彼の幸せを願っていたら、いつの間にか私も幸せになりました

Karamimi

文字の大きさ
80 / 87

第80話:アリサお義姉様、ありがとうございます

しおりを挟む
「う~ん…」

ゆっくり目を覚ますと、窓からは太陽の光が差し込んでいた。まだ少し体がだるいが、昨日よりかは楽になった。そういえば昨日、アデル様と通信しながら眠ってしまったのだった。

枕元にある通信機を手に取る。すると、既に通信は切れていた。

ふと時計を見ると、もうお昼過ぎだ。随分と長い時間、眠っていた様だ。さすがに喉が渇いた。近くに置いてあるコップに水を汲み、ゆっくり飲む。

そして、再びベッドに横になった。

「お嬢様、お目覚めですか?」

やって来たのは、私付きのメイドだ。

「ええ、今目が覚めたところよ。ただ、まだ体がだるくて…」

「まだ熱があるのですわ。どうかゆっくりとお休みください。昨夜はほとんどお召し上がりになりませんでしたので、すぐに食事をお持ちいたします」

そう言って部屋から出て行ったメイド。正直まだ食欲がないのだが…

そう思っていたのだが、メイドが持ってきてくれたのは、ゼリーと野菜スープだ。

「あら?どうしたの?このお料理」

「実は昨日お嬢様があまりお召し上がらなかったのを気にして、アリサ様が大奥様に、お嬢様の好きな食べ物を聞きに行っておられましたわ。それで大奥様に確認して、お嬢様が病気の時に食べていたメニューをご準備されたのです」

「まあ、アリサお義姉様が。そうだったの、嬉しいわ。私、昨日からずっとこのお料理が食べたかったの。それで、アリサお義姉様は?」

「はい、今日は大奥様の通院の日ですので、付き添いで出かけられております」

そうか、今日はおばあ様の通院の日だったわね。アリサお義姉様には、本当に迷惑を掛けっぱなしだわ。

野菜たっぷりのスープを口に含む。美味しいわ、そう、私が求めていたのはこのスープよ。懐かしい味に、あっという間にスープとゼリーを食べきった。

「食欲が戻られたのですね。お替りもありますよ」

「ありがとう、でも、もうお腹いっぱいだわ。なんだか眠くなってきたから、もう少し休むわね」

「はい、ゆっくりとお休みください」

再びベッドに横になり、眠りについた。

そして、次に目が覚めたのは夜だった。どうやら熱も下がった様で、体も随分と楽になった。ただ、まだ食欲が戻らないので、食事は部屋で食べる。もちろん、スープとゼリーだ。食事が終わったと同時に、お兄様とアリサお義姉様、おばあ様が様子を見に来てくれた。

「随分と体調が戻ったみたいだね。ずっと起きないから、心配しだんだよ」

「そうよ、疲れから熱が出たと聞いていたけれど、それでもとても心配したのよ。でも、元気になってよかったわ」

「ありがとうございます。そうそう、アリサお義姉様、今日は私の好きなスープとゼリーを準備してくださり、ありがとうございます。とても嬉しかったですわ」

「喜んで貰えてよかったわ。熱も下がった様だし。でも、無理は禁物よ。ゆっくり休んでね。ほら、皆もローズちゃんが休めないわ」

そう言ってお兄様とおばあ様を連れていくお義姉様。いつも私の事を気に掛けてくれている。

皆が出て行ったあと、湯あみをしてさっぱりさせた。その間に、シーツ等も替えてくれた様で、ベッドも綺麗に整っている。

さあ、もう寝ないとね。そうだわ、アデル様に通信を入れないと。昨日弱音を吐いちゃっちゃったから、正直少し恥ずかしい。でも、きっと心配してくれているはず。そういえば、今日は通信が入った形跡はないわね。もしかして、私がゆっくり眠れるように気を使ってくれているのかしら?

そう思いつつ、通信機を手に取った時だった。

「ローズちゃん、ちょっといい?」

やって来たのは、アリサお義姉様だ。

「ええ、もちろんですわ。どうぞ」

さすがにベッドに入ったままでは失礼と思い、ベッドから出ようとしたのだが。

「そのままでいいのよ。あなたは病み上がりなのだから」

そう言うと、ベッドに腰かけたお義姉様。

「ローズちゃん、アデル様とは、国に残してきた恋人よね。ごめんなさい、昨日のあなた達の通信、たまたま聞いてしまって…ローズちゃんは本当は国に帰りたかったのね。気が付いてあげられなくて、ごめんね」

何と!昨日の会話を、アリサお義姉様に聞かれていたなんて。恥ずかしいわ。

「あの…お義姉様。昨日の会話は、その…体調も悪くて頭が朦朧としていて。それで…」

「ローズちゃん、気を付かなわくていいのよ。あなたがずっと誰かと、通信機で話をしていた事は知っていたのよ。それにあなたはずっと、違う国で生きて来たのですもの。母国には友人や恋人、たくさんの大切な人がいるのよね。どうやらあなたは、この国に永住するつもりで来たみたいではない様だし。そんな中、急にこの国に来て、ずっと一緒に暮らそう、早くこの国に馴染んでね!なんて言われても困るわよね…」

「アリサお義姉様…」

「ローズちゃん、あなたは優しすぎるわ。その優しさに、たくさんの人が救われたのでしょうね。でもね、どうか自分の事を一番に考えて。ねえ、あなたは本当はどうしたい?」

「私は…本当は国に帰りたいです。それに私、おばあ様の容態を確認し次第、すぐに国に帰るつもりだったのです。それなのにお兄様が…おばあ様も私がこの国にずっといると思い込んでいて、とても嬉しそうにしていたので。どうしても言い出せなくて。でも私、本当はアデル様やティーナ様、カルミアやファリサ達に会いたくて。特にアデル様とは、出国する前日に心が通じ合ったばかりで…会いたくて寂しくて、どうしようもなくて…」

瞳から涙が溢れ出す。私、こんなに泣き虫だったかしら?そう思うくらい、涙が溢れる。

「謝らないで、ローズちゃん。私もローランドと離れていた時は、本当に寂しくて気が狂いそうだったもの。気持ちはわかるわ。たった1人で、悩んでいたのね。私の方こそ、気が付いてあげられなくてごめんなさい」

そう言って泣きながら私の背中を撫でてくれたお義姉様。その手が温かくて、落ち着く。

「ローズちゃん、もう大丈夫よ。私からおばあ様に話しをするわ。ローズちゃんは、安心して国に帰る準備をして」

「え…でも…」

「おばあ様だって、ローズちゃんの幸せを誰よりも願っているのよ。きちんと話せば、分かってくれるわ。ただ…たまにはグラシュ国にも遊びに来てあげてね。あぁ…ちょっと言いにくいのだけれど、再来月の私たちの結婚式には、また来てくれると嬉しいのだけれど」

「ええ、もちろん来ますわ。アリサお義姉様、ありがとうございます。でも、おばあ様には明日、私から話をしますわ」

アリサお義姉様にばかり、頼ってもいられない。それにそんな嫌な仕事、お義姉様に押し付ける訳にはいかないし。

「分かったわ、でも大丈夫?」

「ええ、私にはアリサお義姉様という強い見方も出来ましたし。何だか勇気が出てきましたわ」

「そう、よかったわ。ねえ、それでアデル様とはどんな方なの?」

急に話を振って来たお義姉様。私はアデル様との出会いや、ティーナ様の事、マイケル様やグラス様の事などを詳しく話した。

「キャァー!!何それ、下手な恋愛小説より刺激的だわ。それにしても、6年もの初恋が実ってよかったわね。それで、もっと詳しく教えて」

さらに食らいつくアリサお義姉様。結局その日は、夜遅くまで話に花を咲かせたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく

たまこ
恋愛
 10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。  多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。  もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。

【完結】記憶にありませんが、責任は取りましょう

楽歩
恋愛
階段から落ちて三日後、アイラは目を覚ました。そして、自分の人生から十年分の記憶が消えていることを知らされる。 目の前で知らない男が号泣し、知らない子どもが「お母様!」としがみついてくる。 「状況を確認いたします。あなたは伯爵、こちらは私たちの息子。なお、私たちはまだ正式な夫婦ではない、という理解でよろしいですね?」 さらに残されていたのは鍵付き箱いっぱいの十年分の日記帳。中身は、乙女ゲームに転生したと信じ、攻略対象を順位付けして暴走していた“過去のアイラ”の黒歴史だった。 アイラは一冊の日記を最後の一行まで読み終えると、無言で日記を暖炉へ投げ入れる。 「これは、焼却処分が妥当ですわね」 だいぶ騒がしい人生の再スタートが今、始まる。

【完結】愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を

川上桃園
恋愛
「どうかもう私のことはお忘れください。閣下の幸せを、遠くから見守っております」  とある国で、宰相閣下が結婚するという新聞記事が出た。  これを見た地方官吏のコーデリアは突如、王都へ旅立った。亡き兄の友人であり、年上の想い人でもある「彼」に別れを告げるために。  だが目当ての宰相邸では使用人に追い返されて途方に暮れる。そこに出くわしたのは、彼と結婚するという噂の美しき令嬢の姿だった――。 新聞と涙 それでも恋をする  あなたの照らす道は祝福《コーデリア》 君のため道に灯りを点けておく 話したいことがある 会いたい《クローヴィス》  これは、冷血宰相と呼ばれた彼の結婚を巡る、恋のから騒ぎ。最後はハッピーエンドで終わるめでたしめでたしのお話です。 第22回書き出し祭り参加作品 2025.1.26 女性向けホトラン1位ありがとうございます 2025.2.14 後日談を投稿しました

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

【完結】そんなに好きならもっと早く言って下さい! 今更、遅いです! と口にした後、婚約者から逃げてみまして

Rohdea
恋愛
──婚約者の王太子殿下に暴言?を吐いた後、彼から逃げ出す事にしたのですが。 公爵令嬢のリスティは、幼い頃からこの国の王子、ルフェルウス殿下の婚約者となるに違いない。 周囲にそう期待されて育って来た。 だけど、当のリスティは王族に関するとある不満からそんなのは嫌だ! と常々思っていた。 そんなある日、 殿下の婚約者候補となる令嬢達を集めたお茶会で初めてルフェルウス殿下と出会うリスティ。 決して良い出会いでは無かったのに、リスティはそのまま婚約者に選ばれてしまう── 婚約後、殿下から向けられる態度や行動の意味が分からず困惑する日々を送っていたリスティは、どうにか殿下と婚約破棄は出来ないかと模索するも、気づけば婚約して1年が経っていた。 しかし、ちょうどその頃に入学した学園で、ピンク色の髪の毛が特徴の男爵令嬢が現れた事で、 リスティの気持ちも運命も大きく変わる事に…… ※先日、完結した、 『そんなに嫌いなら婚約破棄して下さい! と口にした後、婚約者が記憶喪失になりまして』 に出て来た王太子殿下と、その婚約者のお話です。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

後妻の条件を出したら……

しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。 格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。 だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。 しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。

処理中です...