次こそあなたと幸せになると決めたのに…中々うまくいきません

Karamimi

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第36話:僕の賭け~ダーウィン視点~

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 ジョーンが電撃婚約を結んでから、早3ヶ月、先日無事に2人の婚約披露パーティも終わった。ただ、あの日以降、浮かない顔をしているシャレル。

 もしかしてシャレルは、ジョーンの事が好きだったのか?

 いいや、それは違う。ずっとシャレルの傍にいる僕ならわかる。シャレルは明らかにジョーンに怯えている。どうしてそこまで、シャレルがジョーンに怯えているか分からない。でもシャレルは、非常に賢い子だ。きっと何かを感じているのだろう。

 いいや…もしかしたら何かの情報を掴んでいるのかもしれない。あの子はなぜか昔から、僕を守ろうとする習性がある。僕の知らないところで、また動いているのかもしれない。母上と伯母上の仲を取り持った時の様に…

「殿下、浮かない顔をしてどうされたのですか?」

「いいや、何でもないよ。それよりも、そろそろ彼が来る頃だろう?」

「はい、そろそろいらっしゃると思います」

「そうか、それじゃあ、出迎えに行こう」

「殿下自らですか?」

「そうだよ、何か問題でも?」

「いえ…」


 僕はある人物に会うため、彼を迎えに門までやって来た。すると、ちょうど馬車が入って来たのだ。

「ダーウィン殿下、わざわざお出迎えに来てくださったのですか?とても光栄です」


 穏やかな表情を浮かべて馬車から降りてきたのは、シャレルのデビュータントの日、僕たち兄弟以外で唯一シャレルと踊った人物。ディン・ガブディアン殿だ。

「お呼び立てして、申し訳ございません。どうぞこちらへ」

 ディン殿を連れ、そのまま僕の執務室へとやって来た。

「今日は王宮まで呼び出してしまって、申し訳ありませんでした。実はあなたに、折り入って話がありまして。ここならゆっくりと話が出来るでしょう?」

「殿下、それでしたら人払いをして頂けますでしょうか?特に護衛は追い出していただきたいのです」

 笑顔である人物を真っすぐ見つめるディン殿。

「護衛をですか?しかし、万が一の事があった場合、対応が取れなくなってしまいます」

 通常貴族と王族が話をするとき、必ず護衛が付く。万が一の事を考えてだ。それなのに彼は、護衛を追い出せと言いだしたのだ。

「彼らがいては、大事な話は出来ないので」

「ディン殿がそこまでおっしゃるのなら、分かりました。すぐに護衛たちは外に出て行ってくれ。それから、メイドも一緒にだ」

「ですが殿下」

「これは王太子でもある僕の命令だ。すぐに出て行ってくれ」

 僕の指示で、部屋から出ていく使用人たち。ついでに専属執事も追い出して、本当に2人きりになった。ここで僕が襲われても、誰も助けてはくれいない状況だ。もちろん、僕もそう簡単にやられるほど弱くはない。

 シャレルを守るために、血のにじむ稽古を重ねてきたのだから。

 使用人たちが出ていくのを見届けたディン殿が、スッと立ち上がり、何かを確認している。すると、ある場所で止まったのだ。

「ディン殿、それは僕が仕掛けたものだから、気にしてもらわなくてもいいよ」

「やはり殿下もお気づきだったのですね。護衛騎士の中に、ジョーン殿下のスパイがいる事を」

 やはり彼も気が付いていたのか…

「ああ、知っていたよ。護衛だけではない。メイドの中にもジョーンのスパイがいるよ。後、僕の専属執事の1人もね」

 そう、僕には常にジョーンのスパイが付いているのだ。僕の動向を探っているのだろう。

「なるほど、殿下は分かっていて、自らスパイを傍に置いていたのですね。申し訳ございません、殿下の事を少し侮っておりました」

「僕の方こそ、君を試すような真似をしてすまなかった。君がどれほど優秀かを試したかったのだよ。それから君が、ジョーンのスパイかどうかも」

 そう、これは僕の賭けだ。僕はこの4ヶ月、ずっとディン殿とその周辺を調べていた。僕だけではない、ガスディアノ公爵もだ。その結果、彼とジョーンの関りはなかった。

 ただ、もしかしたら僕たちを欺くために、別の方法で繋がっているのかもしれない。そうも考えた。だから彼を試させてもらったのだ。

 僕には今、ジョーンの息がかかった3人のスパイが付いている。その事に僕が気が付いたのは、シャレルのお陰だ。彼女はジョーンがマリア嬢と婚約をした後も、ずっと不安そうだった。

 きっとジョーンはまだ、シャレルの事を諦めていない。隙を見て僕からシャレルを奪うつもりなのだろう。シャレルの顔を見ていたら、そんな気がしたのだ。

 あの腹黒いジョーンなら、自分の手を汚さず、僕の情報を手に入れ、上手く始末するだろう。だとすると、僕の傍につねにいる人物をスパイとして送る。そう考えて調べた結果、3人の人間がスパイとして送られてきていたのだ。

 ディン殿もどうやら僕の事を色々と調べていた様だ。きっと優秀なディン殿なら、ジョーンのスパイの存在を知っているはず。もし彼が、僕に忠誠を誓い、その事をいち早く僕に知らせようとしてくれた時は、僕は彼を信じようと決めていたのだ。

 とはいえ、彼は非常に優秀だ。その事を僕に知らせるふりをして僕を油断させて、実は裏でジョーンと繋がっているかもしれない。

 でも、たとえそうだったとしたら、その時はもう諦めよう。そう心に決めているのだ。

 僕は真っすぐと、ディン殿を見つめた。
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