57 / 73
第57話:卒業式を迎えました
翌日、少し早く起きた私は、いつも通り制服に袖を通し、鏡の前に立った。この制服を着るのも、今日で最後。そう思うと、なんだか寂しい気もする。初めてこの制服に袖を通した時、これから始まる生活に胸躍らせた。
沢山の友人たちと、お茶をしたりおしゃべりをしたり、そんな日々を夢見て。もちろん、大好きなラドル様との幸せな日々も、ずっと続くと思っていた。
でも…
私は全てを失った。友人も学校での居場所も、そして婚約者も。地獄の様な日々から私を救い出してくれたのは、ブラッド様だ。この半年色々とあったが、それでもなんとかやってこられたのは、ブラッド様のお陰だ。
それと同時に、この国の貴族たちに、絶望もした。そんな日々も、今日で終わりだ。最後の日くらいは、幸せな気持ちで終わりたい。
「お嬢様、ブラッド様がお部屋のお外でお待ちです」
鏡の前から全く動かない私に、恐る恐る声をかけてきた使用人。
「ちょっと考え事をしていて。すぐに行くわね」
急いで準備を整え、部屋の外に出る。
「おはよう、アントアーネ、いよいよ卒業だね」
「はい、いよいよ卒業ですね。やっとこの国の嫌な貴族たちとも、おさらばですわ。今日くらいは、穏便にいきたいですね」
最後ぐらいは、穏やかな気持ちで過ごしたい。そして、心を着なくリューズ王国に旅立ちたいのだ。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、なぜかブラッド様が苦笑いをしている。
「アントアーネ、そろそろ行こうか。そうそう、卒業後はクラスメートや貴族たちを呼んで、俺のお別れ会をやる事になっているのだよ」
「何ですって?その様な話は、聞いておりませんわ。卒業式後は、身内だけでひっそりとお祝いをしたかったのに…」
どうして苦手なクラスメートたちと、顔を合わせないといけないのかしら…でも、皆私の事を嫌っているから、来ないかもしれない。
「ちなみにどれくらい、参加されるのですか?」
「クラスメートはもちろん、他のクラスの生徒や在校生、その保護者、それに貴族学院とは関係のない貴族たちも大勢来てくれることになっているよ」
「そうなのですね…」
最後の最後まで、あの人たちの顔を見ないといけないだなんて。とはいえ、ブラッド様はリューズ王国の侯爵令息だ。ご両親もきているし、このままさようならという訳にもいかないのだろう。
分かってはいるが、なんだか複雑な気持ちだ。
「アントアーネ、そんなに悲しそうな顔をしないで。俺がずっと傍にいるし、それに何よりも大切なイベントなんだ。アントアーネには、絶対に嫌な思いなんてさせないから」
ブラッド様が、真剣な表情で訴えかけてくる。そんな彼に、笑顔を向けた。
「分かっておりますわ。卒業したら、この国ともお別れです。一応3年間一緒に勉強した仲間ですし、けじめを付けるためにも最後のパーティは、めいっぱい楽しみますわ」
「そう言ってもらえると、救われるよ。それじゃあ、最後の貴族学院へ向かおうか。両家の両親はまだ寝ている様だが、パーティまでには起きるだろう」
「お開きになった後も、話しに花を咲かせていた様ですものね…」
久しぶりに親友に会えた喜びは分かるが、一応今日は私達の卒業式なのだから、もう少し自粛して欲しかった。
とはいえ、夕方からはパーティも開かれる様だし、それまでにはさすがに起きてくるだろう。
「それでは参りましょう」
いつも通り、ブラッド様の手を取り馬車に向かう。そこにはお兄様とイリーネお姉様の姿があった。
「お兄様、イリーネお姉様、おはようございます。私たちの為に、待っていてくれたのですか?」
「ええ、そうよ。アントアーネちゃんとブラッド様の卒業式のお見送りをしたくてね。アントアーネちゃん、よく頑張ったわね。あなたは立派よ」
そう言うと、イリーネお姉様が抱きしめてくれた。よく頑張った…その言葉が、胸に突き刺さる。
「イリーネ嬢、まだアントアーネは卒業しておりませんよ。それでは、遅刻すると大変ですので」
それとなくブラッド様によって引き離され、そのまま腕を引かれて馬車に乗り込んだ。なんだかブラッド様が不機嫌な様だが、きっと気のせいだろう。
沢山の友人たちと、お茶をしたりおしゃべりをしたり、そんな日々を夢見て。もちろん、大好きなラドル様との幸せな日々も、ずっと続くと思っていた。
でも…
私は全てを失った。友人も学校での居場所も、そして婚約者も。地獄の様な日々から私を救い出してくれたのは、ブラッド様だ。この半年色々とあったが、それでもなんとかやってこられたのは、ブラッド様のお陰だ。
それと同時に、この国の貴族たちに、絶望もした。そんな日々も、今日で終わりだ。最後の日くらいは、幸せな気持ちで終わりたい。
「お嬢様、ブラッド様がお部屋のお外でお待ちです」
鏡の前から全く動かない私に、恐る恐る声をかけてきた使用人。
「ちょっと考え事をしていて。すぐに行くわね」
急いで準備を整え、部屋の外に出る。
「おはよう、アントアーネ、いよいよ卒業だね」
「はい、いよいよ卒業ですね。やっとこの国の嫌な貴族たちとも、おさらばですわ。今日くらいは、穏便にいきたいですね」
最後ぐらいは、穏やかな気持ちで過ごしたい。そして、心を着なくリューズ王国に旅立ちたいのだ。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、なぜかブラッド様が苦笑いをしている。
「アントアーネ、そろそろ行こうか。そうそう、卒業後はクラスメートや貴族たちを呼んで、俺のお別れ会をやる事になっているのだよ」
