今度こそ穏やかに暮らしたいのに!どうして執着してくるのですか?

Karamimi

文字の大きさ
11 / 124

第11話:皆が僕に優しくしてくれます~グレイソン視点~

しおりを挟む
「失礼いたします。旦那様、グレイソン坊ちゃま、お医者様をお連れいたしました」

「ああ、ありがとう。グレイソン、君は侯爵家で酷い虐待を受けていたと聞く。一度しっかり医者に診てもらった方がいいと思ってな。早速彼を診てやってくれ」

医者が部屋に入って来たと思うと、僕の体をくまなくチェックしていた。

「これは酷い。さぞ痛かったでしょう。お可哀そうに…すぐにお薬を出します」

「ここまで酷い傷を負っていただなんて…グレイソン、本当にすまなかった」

再び男性が泣いている。僕の為に涙を流してくれるだなんて…それが無性に嬉しかった。

あちこちにある傷を手当てしてもらった。

「もしかしたら痕が残ってしまうかもしれませんが、出来る限り治療を続けていきましょう」

「痕が残るだなんて!やれる治療は何でも行ってくれ。金ならいくらでも払う。だから頼む」

「承知いたしました。私も全力を尽くします」

この人、僕の為にお医者様に頭を下げてくれるだなんて…

「グレイソン、今まで相当辛い思いをして来たのだな。可哀そうに。傷を治すためにも、しっかり食べないと。そろそろ昼食の時間だ。お腹が空いているだろう。食堂に行こうか」

治療が終わると男性に連れられ、食堂へとやって来た。僕なんかが皆と一緒に食べていいのかな?もし何か粗相をしたら、暴力を受けないだろうか?とにかく粗相をしない様に気を付けないと。

それにしても、凄いご馳走だ。ここ3日間でそれなりの食事を与えられていたお陰で、普通には食べられるが…でも、やっぱり緊張するな。とにかく慎重に。そう思っていたのだが、うっかりフォークを落としてしまったのだ。

きっと殴られる!そう思い、必死に謝った。さらに叔父上の家にいた時の記憶が蘇り、完全にパニックになってしまった。そんな僕を抱き起そうとする男性と女性。彼らに促され、再びイスに座った。

でも、完全に動揺している僕には、これ以上食事をする勇気がない。僕はどうしてこんなにどんくさいのだろう。きっと皆、僕に呆れているだろう。そう思っていたのだが…

なぜかこの家の娘、ルージュが僕の隣にやって来たのだ。そして僕の口元にお肉を差し出した。どうやら完全に動揺してしまった僕の為に、食べさせてくれる様だ。

10歳にもなって、同じ歳の、それも義理の妹に食事を食べさせてもらうだなんて、情けない。

それも語り掛ける様に、次はこれが美味しいですよっと、口に運んでくれるのだ。それがなんだか心地いい。

気が付くとお皿の上が空っぽだ。どうやら僕は、ルージュに全て食べさせてもらった様だ。さらに全て食べたお事を褒められ、頭まで撫でられた。完全に子ども扱いだ。ただ、それがなんだか嬉しかった。

食事を食べさせてもらっただけで、褒められるだなんて。


そして午後。

「ルージュがすまなかったね。あの子はちょっとお節介なところがあって。でもきっと、グレイソンの事が心配でたまらないのだろう。あんな子だけれど、これからも仲良くしてやって欲しい。それから私の事は、義父上と呼んで欲しい。私の妻の事は、義母上で頼む」

「義父上?」

「ああ、そうだよ。君はもう私たちの息子だからね。ただ、本当のご両親の事もあるだろうから、私たちの事は第二の両親だと思ってくれたらいいよ」

「義父上…」

その言葉が、何だか心地いい。

「それじゃあ屋敷を案内するよ。公爵家は好き勝手に移動してもらってもいいからね」

そう言うと義父上が屋敷中を案内してくれた。さすが公爵家、とても広い。訓練場やホール、図書館もあった。

「グレイソン、屋敷中を歩き回って疲れただろう。そろそろ夕食の時間だ。食堂へ行こうか?」

「はい」

屋敷を案内してもらった後、食堂へと向かう。どうやら夕食も、ルージュの隣の様だ。そしてお昼と同じように、僕の口に食事を運んでくれる。それもこの料理が美味しいとか、色々と説明しながら。

その様子を、義父上と義母上が嬉しそうに見つめていた。こんな穏やかで楽しい食事は、いつぶりだろう。両親が生きていた時以来だ。

食後はルージュが僕の部屋まで送ってくれたのだ。なんて優しい子なのだろう。

「お坊ちゃま、湯あみを行いましょう。ただ、お坊ちゃまは酷い怪我を負っておりますので、万が一傷が染みたら遠慮なく教えてください」

使用人が僕の体を丁寧に洗ってくれる。さらに湯あみ後は、傷口に薬を塗ってくれた。

「お可哀そうに、こんな酷い事をするだなんて…」

今にも泣きそうな顔の使用人。公爵家は使用人まで優しい人たちばかりなんだな。こんな素敵なところに、僕がいて本当にいいのだろうか?


ついそんな事を考えてしまう。

「それではお坊ちゃま、ゆっくりお休みください。もし何かあれば、外に控えておりますので、遠慮なくお声がけください」

そう言うと使用人は出て行った。フカフカなベッドに入る。こんなにフカフカなベッド、久しぶりだな。

これは夢なのだろうか?明日目が覚めたら、夢だったなんてことはないよね。

不安を抱きつつも、眠りについたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

処理中です...