今度こそ穏やかに暮らしたいのに!どうして執着してくるのですか?

Karamimi

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第85話:ルージュを思って身を引いたのに…~グレイソン視点~

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殿下に話しを聞いてから、僕はルージュや義両親に合わせる顔がなくて、ずっと彼らを避けていた。朝から晩まで騎士団で過ごす日々。

アルフレッドからは

「ルージュ嬢と一体何があったのだい?露骨に彼女を避けて。ルージュ嬢、とても寂しそうな顔をしているよ。グレイソンはルージュ嬢を、愛しているのではないのかい?」

愛している!愛しているからこそ、これ以上ルージュに関わる事なんて出来ないのだ。僕は大切なルージュと義両親を、死に追いやったのだ。

それもルージュに酷い事をしたヴァイオレット嬢に、うつつを抜かした結果だ。こんな愚かな僕が、公爵家を継ぐだなんて、絶対にあってはならないのだ。

きっとルージュも、心の中で僕を恨んでいるはずだ。でもルージュは優しいから、それを表に出さないだけ。もしかしたら、僕の顔を見るのも本当は辛いくらい、ルージュは僕を恨んでいるのかもしれない。

それなのに、僕は彼女に気持ちを伝えてしまったのだ。きっとルージュも、迷惑だっただろう。

これ以上ルージュを苦しめないためにも、僕はルージュの前から姿を消さないといけない。必死に考えた結果、僕は養子縁組を解消し、騎士団の宿舎で生活する事に決め、改めて義両親にそのとこを伝えた。

最初は反対していた義両親だったが、最後は受け入れてくれたのだ。この人たちは、どこまで優しいのだろう。4年もの間、僕の為に時間を費やし、次期公爵になるための勉強にも力を入れてくれていたのに…

なんだか義両親に対して、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。でも、これでよかったんだ。僕には公爵家を継ぐ権利も、ルージュを幸せにする権利もないのだから…

そう何度も自分に言い聞かせた。

ただ、黙っていなかったのはルージュだ。僕の部屋に押しかけてくると

「グレイソン様、どうして急に家を出ていくとおっしゃるのですか?私におっしゃってくださったではありませんか?“僕と一緒に公爵家を支えて行って欲しい”と。あの言葉は嘘だったのですか?」

そう訴えて来たのだ。そして僕の手を握ったのだ。温かくて柔らかいルージュの手。僕の大好きな手。もう二度と握る事なんてないと思っていたのに…嬉しくてたまらない。でも、僕はその手を振り払った。

そして、もう自分には構わないで欲しい。ルージュの顔なんて見たくない。公爵家を継ぐことも負担でしかない。そう必死に訴えた。

本当はそんな事なんて、微塵も思っていない。本当はルージュと義両親と一緒に、ずっと公爵家にいたい。公爵家を継いで、義両親に恩返しがしたい、ルージュや義両親に、もっともっと楽をさせてあげたい。

そんな気持ちが溢れ出す。でも、それはもう叶わない夢だ。僕の存在自体が、ルージュにとって苦痛でしかないとわかった今、どんな顔をして公爵家に居座れるだろう。僕がこの家を去る事が、唯一彼らに対する償いになるのだから…

そんな僕の言葉を聞いたルージュが、“もう私の事を嫌いになったのですか?”そう今にも泣きだしそうな声で訴えて来たのだ。

嫌いなわけがない。今でも誰よりも愛している。でも…

「ああ…嫌いだ。顔も見たくない程に…」

そんな酷い言葉を投げかけてしまった。でも僕には、こう言うしか方法がなかったのだ。これでいい、これできっとルージュも心置きなく僕を恨み、嫌えるだろう。

僕は、ルージュと義両親が命を落とす原因を作った男なのだから…

僕の言葉を聞いたルージュは深呼吸をすると、まっすぐ僕を見つめた。そんなルージュを直視する事が出来なくて、つい目をそらした。

「あなた様の気持ちは分かりました。ただ、たとえグレイソン様が私の事が大嫌いでも、私はグレイソン様が大好きです。でも、私が傍にいる事であなた様を苦しめてしまうのなら…私は喜んであなた様の前から消えますわ。どうか…どうか笑顔を忘れずに、幸せに暮らしてください。あなたの事を、遠くから見守っております」

えっ?僕の前から消える?遠くで見守っている?それは一体どういう意味だ?

ビックリしてルージュの方を見ると、ポロポロと涙を流し、それでも笑っていた。その顔を見た瞬間、胸が猛烈に締め付けられるような苦しさが僕を襲う。

そんな僕をしり目に、クルリと反対側を向くと、部屋から去って行ったのだ。

無意識に待って…と叫んでいたが、ルージュは行ってしまった。

ルージュ、泣いていた。どうして?ルージュは僕の事を恨んでいるのではないのかい?僕はあんなにも酷い言葉を投げかけたのに、どうしてルージュはあんなにも優しい言葉を掛けてくれるのだい?

1度目の生で、取り返しのつかない事をしてしまった僕なのに…

僕は何か間違った事をしたのだろうか?

ルージュの涙を見て、なんだか不安になって来た。

この日僕は、ルージュの涙と言葉が気になって、一睡も眠る事が出来なかった。

そして翌朝、いつもの様に朝早く稽古場へと向かった。

「グレイソン、今日はまた一段と酷い顔をしているな?それで、本当に公爵に養子縁組を解消したい事と、騎士団の宿舎で暮したい事を話したのかい?」

朝から僕に話しかけてきたのは、アルフレッドだ。アルフレッドには少し前、この話しをしていたのだ。

「ああ、話したよ。義父上もルージュも受け入れてくれたよ。近々騎士団長にも話をして、宿舎にうつるつもりだ。僕は貴族ではなくなってしまうけれど、これからも仲良くしてくれるかい?」

「ああ、もちろんだよ。ただ…本当にいいのか?ルージュ嬢の事」

「もうその話はしないでくれ。さあ、稽古をしよう」

もうルージュの事は考えない。そう心に決め、稽古に打ち込んだのだった。
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