次こそあなたと幸せになると決めたのに…中々うまくいきません

Karamimi

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第49話:あなたも利用されたのね

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「エレディス元侯爵及び、娘のマリアを、ガスディアノ公爵及びディン・ガブディアン公爵令息殺人未遂の罪で極刑に処す」

 裁判長が高らかに宣言したのだ。そこには、憔悴しきったエレディス元侯爵とマリア様の姿が。数日前、彼らはお父様とディン様を殺害しようとした罪で逮捕された。

 今回彼らの罪を暴いたのは、ジョーン殿下だ。彼は事前に2人がお父様とディン様を襲う事を察知し、行動していたとの事。実行犯に指示を出す様子などが残った映像が決定的になり、2人が逮捕されたのだ。

 今回の事件は、2つの家の公爵家から被害者が出ているという事で、貴族世界でも大騒ぎになっていた。そんな事件を解決したとあって、今やジョーン殿下は時の人だ。

 さらに彼は

「婚約者の暴走を止められなかった、僕にも責任があります。マリアはシャレル嬢を、ずっと目の敵にしていたのを知っていたのに…本当に申し訳ございませんでした」

 と、涙を流しながら皆の前で謝罪したのだ。彼の姿に沢山の貴族が心を打たれ、愛する婚約者の悪事を暴く事が、どれほど辛かったか。それでも正義感にかられた素晴らしい人物として、高く評価されたのだ。

 もちろん、ジョーン殿下とマリア様の婚約は破棄された。

 でも私は、彼らの単独犯だとは思っていない。きっと彼らは、ジョーン殿下に嵌められ、罪を被せられたのだろう。

 それでも犯罪に手を染めたのは確かだ。あの人たちが行動を起こさなければ、お父様やディン様が大けがをする事もなかった。

 彼らを私は決して許すことはない。それでも…

「シャレル嬢、ここは囚人がいる場所です。これ以上進むことはできません」

「騎士団長様、お疲れ様です。マリア様とエレディス元侯爵の刑執行はすぐに行われるのですよね。その前に、少しだけマリア様とお話しがしたいのです」

「ダーウィン殿下から許可を頂いておりませんよね?殿下の許可なく、囚人と話す事は出来ません。すぐにお戻りください。今すぐ殿下に連絡を…」

「騎士団長様、お待ちください。陛下から許可は取っておりますわ」

 陛下から貰った許可証を、騎士団長様に見せたのだ。

「陛下から許可を頂いていたのですね。それは失礼いたしました。それでは案内いたします」

 彼に案内され進んでいく。ダーウィン様にお願いしても、絶対に許可が下りないため、陛下にお願いしたのだ。何度も何度も頭を下げ、やっと今日許可が下りた。ギリギリ間に合ってよかったわ。というよりも、捕まってから裁判までの時間が、異様に短かったのだ。そう、わずか2日で刑が確定した。

 お父様の時も早かったが、そのときと同じくらい早かった。きっと早く2人を消し去りたいジョーン殿下が、裏で手を回したのだろう。あの男なら、やりそうなことだ。

 それにしても、薄暗くて気味が悪い。1度目の生の時の記憶が、一気に蘇ってきた。

「こちらでございます。刑執行まで時間がありませんので、手短にお願いいたします」

「ありがとうございます、騎士団長様」

 少し離れた位置で、騎士団長様が見守っている。あら?珍しいわね、通常傍にいるはずなのに。どうやら2人きりで話をさせてくれる様だ。

 檻の中には、鎖で繋がれ、俯き動かないマリア様の姿が。

「マリア様、ごきげんよう」

 私の声で、ゆっくりこちらを向いたマリア様。その瞳には、生気が感じられない。

「あなた、わざわざ私の刑執行を見に来たの?物好きね」

「私にそんな趣味はありませんわ。最後にあなたに会いたくて来たのです。哀れなあなたに…」

「なるほど、愚かな私をバカにしに来たのね…この落ちぶれた姿を見て、笑うといいわ。私はもうすぐ、死ぬのだから。あなた、せいせいしているのでしょう?ジョーン様に泣いて感謝しないとね。だって私たちを、捕まえて下さったのだから」

 ポロポロと涙を流すマリア様。

「あなたは、ジョーン殿下を愛していたの?」

「愛していた?私が?そうかもしれないわね…」

「マリア様、あなたがやった事は、到底許せることではないわ。私の大切な家族を傷つけ、命を奪おうとした事。絶対に許せない、でも、それ以上に私は、ジョーン殿下を許さない。あの男だけは、絶対に」

「あなた、何を言っているの?ジョーン様は、私達の罪を暴いた人なのよ。それなのに…」

「最後まであの男を庇うのね。あなた達親子は、ジョーン殿下の指示で動いたのでしょう?“ガスディアノ公爵を亡き者にしてしまえば、シャレル嬢は後ろ盾を失う。そうなれば、愚かな兄上をうまく廃嫡させて、僕が次の王になれるかもしれない。だからどうか、僕に手を貸してくれないかい?”とでも言われたのでしょう?」

 私の言葉に、目を大きく見開き固まるマリア様。

「どうしてそれを?あなた、まさかあの場にいたの?」

「いいえ、ただの推測。でも、あの男なら言いそうな言葉でしょう。私もね、かつてあの男に嵌められたの。私達は完全に無実の罪だったから、あなた達とは少し状況が違うけれどね」

「それは一体どういう意味なの?あなたは一体何者なの?」

「何者?私は公爵令嬢、シャレル・ガスディアノよ。最期の時まで、自分の意思を貫いた女とでも言いましょうか。その点は、あなたとよく似ているかもしれないわね。マリア様、もしもあなた様にも2度目の人生が与えられたら、その時はどうか道を間違えないで下さいね。それでは、さようなら」

「待って、あなたは一体…」

「シャレル嬢、お話しは終わりましたか?ちょうど今、刑執行の準備が整ったところでしたので」

「そうですか。ギリギリまで申し訳ございませんでした。それでは私は、戻ります」

 マリア様…あなたはジョーン殿下を愛していたのね。裏切られてもなお、愛する男を守るために黙秘を貫いた。あなたが行った事は、決して許される事ではない。でもいつか、あなたにもやり直す機会が与えられたら、その時は、必ず幸せになってくださいね。
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