次こそあなたと幸せになると決めたのに…中々うまくいきません

Karamimi

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第1話:どうして私が?

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「シャレル・ガスディアノ、ここにいたのだな。すぐに地下牢に連れて行け」

 ドアがバンと開いたと思ったら、この国の第二王子、ジョーン殿下と沢山の兵士が部屋に入って来たのだ。

「ジョーン殿下、勝手にお部屋に入って来るとは何事ですか?地下牢に連れて行くとは、一体どういう意味なのでしょうか?」

 まっすぐジョーン殿下を見つめ、彼に問いかけた。

「先ほど君の父親でもあるガスディアノ公爵が、人身売買及び脱税、賄賂、そのほか諸々の容疑で逮捕された。さらに僕の婚約者でもある、マリアを毒殺しようとした罪も問われているよ」

「お父様が人身売買に脱税ですって?それにマリア様を毒殺だなんて…一体どういうことですの?」

 あの真面目なお父様が、人身売買ですって?あり得ないわ。お父様は恵まれない子供たちの為に、いくつもの孤児院を建てていた様な人なのよ。それなのに…

「とにかく逮捕状が出ている。すぐに地下牢に連れて行け。それから、明日君の父親の裁判が行われる事になっている。きっと君の父親は極刑に処されるだろう」

 ニヤリと笑ったジョーン殿下。

「お父様が極刑ですって?そんな…お父様は何もしておりませんわ。それなのに、どうして極刑に?どうかもう一度、きちんと調べ直してください」

「父親の心配をしている場合かい?君は犯罪者の娘なのだよ。君だって、無傷ではいられないだろう。よくて国外追放かな?」

 私が国外追放ですって?公爵令嬢として生きてきた私が、国外に追放されたら、きっと生きていけないだろう。なんて人なの!

 ギロリとジョーン殿下を睨んだ。

 “いつも冷静な君が、そんな風に僕を睨むだなんて…もっと早く、その顔が見たかったな…そうそう、いい事を教えてあげるよ。この国の貴族世界で一番の権力者でもあった君の父親が、兄上を王太子に推し、君を兄上の婚約者にさえしなければ、きっとこんな運命にはならなかった。恨むなら、判断を誤った父親と、無能な兄上を恨むのだね”

 耳元でそう呟くジョーン殿下。

「さあ、早くこの女を、地下牢に連れて行け」

 騎士たちに抱えられ、そのまま地下牢へと連れて行かされ、閉じ込められたのだ。

 薄暗い地下牢。とても気持ち悪い場所だ。

 ただ…

 私はどうしても、さっきあの男が言った言葉が頭から離れない。

 私、シャレル・ガスディアノは、この国で一番権力を持ったガレディアノ公爵家の一人娘。そんな私は、8歳の時、この国の王太子でもあるダーウィン様と婚約を結んだ。ダーウィン様は、ジョーン殿下の双子の兄だ。

 才色兼備で周りからも人気の高い第二王子のジョーン殿下に比べ、あまり頭もよくなく大人しいダーウィン様。

 我が国では、よほどの理由がない限り、第一子が王位を継ぐことになっている。ただ、大人しくお勉強も武術も苦手なダーウィン様に比べ、優秀で人望もあるジョーン殿下を国王にした方がよいという貴族たちが、大勢いたのも事実だ。

 実の母親でもある王妃様ですら、ダーウィン様を嫌い、ジョーン殿下を寵愛していたくらいだ。

 王妃様を始め、何人かの貴族がダーウィン様ではなく、ジョーン殿下を王太子殿下にという話が上がっていたらしい。

 その為、一時は激しい王位争いが行われていたらしい。王家の伝統を守り、第一王子でもあるダーウィン様を次期国王にと考える貴族、優秀なジョーン殿下を次期国王にと考える貴族、そしてどちらに付くのが良いのかを考える貴族たちの、見えない戦いが繰り広げられていたらしい。

 ただ、やはり王家が不安定だと、国力も低下し、しいては平民たちの暮らしまで影響が出始めてしまったとの事。このままではよくないと考えたお父様が

 “王家の伝統に基づき、私はダーウィン殿下を次期国王に推します。そして我が娘、シャレルを殿下の婚約者として捧げます”

 そう宣言したのだ。お父様はどちらも陛下の血を受け継ぐ正当な子。どちらの王子が次期国王になろうとも、自分は仕えるまで。そう考えていたそうだ。

 ただ、さすがのお父様も、これ以上王位争いを繰り広げていてはいけないと考え、動いたとの事。

 当時この国で一番権力を持っていたお父様が動いたことで、無事王位争いに決着がついた。そして私は、王太子殿下になられたダーウィン様と婚約を結んだのだ。

 ダーウィン様と正式に婚約を結んだ私は、次期王妃になるべく、厳しい王妃教育も耐えた。ジョーン殿下を溺愛している王妃様からの、数々の嫌がらせにも耐えた。それもこれも、ダーウィン様を支えたい一心で。

 ただ、ダーウィン様は私の事が苦手だったようで、事あるごとに避けられていた。それでも私は、ダーウィン様と仲良くなりたくて、積極的に話し掛けたり、一緒にお出掛けをしたりして距離を縮めようとしたのだが…

 結局ダーウィン様に受け入れられることはなく、最近では1人寂しく王宮で過ごすことも多かったのだ。

「結局私は、ダーウィン様に愛される事はなかったのよね…その上、お父様は罪人として捕まり、私は…」

 なぜこんな事になってしまったのだろう。

 悔しくて涙が込みあげてきて、1人静かに泣いたのだった。


 ~あとがき~
 新連載始めました。
 よろしくお願いします。
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