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第24話:あり得ない事が起こりました
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陛下と王妃様、さらにヒューゴ様がゆっくりと入って来た。最前列には陛下の側室たちやその子供たちが待機している。ちなみに陛下には側室が5人、子供が12人もいるのだ。
やっぱり王族って、特別な存在なのだと改めて思い知らされた。
「ライアン、私はやっぱり、一夫多妻制は嫌だわ…私だけを愛してくれる人と、結婚したい…」
つい思っていたことを、ライアンに呟いてしまった。
「マリアがそう思うなら、それでいいと思うぞ。俺もたった1人の大切な人と、結ばれたいと思っているし」
ん?今ライアン、たった1人の人と結ばれたいって言った?
「ライアン、あなた、もしかして好きな人がいるの?」
ふとライアンに聞き返す。すると、頬を赤らめたのだ。嘘…ライアンに好きな人がいるなんて…
「ねえ、誰が好きなの?」
ふとライアンに聞き返してしまった。すると、なぜか真剣な表情をしたライアンが、私を真っすぐ見つめる。
「お…俺が好きなのは…」
「皆の者、今日はヒューゴの為に集まって頂き、感謝する」
陛下の挨拶が始まった。一旦ライアンの事は置いておいて、陛下の話しに集中する事にした。確かこのタイミングで、今現時点のお妃候補が発表されるはずだ。と言っても、1度目の生の時と同じ、3人の令嬢の名前が挙がるだろう。そう思っていたのだが…
「ヒューゴも15歳になったという事で、今現時点でのお妃候補を発表したいと思っているのだが…ヒューゴたっての希望で、今現在のお妃候補者は0名だ。今後増えていく予定だが、もうしばらく見守っていてやって欲しい」
えっ?お妃候補がいないですって?一体どういう事なの?周りからも動揺の声が広がる。そもそも、ヒューゴ様のお妃候補に名乗りを上げている令嬢の中で、既に15歳を迎えている子はたくさんいるはずだ。爵位が上の令嬢も…現に1度目の生の時には、ちゃんと発表されていた。それなのに、どうして…
「とにかく、今日はヒューゴの誕生日を皆で盛大に祝ってやって欲しい」
そう言うと、陛下の挨拶は終わった。
「おい、どういう事だよ。お妃候補が今の時点でいないって。名乗りを上げている令嬢はたくさんいるんだろ?」
ライアンも同じことを思ったのか、目を大きく見開き、私に問いかけてくる。
「私だって、分からないわ…もしかしたら、時間を掛けてゆっくり候補者たちを選びたいのかもしれないわね」
一体何が起きているのかは分からない…もしかしたら、クラシエ様をお妃候補にしたいのかしら?確かクラシエ様の誕生日は、私と同じくらいだ。私の誕生日はスルーだったのに、クラシエ様の誕生日はいつも盛大に行っていたものね。て、また嫌な事を思い出してしまった。
そういえば、ヒューゴ様の挨拶が終わると、真っ先に向かった先が、クラシエ様の元だった。そして2人が、ホールの真ん中でダンスを踊るのだ。そんな事を考えていると、ヒューゴ様の挨拶が始まった。
「本日は私の為にお集まりいただき、ありがとうございます。お妃候補の件、驚かれた方も多いとは思います。でも私は、どうしても自分の気持ちに嘘を付きたくなかったのです。どうか、もう少しだけ、私に時間をください」
そう言うと、頭を下げたヒューゴ様。そして壇上から降り、歩き出したのだ。もしかしてこのままクラシエ様の元に!そう思っていたのだが…
なぜかヒューゴ様がどんどん近づいてくる。そして…
「マリア嬢、15歳になった僕の初めてのダンス、踊ってくださいますか?」
何を思ったのか、私に手を差し伸べて来たのだ。一瞬何が起こったのか分からなかった。でも、ここは断る訳には行かない。
「はい」
すっとヒューゴ様の手を取り、ホールの真ん中へと向かった。そしてゆっくりと音楽に合わせて踊り出す。
「ごめんね、マリア嬢。びっくりしたよね。僕はやっぱり、君を諦める事が出来ないんだ。君は言ったよね。自分だけを愛してくれる人と結婚したいって。僕は君だけを愛するよ。だから、僕の妃になってくれないかな?」
この人は何を言っているのだろう。そんな事、出来る訳がないのに…
「殿下、王族であるあなた様には、私だけを愛する事など出来ないとわかりきっているでしょう。王族は一夫多妻制なのです。必ず側室を持たないといけないのです。申し訳ございませんが、どうか私の事は…」
「確かに側室を持つ必要はある。でも、心はずっと君のものだ。だから、どうか僕の花嫁になって欲しい…どうしても、諦められないんだ」
その表情は真剣そのものだった。でも…私は知っている。ヒューゴ様と結婚した6年間、本当に孤独だった。訪ねて来てくれないヒューゴ様を待つ時間は、永遠にすら感じられた。
もう二度と、そんな思いはしたくない。
「申し訳ございませ…」
「君の誕生日まで、後半年以上あるよね。それまでに、僕の事を好きになってもらえる様に頑張るよ。だから今は、どうか僕に少しだけ夢を見させて欲しい」
私の誕生日?
「私の誕生日をご存じなのですか?」
「当たり前だろう。君が産まれた、大切な日なのだから」
1度目の生の時、一度も私の誕生日を祝ってくれなかったヒューゴ様。結婚してからは、独りぼっちで祝った誕生日。
お願い、もう私に絡まないで…
あなたが私に絡めば絡むほど、あの時孤独だった自分を思い出し、どうしようもないほど、辛くて胸が苦しくなるの…
「マリア嬢、どうして泣くんだい?すまない、僕は何かおかしなことを言っただろうか?」
気が付くと、瞳から涙が溢れていた様だ。
「いいえ、何でもありません。殿下、踊って頂き、ありがとうございました」
ちょうど1曲目が終わった為、ぺこりと頭を下げ、その場を後にする。お願い、これ以上私の心をかき乱さないで…
そんな思いから、そのまま中庭に向かったのだった。
やっぱり王族って、特別な存在なのだと改めて思い知らされた。
「ライアン、私はやっぱり、一夫多妻制は嫌だわ…私だけを愛してくれる人と、結婚したい…」
つい思っていたことを、ライアンに呟いてしまった。
「マリアがそう思うなら、それでいいと思うぞ。俺もたった1人の大切な人と、結ばれたいと思っているし」
ん?今ライアン、たった1人の人と結ばれたいって言った?
「ライアン、あなた、もしかして好きな人がいるの?」
ふとライアンに聞き返す。すると、頬を赤らめたのだ。嘘…ライアンに好きな人がいるなんて…
「ねえ、誰が好きなの?」
ふとライアンに聞き返してしまった。すると、なぜか真剣な表情をしたライアンが、私を真っすぐ見つめる。
「お…俺が好きなのは…」
「皆の者、今日はヒューゴの為に集まって頂き、感謝する」
陛下の挨拶が始まった。一旦ライアンの事は置いておいて、陛下の話しに集中する事にした。確かこのタイミングで、今現時点のお妃候補が発表されるはずだ。と言っても、1度目の生の時と同じ、3人の令嬢の名前が挙がるだろう。そう思っていたのだが…
「ヒューゴも15歳になったという事で、今現時点でのお妃候補を発表したいと思っているのだが…ヒューゴたっての希望で、今現在のお妃候補者は0名だ。今後増えていく予定だが、もうしばらく見守っていてやって欲しい」
えっ?お妃候補がいないですって?一体どういう事なの?周りからも動揺の声が広がる。そもそも、ヒューゴ様のお妃候補に名乗りを上げている令嬢の中で、既に15歳を迎えている子はたくさんいるはずだ。爵位が上の令嬢も…現に1度目の生の時には、ちゃんと発表されていた。それなのに、どうして…
「とにかく、今日はヒューゴの誕生日を皆で盛大に祝ってやって欲しい」
