次こそあなたと幸せになると決めたのに…中々うまくいきません

Karamimi

文字の大きさ
2 / 73

第2話:公爵令嬢としてのプライド

しおりを挟む
「シャレル嬢、君の肝っ玉には心底驚くよ。この状況で寝られるだなんてね」

 ん?この声は?

 パチリと目を開け、顔を上げると、こちらを見下ろしているジョーン殿下の姿が。私、いつの間にか眠っていたのね。

「さっき君の父親の裁判が終わったよ。君の父親は、極刑に処されることが決まった。そして君の処遇は、後日再び裁判が開かれる事になった」

 お父様が、極刑ですって?

「父は何も悪い事はしておりませんわ。父を無実の罪で殺すのですね」

「最後まで父親の無実を信じているのだね。おめでたい女だ」

「私の父は、曲がった事が大嫌いです。誰よりも弱い者に寄り添って来た人です。そんな父が、人身売買なんて恐ろしい事をするはずがありませんわ!」

 真っすぐジョーン殿下を見つめて、はっきりと告げた。

「正義感に満ち溢れたその目、君の父親にそっくりだ。いいよ、教えてあげる。そうだよ、君の父親は何もしていない。僕が君の父親に無実の罪を着せたのだよ」

「要するに、父がダーウィン様を推した事を根に持っていらっしゃるという事ですね。そして、父を犯罪者して消し去り、ダーウィン様の婚約者でもある私を犯罪者の娘にする事で、私達親子も消せる。ダーウィン様の最大の後ろ盾でもある私たちを消すことで、ダーウィン様を王太子の座から引きずり降ろし、ご自分が新たに王太子になるおつもりですか?」

「さすが賢いシャレル嬢だ。そうだよ、君たちがいなくなれば、兄上を引きずりおろす事なんて簡単だ。現に兄上は、君たちが犯罪者になったのは、自分の責任でもある。責任を取って、王太子の座を退くと言っているよ。そもそも兄上には、王太子なんて荷が重すぎたんだよ」

 ダーウィン様がそんな事を…私たちのせいで、王太子の座を降りる事になっただなんて。きっと増々私は、ダーウィン様に嫌われただろう。

 でも、もう今更ダーウィン様にどう思われようと、どうでもいい。お父様も近々殺される。私もきっと…

「既に覚悟は出来ているといった眼をしているね。ねえ、シャレル嬢、僕と取引をしないかい?僕はね、優秀で美しい君を、このまま手放すのは惜しいと考えているのだよ。ほら、僕の婚約者、マリアはあまり勉強が出来ないだろう?だから君には、裏で僕とマリアを支えて欲しいんだ」

「それは一体、どういう意味ですか?私に影武者になれという事ですか?」

「影武者だなんて、そんな事は考えてないよ。君は僕の愛人になるというのはどうだい?」

「愛人ですって?私は犯罪者の娘なのですよ。そんな女を、あなた様の愛人だなんて、きっと貴族たちが認めませんわ」

「その点は大丈夫。君は何も知らなかった、ある意味父親のせいで人生を狂わされた犠牲者の1人と訴えれば、どうにでもなる。後は適当な貴族の養女にさえなれば、どうってことないさ。どうだい?悪い話ではないだろう?もし断ったら、君にはこの国から無一文で出て行ってもらう事になるよ」

 無一文で出て行けか…事実上の死刑判決と言う事か…

 この男の愛人として生きるか、野垂れ死ぬか、1つに2つ。それなら…

「分かりました、それでしたら私は、国外追放でも構いません!どうか私を、この国から追放してくださいませ」

 真っすぐジョーン殿下を見つめ、そう伝えた。

「君は正気かい?僕の愛人になれば、今まで通りぜいたくな暮らしが出来るのだよ。愛人と言っても、マリアと君を平等に愛するよ。そもそも僕は、我が儘で頭の悪いマリアよりも、優秀で美しく、いつも凛としている君の方が、僕の妻に合っていると思っている。出来れば君の様な優秀な女性に、僕の子供を産んで欲しいと思っているくらいだ」

 この人は何を言っているのかしら?バカにするのもいい加減にして欲しいわ。

「私はこれでも公爵令嬢です。犯罪者の娘として後ろ指をさされながら生にしがみつくよりも、ガスディアノ公爵令嬢として散りたいのです。私は絶対に、あなた様の愛人になんてなりません。それでももし、私を愛人にするとおっしゃられるのでしたら、どうかこの場で私を切り殺してください」

 最後まで公爵令嬢として、生きていたい。これだけはどうしても譲る事が出来ない、私のプライドだ。

「公爵令嬢のプライドか…君は何が何でも、僕のものにはならないというのだね…分かったよ、お望み通り、あの世に送ってあげるよ」

 すっと剣を引き抜いたジョーン殿下。

 既に覚悟は出来ている。そんな思いで、ゆっくりと瞼を閉じた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アンジェリーヌは一人じゃない

れもんぴーる
恋愛
義母からひどい扱いされても我慢をしているアンジェリーヌ。 メイドにも冷遇され、昔は仲が良かった婚約者にも冷たい態度をとられ居場所も逃げ場所もなくしていた。 そんな時、アルコール入りのチョコレートを口にしたアンジェリーヌの性格が激変した。 まるで別人になったように、言いたいことを言い、これまで自分に冷たかった家族や婚約者をこぎみよく切り捨てていく。 実は、アンジェリーヌの中にずっといた魂と入れ替わったのだ。 それはアンジェリーヌと一緒に生まれたが、この世に誕生できなかったアンジェリーヌの双子の魂だった。 新生アンジェリーヌはアンジェリーヌのため自由を求め、家を出る。 アンジェリーヌは満ち足りた生活を送り、愛する人にも出会うが、この身体は自分の物ではない。出来る事なら消えてしまった可哀そうな自分の半身に幸せになってもらいたい。でもそれは自分が消え、愛する人との別れの時。 果たしてアンジェリーヌの魂は戻ってくるのか。そしてその時もう一人の魂は・・・。 *タグに「平成の歌もあります」を追加しました。思っていたより歌に注目していただいたので(*´▽`*) (なろうさま、カクヨムさまにも投稿予定です)

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目の人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

とある伯爵の憂鬱

如月圭
恋愛
マリアはスチュワート伯爵家の一人娘で、今年、十八才の王立高等学校三年生である。マリアの婚約者は、近衛騎士団の副団長のジル=コーナー伯爵で金髪碧眼の美丈夫で二十五才の大人だった。そんなジルは、国王の第二王女のアイリーン王女殿下に気に入られて、王女の護衛騎士の任務をしてた。そのせいで、婚約者のマリアにそのしわ寄せが来て……。

処理中です...