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第37話:ディン殿の想い~ダーウィン視点~
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「ディン殿、シャレルのデビュータントの日、シャレルとダンスを踊ったのは僕に近づくためと、シャレルから聞いたよ。それは本当かい?」
「ええ、本当です。ですが私の浅はかな行動のせいで、ジョーン殿下がシャレル嬢とダンスを踊る機会を与えてしまいました。そのせいで、殿下は私がジョーン殿下の下部なのではないかと思われたのではありませんか?あの時は、完全なる私のミスです。申し訳ございませんでした」
「あの件の事は、気にしなくてもいいよ。正直僕は、君の事をまだ疑っている。君は非常に優秀だからね。ただ、君は公爵令息だ。誰についた方が有利なのか、賢い君ならわかっているはず。ジョーンを王にするリスクよりも、既に王になる事が確約されている僕についた方が、より安全に出世する事が出来るだろう?」
「おっしゃる通り。正直私は、昔の殿下でしたらお仕えする事など考えられませんでした。ですが、今の殿下なら忠誠を誓いたいと考えております。我が家は元々、ジョーン殿下派だったこともあり、ダーウィン殿下が疑心暗鬼になるのも頷けます。ですが、私にチャンスを頂けないでしょうか?必ずあなた様のお役に立ってみせます、この命に代えても」
すっと立ち上がると、胸に手を当て、跪いたのだ。このポーズは、誰かに忠誠を誓う時のポーズ。まさか僕に、ここまでしてくれるだなんて…
「ありがとう、ディン殿。実は僕には、信頼できる右腕がいなくてね。君が僕の右腕になって、この国を一緒に支えてくれるかい?」
「ええ、もちろんです」
「それじゃあ、これからよろしく頼むよ」
すっと彼に手を出すと、ガッチリ僕の手を握ったディン殿。シャレルとはまた違う、ガッチリとした手。彼が本当に僕を支えてくれる存在になってくれるのかはわからない。
でも、僕にもやはり、頼りになる家臣が必要だ。彼ほど優秀な人物なら、有難い事この上ない。もちろん、味方になってくれたらだが…
「それで殿下、あなた様についているスパイたちは、どう処理いたしますか?このまま泳がせますか?」
「ああ、そのつもりだよ。彼らをうまく利用しない手はないからね」
「承知いたしました。既にお気づきだとは思いますが、どうやらジョーン殿下は、エレディス侯爵家のマリア嬢と結婚するつもりはない様です。いずれ何らかの方法で、婚約破棄を狙っているとの事」
「やはりそうか…だが、どんな方法でマリア嬢と婚約は破棄するつもりなのだろう」
「婚約破棄など、ジョーン殿下ならいくらでも出来るでしょう。ダーウィン殿下、あなた様が思っている以上に、ジョーン殿下は手段を択ばない方です。その事は、なぜかシャレル嬢も感じていいらっしゃるのではないですか?彼女がどこまで情報を掴んでいるか分かりませんが、どうやら彼女自身も、ジョーン殿下にスパイを送っている模様ですし」
「シャレルがかい?」
「ええ、そうです。ダーウィン殿下、もしシャレル嬢とジョーン殿下、どちらかを選ばなければいけなくなったら、あなた様はどちらを選びますか?」
真っすぐ僕の瞳を見つめるディン殿。どうしてそんな質問をするのだろう。ただ、彼が何の意図もなく、そんな質問をするなんて考えにくい。
「僕はシャレルをとるよ。僕にとって、シャレルはこの命に代えても守りたい人。たとえジョーンの命を奪う事になったとしても、シャレルを守りたい」
真っすぐディン殿を見つめ、そう告げた。
「さすがダーウィン殿下です。どうかその気持ちを決して忘れないで下さい。それから、ジョーン殿下を侮ってはいけません。彼はきっと、どんな手を使っても、シャレル嬢を手に入れに来る。あなた様にも、断固たる決意が必要です。血のつながった兄弟という思いを捨て、何が何でもシャレル嬢を守る、その気持ちを忘れないで下さい」
「ああ、分かったよ。ディン殿、君はジョーンの事をどう思っているのだい?」
「私ですか?正直最初は、とても優秀で人当たりがよく、彼の方が国王に向いていると思っておりました。ですが、ガスディアノ公爵家の介入により、あなた様が王太子になった。正直私は、この国の為にもジョーン殿下の方がよいのでは?そう考え、ジョーン殿下に近づいた事もありました。
彼を寵愛している王妃殿下は、大国ディーラス王国の元王女殿下。彼女が嫌っているダーウィン殿下が万が一王になったら、ディーラス王国との関係も悪化し、最悪戦争になってしまうかもしれない。もしそうなったら、我が国は甚大な被害が及ぶ。
それなら、多少リスクを冒してでも、ジョーン殿下を国王にと考えていたのです。ですが…」
真っすぐ僕の方を見つめた。
「シャレル嬢の介入により、王妃殿下とダーウィン殿下の仲は劇的によくなりました。その上、ダーウィン殿下はその後、ディーラス王国との関係をより強固なものにしました。あなた様はシャレル嬢と婚約をしてから、見違えるように立派な方になったのです。
私共が求めていた次期王の姿そのものに。だからこそ、私はあなた様を支え、この国をより良いものにしたいと考えております。私はとにかく、この国を良い方向に導いてくれる方に、王になって頂きたい。そしてその方を、傍で支えたいのです。それが私の夢だったので。
それに何よりも、ジョーン殿下の腹黒さでは、とてもこの国をよくすることは出来ない。今はそう感じております」
目を輝かせて話をするディン殿。
この国を良い方向に導いてくれる方につきたいか…
「ありがとう、ディン殿。君の気持ちに応えられる様に、これから頑張るよ」
正直まだ、ディン殿を100%信じていいかはわからない。それでも僕は、彼を信じたい…
彼が言う様に、ジョーンは僕が思っているよりも、もっと冷酷な人間なのかもしれない。
それよりも…シャレル、君は一体何を考えているのだろう…
とにかく、ジョーンの思い通りには絶対にさせない。その事だけは、心に強く誓った。
※次回、シャレル視点に戻ります。
よろしくお願いします。
「ええ、本当です。ですが私の浅はかな行動のせいで、ジョーン殿下がシャレル嬢とダンスを踊る機会を与えてしまいました。そのせいで、殿下は私がジョーン殿下の下部なのではないかと思われたのではありませんか?あの時は、完全なる私のミスです。申し訳ございませんでした」
「あの件の事は、気にしなくてもいいよ。正直僕は、君の事をまだ疑っている。君は非常に優秀だからね。ただ、君は公爵令息だ。誰についた方が有利なのか、賢い君ならわかっているはず。ジョーンを王にするリスクよりも、既に王になる事が確約されている僕についた方が、より安全に出世する事が出来るだろう?」
「おっしゃる通り。正直私は、昔の殿下でしたらお仕えする事など考えられませんでした。ですが、今の殿下なら忠誠を誓いたいと考えております。我が家は元々、ジョーン殿下派だったこともあり、ダーウィン殿下が疑心暗鬼になるのも頷けます。ですが、私にチャンスを頂けないでしょうか?必ずあなた様のお役に立ってみせます、この命に代えても」
すっと立ち上がると、胸に手を当て、跪いたのだ。このポーズは、誰かに忠誠を誓う時のポーズ。まさか僕に、ここまでしてくれるだなんて…
「ありがとう、ディン殿。実は僕には、信頼できる右腕がいなくてね。君が僕の右腕になって、この国を一緒に支えてくれるかい?」
「ええ、もちろんです」
「それじゃあ、これからよろしく頼むよ」
すっと彼に手を出すと、ガッチリ僕の手を握ったディン殿。シャレルとはまた違う、ガッチリとした手。彼が本当に僕を支えてくれる存在になってくれるのかはわからない。
でも、僕にもやはり、頼りになる家臣が必要だ。彼ほど優秀な人物なら、有難い事この上ない。もちろん、味方になってくれたらだが…
「それで殿下、あなた様についているスパイたちは、どう処理いたしますか?このまま泳がせますか?」
「ああ、そのつもりだよ。彼らをうまく利用しない手はないからね」
「承知いたしました。既にお気づきだとは思いますが、どうやらジョーン殿下は、エレディス侯爵家のマリア嬢と結婚するつもりはない様です。いずれ何らかの方法で、婚約破棄を狙っているとの事」
「やはりそうか…だが、どんな方法でマリア嬢と婚約は破棄するつもりなのだろう」
「婚約破棄など、ジョーン殿下ならいくらでも出来るでしょう。ダーウィン殿下、あなた様が思っている以上に、ジョーン殿下は手段を択ばない方です。その事は、なぜかシャレル嬢も感じていいらっしゃるのではないですか?彼女がどこまで情報を掴んでいるか分かりませんが、どうやら彼女自身も、ジョーン殿下にスパイを送っている模様ですし」
「シャレルがかい?」
「ええ、そうです。ダーウィン殿下、もしシャレル嬢とジョーン殿下、どちらかを選ばなければいけなくなったら、あなた様はどちらを選びますか?」
真っすぐ僕の瞳を見つめるディン殿。どうしてそんな質問をするのだろう。ただ、彼が何の意図もなく、そんな質問をするなんて考えにくい。
「僕はシャレルをとるよ。僕にとって、シャレルはこの命に代えても守りたい人。たとえジョーンの命を奪う事になったとしても、シャレルを守りたい」
真っすぐディン殿を見つめ、そう告げた。
「さすがダーウィン殿下です。どうかその気持ちを決して忘れないで下さい。それから、ジョーン殿下を侮ってはいけません。彼はきっと、どんな手を使っても、シャレル嬢を手に入れに来る。あなた様にも、断固たる決意が必要です。血のつながった兄弟という思いを捨て、何が何でもシャレル嬢を守る、その気持ちを忘れないで下さい」
「ああ、分かったよ。ディン殿、君はジョーンの事をどう思っているのだい?」
「私ですか?正直最初は、とても優秀で人当たりがよく、彼の方が国王に向いていると思っておりました。ですが、ガスディアノ公爵家の介入により、あなた様が王太子になった。正直私は、この国の為にもジョーン殿下の方がよいのでは?そう考え、ジョーン殿下に近づいた事もありました。
彼を寵愛している王妃殿下は、大国ディーラス王国の元王女殿下。彼女が嫌っているダーウィン殿下が万が一王になったら、ディーラス王国との関係も悪化し、最悪戦争になってしまうかもしれない。もしそうなったら、我が国は甚大な被害が及ぶ。
それなら、多少リスクを冒してでも、ジョーン殿下を国王にと考えていたのです。ですが…」
真っすぐ僕の方を見つめた。
「シャレル嬢の介入により、王妃殿下とダーウィン殿下の仲は劇的によくなりました。その上、ダーウィン殿下はその後、ディーラス王国との関係をより強固なものにしました。あなた様はシャレル嬢と婚約をしてから、見違えるように立派な方になったのです。
私共が求めていた次期王の姿そのものに。だからこそ、私はあなた様を支え、この国をより良いものにしたいと考えております。私はとにかく、この国を良い方向に導いてくれる方に、王になって頂きたい。そしてその方を、傍で支えたいのです。それが私の夢だったので。
それに何よりも、ジョーン殿下の腹黒さでは、とてもこの国をよくすることは出来ない。今はそう感じております」
目を輝かせて話をするディン殿。
この国を良い方向に導いてくれる方につきたいか…
「ありがとう、ディン殿。君の気持ちに応えられる様に、これから頑張るよ」
正直まだ、ディン殿を100%信じていいかはわからない。それでも僕は、彼を信じたい…
彼が言う様に、ジョーンは僕が思っているよりも、もっと冷酷な人間なのかもしれない。
それよりも…シャレル、君は一体何を考えているのだろう…
とにかく、ジョーンの思い通りには絶対にさせない。その事だけは、心に強く誓った。
※次回、シャレル視点に戻ります。
よろしくお願いします。
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