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一章
異世界にファンがいた。
しおりを挟むゴライヴァイスが召喚された頃、召喚陣のある大部屋の斜め下の第2王女の庭園では2人の女性がいた……
「見てみて♪エイミ~~♪」
「もぅエリーったら、そんなに走ったらドレス汚れるわよ?」
「ぶ~」
一人は、第2王女のヴァンクラフト・エル・エリザベスはいつものように、庭園の中で走り回っていた。習い事の合間にストレス発散をしていた。
もう一人は、前回召喚された異世界人の女性で、元田ちか(もとだ ちか)という。
スキル鑑定をすると社交などのレベルは高いが戦闘スキルが無いため、王女の教育係というか、遊び相手になっていた。
ゴバァァァァ!!
ドコーーーーン!!
「わわっ、チカ~~」
「エリーこっちおいで!」
上の階で大きい物音が聞こえてきた。
2人は庭園の中で抱き合って震えていた。
「何かあったのかしら?」
「今日、3回目の召喚とかって言ってたけど、聞き覚えがある声が聞こえるんだけど、冗談よね?」
「チカ、見て!!」
大きな物体が上から降ってきて庭園の上のガラスをぶち破った。
ガッシャーーーーーーン!!
悲鳴を上げる王女
「キャーーーーー!!」
歓声を上げるチカ
「きゃ~~~~~♪♪」
ドシンッ……
『ガフォーーー(イッテーーー)』
落ちてきた上を見上げて、思う。超痛い。
凄いな異世界。20メートルは落ちたろうか……この高さから落ちて痛いで済んでる。
目の端に人影が居てこちらを見ている。
黒いTシャツ7分丈のズボンと赤のスニーカーを履いている黒髪の大人の女性と、豪華なドレスを着ている女の子。
女の子は、自分を見て怖がっているが、大人の女性は目を輝かせて叫んだ。
「あわわわわ」
観たこともない怪物の姿に、王女は必死にチカに抱き付いていた。
「ふわ~~~♪ゴライヴァイスだ~~♪格好いいーー!!」
そんな王女に目もくれず、異世界の女性チカは、庭園のガラスを突き破ってきた怪物を見て興奮している。
自分の役を知っている人が居て、思わず…
決めポーズを取りまくるゴライヴァイス。
決めポーズの度にビクつく王女と、
決めポーズを見て興奮しすぎて倒れそうなチカ。
不思議な絵面になってしまった。
そんな2人と一匹を、王に言われて走ってきた兵士は扉を開けて固まった。
☆☆☆☆☆
いち早く復帰した兵士は、王女とチカの前に飛び出し、身体を張って避難を呼び掛ける。
ゴライヴァイスは、後ろを向いてから上半身だけ横に捻り、火を吐く。ポスターになった渾身の決めポーズをした時、最初の兵士が飛び出してきた扉から続々と人が出てきた。
「王女ご無事でしたか!?」
「私は、無事ですが…チカが…」
「チカ殿?」
始めの兵士がチカを探すと、フラフラと怪物に近寄っていくのが見える。
「チカ殿、危険です!!」
遂に、怪物まであと1メートルほどまで近付いてしまった。兵士らも迂闊には動けない。
王女は力の限り叫ぶ。
「チカーーーー!!」
怪物はこちらを向き直り、大きく手を広げる。
どんな行動をするのか、どんな攻撃をするのか、兵士達が見守る中…
怪物とチカの距離はゼロになり…
抱き合った。
目が点である。怪物とチカ以外の全ての人間は目が点になる。訳がわからない。
だが、チカ的には何度も映画館へ通い、いくつものグッズを買う程ゴライヴァイスと言うキャラクターが好きなのであった。
えっ……と?
と、兵士と王女が困惑している中、チカと怪物の抱擁は続く。
たまらず王女が声をかけた…
「チ…チカ?その怪物とは、面識が?」
チカはソッと抱擁を解いて王女と兵士達へと振り返った。
「素晴らしい方の召喚、誠にありがとうございます!!」
ビックリするほど綺麗なカテーシーを見せた…
「王女様!!」
「な、何??」
「この方、飼ってイイですか?」
「この怪物を?? か…飼う?」
応援ありがとうございます!
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