「何ですって?その様な話は、聞いておりませんわ。卒業式後は、身内だけでひっそりとお祝いをしたかったのに…」
どうして苦手なクラスメートたちと、顔を合わせないといけないのかしら…でも、皆私の事を嫌っているから、来ないかもしれない。
「ちなみにどれくらい、参加されるのですか?」
「クラスメートはもちろん、他のクラスの生徒や在校生、その保護者、それに貴族学院とは関係のない貴族たちも大勢来てくれることになっているよ」
「そうなのですね…」
最後の最後まで、あの人たちの顔を見ないといけないだなんて。とはいえ、ブラッド様はリューズ王国の侯爵令息だ。ご両親もきているし、このままさようならという訳にもいかないのだろう。
分かってはいるが、なんだか複雑な気持ちだ。
「アントアーネ、そんなに悲しそうな顔をしないで。俺がずっと傍にいるし、それに何よりも大切なイベントなんだ。アントアーネには、絶対に嫌な思いなんてさせないから」
ブラッド様が、真剣な表情で訴えかけてくる。そんな彼に、笑顔を向けた。
「分かっておりますわ。卒業したら、この国ともお別れです。一応3年間一緒に勉強した仲間ですし、けじめを付けるためにも最後のパーティは、めいっぱい楽しみますわ」
「そう言ってもらえると、救われるよ。それじゃあ、最後の貴族学院へ向かおうか。両家の両親はまだ寝ている様だが、パーティまでには起きるだろう」
「お開きになった後も、話しに花を咲かせていた様ですものね…」
久しぶりに親友に会えた喜びは分かるが、一応今日は私達の卒業式なのだから、もう少し自粛して欲しかった。
とはいえ、夕方からはパーティも開かれる様だし、それまでにはさすがに起きてくるだろう。
「それでは参りましょう」
いつも通り、ブラッド様の手を取り馬車に向かう。そこにはお兄様とイリーネお姉様の姿があった。
「お兄様、イリーネお姉様、おはようございます。私たちの為に、待っていてくれたのですか?」
「ええ、そうよ。アントアーネちゃんとブラッド様の卒業式のお見送りをしたくてね。アントアーネちゃん、よく頑張ったわね。あなたは立派よ」
そう言うと、イリーネお姉様が抱きしめてくれた。よく頑張った…その言葉が、胸に突き刺さる。
「イリーネ嬢、まだアントアーネは卒業しておりませんよ。それでは、遅刻すると大変ですので」
それとなくブラッド様によって引き離され、そのまま腕を引かれて馬車に乗り込んだ。なんだかブラッド様が不機嫌な様だが、きっと気のせいだろう。
あなたにおすすめの小説
婚約破棄? ありがとうございます。やっと本当の人生が始まります
たくわん
恋愛
婚約破棄された令嬢がすべきことといえば、泣くか、喚くか、復讐を誓うか——らしい。
リーナ・フォスター公爵令嬢がしたことは、荷造りだった。
「冷たくて人を愛せない」と王太子に切り捨てられた夜、リーナは一度も振り返らずに王城を出た。向かった先は辺境の荒れ地。目的は薬草の栽培と薬品事業の立ち上げ。前世の記憶から温めてきた、誰にも言えなかった計画の実行だ。
リーナはそこで不器用だが誠実な騎士ヴァルターと出会う。一方、残された王太子とその新しい婚約者は、少しずつ、静かに、取り返しのつかない方向へと歩んでいたーー。
いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜
みおな
恋愛
公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。
当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。
どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・
2度目の人生は好きにやらせていただきます
みおな
恋愛
公爵令嬢アリスティアは、婚約者であるエリックに学園の卒業パーティーで冤罪で婚約破棄を言い渡され、そのまま処刑された。
そして目覚めた時、アリスティアは学園入学前に戻っていた。
今度こそは幸せになりたいと、アリスティアは婚約回避を目指すことにする。
【完結】もう結構ですわ!
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。
愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/29……完結
2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位
2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位
2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位
2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位
2024/09/11……連載開始
王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!
ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」
卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。
なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・