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第1話 愛されなかった女の子
しおりを挟む「十年ぶりの太陽だわ……」
地下深くにある牢獄から帰還した私は、天高く燦々と光る太陽を見上げた。
久しぶりに浴びる日差しは、肌にピリピリとした痛みを与えてくる。だけど今の私には、その痛みにすら感動的に思えた。
――でも、罪人である私を温かく迎えてくれたのはこの太陽だけ。
「おい、さっさと歩け」
「……はい」
通称『地獄』と呼ばれる地下牢獄から引きずり出された私は、手錠を嵌められたまま王城へと連行された。
私が今着ている服は布きれ同然。髪も爪もボロボロで、ずんぐりむっくりなドワーフとは思えないほど痩せ細っている。
城内では大勢の兵士たちに監視されながら廊下を進み、謁見の間へ。そこで私を地下から呼び戻した人が待つという。
「来たか……」
「やはり、お兄様でしたか」
その人物とは、このラッコルタ国の王太子であるラビア王子。私の腹違いの兄でもある。
十年振りに再会したお兄様は今、まるでゴミでも見るような冷たい目で私を見下ろしていた。
「大罪人のヴェルデ。お前は十年前に、このドワーフの国で最も重い罪を犯した」
「……はい」
兄の言葉に家族の愛情なんてものは一切感じられない。
「――ふん、相変わらず気色の悪い目をしやがって」
私の深緑色の瞳を見て、お兄様は吐き捨てるように言った。
お兄様は私の瞳が気に入らないようだ。まぁ普通のドワーフは炎のように赤い色をしているものね。目元に大きな傷痕があるのも、不快さを増長させているのかもしれない。
視線を合わせるのも申し訳ない気分になり、私は俯くことにした。
「お前は火の聖女でありながら、建国の時代より受け継がれてきた神聖なドワーフの火を穢した」
この国における聖女とは、鍛冶に用いるドワーフの火を護る役目を負っている。ドワーフの火は聖火とも呼ばれ、この国では王よりも尊く、神に近い存在だ。
それなのに。六歳で聖女の力に目覚めた私は、なぜかその聖火を弱める力を持ってしまっていた。
そのため私は、神を冒涜した大罪人という烙印を押され、十年もの間を地下で過ごすことになってしまった。
「贖いとして、その身が朽ち果てるまで、あの地獄に放り込んでおいても良かったのだが――喜べ。お前の新たな使い道が、このたび決まった」
神を穢せば、たとえ姫や聖女でも罪人だ。だけどお兄様はこんな私にも、まだ用途があるという。
「お前は贄となり、エルフの所有物となってもらう」
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