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第21話:ジャンヌは何も変わっていない~グラディオン視点~
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騎士団長から話しがあった日の夜。
「グラディオン、ディノス侯爵家のシャーロン殿と、マリアーズ伯爵家のジャンヌ嬢が正式に婚約破棄したそうだぞ」
「ええ、知っていますよ。今日騎士団長から話しは伺いました」
「まあ、そうだったのね。シャーロン殿、婚約者のジャンヌ嬢を蔑ろにして、いつも令嬢と一緒にいたものね。正直夫人たちからは、シャーロン殿の評判は最悪だったわ。あんな女好きな男と婚約させられたジャンヌ嬢が可哀そうだって。ただ、令嬢たちは美しいシャーロン殿の味方をしていた様だけれどね。ジャンヌ嬢、相当苦労したのではないかしら?可哀そうに…」
「やっぱりジャンヌは、シャーロンから酷い扱いを受けていたのですね。どうして教えてくれなかったのですか?そんな扱いを受けていると知ったら俺が…いいえ、何でもありません」
俺が何とかしたのに!そう言いかけて、口をつぐんだ。社交界からずっと目を背けて来た俺が、そんな事を言う権利はない。
「グラディオンは、ジャンヌ嬢を慕っていたものな…彼女は今、物凄く傷ついているだろう。グラディオン、騎士団時代に随分お世話になったのだろう。今度はグラディオンが、ジャンヌ嬢を助けてあげられるといいな」
そう言って俺の肩を叩く父上。俺がジャンヌを助けてやるか…
俺にジャンヌを助ける事なんて、出来るのだろうか。そもそもジャンヌがシャーロンと婚約したのは、あの事件がきっかけだったと聞いた。もしあの時、俺が真実を話していれば、ジャンヌは4年も辛い思いをしなかったかもしれないのに…
俺は一体何をしていたのだろう。ジャンヌの笑顔を守りたいと思っての行動が、逆にジャンヌから笑顔を奪っていただなんて…
ジャンヌに対して、申し訳ない気持ちになった。
でも、過去を振り返っても仕方がない。近々ジャンヌは、騎士団に再入団する事が決まっているのだ。少しでもジャンヌが笑顔を取り戻せるように、俺は全力でジャンヌをサポートしよう。
そう心に誓ったのだ。
そして1週間後、ジャンヌが再入団してきた。美しいオレンジ色の髪を一つに束ねたジャンヌ。あの頃も可愛らしかったが、垢ぬけて物凄く綺麗になっていた。
ただ、変わったのは見た目だけで、中身はちっとも変っていない。あっという間に俺の部隊にも溶け込んでいた。
そんなジャンヌだが、4年間騎士団から離れていた為、練習メニューに付いてこられなかったのだ。それでも剣の腕はほとんど鈍っていなかったうえ、あっと言う間に勘を取り戻したのだ。
さすが騎士団長の娘だな。そう思っていたのだが、当のジャンヌは不安な様で、朝から晩まで必死に稽古に励んでいた。さらに朝早く来て、たった1人で準備をしたりしていたのだ。
そんな事はしなくてもいい、そう伝えたのだが。
“皆の役に立ちたい。私にはもう、騎士団しか居場所がないから”
今にも泣きそうな顔で、ジャンヌがそう叫んだのだ。ジャンヌは一体、この4年でどれほど傷つき、悲しんできたのだろう。シャーロンから冷遇され、1人で耐えてきたのだろう。
俺があの時、本当の事を話していれば、ジャンヌは騎士団を辞めてシャーロンと婚約する事もなかったのに…
「ジャンヌ、俺のせいですまない…」
気が付くと、そんな事を呟いていたのだ。一体何を謝っているの?そう言わんばかりに、目を大きく見開き固まっているジャンヌ。しまった、ジャンヌを混乱させてしまった。
気を取り直して、改めて準備や片づけは皆でやる事や、自主練は俺が付き合う事を提案したのだが、なぜか自主練は断られてしまったのだ。
なぜだろう…ジャンヌは俺と距離を置こうとしている気がする。もしかしてジャンヌは、俺の事が気に入らないのだろうか?そんな不安が俺を襲う。
俺の不安を他所に、必死に稽古に励むジャンヌ。どんどんうちの隊員たちを追い抜かしていくのだ。
さらにジャンヌは、周りをよく見ている。少しの隊員の異変もいち早く察知し、対処するのだ。その姿は、昔のお節介で世話焼きのジャンヌそのものだった。
真剣にやるところは真剣にやり、休憩時間は皆を和ませてくれるジャンヌは、いつの間にか隊の中心人物になっていた。
ジャンヌは4年前と、ちっとも変っていない。やっぱりジャンヌは最高だ。
ただ、早く強くなりたいのか、朝から晩まで自主練をして、手に酷い怪我を負っていたり、副隊長に挑んで怪我をしたり、昔のジャンヌではあまり考えられない様な、無謀な事をする事もある。
でも、そんな必死なジャンヌが可愛くてたまらない。いつも完璧だと思っていたジャンヌも、こんな無謀な事をするのだな。そう思ったら、なんだかジャンヌが身近に感じられたような気がした。
ジャンヌと過ごす日々は、楽しくてたまらない。ジャンヌがいてくれるだけで、俺の心は満たされるのだ。
これからも俺は、ジャンヌのこの笑顔を守っていきたい。4年間傷つき続けたジャンヌが、これからはずっと笑顔でいられる様に、俺がサポートしたい。
そう強く思ったのだった。
※次回、ジャンヌ視点に戻ります。
よろしくお願いしますm(__)m
「グラディオン、ディノス侯爵家のシャーロン殿と、マリアーズ伯爵家のジャンヌ嬢が正式に婚約破棄したそうだぞ」
「ええ、知っていますよ。今日騎士団長から話しは伺いました」
「まあ、そうだったのね。シャーロン殿、婚約者のジャンヌ嬢を蔑ろにして、いつも令嬢と一緒にいたものね。正直夫人たちからは、シャーロン殿の評判は最悪だったわ。あんな女好きな男と婚約させられたジャンヌ嬢が可哀そうだって。ただ、令嬢たちは美しいシャーロン殿の味方をしていた様だけれどね。ジャンヌ嬢、相当苦労したのではないかしら?可哀そうに…」
「やっぱりジャンヌは、シャーロンから酷い扱いを受けていたのですね。どうして教えてくれなかったのですか?そんな扱いを受けていると知ったら俺が…いいえ、何でもありません」
俺が何とかしたのに!そう言いかけて、口をつぐんだ。社交界からずっと目を背けて来た俺が、そんな事を言う権利はない。
「グラディオンは、ジャンヌ嬢を慕っていたものな…彼女は今、物凄く傷ついているだろう。グラディオン、騎士団時代に随分お世話になったのだろう。今度はグラディオンが、ジャンヌ嬢を助けてあげられるといいな」
そう言って俺の肩を叩く父上。俺がジャンヌを助けてやるか…
俺にジャンヌを助ける事なんて、出来るのだろうか。そもそもジャンヌがシャーロンと婚約したのは、あの事件がきっかけだったと聞いた。もしあの時、俺が真実を話していれば、ジャンヌは4年も辛い思いをしなかったかもしれないのに…
俺は一体何をしていたのだろう。ジャンヌの笑顔を守りたいと思っての行動が、逆にジャンヌから笑顔を奪っていただなんて…
ジャンヌに対して、申し訳ない気持ちになった。
でも、過去を振り返っても仕方がない。近々ジャンヌは、騎士団に再入団する事が決まっているのだ。少しでもジャンヌが笑顔を取り戻せるように、俺は全力でジャンヌをサポートしよう。
そう心に誓ったのだ。
そして1週間後、ジャンヌが再入団してきた。美しいオレンジ色の髪を一つに束ねたジャンヌ。あの頃も可愛らしかったが、垢ぬけて物凄く綺麗になっていた。
ただ、変わったのは見た目だけで、中身はちっとも変っていない。あっという間に俺の部隊にも溶け込んでいた。
そんなジャンヌだが、4年間騎士団から離れていた為、練習メニューに付いてこられなかったのだ。それでも剣の腕はほとんど鈍っていなかったうえ、あっと言う間に勘を取り戻したのだ。
さすが騎士団長の娘だな。そう思っていたのだが、当のジャンヌは不安な様で、朝から晩まで必死に稽古に励んでいた。さらに朝早く来て、たった1人で準備をしたりしていたのだ。
そんな事はしなくてもいい、そう伝えたのだが。
“皆の役に立ちたい。私にはもう、騎士団しか居場所がないから”
今にも泣きそうな顔で、ジャンヌがそう叫んだのだ。ジャンヌは一体、この4年でどれほど傷つき、悲しんできたのだろう。シャーロンから冷遇され、1人で耐えてきたのだろう。
俺があの時、本当の事を話していれば、ジャンヌは騎士団を辞めてシャーロンと婚約する事もなかったのに…
「ジャンヌ、俺のせいですまない…」
気が付くと、そんな事を呟いていたのだ。一体何を謝っているの?そう言わんばかりに、目を大きく見開き固まっているジャンヌ。しまった、ジャンヌを混乱させてしまった。
気を取り直して、改めて準備や片づけは皆でやる事や、自主練は俺が付き合う事を提案したのだが、なぜか自主練は断られてしまったのだ。
なぜだろう…ジャンヌは俺と距離を置こうとしている気がする。もしかしてジャンヌは、俺の事が気に入らないのだろうか?そんな不安が俺を襲う。
俺の不安を他所に、必死に稽古に励むジャンヌ。どんどんうちの隊員たちを追い抜かしていくのだ。
さらにジャンヌは、周りをよく見ている。少しの隊員の異変もいち早く察知し、対処するのだ。その姿は、昔のお節介で世話焼きのジャンヌそのものだった。
真剣にやるところは真剣にやり、休憩時間は皆を和ませてくれるジャンヌは、いつの間にか隊の中心人物になっていた。
ジャンヌは4年前と、ちっとも変っていない。やっぱりジャンヌは最高だ。
ただ、早く強くなりたいのか、朝から晩まで自主練をして、手に酷い怪我を負っていたり、副隊長に挑んで怪我をしたり、昔のジャンヌではあまり考えられない様な、無謀な事をする事もある。
でも、そんな必死なジャンヌが可愛くてたまらない。いつも完璧だと思っていたジャンヌも、こんな無謀な事をするのだな。そう思ったら、なんだかジャンヌが身近に感じられたような気がした。
ジャンヌと過ごす日々は、楽しくてたまらない。ジャンヌがいてくれるだけで、俺の心は満たされるのだ。
これからも俺は、ジャンヌのこの笑顔を守っていきたい。4年間傷つき続けたジャンヌが、これからはずっと笑顔でいられる様に、俺がサポートしたい。
そう強く思ったのだった。
※次回、ジャンヌ視点に戻ります。
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