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第45話:全て解決しました
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「フランソア、デイズ、そろそろ帰ろうか」
ポツリと呟いたのはお父様だ。
「そうですね、帰りましょう」
まだまだ会場中が興奮冷めやまぬ中、私たちは馬車に乗り込んで帰る事にした。これから王妃様とジェーン殿下の裁判、さらにラファエル殿下の王太子就任と、まだまだバタバタしそうだ。
ただ…私はジェーン殿下に惚れ薬を飲まされていた。その事実がショックでたまらないのだ。
私は5年もの間、不自由な生活を送らされてきたうえ、家族やデイズ様にも迷惑を掛けた。全て自分がまいた種だと、ずっと悩んできた。でも、実は薬のせいだっただなんて…
ショックで涙が込みあげてきた。ふとその時
“いつまでも過去にこだわっていても、幸せにはなれませんよ”
ラファエル殿下の言葉が、頭に浮かぶ。
「フランソア、大丈夫かい?まさかジェーン殿下がフランソアに惚れ薬を飲ませていただなんて!さぞショックだっただろう。可哀そうに。さすがに容認は出来ない。我が公爵家は厳しく王家の抗議しようと思っている」
「それよね、フランソアは好きでもない殿下に無理やり惚れさせられ、5年もの間、苦しい思いをして来たのだから。本当に私の娘の心を何だと思っているのかしら?」
お父様とお母様が怒っている。
「今回の件で、ジェーン殿下と王妃殿下は正式に処罰されるはずです。もしかしたら、極刑もありえるかもしれません。私は彼らが厳正なる裁判の結果、処罰されるのでしたら、それ以上何も望みません。王族への抗議も不要です」
貴族がほぼ全員参加しているあの夜会で、今回の事件が明るみになったのだ。既にジェーン殿下と王妃様の評判はがた落ちのはず。これ以上家から何かする必要もないだろう。
「フランソア…君って子は…分かったよ。ただ、ジェーン殿下と王妃殿下の厳罰を我が家からは要求させてもらう。それくらいはいいだろう?」
「ええ、もちろんですわ。人の心を弄ぶだなんて、やはり許される事ではありません。それに何より、もう二度と私や陛下の様に、心を支配される人が現れないためにも、2人は厳罰に処されるべきだと考えております」
己の欲望の為に、人の心を支配するだなんて。本当に許される事ではない!やはり私は、ジェーン殿下を許すことはできない。
そんな話をしている間に、屋敷に着いた。馬車から降りると両親と別れ、デイズ様と一緒に自室へと向かう。
「それではデイズ様、おやすみなさい」
「ああ…おやすみ」
さすがに今日は疲れた。早く湯あみをして寝よう。そう思い、湯あみを済ませた時だった。
「フランソア、ちょっといいかい?」
やって来たのは、デイズ様だ。
「ええ、もちろんですわ」
2人でソファに座る。
「フランソア、君はずっと僕の事を好きでいてくれたのだね。それなのに僕は…フランソアがまた殿下の元に行くのではないかと心配して…本当にすまなかった」
そう言って頭を下げたデイズ様。
「頭をお上げください!私自身、惚れ薬を飲まされていただなんて夢にも思いませんでしたもの。もし私がデイズ様と同じ立場でも、きっと同じ様に心配すると思いますわ。惚れ薬を飲まされていたとはいえ、デイズ様を悲しませてしまってごめんなさい。それから私を受け入れてくれて、ありがとうございます。私、今とても幸せですわ」
「僕も幸せだよ。でも…もしあの時、殿下の悪事を見破る事が出来たら、5年もの間君を苦しませることもなかったのに。そう思うと、悔しくてたまらないんだよ」
そう言ってデイズ様が唇を噛んでいる。
