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第12話:ルージュのお陰で僕は…~グレイソン視点~
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翌朝目を覚ますと、立派な天井が。そうか、僕は昨日、公爵家に来たのだった。本当に夢じゃないんだ。
そう思ったら、嬉しくてたまらなかった。僕が起きると同時に使用人が着替えを手伝ってくれた。さらに新しい包帯に取りかえてくれ、薬も塗ってくれる。
そして朝食を頂くため、食堂へとやって来た。昨日と変わらず笑顔で挨拶をしてくれる義父上と義母上、それにルージュ。昨日はちょっとルージュに色々とお世話してもらったが、今日から1人で食事をしよう。
いつまでも食べさせてもらうだなんて、恥ずかしい。そんな思いで食事を済ます。食後は自室に戻ってきた。
「お坊ちゃま、今日はいい天気ですよ。お散歩でもなさいますか?」
使用人が笑顔で話しかけてきたのだ。確かにいい天気だ。僕の部屋からは、太陽の光がさんさんと降り注いでる。
義父上も、公爵家を好きな様に移動していいと言っていた。でも…
長年僕は、部屋から出る事を禁止されていた。勝手に出ると、酷い暴力を受けていたのだ。そのせいか、なんだか部屋から出るのが怖い。でも、外に出たいな…
結局この日僕は、食事以外で外に出る事が出来なかった。
翌日、今日もいい天気だ。でも、やっぱり外に出るのが怖い。お義母上が外にでてはどうか?と誘ってくれるが、どうしても外に出るのが怖いのだ。きっとあの人たちなら、外に出ても笑顔で見守ってくれるだろう。そんな事は分かっているのだ。でも…
本当に僕はダメな人間だな。あんなに優しい義父上や義母上が外に出てもいいと言ってくれているのに。部屋でウジウジしているだなんて。
でも、自分から外に出ようとすると、叔父上の家で過ごした日々がフラッシュバックしてしまい、足がすくんでしまうのだ。
今日も窓の外を眺めながら過ごしていると…
「グレイソン様、今日はお天気もいいのでお外に行きましょう」
僕の元を訪ねてきてくれたのは、ルージュだ。
「でも…勝手に部屋の外に出ると…その…」
君の両親はそんな人じゃないとわかっている。でも、どうしても昔の記憶が僕を縛り付けているのだ。
そんな僕に
「ここはもう、あなたの家でもあるのです。大きな顔をして好きな事をしたらいいのです」
そう言うと、僕の手を握り歩き出したルージュ。向った先は、中庭だ。公爵家の中庭には、沢山の花が咲いていて本当に綺麗なのだ。それに外の空気はやっぱり美味しいな。
「このお花。キンシバイというお花なのですが、私が大好きなお花なのです。この温かみのある黄色のお花、とても綺麗でしょう?」
ふとルージュが黄色い花を指さし、そんな事を言いだしたのだ。この花は…
間違いない、母上が大好きだった花だ。
“グレイソン、お母様はこのお花が一番好きなの。温かみのある黄色い花が、とても綺麗でしょう?”
そう母上がいつも言っていた。そう、今のルージュの言葉は、まさに母上の言葉だったのだ。
母上…
今までは生きる事に精一杯で、母上の事を考える余裕なんてなかった。でも今、久しぶりに優しかった母上の事を思い出したのだ。一気に涙が溢れだす。
“グレイソン、ビービー泣くな。本当に目障りな奴だな”
叔父上の言葉が脳裏に浮かんだ。ダメだ、泣いたら。また殴られる!僕は泣く事も許されずにいたのだ。無意識に謝る僕に
「今は亡き大切なお母様を思い出したのですよね。泣きたい時は、好きなだけ泣いたらいいのです。感情を出すことは、とても素敵な事なのですよ」
そう言ってハンカチを渡してくれただけでなく、背中を優しく撫でてくれたのだ。背中越しに伝わる温もり。まるで亡くなった母上の様だ…
しばらく泣いた後、やっと落ち着いた。同じ歳の女の子の前で泣くだなんて、さすがに恥ずかしい。それでもルージュの優しさが嬉しくて、彼女に向かってほほ笑んでしまった。
その瞬間、
“何をニヤケテいるのだ。気持ち悪いな”
そう言って殴る叔父上やその家族の顔が脳裏に浮かんだ。しまった、僕の笑顔は気持ち悪いのだった。きっとルージュも、そう思ったのだが…
“僕の笑顔が素敵だ”と言ってくれたのだ。そう言えば昔、両親も僕の笑顔が素敵だと言ってくれていたな。なんだかルージュといると、両親といた頃の事を思い出す。
その後野菜や果物が栽培されているハウスに連れて行ってくれたルージュ。ここでも僕の世話を焼いてくれる。使用人も、嬉しそうに野菜や果物を勧めてくれるのだ。
僕が美味しいというと、ルージュも使用人もとても嬉しそうな顔をするのだ。その顔を見ると、僕も嬉しくなる。
さらにルージュは“私はあなたの笑顔が好きです。どうかこれからも、笑顔でいて下さいね”そう言ってくれたのだ。その瞬間、母上の優しい笑顔と重なった。
僕の心が一気に温かいものに包まれる様な、そんな感覚に襲われる。
ルージュ、僕は本当に君に会えてよかった。
正直まだ、自分をさらけ出すのは怖い。
でも、ルージュの前なら少しだけ自分を出せる様な気がする。その証拠に、自分からルージュの手を取ったのだ。小さくて温かい手。僕はこの手を離したくない。
今までに感じた事のない感情が、僕を支配していく。この気持ちは一体何なんだろう…
ただ1つ言える事は、これからもずっとルージュの傍にいたいという事だ。ルージュの手を握りながら、これからもずっとルージュの傍にいられますようにと、密かに願ったのだった。
