57 / 57
第57話:卒業式を迎えました
しおりを挟む
翌日、少し早く起きた私は、いつも通り制服に袖を通し、鏡の前に立った。この制服を着るのも、今日で最後。そう思うと、なんだか寂しい気もする。初めてこの制服に袖を通した時、これから始まる生活に胸躍らせた。
沢山の友人たちと、お茶をしたりおしゃべりをしたり、そんな日々を夢見て。もちろん、大好きなラドル様との幸せな日々も、ずっと続くと思っていた。
でも…
私は全てを失った。友人も学校での居場所も、そして婚約者も。地獄の様な日々から私を救い出してくれたのは、ブラッド様だ。この半年色々とあったが、それでもなんとかやってこられたのは、ブラッド様のお陰だ。
それと同時に、この国の貴族たちに、絶望もした。そんな日々も、今日で終わりだ。最後の日くらいは、幸せな気持ちで終わりたい。
「お嬢様、ブラッド様がお部屋のお外でお待ちです」
鏡の前から全く動かない私に、恐る恐る声をかけてきた使用人。
「ちょっと考え事をしていて。すぐに行くわね」
急いで準備を整え、部屋の外に出る。
「おはよう、アントアーネ、いよいよ卒業だね」
「はい、いよいよ卒業ですね。やっとこの国の嫌な貴族たちとも、おさらばですわ。今日くらいは、穏便にいきたいですね」
最後ぐらいは、穏やかな気持ちで過ごしたい。そして、心を着なくリューズ王国に旅立ちたいのだ。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、なぜかブラッド様が苦笑いをしている。
「アントアーネ、そろそろ行こうか。そうそう、卒業後はクラスメートや貴族たちを呼んで、俺のお別れ会をやる事になっているのだよ」
「何ですって?その様な話は、聞いておりませんわ。卒業式後は、身内だけでひっそりとお祝いをしたかったのに…」
どうして苦手なクラスメートたちと、顔を合わせないといけないのかしら…でも、皆私の事を嫌っているから、来ないかもしれない。
「ちなみにどれくらい、参加されるのですか?」
「クラスメートはもちろん、他のクラスの生徒や在校生、その保護者、それに貴族学院とは関係のない貴族たちも大勢来てくれることになっているよ」
「そうなのですね…」
最後の最後まで、あの人たちの顔を見ないといけないだなんて。とはいえ、ブラッド様はリューズ王国の侯爵令息だ。ご両親もきているし、このままさようならという訳にもいかないのだろう。
分かってはいるが、なんだか複雑な気持ちだ。
「アントアーネ、そんなに悲しそうな顔をしないで。俺がずっと傍にいるし、それに何よりも大切なイベントなんだ。アントアーネには、絶対に嫌な思いなんてさせないから」
ブラッド様が、真剣な表情で訴えかけてくる。そんな彼に、笑顔を向けた。
「分かっておりますわ。卒業したら、この国ともお別れです。一応3年間一緒に勉強した仲間ですし、けじめを付けるためにも最後のパーティは、めいっぱい楽しみますわ」
「そう言ってもらえると、救われるよ。それじゃあ、最後の貴族学院へ向かおうか。両家の両親はまだ寝ている様だが、パーティまでには起きるだろう」
「お開きになった後も、話しに花を咲かせていた様ですものね…」
久しぶりに親友に会えた喜びは分かるが、一応今日は私達の卒業式なのだから、もう少し自粛して欲しかった。
とはいえ、夕方からはパーティも開かれる様だし、それまでにはさすがに起きてくるだろう。
「それでは参りましょう」
いつも通り、ブラッド様の手を取り馬車に向かう。そこにはお兄様とイリーネお姉様の姿があった。
「お兄様、イリーネお姉様、おはようございます。私たちの為に、待っていてくれたのですか?」
「ええ、そうよ。アントアーネちゃんとブラッド様の卒業式のお見送りをしたくてね。アントアーネちゃん、よく頑張ったわね。あなたは立派よ」
そう言うと、イリーネお姉様が抱きしめてくれた。よく頑張った…その言葉が、胸に突き刺さる。
「イリーネ嬢、まだアントアーネは卒業しておりませんよ。それでは、遅刻すると大変ですので」
それとなくブラッド様によって引き離され、そのまま腕を引かれて馬車に乗り込んだ。なんだかブラッド様が不機嫌な様だが、きっと気のせいだろう。
沢山の友人たちと、お茶をしたりおしゃべりをしたり、そんな日々を夢見て。もちろん、大好きなラドル様との幸せな日々も、ずっと続くと思っていた。
でも…
私は全てを失った。友人も学校での居場所も、そして婚約者も。地獄の様な日々から私を救い出してくれたのは、ブラッド様だ。この半年色々とあったが、それでもなんとかやってこられたのは、ブラッド様のお陰だ。
それと同時に、この国の貴族たちに、絶望もした。そんな日々も、今日で終わりだ。最後の日くらいは、幸せな気持ちで終わりたい。
「お嬢様、ブラッド様がお部屋のお外でお待ちです」
鏡の前から全く動かない私に、恐る恐る声をかけてきた使用人。
「ちょっと考え事をしていて。すぐに行くわね」
急いで準備を整え、部屋の外に出る。
「おはよう、アントアーネ、いよいよ卒業だね」
「はい、いよいよ卒業ですね。やっとこの国の嫌な貴族たちとも、おさらばですわ。今日くらいは、穏便にいきたいですね」
最後ぐらいは、穏やかな気持ちで過ごしたい。そして、心を着なくリューズ王国に旅立ちたいのだ。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、なぜかブラッド様が苦笑いをしている。
