次こそあなたと幸せになると決めたのに…中々うまくいきません

Karamimi

文字の大きさ
63 / 73

第63話:皆いい人たちばかりです

しおりを挟む
 飛行船が着陸したのは、どうやら王宮の様だ。

「シャレル、足元に気を付けて。ゆっくりね」

 私の手を握り、ゆっくりと誘導してくれるダーウィン様。相変わらずお優しい。

 飛行船から降りると、沢山の人が待っていて下さっていた。

「お兄様、お義姉様、お久しぶりでございます」

「マリーヌ、よく来たな。会いたかったぞ。父上も母上も、マリーヌに会えるのを心待ちにしている。相変わらず2人とも、体の調子が悪く、部屋から出られなくてな」


 あの人がディーラス王国の国王陛下と王妃殿下なのだろう。どうやら王妃様との兄妹仲は良い様だ。

「シャレルちゃんは初めてよね。私の兄と義姉よ。お兄様、お義姉様、こちらがダーウィンの婚約者のシャレルちゃんよ」

「ディーラス王国の国王陛下、王妃殿下、お初にお目にかかります。シャレル・ガスディアノです。どうぞお見知りおきを」

 早速お2人に挨拶をした。

「君がシャレル嬢か。君の事は色々と聞いていてね。ダーウィンを支えてくれて、本当にありがとう。その上マリーヌの件で、かなりお世話になったと聞いた。マリーヌは結婚してから、ずっとディーラス王国に里帰りしてくることがなかったから、無理やり嫁がせた事を恨まれていると思っていたのだよ。

 でもその誤解が解けてからは、たびたびディーラス王国に顔を出してくれていてね。それもこれも、シャレル嬢のお陰だ。本当にありがとう」

 私の手を握り、何度も何度もお礼を言う国王陛下。さすがに恐縮してしまう。

「伯父上、いくら感謝の気持ちを伝えたいからと言って、わざわざ手を握る必要はないでしょう。離してください」

 すかさずダーウィン様が、陛下から私の手を奪い返したのだ。まさかそんな事はないとは思うが、嫉妬ではないわよね。そう思っていたのだが…

「お兄様、シャレルちゃんに馴れ馴れしくしたら、ダーウィンが嫉妬したじゃない。シャレルちゃん、お久しぶりね。あの節は、本当にありがとう。あなたのお陰で、誤解も解消されたわ。今では昔の様に、仲の良い姉妹に戻れることが出来たわ」

「クラスィーズ公爵夫人、お久しぶりですわ。こちらこそ、あの節はお世話になりました。夫人がわざわざ足を運んでくださったお陰で、王妃様とダーウィン様の仲も解消したのです。感謝しているのは、私の方ですわ」

 あの時わざわざ来てくださったクラスィーズ公爵夫人には、本当に感謝しかない。今でもたまに手紙のやり取りをしたり、ディーラス王国の特産品を送って下さる、とてもお優しい方なのだ。

「相変わらず謙虚な子ね。シャレルちゃん、色々と大変だったわね。まさかあんな事が起こるだなんて。どうか少しでも、あなたの心が晴れる事を祈っているわ。もし国に帰るのが嫌なら、ずっとここにいてもいいのよ。我が家で面倒を見るから、遠慮なく言って頂戴」

「ありがとうございます、クラスィーズ公爵夫人」

 どうやらディーラス王国の人たちにも、今回の件は話が行っている様だ。

「さあ、長旅で疲れただろう。ゆっくりして行ってくれ。ダーウィン、いつも話が終わったら、とんぼ返りで国に戻ってしまっていたが、今日はゆっくりしていくのだよね?」

 ニヤリと笑ったディーラス王国の陛下。

「いつも“シャレルが待っているから。シャレルを極力1人にしたくないから”と言って、すぐに帰ってしまわれるのよ。本当にシャレル様を愛していらっしゃるのですね」

 私の元にやって来たディーラス王国の王妃殿下が、そう教えてくれた。

「伯父上も伯母上も、僕をからかって。今回はシャレルも一緒に来ているのです。1ヶ月程度はお世話になるつもりですよ。この機会に、ディーラス王国を色々と見せてもらおうと思って。よい部分は、まねさせて頂こうかと」

