次こそあなたと幸せになると決めたのに…中々うまくいきません

Karamimi

文字の大きさ
7 / 73

第7話:幸せな時間

しおりを挟む
「ありがとう、シャレル。今はこんなものしか食べさせてあげられないけれど、マーラル王国に着いたら、美味しいものを沢山食べようね」

「まあ、それは楽しみですわ。それでしたら、一刻も早く、マーラル王国に向かわないといけないですね。なんだか楽しみになって参りましたわ」

「僕も楽しみだよ。まさかシャレルと一緒に行けるだなんてね…シャレル、僕の事を受け入れてくれて、ありがとう」

「私の方こそ、助けていただきありがとうございます。せっかくなので、今を楽しみましょう。見て下さい、ダーウィン様、沢山の牛や馬がいますわ。私、動物を生で見たことがなくて」

「本当だね。あんなに沢山の動物、僕も初めて見たよ」

 昨日とは打って変わり、ダーウィン様の緊張も随分和らいだようだ。

 この日は2人で話しをしながら、馬車の移動を楽しんだ。

 夜も、小さな宿に泊まった。もちろん、2人同じ部屋だ。

「見て下さい、ダーウィン様、今日のお部屋は、ベッドが上下に1つづつありますわ。こんなベッド、初めて見ました」

「本当だね、僕も初めてだよ。でも…今日はシャレルと一緒に寝られないね…」

 ポツリとダーウィン様が呟いたのだ。びっくりしてダーウィン様の方を見た。

「いや、何でもない。今の言葉は気にしないでくれ」

 手をブンブン振って、必死に否定している。その姿が、なんだか可愛い。そんなダーウィン様の手を握り、下のベッドに誘導した。

「少し狭いですが、今日も2人で休みましょう。私もダーウィン様の温もりがあった方が、よく眠れるので」

「でも、さすがに狭くないかい?僕のせいで、シャレルが狭い思いをしたら…」

「私は大丈夫ですわ。2人で横になっても、そこまで狭くはないですし。それにこうやって2人で寄り添って寝たら、温かいです。さあ、もう休みましょう。おやすみなさい」

 そっとダーウィン様に寄り添い、瞼を閉じた。こんな風に好きな人の温もりを感じながら眠れるだなんて、本当に幸せな事だ。

 この日もあっという間に眠りについたのだった。

 そしてこの日以降、グンと距離が縮まった私たち。今まですれ違った時間を埋めるように寄り添い、お互いの話を沢山した。そして夜は、小さな宿に泊まり、2人一緒に眠りにつく。

 そして…

「シャレル、明日のお昼には、いよいよマーラル王国に入るよ。この1週間、君には随分と苦労を掛けてしまったね。マーラル王国に入ったら、まずは家を借りよう。それから、最低限にはなるが、使用人を雇おう。シャレルには随分と苦労を掛けてしまったからね。どうかマーラル王国では、穏やかに生きて欲しい」

「使用人だなんて。限られたお金しかありませんのに、その様な贅沢をしてはいけませんわ。私、家事というものを覚えますわ。確か平民は、自分で料理を作り、掃除をして洗濯をするそうです。私は確かに世間知らずですが、ダーウィン様と一緒にいられるのなら、何だって頑張るつもりです」

 正直自信はないが、何とかなるだろう。そんな思いで、胸を叩いた。

「お金の心配はいらないよ。僕たちが一生遊んで暮らせるだけのお金は持ってきているから。それに僕も、マーラル王国に着いたら、やってみたい仕事があってね。それが軌道に乗れば、何とかなるよ。それから、その…」


 急にダーウィン様がモジモジし始めたのだ。一体どうしたのだろう?不思議に思っていると…

「シャレル、マーラル王国に着いたら、僕と結婚してくれるかい?僕は愚かで、君の父親を助ける事が出来なかった。何の罪もない公爵を助ける事も出来ず、大切なシャレルには苦労を掛けてばかりだ。それでも僕は、シャレルを幸せにしたいと思っている。だから、その…」

「ダーウィン様、ありがとうございます。嬉しいですわ。まさかダーウィン様から、結婚の言葉を頂けるだなんて。実はマーラル王国に着いたら、私と結婚して欲しい旨を伝えようと思っていたのです。それに父の事は、ジョーン殿下が悪いのです。どうか気にしないで下さい」

 ギュッとダーウィン様に抱き着き、そう伝えた。

「ありがとう、シャレル。こんな事を言っては不謹慎かもしれないが、シャレルと一緒に過ごしたこの1週間が、僕にとっては本当に幸せで…その上、僕の気持ちを受け入れてくれるだなんて…こんなに嬉しい事があってよいのかな?これから一気に地獄に叩き落されたりしないかな?」

「まあ、ダーウィン様ったら、大げさなのですから。マーラル王国に着いたら、きっともっともっと楽しい事や嬉しい事が待ち受けているはずですわ。私もダーウィン様も、散々傷ついて来たのですもの。落ちるところまで落ちたのですから、後は上がるだけですわ」

 ダーウィン様の言う通り、この1週間、私も幸せだった。辛い事もあったけれど、きっと私たちは幸せになれる。その為に、マーラル王国に向かうのだから…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アンジェリーヌは一人じゃない

れもんぴーる
恋愛
義母からひどい扱いされても我慢をしているアンジェリーヌ。 メイドにも冷遇され、昔は仲が良かった婚約者にも冷たい態度をとられ居場所も逃げ場所もなくしていた。 そんな時、アルコール入りのチョコレートを口にしたアンジェリーヌの性格が激変した。 まるで別人になったように、言いたいことを言い、これまで自分に冷たかった家族や婚約者をこぎみよく切り捨てていく。 実は、アンジェリーヌの中にずっといた魂と入れ替わったのだ。 それはアンジェリーヌと一緒に生まれたが、この世に誕生できなかったアンジェリーヌの双子の魂だった。 新生アンジェリーヌはアンジェリーヌのため自由を求め、家を出る。 アンジェリーヌは満ち足りた生活を送り、愛する人にも出会うが、この身体は自分の物ではない。出来る事なら消えてしまった可哀そうな自分の半身に幸せになってもらいたい。でもそれは自分が消え、愛する人との別れの時。 果たしてアンジェリーヌの魂は戻ってくるのか。そしてその時もう一人の魂は・・・。 *タグに「平成の歌もあります」を追加しました。思っていたより歌に注目していただいたので(*´▽`*) (なろうさま、カクヨムさまにも投稿予定です)

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目の人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

とある伯爵の憂鬱

如月圭
恋愛
マリアはスチュワート伯爵家の一人娘で、今年、十八才の王立高等学校三年生である。マリアの婚約者は、近衛騎士団の副団長のジル=コーナー伯爵で金髪碧眼の美丈夫で二十五才の大人だった。そんなジルは、国王の第二王女のアイリーン王女殿下に気に入られて、王女の護衛騎士の任務をしてた。そのせいで、婚約者のマリアにそのしわ寄せが来て……。

処理中です...