「あの時ジェーン殿下の悪事を見破るだなんて、さすがに無理ですわ。それに、もう過ぎた事を後悔しても仕方がありません。私は今、とても幸せです。だからこの幸せがずっと続くように、未来を見ましょう」
正直私の5年間を返して欲しい。ジェーン殿下に対する憎悪と怒りが、私の心を支配しているのは確かだ。でも…これ以上彼を恨んでも仕方がない事も分かっている。過ぎてしまった過去は、どう頑張っても戻って来ないのだから…
それならラファエル殿下がおっしゃっていた通り、過ぎてしまった事を後悔するよりも、未来の幸せな姿を思い描く方がずっといい。そう思う様に、今必死に自分に言い聞かせているのだ。
「フランソアは強いね。そうだね、僕たちの未来を、これからは見つめていこう。ただ…あいつらは許さないけれどね」
そう言うと、それはそれは悪い顔をしたデイズ様。なんだか背筋がぞくぞくする。
「さあ、フランソア、そろそろ寝ようか。なんだかんだ言って、全て解決したし」
「そうですわね。これで私も、外に出ても大丈夫ですよね?」
「ああ、もちろんだ…といいたいところだが、フランソアは少し自由に動き回るところがあるから、僕と一緒のとき以外は外出は控えて欲しい。万が一ジェーン殿下の様な、不届き者が現れるかもしれないからね」
さすがにジェーン殿下の様な人は、現れないと思うが…
「さあ、もう寝ようか。今日もフランソアと一緒に寝たくてね。フランソア、こっちにおいで」
ベッドに横になったデイズ様に腕を掴まれ、そのまま腕の中に引き込まれた。どうやら今日も一緒に寝る様だ。
「フランソア、今日は疲れたね。もう二度と君の心を弄ぶ不届き者が君に近づかない様に、僕がずっと見張っているから安心して欲しい。そう、ずっとね…」
「ありがとうございます。でもきっと、もうその様な方は現れませんわ」
本当にデイズ様は心配性ね。でも、そんなところも大好きだ。今日はさすがに疲れた。デイズ様の腕の中は、温かくて気持ちいい…
あっという間に眠りについたのだった。
※次回デイズ視点です。
ポツリと呟いたのはお父様だ。
「そうですね、帰りましょう」
まだまだ会場中が興奮冷めやまぬ中、私たちは馬車に乗り込んで帰る事にした。これから王妃様とジェーン殿下の裁判、さらにラファエル殿下の王太子就任と、まだまだバタバタしそうだ。
ただ…私はジェーン殿下に惚れ薬を飲まされていた。その事実がショックでたまらないのだ。
私は5年もの間、不自由な生活を送らされてきたうえ、家族やデイズ様にも迷惑を掛けた。全て自分がまいた種だと、ずっと悩んできた。でも、実は薬のせいだっただなんて…
ショックで涙が込みあげてきた。ふとその時
“いつまでも過去にこだわっていても、幸せにはなれませんよ”
ラファエル殿下の言葉が、頭に浮かぶ。
「フランソア、大丈夫かい?まさかジェーン殿下がフランソアに惚れ薬を飲ませていただなんて!さぞショックだっただろう。可哀そうに。さすがに容認は出来ない。我が公爵家は厳しく王家の抗議しようと思っている」
「それよね、フランソアは好きでもない殿下に無理やり惚れさせられ、5年もの間、苦しい思いをして来たのだから。本当に私の娘の心を何だと思っているのかしら?」
お父様とお母様が怒っている。
「今回の件で、ジェーン殿下と王妃殿下は正式に処罰されるはずです。もしかしたら、極刑もありえるかもしれません。私は彼らが厳正なる裁判の結果、処罰されるのでしたら、それ以上何も望みません。王族への抗議も不要です」
貴族がほぼ全員参加しているあの夜会で、今回の事件が明るみになったのだ。既にジェーン殿下と王妃様の評判はがた落ちのはず。これ以上家から何かする必要もないだろう。
「フランソア…君って子は…分かったよ。ただ、ジェーン殿下と王妃殿下の厳罰を我が家からは要求させてもらう。それくらいはいいだろう?」
「ええ、もちろんですわ。人の心を弄ぶだなんて、やはり許される事ではありません。それに何より、もう二度と私や陛下の様に、心を支配される人が現れないためにも、2人は厳罰に処されるべきだと考えております」
己の欲望の為に、人の心を支配するだなんて。本当に許される事ではない!やはり私は、ジェーン殿下を許すことはできない。
そんな話をしている間に、屋敷に着いた。馬車から降りると両親と別れ、デイズ様と一緒に自室へと向かう。
「それではデイズ様、おやすみなさい」
「ああ…おやすみ」
さすがに今日は疲れた。早く湯あみをして寝よう。そう思い、湯あみを済ませた時だった。
「フランソア、ちょっといいかい?」
やって来たのは、デイズ様だ。
「ええ、もちろんですわ」
2人でソファに座る。
「フランソア、君はずっと僕の事を好きでいてくれたのだね。それなのに僕は…フランソアがまた殿下の元に行くのではないかと心配して…本当にすまなかった」
そう言って頭を下げたデイズ様。
「頭をお上げください!私自身、惚れ薬を飲まされていただなんて夢にも思いませんでしたもの。もし私がデイズ様と同じ立場でも、きっと同じ様に心配すると思いますわ。惚れ薬を飲まされていたとはいえ、デイズ様を悲しませてしまってごめんなさい。それから私を受け入れてくれて、ありがとうございます。私、今とても幸せですわ」
「僕も幸せだよ。でも…もしあの時、殿下の悪事を見破る事が出来たら、5年もの間君を苦しませることもなかったのに。そう思うと、悔しくてたまらないんだよ」
そう言ってデイズ様が唇を噛んでいる。
「あの時ジェーン殿下の悪事を見破るだなんて、さすがに無理ですわ。それに、もう過ぎた事を後悔しても仕方がありません。私は今、とても幸せです。だからこの幸せがずっと続くように、未来を見ましょう」
正直私の5年間を返して欲しい。ジェーン殿下に対する憎悪と怒りが、私の心を支配しているのは確かだ。でも…これ以上彼を恨んでも仕方がない事も分かっている。過ぎてしまった過去は、どう頑張っても戻って来ないのだから…
それならラファエル殿下がおっしゃっていた通り、過ぎてしまった事を後悔するよりも、未来の幸せな姿を思い描く方がずっといい。そう思う様に、今必死に自分に言い聞かせているのだ。
「フランソアは強いね。そうだね、僕たちの未来を、これからは見つめていこう。ただ…あいつらは許さないけれどね」
そう言うと、それはそれは悪い顔をしたデイズ様。なんだか背筋がぞくぞくする。
「さあ、フランソア、そろそろ寝ようか。なんだかんだ言って、全て解決したし」
「そうですわね。これで私も、外に出ても大丈夫ですよね?」
「ああ、もちろんだ…といいたいところだが、フランソアは少し自由に動き回るところがあるから、僕と一緒のとき以外は外出は控えて欲しい。万が一ジェーン殿下の様な、不届き者が現れるかもしれないからね」
さすがにジェーン殿下の様な人は、現れないと思うが…
「さあ、もう寝ようか。今日もフランソアと一緒に寝たくてね。フランソア、こっちにおいで」
ベッドに横になったデイズ様に腕を掴まれ、そのまま腕の中に引き込まれた。どうやら今日も一緒に寝る様だ。
「フランソア、今日は疲れたね。もう二度と君の心を弄ぶ不届き者が君に近づかない様に、僕がずっと見張っているから安心して欲しい。そう、ずっとね…」
「ありがとうございます。でもきっと、もうその様な方は現れませんわ」
本当にデイズ様は心配性ね。でも、そんなところも大好きだ。今日はさすがに疲れた。デイズ様の腕の中は、温かくて気持ちいい…
あっという間に眠りについたのだった。
※次回デイズ視点です。
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