そう言うと、陛下の挨拶は終わった。
「おい、どういう事だよ。お妃候補が今の時点でいないって。名乗りを上げている令嬢はたくさんいるんだろ?」
ライアンも同じことを思ったのか、目を大きく見開き、私に問いかけてくる。
「私だって、分からないわ…もしかしたら、時間を掛けてゆっくり候補者たちを選びたいのかもしれないわね」
一体何が起きているのかは分からない…もしかしたら、クラシエ様をお妃候補にしたいのかしら?確かクラシエ様の誕生日は、私と同じくらいだ。私の誕生日はスルーだったのに、クラシエ様の誕生日はいつも盛大に行っていたものね。て、また嫌な事を思い出してしまった。
そういえば、ヒューゴ様の挨拶が終わると、真っ先に向かった先が、クラシエ様の元だった。そして2人が、ホールの真ん中でダンスを踊るのだ。そんな事を考えていると、ヒューゴ様の挨拶が始まった。
「本日は私の為にお集まりいただき、ありがとうございます。お妃候補の件、驚かれた方も多いとは思います。でも私は、どうしても自分の気持ちに嘘を付きたくなかったのです。どうか、もう少しだけ、私に時間をください」
そう言うと、頭を下げたヒューゴ様。そして壇上から降り、歩き出したのだ。もしかしてこのままクラシエ様の元に!そう思っていたのだが…
なぜかヒューゴ様がどんどん近づいてくる。そして…
「マリア嬢、15歳になった僕の初めてのダンス、踊ってくださいますか?」
何を思ったのか、私に手を差し伸べて来たのだ。一瞬何が起こったのか分からなかった。でも、ここは断る訳には行かない。
「はい」
すっとヒューゴ様の手を取り、ホールの真ん中へと向かった。そしてゆっくりと音楽に合わせて踊り出す。
「ごめんね、マリア嬢。びっくりしたよね。僕はやっぱり、君を諦める事が出来ないんだ。君は言ったよね。自分だけを愛してくれる人と結婚したいって。僕は君だけを愛するよ。だから、僕の妃になってくれないかな?」
この人は何を言っているのだろう。そんな事、出来る訳がないのに…
「殿下、王族であるあなた様には、私だけを愛する事など出来ないとわかりきっているでしょう。王族は一夫多妻制なのです。必ず側室を持たないといけないのです。申し訳ございませんが、どうか私の事は…」
「確かに側室を持つ必要はある。でも、心はずっと君のものだ。だから、どうか僕の花嫁になって欲しい…どうしても、諦められないんだ」
その表情は真剣そのものだった。でも…私は知っている。ヒューゴ様と結婚した6年間、本当に孤独だった。訪ねて来てくれないヒューゴ様を待つ時間は、永遠にすら感じられた。
もう二度と、そんな思いはしたくない。
「申し訳ございませ…」
「君の誕生日まで、後半年以上あるよね。それまでに、僕の事を好きになってもらえる様に頑張るよ。だから今は、どうか僕に少しだけ夢を見させて欲しい」
私の誕生日?
「私の誕生日をご存じなのですか?」
「当たり前だろう。君が産まれた、大切な日なのだから」
1度目の生の時、一度も私の誕生日を祝ってくれなかったヒューゴ様。結婚してからは、独りぼっちで祝った誕生日。
お願い、もう私に絡まないで…
あなたが私に絡めば絡むほど、あの時孤独だった自分を思い出し、どうしようもないほど、辛くて胸が苦しくなるの…
「マリア嬢、どうして泣くんだい?すまない、僕は何かおかしなことを言っただろうか?」
気が付くと、瞳から涙が溢れていた様だ。
「いいえ、何でもありません。殿下、踊って頂き、ありがとうございました」
ちょうど1曲目が終わった為、ぺこりと頭を下げ、その場を後にする。お願い、これ以上私の心をかき乱さないで…
そんな思いから、そのまま中庭に向かったのだった。
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