12 / 124
第12話:ルージュのお陰で僕は…~グレイソン視点~
しおりを挟む
翌朝目を覚ますと、立派な天井が。そうか、僕は昨日、公爵家に来たのだった。本当に夢じゃないんだ。
そう思ったら、嬉しくてたまらなかった。僕が起きると同時に使用人が着替えを手伝ってくれた。さらに新しい包帯に取りかえてくれ、薬も塗ってくれる。
そして朝食を頂くため、食堂へとやって来た。昨日と変わらず笑顔で挨拶をしてくれる義父上と義母上、それにルージュ。昨日はちょっとルージュに色々とお世話してもらったが、今日から1人で食事をしよう。
いつまでも食べさせてもらうだなんて、恥ずかしい。そんな思いで食事を済ます。食後は自室に戻ってきた。
「お坊ちゃま、今日はいい天気ですよ。お散歩でもなさいますか?」
使用人が笑顔で話しかけてきたのだ。確かにいい天気だ。僕の部屋からは、太陽の光がさんさんと降り注いでる。
義父上も、公爵家を好きな様に移動していいと言っていた。でも…
長年僕は、部屋から出る事を禁止されていた。勝手に出ると、酷い暴力を受けていたのだ。そのせいか、なんだか部屋から出るのが怖い。でも、外に出たいな…
結局この日僕は、食事以外で外に出る事が出来なかった。
翌日、今日もいい天気だ。でも、やっぱり外に出るのが怖い。お義母上が外にでてはどうか?と誘ってくれるが、どうしても外に出るのが怖いのだ。きっとあの人たちなら、外に出ても笑顔で見守ってくれるだろう。そんな事は分かっているのだ。でも…
本当に僕はダメな人間だな。あんなに優しい義父上や義母上が外に出てもいいと言ってくれているのに。部屋でウジウジしているだなんて。
でも、自分から外に出ようとすると、叔父上の家で過ごした日々がフラッシュバックしてしまい、足がすくんでしまうのだ。
今日も窓の外を眺めながら過ごしていると…
「グレイソン様、今日はお天気もいいのでお外に行きましょう」
僕の元を訪ねてきてくれたのは、ルージュだ。
「でも…勝手に部屋の外に出ると…その…」
君の両親はそんな人じゃないとわかっている。でも、どうしても昔の記憶が僕を縛り付けているのだ。
そんな僕に
「ここはもう、あなたの家でもあるのです。大きな顔をして好きな事をしたらいいのです」
そう言うと、僕の手を握り歩き出したルージュ。向った先は、中庭だ。公爵家の中庭には、沢山の花が咲いていて本当に綺麗なのだ。それに外の空気はやっぱり美味しいな。
「このお花。キンシバイというお花なのですが、私が大好きなお花なのです。この温かみのある黄色のお花、とても綺麗でしょう?」
ふとルージュが黄色い花を指さし、そんな事を言いだしたのだ。この花は…
間違いない、母上が大好きだった花だ。
“グレイソン、お母様はこのお花が一番好きなの。温かみのある黄色い花が、とても綺麗でしょう?”