「アントアーネ、そろそろ行こうか。そうそう、卒業後はクラスメートや貴族たちを呼んで、俺のお別れ会をやる事になっているのだよ」
「何ですって?その様な話は、聞いておりませんわ。卒業式後は、身内だけでひっそりとお祝いをしたかったのに…」
どうして苦手なクラスメートたちと、顔を合わせないといけないのかしら…でも、皆私の事を嫌っているから、来ないかもしれない。
「ちなみにどれくらい、参加されるのですか?」
「クラスメートはもちろん、他のクラスの生徒や在校生、その保護者、それに貴族学院とは関係のない貴族たちも大勢来てくれることになっているよ」
「そうなのですね…」
最後の最後まで、あの人たちの顔を見ないといけないだなんて。とはいえ、ブラッド様はリューズ王国の侯爵令息だ。ご両親もきているし、このままさようならという訳にもいかないのだろう。
分かってはいるが、なんだか複雑な気持ちだ。
「アントアーネ、そんなに悲しそうな顔をしないで。俺がずっと傍にいるし、それに何よりも大切なイベントなんだ。アントアーネには、絶対に嫌な思いなんてさせないから」
ブラッド様が、真剣な表情で訴えかけてくる。そんな彼に、笑顔を向けた。
「分かっておりますわ。卒業したら、この国ともお別れです。一応3年間一緒に勉強した仲間ですし、けじめを付けるためにも最後のパーティは、めいっぱい楽しみますわ」
「そう言ってもらえると、救われるよ。それじゃあ、最後の貴族学院へ向かおうか。両家の両親はまだ寝ている様だが、パーティまでには起きるだろう」
「お開きになった後も、話しに花を咲かせていた様ですものね…」
久しぶりに親友に会えた喜びは分かるが、一応今日は私達の卒業式なのだから、もう少し自粛して欲しかった。
とはいえ、夕方からはパーティも開かれる様だし、それまでにはさすがに起きてくるだろう。
「それでは参りましょう」
いつも通り、ブラッド様の手を取り馬車に向かう。そこにはお兄様とイリーネお姉様の姿があった。
「お兄様、イリーネお姉様、おはようございます。私たちの為に、待っていてくれたのですか?」
「ええ、そうよ。アントアーネちゃんとブラッド様の卒業式のお見送りをしたくてね。アントアーネちゃん、よく頑張ったわね。あなたは立派よ」
そう言うと、イリーネお姉様が抱きしめてくれた。よく頑張った…その言葉が、胸に突き刺さる。
「イリーネ嬢、まだアントアーネは卒業しておりませんよ。それでは、遅刻すると大変ですので」
それとなくブラッド様によって引き離され、そのまま腕を引かれて馬車に乗り込んだ。なんだかブラッド様が不機嫌な様だが、きっと気のせいだろう。
497
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
【完結】わたしは大事な人の側に行きます〜この国が不幸になりますように〜
彩華(あやはな)
恋愛
一つの密約を交わし聖女になったわたし。
わたしは婚約者である王太子殿下に婚約破棄された。
王太子はわたしの大事な人をー。
わたしは、大事な人の側にいきます。
そして、この国不幸になる事を祈ります。
*わたし、王太子殿下、ある方の視点になっています。敢えて表記しておりません。
*ダークな内容になっておりますので、ご注意ください。
ハピエンではありません。ですが、救済はいれました。
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?
星野真弓
恋愛
十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。
だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。
そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。
しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――
【改稿版】光を忘れたあなたに、永遠の後悔を
桜野なつみ
恋愛
幼き日より、王と王妃は固く結ばれていた。
政略ではなく、互いに慈しみ育んだ、真実の愛。
二人の間に生まれた双子は王国の希望であり、光だった。
だが国に流行病が蔓延したある日、ひとりの“聖女”が現れる。
聖女が癒やしの奇跡を見せたとされ、国中がその姿に熱狂する。
その熱狂の中、王は次第に聖女に惹かれていく。
やがて王は心を奪われ、王妃を遠ざけてゆく……
ーーーーーーーー
初作品です。
自分の読みたい要素をギュッと詰め込みました。
【完結】27王女様の護衛は、私の彼だった。
華蓮
恋愛
ラビートは、アリエンスのことが好きで、結婚したら少しでも贅沢できるように出世いいしたかった。
王女の護衛になる事になり、出世できたことを喜んだ。
王女は、ラビートのことを気に入り、休みの日も呼び出すようになり、ラビートは、休みも王女の護衛になり、アリエンスといる時間が少なくなっていった。
未来予知できる王太子妃は断罪返しを開始します
もるだ
恋愛
未来で起こる出来事が分かるクラーラは、王宮で開催されるパーティーの会場で大好きな婚約者──ルーカス王太子殿下から謀反を企てたと断罪される。王太子妃を狙うマリアに嵌められたと予知したクラーラは、断罪返しを開始する!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる