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第8話:女神の様な女性に会えたのに…~ヒューゴ視点~
お茶会を終え、1人ベッドに腰を下ろした。
「マリア嬢…想像以上に魅力的な女性だったな…」
僕は国王と王妃の第一子としてこの世に生を受けた。ただ僕は、実は第3王子だ。2人の兄は、父上の側室が産んだ子だ。そう、この国は王族のみ一夫多妻制が取り入れられている。
そして、基本的に王妃が産んだ子が、王太子になる事になっている。その為、僕が必然的に王太子になった。元々は王家の血筋を絶やさないために一夫多妻制が取り入れたらしい。
僕も子供の頃から、当たり前の様に妻を何人か娶るものだと教えられてきた。父上からも
「いいか、ヒューゴ。私たち王族は、ただ1人の女性だけを愛する事は出来ないんだ。沢山の女性に、まんべんなく愛情を与える事が、よい国王なんだぞ」
そう教えられた。その為、僕も何人かの女性を妻にするものだと、それが常識だと思って育った。ただ、令嬢の中には、自分だけを愛して欲しいという女性も多い。その為、王族から王妃候補の打診をしたりすることは禁止されている。
全てを理解したうえで、それでも王族に嫁ぎたいという覚悟を決めた令嬢のみ、僕の妻に出来るらしい。それでもやはり、王妃になり男の子を産めば、その子は必然的に王太子になれる。
その為、熾烈なお妃候補争いが行われる。実際僕がデビュータントを迎えると、たくさんの貴族令嬢が、お妃候補に名乗りを上げ始めた。さらに僕をめぐって、子供の頃から女の争いも始まっている。
正直その姿を見て、幻滅する事もあるが、これも僕と結婚したいが為に行っている行動だと自分に言い聞かせていた。
そんな中、彼女に出会った。あの日の夜会も、令嬢たちに囲まれ、激しいマウント合戦に巻き込まれていた。さすがに疲れてしまった僕は、1人で中庭に出た。
すると、美しい銀色の髪をした令嬢が目についた。その髪がキラキラと光っていて、本当に美しかった。ふと彼女が空を見上げたのだ。月を見上げるその瞳は、どこか寂し気で、今にも消えてしまいそうな儚さを醸し出していた。
あの子は確か、レィークス侯爵家のマリア嬢だ。今日がデビュータントの日と聞いている。なぜだろう、彼女を見ているとなぜかとても懐かしく感じる。それと同時に、胸が締め付けられる様な苦しさも覚えるのだ。
「本当に綺麗ね…」
そう呟いた姿を見た時、鼓動が早くなるのを感じた。僕も空を見上げると、美しい月が。彼女は月の女神なのか…そう思うほど、美しかったのだ。
彼女にくぎ付けになった僕だったが、運悪く近くにあった木を踏んでしまった。
ガサっという音に気が付いた彼女が、僕の方を見る。瞳があった瞬間、再び鼓動が早くなるのを感じた。それと同時に、やはり懐かしい感じに包まれる。
何か話さないと…そんな思いからとっさに出た言葉が、
「すまない…のぞき見をするつもりはなかったんだ。ただ…あまりにも美しかったから…」
だった。しまった、令嬢に向かってストレートに美しいなんて言ってしまった。
でも彼女は、どうやら月が美しいと勘違いした様だった。もう少し彼女と話したかったのだが、そのまま去って行ってしまった。
彼女の後を追う様にホールに戻る。すぐに彼女を探すと、ホールの真ん中で、楽しそうに令息と踊っていた。彼は確か、ディファースティン侯爵家の嫡男、ライアンだったな。彼は社交界でもかなり人気だが、デビューしてからまだ誰とも踊っていないと話題になっていた男だ。
そんな男と踊っているなんて…
2人が楽しそうに踊る姿からどうしても目が離せない。その時だった。ライアンが僕の視線に気づき、彼女を僕の視界に入らない様に、隠したのだ。
そうか、ライアンはマリア嬢が好きなのだな。だからマリア嬢がデビュータントを迎える今日まで、誰とも踊らなかったのか。ファーストダンスを彼女と踊る為に…
マリア嬢はライアンと婚約するのかな?そういえば、ディファースティン侯爵とレィークス侯爵は親友同士だったな。自分の子供たちを婚約させようと考えても不思議ではない。
でも、彼らはまだ14歳だ。婚約出来る年齢まであと1年ある。もしかしたら、マリア嬢も僕のお妃候補に名乗りを上げてくれるかもしれない。
そんな期待が、僕の心を支配した。
「王太子殿下、こんなところにいらしたのですね。私とダンスを踊って頂けますか?」
「いいえ、私と」
考え事をしている間に、気が付くと周りにはたくさんの令嬢が。結局その日は、これ以上彼女に近づく事は出来なかった。
翌日
「母上、お妃候補の打診は来ていますか?」
「ええ、たくさん来ているわよ。さすが私の息子ね。既に15件くらい来ているわよ。その中から、身分の高い令嬢を5人くらいに絞ろうと思っているのだけれど。ただ、今後もきっと打診は増えるだろうから、まだ絞らなくてもいいと思うわ」
「それで、レィークス侯爵家からは打診が来ていますか?」
「レィークス侯爵家からは来ていないわよ」
「そうですか…」
やっぱり来ていないか…何となくそんな気がしていたが、仕方がないな…
その後も考える事と言えば、マリア嬢の事ばかり。毎日母上にお妃候補の打診の件を聞いているが、彼女の家から打診が来ることはなかった。
もう一度彼女と会って話たい。そんな思いから、母上に頼んで、急遽お茶会を開いてもらう事にした。
「ヒューゴ、お妃候補の打診が来ていないレィークス侯爵家の令嬢を誘うのは良くないわ。あなたも知っているでしょう。王家から打診は出来ない事を」
「知っています。でも、お茶会くらいならいいでしょう?お願いします、母上」
必死に母上に頼んだ結果、一度侯爵に聞いてみてくれることになった。その結果、お茶会くらいならと、OKをもらえた。
やった、これでもう一度彼女に会える。嬉しくてその日はあまり寝付く事が出来なかった。
「マリア嬢…想像以上に魅力的な女性だったな…」
僕は国王と王妃の第一子としてこの世に生を受けた。ただ僕は、実は第3王子だ。2人の兄は、父上の側室が産んだ子だ。そう、この国は王族のみ一夫多妻制が取り入れられている。
そして、基本的に王妃が産んだ子が、王太子になる事になっている。その為、僕が必然的に王太子になった。元々は王家の血筋を絶やさないために一夫多妻制が取り入れたらしい。
僕も子供の頃から、当たり前の様に妻を何人か娶るものだと教えられてきた。父上からも
「いいか、ヒューゴ。私たち王族は、ただ1人の女性だけを愛する事は出来ないんだ。沢山の女性に、まんべんなく愛情を与える事が、よい国王なんだぞ」
そう教えられた。その為、僕も何人かの女性を妻にするものだと、それが常識だと思って育った。ただ、令嬢の中には、自分だけを愛して欲しいという女性も多い。その為、王族から王妃候補の打診をしたりすることは禁止されている。
全てを理解したうえで、それでも王族に嫁ぎたいという覚悟を決めた令嬢のみ、僕の妻に出来るらしい。それでもやはり、王妃になり男の子を産めば、その子は必然的に王太子になれる。
その為、熾烈なお妃候補争いが行われる。実際僕がデビュータントを迎えると、たくさんの貴族令嬢が、お妃候補に名乗りを上げ始めた。さらに僕をめぐって、子供の頃から女の争いも始まっている。
正直その姿を見て、幻滅する事もあるが、これも僕と結婚したいが為に行っている行動だと自分に言い聞かせていた。
そんな中、彼女に出会った。あの日の夜会も、令嬢たちに囲まれ、激しいマウント合戦に巻き込まれていた。さすがに疲れてしまった僕は、1人で中庭に出た。
すると、美しい銀色の髪をした令嬢が目についた。その髪がキラキラと光っていて、本当に美しかった。ふと彼女が空を見上げたのだ。月を見上げるその瞳は、どこか寂し気で、今にも消えてしまいそうな儚さを醸し出していた。
あの子は確か、レィークス侯爵家のマリア嬢だ。今日がデビュータントの日と聞いている。なぜだろう、彼女を見ているとなぜかとても懐かしく感じる。それと同時に、胸が締め付けられる様な苦しさも覚えるのだ。
「本当に綺麗ね…」
そう呟いた姿を見た時、鼓動が早くなるのを感じた。僕も空を見上げると、美しい月が。彼女は月の女神なのか…そう思うほど、美しかったのだ。
彼女にくぎ付けになった僕だったが、運悪く近くにあった木を踏んでしまった。
ガサっという音に気が付いた彼女が、僕の方を見る。瞳があった瞬間、再び鼓動が早くなるのを感じた。それと同時に、やはり懐かしい感じに包まれる。
何か話さないと…そんな思いからとっさに出た言葉が、
「すまない…のぞき見をするつもりはなかったんだ。ただ…あまりにも美しかったから…」
だった。しまった、令嬢に向かってストレートに美しいなんて言ってしまった。
でも彼女は、どうやら月が美しいと勘違いした様だった。もう少し彼女と話したかったのだが、そのまま去って行ってしまった。
彼女の後を追う様にホールに戻る。すぐに彼女を探すと、ホールの真ん中で、楽しそうに令息と踊っていた。彼は確か、ディファースティン侯爵家の嫡男、ライアンだったな。彼は社交界でもかなり人気だが、デビューしてからまだ誰とも踊っていないと話題になっていた男だ。
そんな男と踊っているなんて…
2人が楽しそうに踊る姿からどうしても目が離せない。その時だった。ライアンが僕の視線に気づき、彼女を僕の視界に入らない様に、隠したのだ。
そうか、ライアンはマリア嬢が好きなのだな。だからマリア嬢がデビュータントを迎える今日まで、誰とも踊らなかったのか。ファーストダンスを彼女と踊る為に…
マリア嬢はライアンと婚約するのかな?そういえば、ディファースティン侯爵とレィークス侯爵は親友同士だったな。自分の子供たちを婚約させようと考えても不思議ではない。
でも、彼らはまだ14歳だ。婚約出来る年齢まであと1年ある。もしかしたら、マリア嬢も僕のお妃候補に名乗りを上げてくれるかもしれない。
そんな期待が、僕の心を支配した。
「王太子殿下、こんなところにいらしたのですね。私とダンスを踊って頂けますか?」
「いいえ、私と」
考え事をしている間に、気が付くと周りにはたくさんの令嬢が。結局その日は、これ以上彼女に近づく事は出来なかった。
翌日
「母上、お妃候補の打診は来ていますか?」
「ええ、たくさん来ているわよ。さすが私の息子ね。既に15件くらい来ているわよ。その中から、身分の高い令嬢を5人くらいに絞ろうと思っているのだけれど。ただ、今後もきっと打診は増えるだろうから、まだ絞らなくてもいいと思うわ」
「それで、レィークス侯爵家からは打診が来ていますか?」
「レィークス侯爵家からは来ていないわよ」
「そうですか…」
やっぱり来ていないか…何となくそんな気がしていたが、仕方がないな…
その後も考える事と言えば、マリア嬢の事ばかり。毎日母上にお妃候補の打診の件を聞いているが、彼女の家から打診が来ることはなかった。
もう一度彼女と会って話たい。そんな思いから、母上に頼んで、急遽お茶会を開いてもらう事にした。
「ヒューゴ、お妃候補の打診が来ていないレィークス侯爵家の令嬢を誘うのは良くないわ。あなたも知っているでしょう。王家から打診は出来ない事を」
「知っています。でも、お茶会くらいならいいでしょう?お願いします、母上」
必死に母上に頼んだ結果、一度侯爵に聞いてみてくれることになった。その結果、お茶会くらいならと、OKをもらえた。
やった、これでもう一度彼女に会える。嬉しくてその日はあまり寝付く事が出来なかった。
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