「そうしてもらえると嬉しいよ。マリーヌ、ダーウィンは、どんどん立派になっていくな。ただ、少し嫉妬深いところがある。一体誰に似たのだ?」

「さあ、誰に似たのでしょうね」

 そう言ってディーラス王国の陛下と王妃様が笑っている。さすが兄妹、笑うと2人ともよく似ている。

「さあ、立ち話も何ですから、どうぞ中へ」

 ディーラス王国の王妃殿下に案内され、王宮内に入っていく。

「建物もとても素敵ですが、中も白を基調としていて、シンプルながらとても素敵ですわ」

 初めて見たディーラス王国の王宮。我が国とは全く違う造りで、見ていて楽しい。

「シャレル嬢が気に入ってくれてよかったよ。君たちの部屋はここだよ。ダーウィンとシャレル嬢は、隣同士の部屋だ」

 陛下自ら案内してくれたのは、こちらも白を基調とした立派な部屋だ。なんて立派な部屋なのかしら?公爵家の私の部屋よりも、ずっと素敵だわ。

「お風呂も白を基調としているのね。でも、天井は青だわ。空をイメージしてあるのかしら?この窓も可愛らしい形をしているのね。この家具、リンゴの形をしているわよ。なんて可愛らしい家具なのかしら?」

 見るもの見るのもが珍しく、まるで絵本に出てきたメルヘンの世界の様だ。部屋も素敵だったが、その後私たちの為に開かれた宴のお料理も、とても美味しかった。

 陛下や王妃殿下、クラスィーズ公爵や、夫人はもちろんの事、ダーウィン様のお爺様とおばあ様も本当にお優しくて素敵な方たちだった。王妃様のご家族は、本当に素敵な方たちばかりなのだ。

 彼らの優しさに触れ、見た事のないお料理を頂き、可愛らしいお部屋で胸躍らせていると、なんだかいつまでもジョーン殿下に怯えている自分が、バカバカしくなってきた。

 少なくともこの国にいる間は、目いっぱい楽しもう。そう心に誓ったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アンジェリーヌは一人じゃない

れもんぴーる
恋愛
義母からひどい扱いされても我慢をしているアンジェリーヌ。 メイドにも冷遇され、昔は仲が良かった婚約者にも冷たい態度をとられ居場所も逃げ場所もなくしていた。 そんな時、アルコール入りのチョコレートを口にしたアンジェリーヌの性格が激変した。 まるで別人になったように、言いたいことを言い、これまで自分に冷たかった家族や婚約者をこぎみよく切り捨てていく。 実は、アンジェリーヌの中にずっといた魂と入れ替わったのだ。 それはアンジェリーヌと一緒に生まれたが、この世に誕生できなかったアンジェリーヌの双子の魂だった。 新生アンジェリーヌはアンジェリーヌのため自由を求め、家を出る。 アンジェリーヌは満ち足りた生活を送り、愛する人にも出会うが、この身体は自分の物ではない。出来る事なら消えてしまった可哀そうな自分の半身に幸せになってもらいたい。でもそれは自分が消え、愛する人との別れの時。 果たしてアンジェリーヌの魂は戻ってくるのか。そしてその時もう一人の魂は・・・。 *タグに「平成の歌もあります」を追加しました。思っていたより歌に注目していただいたので(*´▽`*) (なろうさま、カクヨムさまにも投稿予定です)

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目の人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

とある伯爵の憂鬱

如月圭
恋愛
マリアはスチュワート伯爵家の一人娘で、今年、十八才の王立高等学校三年生である。マリアの婚約者は、近衛騎士団の副団長のジル=コーナー伯爵で金髪碧眼の美丈夫で二十五才の大人だった。そんなジルは、国王の第二王女のアイリーン王女殿下に気に入られて、王女の護衛騎士の任務をしてた。そのせいで、婚約者のマリアにそのしわ寄せが来て……。

処理中です...