結婚情報誌ゼ○シィで学ぶ異世界恋愛〜捨てられてお可哀想なのはどちらかしら?〜

ぽんぽこ@3/28新作発売!!

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第3話 社交界VSゼ○シィ

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「……っ!?」

 ――会場のざわめきが、微かに変わった。

「クラリス様、随分と雰囲気が変わりましたね」

「なんだか以前よりも柔らかくなられた気がします」

 貴族たちの反応は、彼女の変化をしっかりと認識していた。婚約破棄された令嬢が落ちぶれるどころか、以前よりも輝いていることに驚く者もいた。

 そんな彼女に最初に気づいたのは、親友のソフィア・ランカスターだった。


「クラリス、どうしたのよ!? すごく魅力的になったじゃない!」

 舞踏会の会場で近づいてきたソフィアは、興味津々といった様子で彼女を見つめる。

 彼女は社交界の華ともいえる侯爵令嬢で、人懐っこい性格で知られている。

「そんなことはないわ。ただ、少し考え方を変えただけよ」
「でも、その『考え方の変化』がすごく良い方向に進んでいるのよ」

 ソフィアは微笑みながらささやく。

 友の純粋な誉め言葉を聞いたクラリスは内心驚いた。婚約破棄されて孤立するかと思っていたが、むしろ周囲の注目を集めることになるとは。


「……おかしな話ね。私はただ、新しいことを学んでいるだけなのに」
「一体、何を学んでいるの?」

 ソフィアが興味深げに尋ねると、クラリスは周囲を見回し、誰にも聞かれていないことを確認した。

「実は……これなの」

 そう言って、クラリスはバッグの中から一冊の本を取り出した。


「これは……本? でも、見たことのない表紙ね」
「『結婚情報誌』というものよ。異国の書物らしいのだけれど、驚くほど有益なことが書かれているの」

 クラリスは声を潜めながら、その本の中に書かれていたことを簡単に説明した。

「なるほどね……貴女が変わった理由がわかったわ」

 ソフィアはしばらく考え込むようにしていたが、やがていたずらっぽい笑みを浮かべた。


「ねえ、それって私も読んでもいいかしら?」

 クラリスはすぐに微笑み、そっと本の表紙を撫でた。

「もちろん、ソフィアになら良いわ。ふふっ。これを貴女が読んだら、私以上に注目の的になるわね」
「それは……」

 ソフィアは言いかけて、ふと考え込むように視線を落とした。そして、やがて柔らかく微笑み、肩をすくめる。

「やっぱり私は遠慮しておくわ」
「え? でも……」
「誰にも言っていない秘密の本なんでしょう? それにクラリス自身がどう変わっていくのか、見ているほうが楽しそうだもの」

 その言葉に、クラリスは少し驚いたが、すぐに目を細めて微笑んだ。


「……ソフィア、ありがとう」
「まぁその本がなくても? 私は十分に魅力的だし?」
「ふふっ、そうね。その通りだわ」

 二人は微笑み合い、言葉の端々に信頼と親しみが滲んでいた。

 和やかな空気も束の間。
 舞踏会の扉がゆっくりと開いたのをキッカケに、会場の雰囲気が一変した。


<次回は本日21:10!以降は完結まで1時間ごとの更新です>
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