※次回、ルージュ視点に戻ります。
よろしくお願いしますm(__)m
そう思ったら、嬉しくてたまらなかった。僕が起きると同時に使用人が着替えを手伝ってくれた。さらに新しい包帯に取りかえてくれ、薬も塗ってくれる。
そして朝食を頂くため、食堂へとやって来た。昨日と変わらず笑顔で挨拶をしてくれる義父上と義母上、それにルージュ。昨日はちょっとルージュに色々とお世話してもらったが、今日から1人で食事をしよう。
いつまでも食べさせてもらうだなんて、恥ずかしい。そんな思いで食事を済ます。食後は自室に戻ってきた。
「お坊ちゃま、今日はいい天気ですよ。お散歩でもなさいますか?」
使用人が笑顔で話しかけてきたのだ。確かにいい天気だ。僕の部屋からは、太陽の光がさんさんと降り注いでる。
義父上も、公爵家を好きな様に移動していいと言っていた。でも…
長年僕は、部屋から出る事を禁止されていた。勝手に出ると、酷い暴力を受けていたのだ。そのせいか、なんだか部屋から出るのが怖い。でも、外に出たいな…
結局この日僕は、食事以外で外に出る事が出来なかった。
翌日、今日もいい天気だ。でも、やっぱり外に出るのが怖い。お義母上が外にでてはどうか?と誘ってくれるが、どうしても外に出るのが怖いのだ。きっとあの人たちなら、外に出ても笑顔で見守ってくれるだろう。そんな事は分かっているのだ。でも…
本当に僕はダメな人間だな。あんなに優しい義父上や義母上が外に出てもいいと言ってくれているのに。部屋でウジウジしているだなんて。
でも、自分から外に出ようとすると、叔父上の家で過ごした日々がフラッシュバックしてしまい、足がすくんでしまうのだ。
今日も窓の外を眺めながら過ごしていると…
「グレイソン様、今日はお天気もいいのでお外に行きましょう」
僕の元を訪ねてきてくれたのは、ルージュだ。
「でも…勝手に部屋の外に出ると…その…」
君の両親はそんな人じゃないとわかっている。でも、どうしても昔の記憶が僕を縛り付けているのだ。
そんな僕に
「ここはもう、あなたの家でもあるのです。大きな顔をして好きな事をしたらいいのです」
そう言うと、僕の手を握り歩き出したルージュ。向った先は、中庭だ。公爵家の中庭には、沢山の花が咲いていて本当に綺麗なのだ。それに外の空気はやっぱり美味しいな。
「このお花。キンシバイというお花なのですが、私が大好きなお花なのです。この温かみのある黄色のお花、とても綺麗でしょう?」
ふとルージュが黄色い花を指さし、そんな事を言いだしたのだ。この花は…
間違いない、母上が大好きだった花だ。
“グレイソン、お母様はこのお花が一番好きなの。温かみのある黄色い花が、とても綺麗でしょう?”
そう母上がいつも言っていた。そう、今のルージュの言葉は、まさに母上の言葉だったのだ。
母上…
今までは生きる事に精一杯で、母上の事を考える余裕なんてなかった。でも今、久しぶりに優しかった母上の事を思い出したのだ。一気に涙が溢れだす。
“グレイソン、ビービー泣くな。本当に目障りな奴だな”
叔父上の言葉が脳裏に浮かんだ。ダメだ、泣いたら。また殴られる!僕は泣く事も許されずにいたのだ。無意識に謝る僕に
「今は亡き大切なお母様を思い出したのですよね。泣きたい時は、好きなだけ泣いたらいいのです。感情を出すことは、とても素敵な事なのですよ」
そう言ってハンカチを渡してくれただけでなく、背中を優しく撫でてくれたのだ。背中越しに伝わる温もり。まるで亡くなった母上の様だ…
しばらく泣いた後、やっと落ち着いた。同じ歳の女の子の前で泣くだなんて、さすがに恥ずかしい。それでもルージュの優しさが嬉しくて、彼女に向かってほほ笑んでしまった。
その瞬間、
“何をニヤケテいるのだ。気持ち悪いな”
そう言って殴る叔父上やその家族の顔が脳裏に浮かんだ。しまった、僕の笑顔は気持ち悪いのだった。きっとルージュも、そう思ったのだが…
“僕の笑顔が素敵だ”と言ってくれたのだ。そう言えば昔、両親も僕の笑顔が素敵だと言ってくれていたな。なんだかルージュといると、両親といた頃の事を思い出す。
その後野菜や果物が栽培されているハウスに連れて行ってくれたルージュ。ここでも僕の世話を焼いてくれる。使用人も、嬉しそうに野菜や果物を勧めてくれるのだ。
僕が美味しいというと、ルージュも使用人もとても嬉しそうな顔をするのだ。その顔を見ると、僕も嬉しくなる。
さらにルージュは“私はあなたの笑顔が好きです。どうかこれからも、笑顔でいて下さいね”そう言ってくれたのだ。その瞬間、母上の優しい笑顔と重なった。
僕の心が一気に温かいものに包まれる様な、そんな感覚に襲われる。
ルージュ、僕は本当に君に会えてよかった。
正直まだ、自分をさらけ出すのは怖い。
でも、ルージュの前なら少しだけ自分を出せる様な気がする。その証拠に、自分からルージュの手を取ったのだ。小さくて温かい手。僕はこの手を離したくない。
今までに感じた事のない感情が、僕を支配していく。この気持ちは一体何なんだろう…
ただ1つ言える事は、これからもずっとルージュの傍にいたいという事だ。ルージュの手を握りながら、これからもずっとルージュの傍にいられますようにと、密かに願ったのだった。
※次回、ルージュ視点に戻ります。
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