ティーナ様と2人で女子トークがしたい”と、兄上にしつこく迫っていた。そのお陰で、2時間だけではあるが、ティーナの家で、明日2人きりで過ごすことが実現した。
そのせいか、今日はやたらテンションの高いローズ。
「その機械は一体何だい?」
「これですか?これは盗聴を妨害する機械です。実は私の母は、貿易の仕事をしていて。母に頼んで取り寄せてもらったのです」
どうだ、すごいだろう!と言わんばかりに、機械を見せてくるローズ。そういえば彼女の母親は、この国では珍しく仕事をしているのだったな。そのせいで、ほとんど家にいないとか…
て、今はそんな事はどうでもいいか。
「ローズ、こんな事は言いたくはないのだが…その機械を使って兄上の盗聴を防げたとしても、きっと兄上がすぐに乗り込んでくると思うよ…」
兄上は異常なほどティーナに執着している。自分と一緒にいないときは、常に盗聴器などで監視しているのだ。
「あら、それでも少しの時間、ティーナ様とお話が出来るでしょう?それにしても、レディーの話を盗み聞きしようだなんて、本当に品がないですわ!とにかく私は、グラス様を気にせず、ティーナ様と本音トークを楽しみたいのです!あ、もしアデル様にとって有意義な情報を手に入れたら、すぐに報告いたしますわ」
ローズが僕に向かってニヤリと笑った。悪そうな顔をするな。でも、そんなローズの顔も、僕は嫌いではない。
「あまり期待せずに待っているよ」
そう伝えておいた。すると
「大船に乗ったつもりで待っていて下さい」
そう言って胸を叩いている。その顔がおかしくて、つい笑ってしまった。僕がなぜ笑っているのか分からず、キョトンとしている。
本当にローズは見ていて飽きない。ずっと見ていたいくらいだ…
「アデル様、もうこんな時間です。早く戻らないと、授業に遅れますわ。それでは私はこれで」
ペコリと頭を下げると、すごいスピードで走っていくローズ。
ふとローズが座っていた場所を見ると、なんとカバンが忘れてあるではないか。
「ローズ、カバンを忘れているよ」
そう叫んだが、既に姿がない。本当にローズはあわてんぼうだな。仕方ない、教室まで届けてやろう。
ローズの教室までカバンを届けて、自分のクラスに戻る。
「アデル、随分と遅かったな。ギリギリじゃないか。あれ?何かいい事でもあったのかい?やけに嬉しそうだね」
僕に話しかけてきたのは、友人のトーマスだ。
「いいや。別に何でもないよ」
「そうかい?アデルはローズ嬢と付き合いだしてから、表情も穏やかになったね。昔は何に関しても無関心だったのに。本当にいい子と付き合えてよかったね。大切にしろよ」
そう言うと、トーマスが僕の肩を叩く。
表情が穏やかになった…か…。確かにそうかもしれない、ローズと一緒にいる様になってから、僕の心は常に満たされる様な、そんな気持ちに包まれている。
彼女とずっと一緒にいられたら…
て、僕は何を考えているんだ。僕が好きなのは、ティーナなのに…
とにかく、明日初めてローズとティーナが2人きりで過ごすんだ。兄上に極力邪魔されないように、見守らないと!
そして迎えた翌日。兄上と一緒に、自宅でティーナとローズの様子を見守る。兄上はどうやら映像でも確認できる様、あらかじめ客間にカメラをセットしておいたらしい。本当に兄上は…
しばらく待っていると、嬉しそうな顔のティーナとローズが入って来た。そして、2人向かい合わせに座って、楽しそうに話しをし始めた。ただ…話し声は全く聞こえない。
どうやらローズは、昨日僕に見せてくれた盗聴防止の機械を、ティーナに説明している様だ。
「アデル、なんで2人の話し声が聞こえないんだ?それにローズ嬢、変な機械を持っているし。もしかして、ティーナの身に何か…」
「兄上、映像を見る限り、楽しそうに話しをしている様にしか見えませんが…」
兄上は何を言っているのだろう…
声が聞こえないだけで、映像はしっかり映っているのだから、心配する必要は無いと思うのだが…
「いいや、声が聞こえないのはおかしい!この映像も嘘かもしれない。ティーナが心配だ。すぐに2人の元に向かおう」
「あ…お待ちください!兄上!」
ものすごい勢いで走り出した兄上。ローズ、きっと怒るだろうな…そう思いつつ、僕も兄上の後を追った。案の定、兄上とローズが言い合いの喧嘩をし始めた。それにしてもローズもこの3ヶ月で随分と強くなった。
あの兄上に言い返しているのだから…
だんだんヒートアップし始めた2人、そろそろ止めないと。そう思った時だった。ティーナの兄でもある、ディーオン兄さんが割って入って来たのだ。
この国一の美青年と言われているディーオン兄さんに見つめられたローズが、頬を赤らめている。その瞬間、何とも言えない怒りが沸き上がって来た。
さらにディーオン兄さんもローズに興味をもった様で、なんとローズの手を握ったのだ!僕だってまだローズに触れた事がないのに!いてもたってもいられず、無理やりディーオン兄さんからローズの手を奪い返した。
そんな僕を見て、笑いながら去っていくディーオン兄さんを、横目で睨みつけた。柔らかくて温かい感触が、手から伝わる。
しまった、ついローズに触れてしまった。
急いで手を放す。契約の時、“僕に触れないで欲しい”と自分で言っておいて、自ら触れてしまうなんて!本当に僕は一体何をしているんだ。
そんな思いから、ローズに謝った。
その後4人でお茶を楽しんだが、正直僕は、ローズの手の感触が忘れられず、気が付くとローズの手を見つめしまう。手だけであれほどまでに触り心地がいいのだ、他の場所は…て、僕は何を考えているんだ!これじゃあ、ただの変態じゃないか!
今日の僕は本当にどうかしている。
落ち着け!落ち着くんだ!ローズはただの協力者だ。僕が好きなのはティーナなんだ!
心の中で何度も何度も、自分に言い聞かせたのだった。
とにかく、ローズは僕に協力してくれているだけ。その事だけは、肝に銘じておかないと。
※次回、ローズ視点に戻ります。
今後ローズ視点、アデル視点が交差します。
よろしくお願いします。
ローズと契約を結んで、3ヶ月が過ぎようとしていた。ずっとローズは“ティーナ様と2人で女子トークがしたい”と、兄上にしつこく迫っていた。そのお陰で、2時間だけではあるが、ティーナの家で、明日2人きりで過ごすことが実現した。
そのせいか、今日はやたらテンションの高いローズ。
「その機械は一体何だい?」
「これですか?これは盗聴を妨害する機械です。実は私の母は、貿易の仕事をしていて。母に頼んで取り寄せてもらったのです」
どうだ、すごいだろう!と言わんばかりに、機械を見せてくるローズ。そういえば彼女の母親は、この国では珍しく仕事をしているのだったな。そのせいで、ほとんど家にいないとか…
て、今はそんな事はどうでもいいか。
「ローズ、こんな事は言いたくはないのだが…その機械を使って兄上の盗聴を防げたとしても、きっと兄上がすぐに乗り込んでくると思うよ…」
兄上は異常なほどティーナに執着している。自分と一緒にいないときは、常に盗聴器などで監視しているのだ。
「あら、それでも少しの時間、ティーナ様とお話が出来るでしょう?それにしても、レディーの話を盗み聞きしようだなんて、本当に品がないですわ!とにかく私は、グラス様を気にせず、ティーナ様と本音トークを楽しみたいのです!あ、もしアデル様にとって有意義な情報を手に入れたら、すぐに報告いたしますわ」
ローズが僕に向かってニヤリと笑った。悪そうな顔をするな。でも、そんなローズの顔も、僕は嫌いではない。
「あまり期待せずに待っているよ」
そう伝えておいた。すると
「大船に乗ったつもりで待っていて下さい」
そう言って胸を叩いている。その顔がおかしくて、つい笑ってしまった。僕がなぜ笑っているのか分からず、キョトンとしている。
本当にローズは見ていて飽きない。ずっと見ていたいくらいだ…
「アデル様、もうこんな時間です。早く戻らないと、授業に遅れますわ。それでは私はこれで」
ペコリと頭を下げると、すごいスピードで走っていくローズ。
ふとローズが座っていた場所を見ると、なんとカバンが忘れてあるではないか。
「ローズ、カバンを忘れているよ」
そう叫んだが、既に姿がない。本当にローズはあわてんぼうだな。仕方ない、教室まで届けてやろう。
ローズの教室までカバンを届けて、自分のクラスに戻る。
「アデル、随分と遅かったな。ギリギリじゃないか。あれ?何かいい事でもあったのかい?やけに嬉しそうだね」
僕に話しかけてきたのは、友人のトーマスだ。
「いいや。別に何でもないよ」
「そうかい?アデルはローズ嬢と付き合いだしてから、表情も穏やかになったね。昔は何に関しても無関心だったのに。本当にいい子と付き合えてよかったね。大切にしろよ」
そう言うと、トーマスが僕の肩を叩く。
表情が穏やかになった…か…。確かにそうかもしれない、ローズと一緒にいる様になってから、僕の心は常に満たされる様な、そんな気持ちに包まれている。
彼女とずっと一緒にいられたら…
て、僕は何を考えているんだ。僕が好きなのは、ティーナなのに…
とにかく、明日初めてローズとティーナが2人きりで過ごすんだ。兄上に極力邪魔されないように、見守らないと!
そして迎えた翌日。兄上と一緒に、自宅でティーナとローズの様子を見守る。兄上はどうやら映像でも確認できる様、あらかじめ客間にカメラをセットしておいたらしい。本当に兄上は…
しばらく待っていると、嬉しそうな顔のティーナとローズが入って来た。そして、2人向かい合わせに座って、楽しそうに話しをし始めた。ただ…話し声は全く聞こえない。
どうやらローズは、昨日僕に見せてくれた盗聴防止の機械を、ティーナに説明している様だ。
「アデル、なんで2人の話し声が聞こえないんだ?それにローズ嬢、変な機械を持っているし。もしかして、ティーナの身に何か…」
「兄上、映像を見る限り、楽しそうに話しをしている様にしか見えませんが…」
兄上は何を言っているのだろう…
声が聞こえないだけで、映像はしっかり映っているのだから、心配する必要は無いと思うのだが…
「いいや、声が聞こえないのはおかしい!この映像も嘘かもしれない。ティーナが心配だ。すぐに2人の元に向かおう」
「あ…お待ちください!兄上!」
ものすごい勢いで走り出した兄上。ローズ、きっと怒るだろうな…そう思いつつ、僕も兄上の後を追った。案の定、兄上とローズが言い合いの喧嘩をし始めた。それにしてもローズもこの3ヶ月で随分と強くなった。
あの兄上に言い返しているのだから…
だんだんヒートアップし始めた2人、そろそろ止めないと。そう思った時だった。ティーナの兄でもある、ディーオン兄さんが割って入って来たのだ。
この国一の美青年と言われているディーオン兄さんに見つめられたローズが、頬を赤らめている。その瞬間、何とも言えない怒りが沸き上がって来た。
さらにディーオン兄さんもローズに興味をもった様で、なんとローズの手を握ったのだ!僕だってまだローズに触れた事がないのに!いてもたってもいられず、無理やりディーオン兄さんからローズの手を奪い返した。
そんな僕を見て、笑いながら去っていくディーオン兄さんを、横目で睨みつけた。柔らかくて温かい感触が、手から伝わる。
しまった、ついローズに触れてしまった。
急いで手を放す。契約の時、“僕に触れないで欲しい”と自分で言っておいて、自ら触れてしまうなんて!本当に僕は一体何をしているんだ。
そんな思いから、ローズに謝った。
その後4人でお茶を楽しんだが、正直僕は、ローズの手の感触が忘れられず、気が付くとローズの手を見つめしまう。手だけであれほどまでに触り心地がいいのだ、他の場所は…て、僕は何を考えているんだ!これじゃあ、ただの変態じゃないか!
今日の僕は本当にどうかしている。
落ち着け!落ち着くんだ!ローズはただの協力者だ。僕が好きなのはティーナなんだ!
心の中で何度も何度も、自分に言い聞かせたのだった。
とにかく、ローズは僕に協力してくれているだけ。その事だけは、肝に銘じておかないと。
※次回、ローズ視点に戻ります。
今後ローズ視点、アデル視点が交差します。
よろしくお願いします。
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