12 / 13
⑫
しおりを挟む
「娼館に戻るというのならここに閉じ込める!!」
転移の魔法で自宅に戻った俺は、薄暗い寝室のベッドに彼女を押し倒しそう叫んだ。
「他の誰にも股を開くことは許さない!!お前は死ぬまでここで俺に抱かれるんだ!」
この女がこの先娼婦として沢山の男たちに抱かれるなど絶対に駄目だ!!
「死ぬまで‥‥貴方に‥‥」
そう言った女の瞳に醜い俺が映っている。
吸い込まれたと錯覚するほどに美しい黒曜石。
「毎日毎日、朝も昼も夜も!お前が壊れてしまってもずっとずっと犯し続けてやる」
だから‥‥家に帰ると言ってくれ。
俺は、これ以上君を穢したくはない。
君を壊したくはない。
本当は、このまま君をここに閉じ込めてしまいたい。
君を抱いて、君に抱かれて、そして君の中で溺れ死んでもいい。
あの時の恍惚の瞳と甘い香りに飲み込まれて死ねたなら、どんなに幸せだろう。
そんな気持ちに無理やり蓋をして言葉を絞り出す。
「だが今ならまだ許してやる。だから‥家に帰ると、言え」
その瞬間、俺を映していた彼女の黒曜石が何も映さぬガラス玉へと戻った。
「娼館に戻ります。私に帰る家はありませんから」
「え‥‥」
「親もきょうだいも、友人も。私には何もない」
何も、無い‥‥?
「もう、いいです。貴方だけの娼婦になれるなんて、一瞬でも喜んだ自分を恥じています。私が幸せになれることはないと分かってたのに。だから、もう、いいです」
「‥‥‥は?」
俺だけの娼婦?
喜んだ?
この女は‥何を言っている‥‥
「本当に、もう、いいんです。せっかくの好意を無駄にして申し訳ありません。お貴族さまの気まぐれの慈善事業だとしても嬉しかったです」
彼女の目線が俺から外れ、何処か宙に浮いた。
駄目だ!
俺を見ろ!
頼むから俺を見てくれ。
この化け物のような俺を、君のその黒曜石に映してくれ!
「慈善事業なんかではない!」
彼女の小さな唇に噛みつくように口吻をした。
美しい黒曜石が再び俺を捉えたのを見て安心する。
そうだ、俺を見てくれ‥‥
生まれて初めてのキスはやり方さえ分からなかったが、それでも舌を入れ、角度を変えながら彼女の口内をかき混ぜた。
抵抗することなく俺の舌を受け入れた彼女の諦めの顔が、次第に赤く染まりその黒曜石がトロリとした輝きを放ち始めた。
ああ、その顔だ。
その顔をもっと見せてくれ。
化け物の情欲をその身で受け止めて恍惚の表情で達したあの時のような、その顔を。
「君が何も持たないなら俺をやる」
お前など要らぬと突き放されるとは思えなかった。
彼女の蕩けた顔が、俺を見つめる瞳がそう思わせた。
「だから君も俺のものになれ。俺だけのものに」
その瞬間、彼女の黒曜石が大きく見開かれ煌めき輝いた。
そしてその腕を俺の首に回して自らの舌を俺の舌に絡め、求めてきた。
それが返事、とでも言うように。
俺の脳天から背中に、幸せという甘い痺れが走り抜ける。
‥‥‥ああ、見つけた。
欲しくて、欲しくて、堪らなくて、けれど決して手に入れる事は出来ないと諦めていたもの。
淋しさの雪に埋もれていた俺の凍える心に初めて灯った美しい光。
俺の唯一。
愛なんて知らない。
そんなものは生まれてこのかた受け取ることも差し出すこともなかった。
それでも、俺は君を離してやれない。
だから‥‥
君が俺から離れていかぬように。
君が俺を拒まぬように。
彼女のまろい背中を強く、強く抱きしめた。
転移の魔法で自宅に戻った俺は、薄暗い寝室のベッドに彼女を押し倒しそう叫んだ。
「他の誰にも股を開くことは許さない!!お前は死ぬまでここで俺に抱かれるんだ!」
この女がこの先娼婦として沢山の男たちに抱かれるなど絶対に駄目だ!!
「死ぬまで‥‥貴方に‥‥」
そう言った女の瞳に醜い俺が映っている。
吸い込まれたと錯覚するほどに美しい黒曜石。
「毎日毎日、朝も昼も夜も!お前が壊れてしまってもずっとずっと犯し続けてやる」
だから‥‥家に帰ると言ってくれ。
俺は、これ以上君を穢したくはない。
君を壊したくはない。
本当は、このまま君をここに閉じ込めてしまいたい。
君を抱いて、君に抱かれて、そして君の中で溺れ死んでもいい。
あの時の恍惚の瞳と甘い香りに飲み込まれて死ねたなら、どんなに幸せだろう。
そんな気持ちに無理やり蓋をして言葉を絞り出す。
「だが今ならまだ許してやる。だから‥家に帰ると、言え」
その瞬間、俺を映していた彼女の黒曜石が何も映さぬガラス玉へと戻った。
「娼館に戻ります。私に帰る家はありませんから」
「え‥‥」
「親もきょうだいも、友人も。私には何もない」
何も、無い‥‥?
「もう、いいです。貴方だけの娼婦になれるなんて、一瞬でも喜んだ自分を恥じています。私が幸せになれることはないと分かってたのに。だから、もう、いいです」
「‥‥‥は?」
俺だけの娼婦?
喜んだ?
この女は‥何を言っている‥‥
「本当に、もう、いいんです。せっかくの好意を無駄にして申し訳ありません。お貴族さまの気まぐれの慈善事業だとしても嬉しかったです」
彼女の目線が俺から外れ、何処か宙に浮いた。
駄目だ!
俺を見ろ!
頼むから俺を見てくれ。
この化け物のような俺を、君のその黒曜石に映してくれ!
「慈善事業なんかではない!」
彼女の小さな唇に噛みつくように口吻をした。
美しい黒曜石が再び俺を捉えたのを見て安心する。
そうだ、俺を見てくれ‥‥
生まれて初めてのキスはやり方さえ分からなかったが、それでも舌を入れ、角度を変えながら彼女の口内をかき混ぜた。
抵抗することなく俺の舌を受け入れた彼女の諦めの顔が、次第に赤く染まりその黒曜石がトロリとした輝きを放ち始めた。
ああ、その顔だ。
その顔をもっと見せてくれ。
化け物の情欲をその身で受け止めて恍惚の表情で達したあの時のような、その顔を。
「君が何も持たないなら俺をやる」
お前など要らぬと突き放されるとは思えなかった。
彼女の蕩けた顔が、俺を見つめる瞳がそう思わせた。
「だから君も俺のものになれ。俺だけのものに」
その瞬間、彼女の黒曜石が大きく見開かれ煌めき輝いた。
そしてその腕を俺の首に回して自らの舌を俺の舌に絡め、求めてきた。
それが返事、とでも言うように。
俺の脳天から背中に、幸せという甘い痺れが走り抜ける。
‥‥‥ああ、見つけた。
欲しくて、欲しくて、堪らなくて、けれど決して手に入れる事は出来ないと諦めていたもの。
淋しさの雪に埋もれていた俺の凍える心に初めて灯った美しい光。
俺の唯一。
愛なんて知らない。
そんなものは生まれてこのかた受け取ることも差し出すこともなかった。
それでも、俺は君を離してやれない。
だから‥‥
君が俺から離れていかぬように。
君が俺を拒まぬように。
彼女のまろい背中を強く、強く抱きしめた。
17
あなたにおすすめの小説
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
黒騎士団の娼婦
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
天使は女神を恋願う
紅子
恋愛
美醜が逆転した世界に召喚された私は、この不憫な傾国級の美青年を幸せにしてみせる!この世界でどれだけ醜いと言われていても、私にとっては麗しき天使様。手放してなるものか!
女神様の導きにより、心に深い傷を持つ男女が出会い、イチャイチャしながらお互いに心を暖めていく、という、どう頑張っても砂糖が量産されるお話し。
R15は、念のため。設定ゆるゆる、ご都合主義の自己満足な世界のため、合わない方は、読むのをお止めくださいm(__)m
20話完結済み
毎日00:00に更新予定
美醜逆転の世界に間違って召喚されてしまいました!
エトカ
恋愛
続きを書くことを断念した供養ネタ作品です。
間違えて召喚されてしまった倉見舞は、美醜逆転の世界で最強の醜男(イケメン)を救うことができるのか……。よろしくお願いします。
不憫な貴方を幸せにします
紅子
恋愛
絶世の美女と男からチヤホヤされるけど、全然嬉しくない。だって、私の好みは正反対なんだもん!ああ、前世なんて思い出さなければよかった。美醜逆転したこの世界で私のタイプは超醜男。競争率0のはずなのに、周りはみんな違う意味で敵ばっかり。もう!私にかまわないで!!!
毎日00:00に更新します。
完結済み
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
私だけ価値観の違う世界~婚約破棄され、罰として醜男だと有名な辺境伯と結婚させられたけれど何も問題ないです~
キョウキョウ
恋愛
どうやら私は、周りの令嬢たちと容姿の好みが違っているみたい。
友人とのお茶会で発覚したけれど、あまり気にしなかった。
人と好みが違っていても、私には既に婚約相手が居るから。
その人と、どうやって一緒に生きて行くのかを考えるべきだと思っていた。
そんな私は、卒業パーティーで婚約者である王子から婚約破棄を言い渡された。
婚約を破棄する理由は、とある令嬢を私がイジメたという告発があったから。
もちろん、イジメなんてしていない。だけど、婚約相手は私の話など聞かなかった。
婚約を破棄された私は、醜男として有名な辺境伯と強制的に結婚させられることになった。
すぐに辺境へ送られてしまう。友人と離ればなれになるのは寂しいけれど、王子の命令には逆らえない。
新たにパートナーとなる人と会ってみたら、その男性は胸が高鳴るほど素敵でいい人だった。
人とは違う好みの私に、バッチリ合う相手だった。
これから私は、辺境伯と幸せな結婚生活を送ろうと思います。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける
朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。
お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン
絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。
「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」
「えっ!? ええぇぇえええ!!!」
この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。
死にキャラに転生したけど、仲間たちに全力で守られて溺愛されています。
藤原遊
恋愛
「死ぬはずだった運命なんて、冒険者たちが全力で覆してくれる!」
街を守るために「死ぬ役目」を覚悟した私。
だけど、未来をやり直す彼らに溺愛されて、手放してくれません――!?
街を守り「死ぬ役目」に転生したスフィア。
彼女が覚悟を決めたその時――冒険者たちが全力で守り抜くと誓った!
未来を変えるため、スフィアを何度でも守る彼らの執着は止まらない!?
「君が笑っているだけでいい。それが、俺たちのすべてだ。」
運命に抗う冒険者たちが織り成す、異世界溺愛ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる