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27 国王の死 ~マサヤ目線
しおりを挟む~マサヤ目線
「リリアが・・・・・・死んだ?」
その訃報を受けた時、俺は馬の背に跨がっていた。
初老の従者が、震える声で事の経緯を説明する。
「は、先ほどコンポジット伯爵家から知らせがございました。リリア嬢はレオナルド・ボンディング公爵との婚姻を嫌がり、気がふれた挙げ句に自害なさったと・・・・・・」
「じ、がい・・・・・・?」
「はい。リリア嬢は自らのドレスに火を放ち、それはもう壮絶なご最期だったらしく・・・・・・」
リンが、死んだ?
俺を残して、一人で逝ってしまっただと?
嘘だ!
リンが俺を置いて行くはずがない、俺とリンは前世から繋がれた運命の二人なんだ!
前世で結ばれなかった俺たちは、あの『儀式』を経て、また今世で巡りあったんだ。
10歳のリリアを見た瞬間、前世の記憶を取り戻した。
ああ、リン!
なぜか歳がかなり離れていたが、そんな事はどうでもいい。
息子の婚約者に仕立てあげ、婚姻させる。
そのあとは邪魔な息子と妻を殺してしまおう。
そうすればリンを俺のものにできる。
俺が王でリンが王妃。
今度こそ結ばれる。
リンが俺を受け入れる日が今度こそ来る。
ずっとずっと待ち続けた。
長かった。
やっと、やっとここまで来た。
なのに、あの馬鹿息子トーマスが勝手に婚約破棄なんかしやがった!
俺の計画は丸潰れだ。
しかもあのボンディング公爵家に嫁がせるだと?
あの公爵家はこの国の要塞だ。
下手に手を出すと、俺も国もただでは済まない。
一度は諦めるしかないと涙を飲んだが、やはり諦めきれない。
リン、リン、リン。
寝ても覚めてもリンが頭から離れない。
もう幾晩も眠れていない俺は、乾燥させたケシの花びらを指で砕いて火を付けた。
目を閉じて、その煙を吸い込みながら考える。
俺はリンを追いかけてこの世界にきた。
リンと結ばれないのなら、こんな国なんかどうでもいいじゃないか。
リンが俺を受け入れてくれないのなら、またあの儀式をすればいい。
例えリンと二人死んだとしても、次の世界でまた巡り会えるはずだ。
リンを迎えに行こう!
待ってろリン。
レオナルド・ボンディングなどぶっ殺して、必ずお前を手にいれてやる!
さあ、ボンディング公爵家へ!
リンのもとへ!
着の身着のまま馬に股がり、その脇腹を蹴ろうとした瞬間に届いたリリアの訃報。
「すぐにボンディング公爵家に向かう!この目でリリアの死を確認する!」
「その前に、恐れながら陛下、こちらをお納めください。リリア嬢が最期まで握りしめていたという紙切れにごさいます。なにか文字が書かれているのですが、誰も読むことができず・・・・・・」
「何だと!寄越せ!」
俺は引ったくるように受けとると、端から燃えかけたその紙切れを震える手で開いた。
『マサヤ、次の世界で待ってる。リン』
懐かしい日本語で書かれた短い手紙。
ああ、リン!
俺のことを分かっていたのか!
俺を求めてくれるのか!
待ってろ、すぐに行く!
俺は自分の腰元から短剣を抜いて、その刃を首に当てると、躊躇いもなく強く引いた。
真っ赤な鮮血が飛び散るのが目の端に映る。
俺の体は大きく傾き、そのまま馬の背からどうと落ちた。
「な!陛下!!陛下っ!!!」
「おい!誰か!陛下が!陛下が!」
意識の遠いところで大勢の叫び声が聞こえたが、リンと結ばれる嬉しさで何も考えられない俺は、幸せを胸にリンのもとへと旅立った。
────────────────────
28 リンのマネージャー
~瀬川修目線 へ
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