次こそあなたと幸せになると決めたのに…中々うまくいきません

第9話：２度目の生の始まりです

　パチリと目を覚ますと、見慣れた天井が。

　ここは、私の部屋よね？

　ゆっくりと体を起こした。間違いない、ここは公爵家の私の部屋だわ。一体どうなっているの？あの時間違いなく、私は自分の喉を刺したはず。

　そっと喉元を触ったが、特に怪我をしている様子もない。もしかして、ここが天国なのかしら？それにしては、現実的過ぎるわ。天国なら、お父様やダーウィン様がいるはずなのだけれど、皆どこにいるのかしら？

　ベッドから出て、部屋の外に出ようとした時だった。

「お嬢様、どこに向かわれるのですか？」

　ふと声の方を振り向くと、私の専属メイドたちの姿が。

「あら？あなた達も天国に来たの？ごめんなさい、私たちのせいで、あなた達にまで甚大な被害が出たのね」

　まさか使用人たちの命まで奪うだなんて、ジョーン殿下はどこまで腐っているのかしら？考えただけで、怒りがこみ上げてきた。

「お嬢様、何をおっしゃっていらっしゃるのですか？今日は第一王子のダーウィン殿下と、初めて面会を行う日です。旦那様から改めてお話しがあるそうなので、まずはお着替えを行いましょう」

「えっ？ダーウィン様と初めての面会ですって？それは一体…」

　困惑する私を他所に、メイドたちの手によって、あっと言う間に着替えが済んだ。ふと鏡に映る自分の姿に目が留まる。

「私、小さい…明らかに小さいわ。もしかして…」

「さあ、お嬢様、旦那様がお待ちです。参りましょう」

　メイドたちに連れられ、居間へと向かうと、そこにはお父様の姿が。

「お父様！」

　ギュッとお父様に抱き着いた。あの日以来、一切お父様には会えなかった。お父様がどんな思いで無実の罪を着せられ、どんな最期を迎えたのか。考えただけで、涙が出る。

「どうしたのだい？私の可愛いシャレル。こんな風に甘えてくるだなんて。もしかして、ダーウィン殿下に会うのが不安なのかい？シャレルも知っているかと思うが、今我が国は第一王子でもあるダーウィン殿下派と、第二王子のジョーン殿下派が激しい火花を散らしているのだ」

「ええ、知っておりますわ。陛下はダーウィン…殿下を次期国王に、王妃殿下はジョーン殿下を推していらっしゃるのですよね？貴族間でも激しい争いが起きており、このままでは我が国は滅茶苦茶になってしまうという事で、私がダーウィン殿下の婚約者になる事で、事を治めるという事でよろしいですよね」

「ああ、そうだよ。本来我が国では第一王子でもある、ダーウィン殿下が正当な王位継承者だ。この決まりは、無駄な王位争いを避けるために、先代の王たちが決めたルールなのだよ。正直私は、王位争いにシャレルを巻き込みたくはなかったし、我が家が口を挟むことも避けたかった。だが、これ以上国を混乱させる訳にはいかない。最悪、内戦なんて事も考えられる。だからこの混乱を止めるためにも、シャレルにはダーウィン殿下の婚約者になってもらうのだよ」

　改めてお父様が説明してくれるが、そんな事は既に知っている。そもそも、正当な王位継承者でもあるダーウィン様を差し置いて、ジェーン殿下を次期国王にしたいだなんて、そんな我が儘は通用しない。それに、あんな自己中心的な人間が国王になったら、この国はお先真っ暗だわ。

　そうよ、あの男の好き勝手にはさせない。

　どんな理由かはわからないが、どうやら私は、過去に戻った様だ。今からダーウィン様と婚約を結ぶ様だから、今はきっと８歳ね。私が殺されたのが、16歳だから、8年前か…

「お父様、そのお話しは耳にタコが出来るくらい聞きましたわ。だからこそ、私がダーウィン殿下に嫁ぐことで、この争いを終わらせるのですよね」

　１度目の生の時も、私がダーウィン様と婚約を結んだことで、正式にダーウィン様が王太子に就任した。きっと今回も、同じ流れになるだろう。

　そしてまた、あの男は動くはず。私達を地獄に叩き落すために…

　でも、そんな事はさせないわ。

「さすがシャレル、自分の立場をよく理解しているね。そうだよ、これ以上無駄な争いを避けるためにも、民たちが平和に暮らせるためにも、この争いを終わらせよう。私達の手で」

「ええ、もちろんですわ。私、精一杯頑張ります」

「それじゃあ、朝食を摂ったら、すぐに王宮に向かおうか。陛下や他の貴族たちも待っているだろう」

　お父様との話し合いも終わり、早速朝食を頂いた。早くダーウィン様に会いたい。私の為に、命を落としたダーウィン様。あんな事になって、初めてお互いの気持ちを知る事になるだなんて。

　マーラル王国で新生活を夢見ていたあの頃。でも、その夢は叶わなかった。それでも私は、ひょんなことから過去に戻れたのだ。

　このチャンスを、絶対に逃がさない。今度こそ、ダーウィン様と幸せになって見せる。