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第45話:どこまで性悪なのでしょうか

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その後2人は、それぞれ別々に教室を出て行った。

「全ての真実が映像に残っていましたね。さて、真犯人が分かった様だけれど、何か言い分はあるかい?」

グレイソン様が、にっこりと笑って3人に詰め寄っている。これは相当怒っている様だ。後ろには怖い顔をしたアルフレッド様と殿下の姿も。

「これは違うのです。きっと何かの間違いですわ」

「このカメラは、王宮でも採用されている最新のものだ。そもそも映像としてバッチリ撮れているのだから、間違いの訳がないだろう。まさか学院でこんなふしだらな行為を行っていただなんて。君たちは学院を何だと思っているのだい?」

クリストファー殿下が、3人に問いかけている。さすがに映像が残っている以上、言い逃れは出来ないだろう。

「皆さん、落ち着いて下さい。君たち、詳しい話を聞きたいので、職員室に来ていただけますか?それから、ルージュ嬢も一緒に」

どうやら私も一緒に連れて行かれる様だ。

「先生、僕も同行してもいいでしょうか?今回の被害者は、我がヴァレスティナ公爵家のメイドです。公爵家のメイドが、あらぬ疑いを掛けられたのですから。このまま黙っている事は出来ません」

「分かりました。それではグレイソン殿も、一緒に来てください。他の人たちは、自習という事でお願いします。それでは行きましょう」

先生と一緒に教室を出ていく。ヴァイオレットはものすごくふてくされた顔をしているが、令息たちは既に真っ青な顔をしている。まあ、そうでしょうね。公爵家の人間に喧嘩を売っただけでなく、クラスの皆に自分のふしだらな映像を見られたのだ。

普通の感性なら、恥ずかしくてたまらないだろう。ただ…あの女のメンタルは本当に尊敬するわ。さて、どんな風に言い訳をするのかしら?

職員室に着くと、奥の部屋へと案内された。

「しばらくここでお待ちください。すぐに戻ります」

急いで先生が部屋から出て行った。

すると…

「ルージュ嬢、グレイソン殿、本当に申し訳ございませんでした。謝っても許してもらえるとは思っておりませんが、まずは謝罪をさせて下さい。それにしても、僕以外の令息ともあのような行為を行っていただなんて…」

「僕からも謝罪させてください。僕は本当に愚かでした。ヴァイオレット嬢の言葉を間に受けて、ルージュ嬢を陥れる手助けをしてしまった事。ただ、これは言い訳になるのですが、僕はヴァイオレット嬢に騙されていたのです。ヴァイオレット嬢が“ルージュ様に酷い暴言と暴力に悩まされている”というので、何とか助けてあげたいと思って。でも、よく考えたら、ルージュ嬢がそんな事をする訳ないのに…」

「それ、僕も同じことを言われたよ。泣いて必死に訴えてくるから、つい信じちゃったけれど…よく考えたら、いつも穏やかで優しいルージュ嬢がそんな事をする訳ないのにね…その上、他の令息とも関係を持っていただなんて…」

なぜか令息たちが盛り上がっている。それにしても、どうしてみんなこの女の嘘を、まんまと信じてしまうのかしら?本当に理解できないわ…

「ちょっと、黙って聞いていれば好き勝手言って。あなた達が私の為なら何でもしてくれるとおっしゃったのじゃない。どうして私だけを、悪者にするのですか?」

「だって本当の事だろう?」

「そうだよ。君が全て悪いんだ」

「何ですって」

何なの、この人たち。ヴァイオレットが非常に性格が悪いのは分かっているが、令息たちだって大概の性格をしている。はっきり言って、3人とも私に言わせれば同罪よ。さすがにいい加減にして欲しいと叫ぼうとした時だった。

「いい加減にしてくれ。どんな理由があろうと、君たちが家のメイドを犯人に仕立て上げようとした事は事実です。もしこのまま家のメイドが犯人にされたら、彼女の運命はどうなっていたか、考えたことはあるのですか?己の欲望の為に、何の罪もない人間を巻き込むことが、どれほどの罪か!とにかく僕は、君たちを絶対に許さない。義父上や義母上、ルージュが許すと言ったとしてもね!」

「あら、私も許すつもりはありませんわ。私の大切な専属メイド、アリーを傷つけようとしたあなた達を、絶対に許さない!グレイソン様が言った通り、もしこのままアリーが犯人にされていたら、アリーだけでなくその家族にだって、甚大な被害が及ぶのよ。その事を考えたら、絶対に許すことなんて出来ないわ」

アリーは男爵令嬢だが、家は貧しく幼い弟や妹の為に、必死にメイドの仕事をしている。そんな彼女を犯人に仕立て上げるだなんて、許せる道理がない。

「たかがメイドごときに、そんなにむきになって」

ポツリとそう呟いたのは、ヴァイオレットだ。たかがメイドですって!

「今なんて言った?たかがメイド?ふざけないで。アリーは私の大切な家族よ。そしてアリーの後ろには、アリーの大切な家族がいるのよ」

「アリーは大切な家族?あなた、バカなの?使用人は所詮使用人よ。別にその使用人がどうなろうが、知ったこっちゃないじゃない。また新しい使用人を雇えばいいだけ。いつでも替りの効く駒よ」

そう言い放ったヴァイオレット。こいつ、どこまで腐っているのよ。今までに感じた事のない怒りがこみあげてくる。

そんな私の手をギュッと握ったのは、グレイソン様だ。その時だった、ちょうど先生が学院長先生と数名の先生を連れて部屋に入って来たのだ。

「皆様、お待たせいたしました。さあ、話し合いを始めましょう」
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