次こそあなたと幸せになると決めたのに…中々うまくいきません

Karamimi

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第12話:出たわね

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「ダーウィン様、あちらにテラスがありますわ。あそこで一緒にお茶をしましょう」

 少し進んだところに、お茶が出来るテラスがある。あそこは1度目の生で、私が好んで使っていた場所だ。

「あの…僕は…」

 困惑しているダーウィン様を席に着かせ、使用人にお茶とお菓子を準備してもらう。

「あれ?兄上とシャレル嬢じゃないかい?」

 やって来たのは、第二王子だ。この男のせいで、私たちは!こみ上げる怒りを必死に抑え、笑顔を作る。

「あなた様は、第二王子殿下の、ジョーン殿下ですね。お初にお目にかかります。シャレル・ガスディアノと申します。どうぞお見知りおきを」

 本当なら追い払いたいところだが、これでも私は公爵令嬢だ。令嬢らしく、この男に挨拶をする。

「ああ、知っているよ。さっきの会議に、僕も出ていたからね。シャレル嬢は、8歳とは思えない程堂々としていて、とても素敵だったよ。あまりの美しさに、見とれてしまうくらいに」

「お褒めの言葉、ありがとうございます。これからはダーウィン様を支えられる様に、もっと精進して参りますわ」

 私はダーウィン様以外興味がないのよ。だから、さっさとどっかに行って頂戴。そんな思いで、彼に伝えた。

「兄上の為に精進か…ねえ、シャレル嬢、僕も一緒にお茶をしてもいいかな?君は僕の義姉上になる人だろう。僕も君と仲良くなりたいのだよ」

 そんなの、嫌に決まっている。

「それじゃあ、僕はこれで失礼するよ。シャレル、今日はありがとう」

 ん?ちょっと待って、どうしてこの状況で、私から離れようとしているの?て、そうか、この人、私が世間から見ても聡明と言われているこの男の事が好きだと思っていたのだったわ。だから気を使っているのね。

 本当にこの人は…

「お待ちください、ダーウィン様。どうして私の婚約者でもあるあなた様が、私の傍を離れようとされているのですか?ジョーン殿下、申し訳ございません。私は今、ダーウィン様との仲を深めたいのです。ですから、今日のところはご勘弁を」

 あなたに私たちの時間を、邪魔されてたまるか。

「シャレル嬢は、律儀なのだね。第二王子でもある僕にはっきりものを言うその強さ…気に入ったよ。シャレル嬢、今度僕ともゆっくり話をしてね。それじゃあ、僕はこれで」

 笑顔で去っていくジョーン殿下。誰があなたとゆっくり話なんてするものかしら?とはいえ、1度目の生の時、ジョーン殿下の誘いを断り切れずに、何度かお茶をしたことがあった。

 あれもいけなかったのよね。次回からは、気を付けないと。

「ダーウィン様、邪魔者もいなくなりましたし、ゆっくりお茶を楽しみましょう」

「邪魔者?」

 しまった、つい本音が。

「いえ、何でもありませんわ。それにしても、このバラ園。素敵ですね。私、バラが大好きですの」

「シャレルは、バラが好きなのかい?」

「はい、亡くなった母もバラが好きだった様で、公爵家には、母の為に作られたバラ園があるのです。とても綺麗なのですよ」

 私を生んですぐに亡くなったお母様。肖像画でしか見た事がないが、私に良く似た女性だった。

「シャレルにとって、バラは母上と君を繋ぐ、大切なお花なのだね…」

 ポツリとダーウィン様が呟いたのだ。

「はい、バラは私と母を繋ぐ、大切なお花です。バラ園を見ていると、なんだか母と繋がっているみたいで、心が温かくなりますわ。少し冷えて参りましたね。そろそろ王宮に戻りましょう」

「そうだね、気が付かなくてすまない。そろそろ王宮に戻ろう」

 相変わらず私の前を歩いていくダーウィン様。今日は少しだけお話しが出来た。いつか私の隣を歩いてくれる日が来るといいな。そんな思いで、彼の背中を見つめた。

「シャレル嬢、今日はありがとう。どうかダーウィンの事を、よろしく頼むよ」

「こちらこそ、ありがとうございました。それでは、失礼いたします」

 陛下とダーウィン様に見送られ、お父様と一緒に馬車に乗り込んだ。相変わらずダーウィン様は俯いているが、そんな姿もまた愛おしい。

「シャレル、今日は色々とお疲れ様。君のお陰で、話しが早くまとまったよ。それにしても、シャレルがあそこまでしっかりしていただなんて、驚きだな。凛とした姿、亡くなった君の母親にそっくりだった。君の母親も、いつも堂々としていて、凛々しい女性だったんだよ」

「そうだったのですね。お母様に少しでも近づける様に、そして公爵令嬢としての誇りを忘れず、これからもっと精進して参りますわ」

 今度こそ、お父様もダーウィン様も失わない。絶対に。

 それにしても、ジョーン殿下、相変わらずだったわ。今日の出来事で分かった、あの男は、既に私に興味を持ち始めている。きっとこれからも、私に絡んでくるだろう。そして…

 1度目の生の恐ろしい記憶が、脳裏によみがえる。絶対にあんな未来にはさせない。二度とあんな悲しい思いはしたくない。その為にも、私は…
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