そう母上がいつも言っていた。そう、今のルージュの言葉は、まさに母上の言葉だったのだ。
母上…
今までは生きる事に精一杯で、母上の事を考える余裕なんてなかった。でも今、久しぶりに優しかった母上の事を思い出したのだ。一気に涙が溢れだす。
“グレイソン、ビービー泣くな。本当に目障りな奴だな”
叔父上の言葉が脳裏に浮かんだ。ダメだ、泣いたら。また殴られる!僕は泣く事も許されずにいたのだ。無意識に謝る僕に
「今は亡き大切なお母様を思い出したのですよね。泣きたい時は、好きなだけ泣いたらいいのです。感情を出すことは、とても素敵な事なのですよ」
そう言ってハンカチを渡してくれただけでなく、背中を優しく撫でてくれたのだ。背中越しに伝わる温もり。まるで亡くなった母上の様だ…
しばらく泣いた後、やっと落ち着いた。同じ歳の女の子の前で泣くだなんて、さすがに恥ずかしい。それでもルージュの優しさが嬉しくて、彼女に向かってほほ笑んでしまった。
その瞬間、
“何をニヤケテいるのだ。気持ち悪いな”
そう言って殴る叔父上やその家族の顔が脳裏に浮かんだ。しまった、僕の笑顔は気持ち悪いのだった。きっとルージュも、そう思ったのだが…
“僕の笑顔が素敵だ”と言ってくれたのだ。そう言えば昔、両親も僕の笑顔が素敵だと言ってくれていたな。なんだかルージュといると、両親といた頃の事を思い出す。
その後野菜や果物が栽培されているハウスに連れて行ってくれたルージュ。ここでも僕の世話を焼いてくれる。使用人も、嬉しそうに野菜や果物を勧めてくれるのだ。
僕が美味しいというと、ルージュも使用人もとても嬉しそうな顔をするのだ。その顔を見ると、僕も嬉しくなる。
さらにルージュは“私はあなたの笑顔が好きです。どうかこれからも、笑顔でいて下さいね”そう言ってくれたのだ。その瞬間、母上の優しい笑顔と重なった。
僕の心が一気に温かいものに包まれる様な、そんな感覚に襲われる。
ルージュ、僕は本当に君に会えてよかった。
正直まだ、自分をさらけ出すのは怖い。
でも、ルージュの前なら少しだけ自分を出せる様な気がする。その証拠に、自分からルージュの手を取ったのだ。小さくて温かい手。僕はこの手を離したくない。
今までに感じた事のない感情が、僕を支配していく。この気持ちは一体何なんだろう…
ただ1つ言える事は、これからもずっとルージュの傍にいたいという事だ。ルージュの手を握りながら、これからもずっとルージュの傍にいられますようにと、密かに願ったのだった。
※次回、ルージュ視点に戻ります。
よろしくお願いしますm(__)m
そう思ったら、嬉しくてたまらなかった。僕が起きると同時に使用人が着替えを手伝ってくれた。さらに新しい包帯に取りかえてくれ、薬も塗ってくれる。
そして朝食を頂くため、食堂へとやって来た。昨日と変わらず笑顔で挨拶をしてくれる義父上と義母上、それにルージュ。昨日はちょっとルージュに色々とお世話してもらったが、今日から1人で食事をしよう。
いつまでも食べさせてもらうだなんて、恥ずかしい。そんな思いで食事を済ます。食後は自室に戻ってきた。
「お坊ちゃま、今日はいい天気ですよ。お散歩でもなさいますか?」
使用人が笑顔で話しかけてきたのだ。確かにいい天気だ。僕の部屋からは、太陽の光がさんさんと降り注いでる。
義父上も、公爵家を好きな様に移動していいと言っていた。でも…
長年僕は、部屋から出る事を禁止されていた。勝手に出ると、酷い暴力を受けていたのだ。そのせいか、なんだか部屋から出るのが怖い。でも、外に出たいな…
結局この日僕は、食事以外で外に出る事が出来なかった。
翌日、今日もいい天気だ。でも、やっぱり外に出るのが怖い。お義母上が外にでてはどうか?と誘ってくれるが、どうしても外に出るのが怖いのだ。きっとあの人たちなら、外に出ても笑顔で見守ってくれるだろう。そんな事は分かっているのだ。でも…
本当に僕はダメな人間だな。あんなに優しい義父上や義母上が外に出てもいいと言ってくれているのに。部屋でウジウジしているだなんて。
でも、自分から外に出ようとすると、叔父上の家で過ごした日々がフラッシュバックしてしまい、足がすくんでしまうのだ。
今日も窓の外を眺めながら過ごしていると…
「グレイソン様、今日はお天気もいいのでお外に行きましょう」
僕の元を訪ねてきてくれたのは、ルージュだ。
「でも…勝手に部屋の外に出ると…その…」
君の両親はそんな人じゃないとわかっている。でも、どうしても昔の記憶が僕を縛り付けているのだ。
そんな僕に
「ここはもう、あなたの家でもあるのです。大きな顔をして好きな事をしたらいいのです」
そう言うと、僕の手を握り歩き出したルージュ。向った先は、中庭だ。公爵家の中庭には、沢山の花が咲いていて本当に綺麗なのだ。それに外の空気はやっぱり美味しいな。
「このお花。キンシバイというお花なのですが、私が大好きなお花なのです。この温かみのある黄色のお花、とても綺麗でしょう?」
ふとルージュが黄色い花を指さし、そんな事を言いだしたのだ。この花は…
間違いない、母上が大好きだった花だ。
“グレイソン、お母様はこのお花が一番好きなの。温かみのある黄色い花が、とても綺麗でしょう?”
そう母上がいつも言っていた。そう、今のルージュの言葉は、まさに母上の言葉だったのだ。
母上…
今までは生きる事に精一杯で、母上の事を考える余裕なんてなかった。でも今、久しぶりに優しかった母上の事を思い出したのだ。一気に涙が溢れだす。
“グレイソン、ビービー泣くな。本当に目障りな奴だな”
叔父上の言葉が脳裏に浮かんだ。ダメだ、泣いたら。また殴られる!僕は泣く事も許されずにいたのだ。無意識に謝る僕に
「今は亡き大切なお母様を思い出したのですよね。泣きたい時は、好きなだけ泣いたらいいのです。感情を出すことは、とても素敵な事なのですよ」
そう言ってハンカチを渡してくれただけでなく、背中を優しく撫でてくれたのだ。背中越しに伝わる温もり。まるで亡くなった母上の様だ…
しばらく泣いた後、やっと落ち着いた。同じ歳の女の子の前で泣くだなんて、さすがに恥ずかしい。それでもルージュの優しさが嬉しくて、彼女に向かってほほ笑んでしまった。
その瞬間、
“何をニヤケテいるのだ。気持ち悪いな”
そう言って殴る叔父上やその家族の顔が脳裏に浮かんだ。しまった、僕の笑顔は気持ち悪いのだった。きっとルージュも、そう思ったのだが…
“僕の笑顔が素敵だ”と言ってくれたのだ。そう言えば昔、両親も僕の笑顔が素敵だと言ってくれていたな。なんだかルージュといると、両親といた頃の事を思い出す。
その後野菜や果物が栽培されているハウスに連れて行ってくれたルージュ。ここでも僕の世話を焼いてくれる。使用人も、嬉しそうに野菜や果物を勧めてくれるのだ。
僕が美味しいというと、ルージュも使用人もとても嬉しそうな顔をするのだ。その顔を見ると、僕も嬉しくなる。
さらにルージュは“私はあなたの笑顔が好きです。どうかこれからも、笑顔でいて下さいね”そう言ってくれたのだ。その瞬間、母上の優しい笑顔と重なった。
僕の心が一気に温かいものに包まれる様な、そんな感覚に襲われる。
ルージュ、僕は本当に君に会えてよかった。
正直まだ、自分をさらけ出すのは怖い。
でも、ルージュの前なら少しだけ自分を出せる様な気がする。その証拠に、自分からルージュの手を取ったのだ。小さくて温かい手。僕はこの手を離したくない。
今までに感じた事のない感情が、僕を支配していく。この気持ちは一体何なんだろう…
ただ1つ言える事は、これからもずっとルージュの傍にいたいという事だ。ルージュの手を握りながら、これからもずっとルージュの傍にいられますようにと、密かに願ったのだった。
※次回、ルージュ視点に戻ります。
よろしくお願いしますm(__)m
708
あなたにおすすめの小説
【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます
楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。
伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。
そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。
「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」
神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。
「お話はもうよろしいかしら?」
王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。
※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる