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5/6話 料理係の正体は、
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団長の鎧事件から数日後。
王都の市場広場は、祝祭を控え華やかな装飾で彩られていた。
式典の準備式として、貴族や騎士、民衆までが集い、広場には緊張と期待が混じる空気が漂う。
その中に、礼装を纏ったレオン・バルクハルトと、清々しい笑みを湛えるミレイア・グランシェリの姿があった。
レオンは今日、正式に伯爵に任じられる直前であり、多くの視線が彼に注がれていた。
そんな中、一人の女性が彼に歩み寄る。
「あら……レオン様? ……まぁ、すっかり立派になられて」
かつての婚約者、エリザベートである。
ドレスの裾を優雅に揺らしながら微笑む彼女に、レオンは丁寧に一礼を返す。
「あなたが正式に伯爵となられるなんて、王も少々お情けが過ぎますわね。……元平民にしてはよく頑張ってらして」
その言葉に、空気がぴりついた。
しかしレオンは何も言わない。ただ、凛とした姿勢を崩さず立ち続ける。
代わりに、隣にいたミレイアが一歩前へ出た。
「それはそうですね。努力を積み重ね、誰よりも強く、誰よりも優しい方ですから」
その声は柔らかく、けれど芯のある響きだった。
エリザベートが眉をひそめる。
「まあ、どなた……? あなたのような平民が、どうしてご一緒に?」
ミレイアはにこやかに、しかしはっきりと名乗った。
「私はミレイア・グランシェリ。王家の分家筋にあたる者です」
周囲がどよめいた。エリザベートの表情が一瞬きょとんとし、すぐに引きつった笑みに変わる。
「……まあ、それはそれは。王家の方ともなれば、そういった“慈善活動”も時には必要ですものね」
その言葉に、辺りの空気が凍りついた。
ミレイアの微笑は、ほんのわずかに深くなる。
「ええ、確かに。ですから今、目の前の“品性を捨てた人”にどう接すべきか、考えていたところです」
エリザベートの顔から笑みが消える。何かを言おうとしたが、口が動かず、やがて視線を逸らしてその場を去っていった。
すぐに、ざわめく声があちこちで上がる。
「今の聞いたか?」
「姉御が王家の関係者……?」
ミレイアは人々の視線を気にすることなく、レオンの隣に戻る。
「でも今は、炊事係としてここにいる。そして私は団長を心から誇りに思ってます」
そして、彼にだけ向けて微笑みを向ける。
「ね、レオンさん。あなたは別格だもん」
レオンは、目を見開いたまま数秒、じっとミレイアを見つめた。
そして——ほんのわずかに、笑った。
王都の市場広場は、祝祭を控え華やかな装飾で彩られていた。
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その言葉に、空気がぴりついた。
しかしレオンは何も言わない。ただ、凛とした姿勢を崩さず立ち続ける。
代わりに、隣にいたミレイアが一歩前へ出た。
「それはそうですね。努力を積み重ね、誰よりも強く、誰よりも優しい方ですから」
その声は柔らかく、けれど芯のある響きだった。
エリザベートが眉をひそめる。
「まあ、どなた……? あなたのような平民が、どうしてご一緒に?」
ミレイアはにこやかに、しかしはっきりと名乗った。
「私はミレイア・グランシェリ。王家の分家筋にあたる者です」
周囲がどよめいた。エリザベートの表情が一瞬きょとんとし、すぐに引きつった笑みに変わる。
「……まあ、それはそれは。王家の方ともなれば、そういった“慈善活動”も時には必要ですものね」
その言葉に、辺りの空気が凍りついた。
ミレイアの微笑は、ほんのわずかに深くなる。
「ええ、確かに。ですから今、目の前の“品性を捨てた人”にどう接すべきか、考えていたところです」
エリザベートの顔から笑みが消える。何かを言おうとしたが、口が動かず、やがて視線を逸らしてその場を去っていった。
すぐに、ざわめく声があちこちで上がる。
「今の聞いたか?」
「姉御が王家の関係者……?」
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「でも今は、炊事係としてここにいる。そして私は団長を心から誇りに思ってます」
そして、彼にだけ向けて微笑みを向ける。
「ね、レオンさん。あなたは別格だもん」
レオンは、目を見開いたまま数秒、じっとミレイアを見つめた。
そして——ほんのわずかに、笑った。
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