次こそあなたと幸せになると決めたのに…中々うまくいきません

Karamimi

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第33話:ジョーンの気持ち~ダーウィン視点~

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「ジョーン、あなたは一体何を考えているの?あのような行動をとって」

「母上は黙っていてください。母上は僕よりも、兄上の方が大切なのでしょう?だから僕のやることなす事、文句を言うのでしょう?」

「そんな事はないわ。私はジョーンもダーウィンも、平等に愛しているわ。ただ、今日のジョーンの対応は、王族として有るまじき行為だったから…」

「シャレル嬢と一緒にダンスを踊った事ですか?我が国では、婚約者がいる令嬢であっても、ダンスを申し込んでもいいはずです」

「確かにそうだけれど…でも、シャレルちゃんはダーウィンの婚約者なのよ。それなのに…」

 王宮に戻ってくるなり、ジョーンと母上が言い合いをしていた。ジョーン…正直僕は、ジョーンが苦手だ。でも!

「母上、ジョーンも何を揉めているのですか?」

 2人の前に立つと、母上が僕の方にやって来たのだ。

「ダーウィンからも、何か言ってやって頂戴。この子、他の令嬢たちからのダンスを皆断っていたのに、シャレルちゃんにダンスを申し込んだでしょう?まだ婚約者がいないジョーンが、兄の婚約者でもあるシャレルちゃんだけと踊るという事は、何を意味するかを」

 我が国では、確かに誰と踊ってもいい。ただ、婚約者のいない者が特定の異性だけと踊るという事は、自分はこの子と婚約したいという意思表示でもある。ジョーンも僕と同じで、今日まで誰とも踊っていなかった。

 今日もシャレル以外とは踊っていない。きっと世間では、ジョーンはシャレルを狙っている。あのダンスは、兄でもある僕への宣戦布告だと、勘ぐる貴族もいるだろう。

「確かに今日のジョーンの行動は良くなかったね。シャレルは僕の婚約者だ。それなのに、僕の婚約者とだけ踊るだなんて。貴族たちがどんな噂をするか、想像がつくだろう?」

「兄上、いつから僕に意見する様になったのですか?いつも僕には遠慮していた兄上が、僕に意見するだなんて。それだけシャレルが大事なのですか?まあ、気持ちは分かります。シャレルはとても魅力的な女性ですものね」

「シャレルを呼び捨てで呼ぶのはやめてくれ。ジョーン、君はもう16歳だ。いい加減令嬢との婚約を考えてくれ」

「その件なのだけれど、実はディーラス王国の公爵令嬢との縁談が持ち上がっているの。お義兄様も妹君の娘なのだけれど、あなたとも歳が近いし、優秀な養子を探しているのですって。お義兄様が、ジョーンは優秀だし、ぜひとおっしゃって下さっているのよ」

 なんと、ここにきてディーラス王国の公爵令嬢との縁談が持ち上がるだなんて。もしジョーンが、ディーラス王国の公爵令嬢と結婚してくれたら!

「ジョーン、いい話ではないか?せっかくだから、一度会ってみたらどうだい?環境が変われば、君の気持ちも落ち着くかもしれないよ」

「母上も兄上も、何をおっしゃっているのですか?そこまでして、僕を追い出したいのですか?僕は絶対に、ディーラス王国にはいきません。絶対にシャレルを諦めない…絶対に…」

「ジョーン、あなたやはり、シャレルちゃんの事が好きなのね。彼女はダーウィンの婚約者なのよ」

「そんな事は分かっています。少し考えさせてください」

 そう言うと、ジョーンが足早に去って行った。

「待ちなさい、ジョーン」

 母上が後を追おうとしているのを、そっと止めた。

「母上、今のジョーンには、何を言っても無駄です。ただ、これではっきりしましたね。ジョーンの気持ちが。ジョーンの為にも、やはりディーラス王国の公爵令嬢と結婚させた方がよいかと」

「そうね、シャレルちゃんはあなたの婚約者だもの。どう転んでも、シャレルちゃんとジョーンが結ばれる事はないわ。それなら、シャレルちゃんからジョーンを遠ざける事が専決ね。すぐにお義兄様に相談するわ。ジョーンも最初は辛いかもしれないけれど、新しい地で生活する事で、きっとシャレルちゃんの気持ちも落ち着くはずだし」

「そうですよ、母上。ジョーンの為にも、やはり他国で新しい生活を送った方が、彼の為になるはずです」

 そっと母上の肩に手を置いた。こんな風に母上と普通に話し、触れられる様になったのは、シャレルのお陰だ。ジョーンがシャレルに執着しているのはよくわかった。

 でも、僕だって絶対にシャレルを渡したくはない。きっとジョーンは、シャレルをなんとかして奪いに来るだろう。あの男は、昔からそうだ。上手に僕から大切なものを奪っていく。

 でも、シャレルは…シャレルだけは奪われる訳にはいかない。

 僕も早速伯父上に手紙を書こう。ジョーンが逃げられない様に周りを囲んでしまえば、こちらのものだ。

 大丈夫だ、これで穏便に事を進められる。ジョーンだって、今は辛いかもしれないが、いつか分かってくれる日が来るだろう。

 そう信じて、僕はやれることをやるのみだ。
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